運命の星夜 ◆STvdrPmVks
星夜、二人、運命に出会った。
◆
その日、運命に出会った。
幾千の銀が降るような、荘厳の夜天。
その下で男は、彼女の声を聞いていた。
その下で男は、彼女の声を聞いていた。
『永続調和の……契りを……』
鼓膜を振るわせた小さな言葉は、男にとって誓約だった。
これより一生を懸けて完遂すると、自ら定める祈りとなった。
これより一生を懸けて完遂すると、自ら定める祈りとなった。
命救われた恩義を果たすべく。
目前で輝く、睡蓮花の咲くような笑顔。
泡沫の雪の如き白く儚い少女の未来を守り抜く。
目前で輝く、睡蓮花の咲くような笑顔。
泡沫の雪の如き白く儚い少女の未来を守り抜く。
これぞ私情にして大義であると。
胸の内から溢れ出す歓喜、そして礼賛。
ならば我が主よ、天の子よ。
この魂魄、全て貴女に捧げよう。
胸の内から溢れ出す歓喜、そして礼賛。
ならば我が主よ、天の子よ。
この魂魄、全て貴女に捧げよう。
乱れた現世を変えて見せよう。
心優しい少女の生きる将来を造る為に。
誰もが自由に堂々と、外の世界を歩けるように。
心優しい少女の生きる将来を造る為に。
誰もが自由に堂々と、外の世界を歩けるように。
そう、いつか交わした約束(ちぎり)を、果たすため。
滾る熱と誇りを胸に、この夜から、男の戦いは始まった。
滾る熱と誇りを胸に、この夜から、男の戦いは始まった。
◆
日の光も無く、街灯の灯りも無く、陽の無き深夜である。
鮮やかな月明かりのみが地を照らし、陽炎のようにその光景を映し出している。
そこは、広大な花畑であった。
鮮やかな月明かりのみが地を照らし、陽炎のようにその光景を映し出している。
そこは、広大な花畑であった。
強く、東方の風が吹いている。
一面の白き花々が揺られ、波打って伝播する。
ざあざあと鳴る、葉と葉の触れあう音にまじり、さくりと、微かな足音が響いていた。
一面の白き花々が揺られ、波打って伝播する。
ざあざあと鳴る、葉と葉の触れあう音にまじり、さくりと、微かな足音が響いていた。
睡蓮の花が延々と咲き誇る白色の大地。
そこに、一組の主従が並んで立っている。
並んで立ち、並んで歩く、男女がいた。
そこに、一組の主従が並んで立っている。
並んで立ち、並んで歩く、男女がいた。
「星刻……」
その、片側の女――少女が、自らの手を引く男の名を、震えた声で、呼ぶ。
「どうされましたか、天子様」
消えそうな声を聞き逃さず、答えた男は齢二十後半に至らぬほどの若者であった。
しかし磨き上げたような頑強な肉体、不足や余分のない体格。
そして聡明を思わせる鋭き眼光が、青年という呼称を酷く不釣合いなものにしていた。
男の身に纏う軍服は中華風の意匠刻まれた鮮やかな青と白。
たなびく黒髪は長く、流れるようで、ともすれば女性以上に美麗である。
正に眉目秀麗、容姿端麗を顕現させたかのような、星刻とは、完璧さを備えた武人であった。
しかし磨き上げたような頑強な肉体、不足や余分のない体格。
そして聡明を思わせる鋭き眼光が、青年という呼称を酷く不釣合いなものにしていた。
男の身に纏う軍服は中華風の意匠刻まれた鮮やかな青と白。
たなびく黒髪は長く、流れるようで、ともすれば女性以上に美麗である。
正に眉目秀麗、容姿端麗を顕現させたかのような、星刻とは、完璧さを備えた武人であった。
「わたしたちは、これからどうなるのだろう?」
無垢に問う少女は、真逆。
それは美しさ、力強さが星刻に比べて劣位に在るという意味では、無論ない。
美しさの総量ではなく、性質が真逆なのである。
それは美しさ、力強さが星刻に比べて劣位に在るという意味では、無論ない。
美しさの総量ではなく、性質が真逆なのである。
「あの女性……紫とはいったい……それに、殺し合いとは……」
星刻を眉目秀麗と評するに対し、この小さき少女は純情可憐と呼ぶが相応しい。
雪のように白い髪、柔肌。潤んだ赤い瞳。
身につけたドレスもまた純白。
体弱く、力無く、儚き、故の美しさ。
粗雑に触れれば壊れてしまうかのような、危うきガラス細工を思わせる純情こそが、少女に宿る美の形であろう。
曰く、天子。
中華連邦という一つの国にして大陸。
その頂点に座する存在こそが、この少女なのである。
雪のように白い髪、柔肌。潤んだ赤い瞳。
身につけたドレスもまた純白。
体弱く、力無く、儚き、故の美しさ。
粗雑に触れれば壊れてしまうかのような、危うきガラス細工を思わせる純情こそが、少女に宿る美の形であろう。
曰く、天子。
中華連邦という一つの国にして大陸。
その頂点に座する存在こそが、この少女なのである。
「恥ずかしい限りですが」
己が主である少女に、従者たる星刻は嘘偽り無く答えた。
「現状、この星刻にも事の推移は理解しかねます」
何時から立っていたのか、或いは立たされていたのか。
二人は気がつけばここにいた。
どのようにして移動させられたのか、
紫と名乗った女は如何なる術をもって、このような怪奇な状況を創り上げたのか。
星刻にも、ようと知れない。
二人は気がつけばここにいた。
どのようにして移動させられたのか、
紫と名乗った女は如何なる術をもって、このような怪奇な状況を創り上げたのか。
星刻にも、ようと知れない。
「しかし一つだけ、ご理解頂きたい事が」
言い切れることは一つ。
星刻は足を止め、己を見上げる少女と向き合って、膝を折る。
星刻は足を止め、己を見上げる少女と向き合って、膝を折る。
「天子様。ここは既に戦場です」
それだけが星刻にとって、唯一確かなことだった。
「御身にも危害が及ぶ、及ぼさんとする敵が、ここにはいるのです。
勿論私に、それを許す気など欠片もありませんが。
しかしご理解いただきたい。ここはもう、安全では無いのだと」
「…………うん」
勿論私に、それを許す気など欠片もありませんが。
しかしご理解いただきたい。ここはもう、安全では無いのだと」
「…………うん」
握った手の平が、ぎゅっと、硬くなった。
怖がらせたのだろうと、理解している。
けれど伝えておかなければ、ならない事だった。
怖がらせたのだろうと、理解している。
けれど伝えておかなければ、ならない事だった。
「申し訳、ありません……」
歯がゆさに星刻は、天子の姿を見ていられなかった。
見つめ返す赤色の瞳から、目を逸らす。
「安心なされよ」と、言えぬ己が疎ましい。
「何も心配はないのだ」と、嘘でも言えぬこの身を呪う。
しかし現実問題、これは星刻にとって、過去最大級の危機的状況である。
見つめ返す赤色の瞳から、目を逸らす。
「安心なされよ」と、言えぬ己が疎ましい。
「何も心配はないのだ」と、嘘でも言えぬこの身を呪う。
しかし現実問題、これは星刻にとって、過去最大級の危機的状況である。
ここには敵がいるのだ。
国をあげて厳重に警護されていたはずの天子と己を攫い、殺し合いを強要させる怪物がいる。
少女が誰であろうか知りもせず、道理の通らないであろう魑魅魍魎の影が、間も無く二人を襲いに来る。
国をあげて厳重に警護されていたはずの天子と己を攫い、殺し合いを強要させる怪物がいる。
少女が誰であろうか知りもせず、道理の通らないであろう魑魅魍魎の影が、間も無く二人を襲いに来る。
ここには味方がいないのだ。
敵を打ち倒す砲、連邦の軍はここにない。
少女を守る剣、星刻の神虎はここにない。
敵を打ち倒す砲、連邦の軍はここにない。
少女を守る剣、星刻の神虎はここにない。
こうなってしまえば、此処で天子を守れる存在は己が身一つ。
そのどれほど矮小なことか。
神虎と軍、そして策無き身では限界がある。
怪物を打ち倒す以前に、十を超える武威の主従を超えることすら、この二本の腕しかない今は苦難。
更に言えば、星刻には残された時が少ない。
この身は癒えぬ病魔に侵されている。
環境によっては何時果てるかも分らない。
そのどれほど矮小なことか。
神虎と軍、そして策無き身では限界がある。
怪物を打ち倒す以前に、十を超える武威の主従を超えることすら、この二本の腕しかない今は苦難。
更に言えば、星刻には残された時が少ない。
この身は癒えぬ病魔に侵されている。
環境によっては何時果てるかも分らない。
「しかし、この命にかけて、必ず貴女を守り抜きます」
しかし、それでも斃さねばならないのだ。
魑魅魍魎を払い、いずれはあの怪物を打破せしめねば。
後の世で、彼女が民草と心安らかに暮らせるように。
魑魅魍魎を払い、いずれはあの怪物を打破せしめねば。
後の世で、彼女が民草と心安らかに暮らせるように。
「このような醜態を見せること、お許しください。
ですが必ず、貴女は必ず、この私が命に代えても……」
ですが必ず、貴女は必ず、この私が命に代えても……」
膝を付き、頭をたれて、決意に震えながら。
星刻は堪えきれぬ、心の激情を軋らせていた。
星刻は堪えきれぬ、心の激情を軋らせていた。
対する少女の、返答は、
「顔を……上げて、星刻」
たどたどしい、小さな声。
驚いたことに震えはない。
怖の色の無いように、聞こえた。
驚いたことに震えはない。
怖の色の無いように、聞こえた。
「ですが、」
「しんくー」
「しんくー」
尚も自らを罵倒する言葉を吐こうとしたとき、それを優しく押し留めるものがある。
それは星刻の名を呼ぶ声であり、同時に暖かい、熱だった。
あの夜から変わらない、柔らかな響き。
それは星刻の名を呼ぶ声であり、同時に暖かい、熱だった。
あの夜から変わらない、柔らかな響き。
「天子、さま……」
すうっと、星刻の頭に手を回し、抱き寄せた天子の腕と胸の、その温かさ。
震えのない少女の身体と乱れない鼓動の音に、絶大の信頼と優しさを感じ取る。
お前を信じていると、だから大丈夫だと、言われずとも骨身に染みて伝わった。
震えのない少女の身体と乱れない鼓動の音に、絶大の信頼と優しさを感じ取る。
お前を信じていると、だから大丈夫だと、言われずとも骨身に染みて伝わった。
「ありがとう、星刻。ここに、いてくれて、嬉しい」
あの日、あの夜、誓った約束を彼女もまた忘れていない。
少女の心もまだ、あの夜のままあったのだと。
星刻の心と、同じように、此処に在るのだと。
理解した故に、星刻は思う。
少女の心もまだ、あの夜のままあったのだと。
星刻の心と、同じように、此処に在るのだと。
理解した故に、星刻は思う。
「勿体無い……お言葉です……」
この少女だけは、必ず。
何が起ころうとも、どんな手段を使ってでも、必ず守らねばならないと。
何が起ころうとも、どんな手段を使ってでも、必ず守らねばならないと。
あの夜の、誓いに懸けて。
◇
その日、運命に出会った。
幾千の銀が降るような、荘厳の夜天。
その下で男は、彼女の声を聞いていた。
その下で男は、彼女の声を聞いていた。
『問おう。貴方が私のマスターか?』
鼓膜を振るわせる毅然とした言葉は、男にとって誓約だった。
これより戦いの終着地まで相克せよと、外界から定められた縛りとなった。
これより戦いの終着地まで相克せよと、外界から定められた縛りとなった。
一人でも多くの人々を救うため。
遍く犠牲の数を最小限に留めるべく。
そのために繰り返してきた負の連鎖に終着を。
遍く犠牲の数を最小限に留めるべく。
そのために繰り返してきた負の連鎖に終着を。
これぞ聖杯に懸ける願いであると。
心の底から信じる意志、そして義務。
ならば我が従よ、英雄よ。
この意志、全てお前には渡さない。
心の底から信じる意志、そして義務。
ならば我が従よ、英雄よ。
この意志、全てお前には渡さない。
今だ癒えぬ現世を救おう。
全ての流血が消え去るように。
誰も不当に傷つかず、失わない未来を得るために。
全ての流血が消え去るように。
誰も不当に傷つかず、失わない未来を得るために。
そう、いつか言えなかった夢を、果たすため。
冷え切った闘志を胸に、この夜から、男の戦いは始まった。
冷え切った闘志を胸に、この夜から、男の戦いは始まった。
◇
その場所は地図上ではただホテルとだけ記されていた。
少なくとも、そこがスタート地点であった一組の従者にとっては、その程度の意味しかなかった。
少なくとも、そこがスタート地点であった一組の従者にとっては、その程度の意味しかなかった。
「ならばマスター。
北上を選べば花畑、映画館、水族館に。
南下を選べば温泉や博物館に行き当たることになるでしょう」
北上を選べば花畑、映画館、水族館に。
南下を選べば温泉や博物館に行き当たることになるでしょう」
このように切り出したのはダークスーツに袖を通した金髪の美少年。
否、男装の少女であった。
切り出されたのはその前を歩く一人の男性である。
かつかつと、磨き上げられた薄茶色の大理石の床を、男と少女の黒革靴が静かに叩いていた。
否、男装の少女であった。
切り出されたのはその前を歩く一人の男性である。
かつかつと、磨き上げられた薄茶色の大理石の床を、男と少女の黒革靴が静かに叩いていた。
「移動を行うならば、何れかの施設を偵察するのが肝要かと」
高級なブランドスーツを着こなした少女の立ち姿。
歩き方一つ一つが貴族の男性と見まごう程、様になっている。
厳格で硬い印象を与えるはずの、しかしそれは少女の少女たる美しさ、そして荘厳さを隠しきれてはいなかった。
歩き方一つ一つが貴族の男性と見まごう程、様になっている。
厳格で硬い印象を与えるはずの、しかしそれは少女の少女たる美しさ、そして荘厳さを隠しきれてはいなかった。
「とはいえ、霊体化が不可能な私では短時間で様子を伺うことは難しい。
そこでまずは二人で南下し、地図の中央を目指すことを提案します。
我々は双方ともこの戦場を知りません。知らぬ地で戦い続けることは避けたい。
フィールドが限られている以上……兵法の観点から見ても地の利を得ることは至上命題と考えます。
そしていずれは……あの奇怪な女を打倒せねば……」
そこでまずは二人で南下し、地図の中央を目指すことを提案します。
我々は双方ともこの戦場を知りません。知らぬ地で戦い続けることは避けたい。
フィールドが限られている以上……兵法の観点から見ても地の利を得ることは至上命題と考えます。
そしていずれは……あの奇怪な女を打倒せねば……」
結われた金の髪。鬣である。
澄み渡る緑の瞳。宝石である。
誉れと武功と神威の一端が、彼女の全身から世界に散らされて止まない。
如何なる凡夫も彼女を一目見れば理解できよう。
空間から彼女だけが浮き出たように、それは特別であり、極位の存在であると知らしめていた。
支配し、統べる、王者のみが備える風格を、男装の少女は放っている。
澄み渡る緑の瞳。宝石である。
誉れと武功と神威の一端が、彼女の全身から世界に散らされて止まない。
如何なる凡夫も彼女を一目見れば理解できよう。
空間から彼女だけが浮き出たように、それは特別であり、極位の存在であると知らしめていた。
支配し、統べる、王者のみが備える風格を、男装の少女は放っている。
「そもそもこの戦いについて、あなたはどう思いますか、マスター」
ならばこそ、如何なる凡夫も到底信じられまい。
少女、聖杯より現世に招かれし英雄の一人、セイバーのサーヴァント。
彼女が此度の戦いにおいて、従者と呼ばれる立ち居地に甘んじているなどと。
それも主が、いま彼女の目前にて先を進む男。
黒スーツの上からくたびれた黒いコートを羽織った、ボサボサ頭に無精髭の男、衛宮切嗣であるとは。
少女、聖杯より現世に招かれし英雄の一人、セイバーのサーヴァント。
彼女が此度の戦いにおいて、従者と呼ばれる立ち居地に甘んじているなどと。
それも主が、いま彼女の目前にて先を進む男。
黒スーツの上からくたびれた黒いコートを羽織った、ボサボサ頭に無精髭の男、衛宮切嗣であるとは。
「マスター……」
しかし、現に切嗣の、
己を追ってくる少女に対する態度とは、従者に対するそれである。
いや、従者に対するそれですら、なかったのかもしれない。
己を追ってくる少女に対する態度とは、従者に対するそれである。
いや、従者に対するそれですら、なかったのかもしれない。
「マスター……、……っ…………キリツグッ!」
堪えきれない、と言うように。
セイバーは、声を荒上げていた。
セイバーは、声を荒上げていた。
「いい加減、なにか言ったらどうなのですか!!」
膨大な怒気。積もり積もった屈辱によるものか、端整な顔を顰めている。
対して、どこ吹く風と、切嗣は夜空を眺めながら紫煙を吐き出していた。
一方的な無視、無言。干渉と不干渉。言するセイバーと、黙する切嗣。
かようなやり取りが、二人がホテル内に移転させられてから既に数度、行われている。
対して、どこ吹く風と、切嗣は夜空を眺めながら紫煙を吐き出していた。
一方的な無視、無言。干渉と不干渉。言するセイバーと、黙する切嗣。
かようなやり取りが、二人がホテル内に移転させられてから既に数度、行われている。
傍目には主従関係とは思えない程の断絶。
それはここに至る以前の戦い――第四次聖杯戦争――の時点から始まっていたことであり、一応は戦略に則った行いであったはずだ。
とはいえ、戦略の重要なファクターであった女性が今は欠員。
それはここに至る以前の戦い――第四次聖杯戦争――の時点から始まっていたことであり、一応は戦略に則った行いであったはずだ。
とはいえ、戦略の重要なファクターであった女性が今は欠員。
「あなたは状況が見えているのですか?
ここにアイリスフィールはいない。
いったい何時まで、無駄なそれを続けるつもりだ!?」
ここにアイリスフィールはいない。
いったい何時まで、無駄なそれを続けるつもりだ!?」
至極真っ当な怒りをしかし、切嗣は未だ黙殺する。
何も語らず、黙し続け、己だけの思考に浸り、そして思うことは辛辣だった。
ああ、やはり、煩わしくてならない。
と、男は再び紫煙を、ため息と共に夜空へ吐く。
何も語らず、黙し続け、己だけの思考に浸り、そして思うことは辛辣だった。
ああ、やはり、煩わしくてならない。
と、男は再び紫煙を、ため息と共に夜空へ吐く。
「状況は変わったのです!!
もう我々の意思疎通無しには事は運べない、そうでしょう!?」
「…………」
もう我々の意思疎通無しには事は運べない、そうでしょう!?」
「…………」
不可能なのだと、魔術師、衛宮切嗣は断じていた。
この少女とは、戦いに取り組むことが出来無いのだと、彼は今に至るも揺らいでいない。
聖杯戦争、七人の魔術師による願望機を巡る殺し合い。
マスターの内一人――衛宮切嗣――とセイバーのサーヴァント――アルトリア――との相性は最悪。
手段を選ばぬ外道の殺し屋と、誇り高き騎士王の矜持、これ不倶戴天。
喩え聖杯戦争が崩れようと、状況が如何に変化しようと、結論は変わらない。
この少女とは、戦いに取り組むことが出来無いのだと、彼は今に至るも揺らいでいない。
聖杯戦争、七人の魔術師による願望機を巡る殺し合い。
マスターの内一人――衛宮切嗣――とセイバーのサーヴァント――アルトリア――との相性は最悪。
手段を選ばぬ外道の殺し屋と、誇り高き騎士王の矜持、これ不倶戴天。
喩え聖杯戦争が崩れようと、状況が如何に変化しようと、結論は変わらない。
故に今、ホテルを出立し、静まり返ったビジネス街を歩く切嗣が思うこと。
それはつまり、これからをどうするかという、先ほどセイバーが語ったこととほぼ同一の事柄だった。
しかしその行き着く先は、おそらくセイバーが落ち着いた場所から大きくズレている。
それはつまり、これからをどうするかという、先ほどセイバーが語ったこととほぼ同一の事柄だった。
しかしその行き着く先は、おそらくセイバーが落ち着いた場所から大きくズレている。
「どうやって……駒を進める?」
漸く発された切嗣の、掠れた言葉。
当然セイバーに向けられたものではない。
ただ己に向って問いかけたに過ぎなかった。
当然セイバーに向けられたものではない。
ただ己に向って問いかけたに過ぎなかった。
この戦い、従者との連携は必須であり、それが為せぬものに勝ちはない。
しかし結託しては勝てない、結託できないからこそ、そもあの戦略を取っていた。
今も変わらぬ道理。
だが今はアイリスフィール、仮のマスターはいない。
こうなっては、セイバーの存在は切嗣にとってただの制約のようなものだ。
とはいえ騎士王の火力、有効活用しない手はないのだが。
しかし結託しては勝てない、結託できないからこそ、そもあの戦略を取っていた。
今も変わらぬ道理。
だが今はアイリスフィール、仮のマスターはいない。
こうなっては、セイバーの存在は切嗣にとってただの制約のようなものだ。
とはいえ騎士王の火力、有効活用しない手はないのだが。
「ようは最優のサーヴァントを最優のまま使う。それがここでも出来るか否か」
見切りを付けるか、歪ながら続けるか。
切嗣は最終的に、決めなければならない。
戦いの形式が変わった以上、関係にどのような修正を加えるか。
そして切嗣にとって、戦いの最終目的とはなにか。
切嗣は最終的に、決めなければならない。
戦いの形式が変わった以上、関係にどのような修正を加えるか。
そして切嗣にとって、戦いの最終目的とはなにか。
「…………」
再び黙した切嗣の、下ろした視線は己の両手に向けられる。
火のついたタバコを挟む指の繋がる先、右の甲には赤アザのような模様があった。
刃が繋がりあったような、先の尖った十字の形。
此処に来る以前から見知った、主従の印である。
火のついたタバコを挟む指の繋がる先、右の甲には赤アザのような模様があった。
刃が繋がりあったような、先の尖った十字の形。
此処に来る以前から見知った、主従の印である。
逆の手、左の手の甲には同じく赤の、しかし違う模様。
星形をした、違った意味での主従、付け加えられた印がある。
星形をした、違った意味での主従、付け加えられた印がある。
この二つ、事によれば使うこと。
変ずること、ありえるかもしれない。
少なくともこのとき切嗣は、それすら辞さない覚悟であった。
勝つために、否、終わらせるために。
変ずること、ありえるかもしれない。
少なくともこのとき切嗣は、それすら辞さない覚悟であった。
勝つために、否、終わらせるために。
必要で、あるならば。
◆ ◇
姫たる主と、護者たる従。
傭兵たる主と、王たる従。
相応と、不相応との、両の主従。
遭遇したのはちょうど、花畑と都市部の中間に差し掛かる辺りだった。
傭兵たる主と、王たる従。
相応と、不相応との、両の主従。
遭遇したのはちょうど、花畑と都市部の中間に差し掛かる辺りだった。
◇ ◆
冷え切った星空に、刹那の闘気が揺らめき昇る。
奔る剣戟。
轟く銃声。
閃く火花。
轟く銃声。
閃く火花。
しかし熱が燃えたのは一瞬だった。
壮絶の武闘なれど。
戦はあまりにも呆気なく、終わりを告げた。
壮絶の武闘なれど。
戦はあまりにも呆気なく、終わりを告げた。
「見事。鋭き刃物のような戦意でした。
感服します、人の身でよくぞここまで。
若干奇襲めいていたとはいえ、魔力の加護無しに我が鎧に一刀を加えられる存在など、そういません」
感服します、人の身でよくぞここまで。
若干奇襲めいていたとはいえ、魔力の加護無しに我が鎧に一刀を加えられる存在など、そういません」
黄金の騎士はこう語るが、
どちらがどのようにして勝利したかなど、わざわざ語る必要もなく。
火力の差、地力の差、結果は覆せぬ道理だったといえよう。
敗北した主従、勝利した主従、自明である。
どちらがどのようにして勝利したかなど、わざわざ語る必要もなく。
火力の差、地力の差、結果は覆せぬ道理だったといえよう。
敗北した主従、勝利した主従、自明である。
「貴様……ッ」
苦悶と嚇怒の混じった念が、夜に響いた。
雑草の生い茂るあぜ道で膝をつく星刻が、発する怨嗟の声だった。
取り落としていた己が武器、輪刀を探せど、手の届く位置に無く。
雑草の生い茂るあぜ道で膝をつく星刻が、発する怨嗟の声だった。
取り落としていた己が武器、輪刀を探せど、手の届く位置に無く。
「なんの、つもりだ……?」
星刻は敵手に対して睨み据えながら、問うた。
目前で星刻の喉元に剣――不可視だが星刻にはそれが在るとしか思えない――を突きつけた黄金の騎士、セイバー。
ではなく、そのさらに後方にて佇む、黒コートの男を。
冷たい目をこちらにむけながら、星刻の守るべき天子へと拳銃を突きつけている、衛宮切嗣の姿を見ていた。
目前で星刻の喉元に剣――不可視だが星刻にはそれが在るとしか思えない――を突きつけた黄金の騎士、セイバー。
ではなく、そのさらに後方にて佇む、黒コートの男を。
冷たい目をこちらにむけながら、星刻の守るべき天子へと拳銃を突きつけている、衛宮切嗣の姿を見ていた。
「私からも聞きたい。なんのつもりですか、マスター?
性急に戦いを始めておいて、決着も付けず人質など恥知らずな……っ」
性急に戦いを始めておいて、決着も付けず人質など恥知らずな……っ」
同時、セイバーもまたそれを、不愉快そうな表情で見据えている。
彼女にとっても意図せぬ事態であるようだった。
彼女にとっても意図せぬ事態であるようだった。
「そちらから仕掛けておいて何故、我々を殺さない。何を考えている?」
重ねて星刻は問う。
数分前、先に干渉を仕掛けたのは星刻だった。
支給されていた遠見鏡によって、数キロメートル先に切嗣とセイバーの姿を確認した彼は干渉するかはさて置き、偵察を行うと決めた。
苦虫を噛み潰すような気持ちで、天子に安全な場所に隠れているように言い渡して。
数分前、先に干渉を仕掛けたのは星刻だった。
支給されていた遠見鏡によって、数キロメートル先に切嗣とセイバーの姿を確認した彼は干渉するかはさて置き、偵察を行うと決めた。
苦虫を噛み潰すような気持ちで、天子に安全な場所に隠れているように言い渡して。
「質問はこちらからする。まずは状況と立場を理解してほしい」
そんな星刻に今、返された答えに棘はなく、しかし同時に容赦もなかった。
「聞きたいことがある。君たちは、何者か」
答えねばこの少女を殺すと、魔術師の凍った眼差しが告げている。
数分前、先に交戦を仕掛けたのはこの男、切嗣だった。
セイバーの有する直観スキルと、少し遅れて切嗣本人の索敵技能が近づく星刻と天子を捉え、
次に気配から害意の薄さを悟ったセイバーの提案――様子見または交渉――というを言葉を完全に無視した切嗣の発砲。
これが開戦の狼煙となった。
数分前、先に交戦を仕掛けたのはこの男、切嗣だった。
セイバーの有する直観スキルと、少し遅れて切嗣本人の索敵技能が近づく星刻と天子を捉え、
次に気配から害意の薄さを悟ったセイバーの提案――様子見または交渉――というを言葉を完全に無視した切嗣の発砲。
これが開戦の狼煙となった。
「名と、立場を、知っていること、知らないこと、全て聞かせてほしい」
戦闘の結果、一瞬にて趨勢を決めたセイバー。
極めつけには切嗣の握るグロック17の銃口が、星刻を按じ近くから様子を窺っていた天子を捕えて、
チェックメイト、徹底された決着の形。
現在、星刻の目前には絶望的状況がある。
極めつけには切嗣の握るグロック17の銃口が、星刻を按じ近くから様子を窺っていた天子を捕えて、
チェックメイト、徹底された決着の形。
現在、星刻の目前には絶望的状況がある。
「我々は……」
星刻にできることは、ありのままを語るのみだった。
勝敗は明瞭、結末は不動、全てこの問答にかかっていると言って過言ではない。
しかし語りつつも星刻の胸中では自責と激怒の念が膨らむ一方であった。
星刻を今も縫い付ける、騎士の剣、強かった。
話にならないほどに、度が抜けて強かった。
これほどの強さが己にあれば、きっと天子を守りきれよう。
不甲斐ない姿を晒さず、彼女を安心させてやれるだろうに、と。
勝敗は明瞭、結末は不動、全てこの問答にかかっていると言って過言ではない。
しかし語りつつも星刻の胸中では自責と激怒の念が膨らむ一方であった。
星刻を今も縫い付ける、騎士の剣、強かった。
話にならないほどに、度が抜けて強かった。
これほどの強さが己にあれば、きっと天子を守りきれよう。
不甲斐ない姿を晒さず、彼女を安心させてやれるだろうに、と。
「中華連邦、天子か……なるほど、知らない文化だな」
「キリツグもういい、勝負はついている。その子から銃を下してやってもいいだろう?
私がこうしている限り、この男は何もできない」
私がこうしている限り、この男は何もできない」
だがしかし同時に、星刻にはもう一つ気づくことがあった。
「おそらくその方が、交渉もやりやすくなる筈だ。
いまだに彼らを殺さないということは、あなたにもそういう考えがあると――」
いまだに彼らを殺さないということは、あなたにもそういう考えがあると――」
「では、もう一つ聞こう、星刻」
この男、出会ってより一度も、従者の声に応えていない。
顔を見てすらいないのだ。
その上で星刻を制する為にはきちんと利用した手際。
まるで空気と接するような扱い。協調と呼べるものを欠片も感じられなかった。
顔を見てすらいないのだ。
その上で星刻を制する為にはきちんと利用した手際。
まるで空気と接するような扱い。協調と呼べるものを欠片も感じられなかった。
「やはり応えてくれないのか……」
「星刻、君たちの目的はなにか。僕の目的と合致するのか。それ次第で、次を決めよう」
無理なのかと、少女もまた諦めかけていることを、星刻は悟った、
これほどの強さを誇る従者を持ちながら、いったい何が不満なのか。
それは甚だ疑問だったが、今はかかずらっていられなかった。
これほどの強さを誇る従者を持ちながら、いったい何が不満なのか。
それは甚だ疑問だったが、今はかかずらっていられなかった。
男の問いと、今から返す答えに、星刻の命、すなわち天子の命が掛っている。
故に彼もまた黄金の騎士を素通りして、男へと口を開いた。
故に彼もまた黄金の騎士を素通りして、男へと口を開いた。
「私の願いは……天子様の安寧。ひいてはこの世の安寧だ。
飢えて死ぬ民の無きように、不当な戦火で消える命の無いように」
飢えて死ぬ民の無きように、不当な戦火で消える命の無いように」
それは、偽らざる本心だった。
「その未来のためならば、全てを捨てる覚悟、手放す意志があるか」
愚問、成す為ならば。
「他の一切を犠牲にしようと厭わない」
男からも視線を逸らし、星刻はあぜ道に蹲った少女、守るべき天子の姿を見る。
「……しんくー」
赤の目が、見返していた。
銃口を突きつけられ、命の危機に瀕しつつも、我が身を案じてくれる。
信じてくれている。彼女を守るためならば、いいとも、何を捨てようと構わない。
どんな非道に手を染めようが突き進む。
喩え己が破滅しようともその先に、かなう願いがあるのなら。
この身、果てる前に。
銃口を突きつけられ、命の危機に瀕しつつも、我が身を案じてくれる。
信じてくれている。彼女を守るためならば、いいとも、何を捨てようと構わない。
どんな非道に手を染めようが突き進む。
喩え己が破滅しようともその先に、かなう願いがあるのなら。
この身、果てる前に。
「何でもしよう」
彼女の願いを叶えると、誓ったのだから。
「そうか、ならば僕と君らは、協力できるだろう」
答えを受けた男は、頷いて、
「お互いのために、―――――と、いかないか?」
「……なんだと?」
「……なんだと?」
覚悟を決めた星刻をしても、驚愕を禁じえぬ提案を述べた。
それは突拍子も無く、こんな状況でなければ到底受け入れられないことであるが。
それは突拍子も無く、こんな状況でなければ到底受け入れられないことであるが。
「そんな事が、可能なのか?」
「見ての通りだ、僕は僕の従者とはやっていけない。ならばすべきことは限られる」
「キリ……ツグ……」
「見ての通りだ、僕は僕の従者とはやっていけない。ならばすべきことは限られる」
「キリ……ツグ……」
しかし驚愕とそして落胆は、おそらく黄金の従者にとってすれば、星刻の比ではない域にあったことだろう。
が、依然無視し、魔術師はその右の手の甲を、星刻に突きつけた。
そこには赤い刺青のような、複雑な十字の模様があった。
が、依然無視し、魔術師はその右の手の甲を、星刻に突きつけた。
そこには赤い刺青のような、複雑な十字の模様があった。
「これは令呪という。僕のサーヴァント、従者に対し、絶対の命令を下せる印だ。
使えば、可能だろう」
使えば、可能だろう」
皆まで言わずとも、意図は知れた。
「この提案、受け入れるか、否か、答えを聞こう」
変則的であって、同時に合理的、だが切嗣以外の誰にとっても屈辱となる策だった。
しかし元より選択肢もなく、またこれは紛れもなく星刻が望んだことでもあって。
しかし元より選択肢もなく、またこれは紛れもなく星刻が望んだことでもあって。
「…………ッ」
苦情に歪みきった顔で今度こそ、星刻は結論を告げる。
「――わかった。好きにしろ」
そして、答えを受けて、魔術師は頷き。
この時初めて、己の従者の姿を、見据えていた。
この時初めて、己の従者の姿を、見据えていた。
◆
儀式のように、それは執行された。
「――令呪をもって我が傀儡に命ず」
セイバーに向き直った衛宮切嗣の右手の甲、令呪の内、一画が紅の光を放つ。
「待て、キリツグ、私は……っ。本当に……無理なのか、私達は……!」
その時まで、ついぞこの主従は言葉を交わさなかった。
一切の問答を許さず、過たず下される指令、それは絶対である。
間隙、己は如何にするべきなのか、最後までセイバーは決めかねて。
一切の問答を許さず、過たず下される指令、それは絶対である。
間隙、己は如何にするべきなのか、最後までセイバーは決めかねて。
「――セイバー、これよりお前は彼女の、天子の騎士(けん)となれ」
「…………ッ」
告げられた。
それはあまりにも簡単で、単純な、別れ言葉だった。
◇
「これで……?」
「ああ、令呪の一画によってセイバーのサーヴァントは、彼女の従者に等しき存在と化した」
「ああ、令呪の一画によってセイバーのサーヴァントは、彼女の従者に等しき存在と化した」
そこまで言って漸く、切嗣は天子の頭部から銃口を下した。
瞬間、つい先ほどまで彼の腕のあった場所を、透明の剣が切り裂く。
一足でセイバーは天子の元に参じ、切嗣へとその刃を向けていた。
腕を切り落とさなかったのは切嗣の迅速な判断ともう一つ、渾身の力で耐えたセイバーの抵抗である。
それほどに、今の彼女は制約に縛られてる。
瞬間、つい先ほどまで彼の腕のあった場所を、透明の剣が切り裂く。
一足でセイバーは天子の元に参じ、切嗣へとその刃を向けていた。
腕を切り落とさなかったのは切嗣の迅速な判断ともう一つ、渾身の力で耐えたセイバーの抵抗である。
それほどに、今の彼女は制約に縛られてる。
「この通りだ。もはや主の僕にすら、セイバーは矛を突き出すだろう。
天子を傷つけようとするならば」
天子を傷つけようとするならば」
見せつけられ、星刻は理解する。
すなわち従と従の交換。やはり、この男は本気だったのだ。
すなわち従と従の交換。やはり、この男は本気だったのだ。
一人の男は目的を達する為に、連携可能な従者を求めていた。
一人の姫にはその命を維持する為に、絶対無敵の守護者が必要だった。
利害が、ここに一致する。
一人の姫にはその命を維持する為に、絶対無敵の守護者が必要だった。
利害が、ここに一致する。
「天子様には黄金の守護者を」
「引き換えに、僕にはいかなる手段も選ばぬ兵を」
「引き換えに、僕にはいかなる手段も選ばぬ兵を」
それぞれに与えられた。
加えて、これより星刻は天子をセイバーに預けることで、自身をこの状況改善のために動かすことができる。
切嗣は馬の合わない従者に独自行動を強いつつ、星刻を使い、あるいは天子を通じて外部から、ある程度は有効に扱うことが見込める。
加えて、これより星刻は天子をセイバーに預けることで、自身をこの状況改善のために動かすことができる。
切嗣は馬の合わない従者に独自行動を強いつつ、星刻を使い、あるいは天子を通じて外部から、ある程度は有効に扱うことが見込める。
「ならば私も、……っ、協力しよう」
「ああ、そうでなくては困る」
「ああ、そうでなくては困る」
対等な交換条件、しかしそれは、否だった。
「僕も、令呪を二画も消費したくない」
取り消せない令呪の束縛も、更なる令呪であれば上書き可能。
いくら主従の関係がより歪なものに変わったからといえども、
つまりこの状況、星刻は天子を守護されているようで同時に、人質に取られたに等しいのだ。
いくら主従の関係がより歪なものに変わったからといえども、
つまりこの状況、星刻は天子を守護されているようで同時に、人質に取られたに等しいのだ。
「……外道が」
星刻も理解はしていた、しかしセイバーと切嗣の二人を見て、やはりこのままではいけないと確信したからこそ、こうした。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
諺にある通り、虎穴に姫を押し込む無礼は許されぬと知って言えど、それで守れるならば、先に進めるならば厭はない。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
諺にある通り、虎穴に姫を押し込む無礼は許されぬと知って言えど、それで守れるならば、先に進めるならば厭はない。
「外道、か。否定はしない。だが君もそうすることを選んだのだろう?」
その通り。
こちらも否定はしない。
こちらも否定はしない。
「重畳だ。ならば早く行こうか。
このような下種の行いに、我が天子を付き合わせるのは最小限に留めたいからな」
このような下種の行いに、我が天子を付き合わせるのは最小限に留めたいからな」
大切な者に、血は見せたくない。
外道は、外道同士。
清廉なる者は、永久に綺麗にあってほしい。
だから相応しいものと、共に行くべきなのだと、星刻もまた同意する故に。
外道は、外道同士。
清廉なる者は、永久に綺麗にあってほしい。
だから相応しいものと、共に行くべきなのだと、星刻もまた同意する故に。
彼はこの道を、肯定した。
◆
「では暫しの別れになります、天子様」
お互いを心配し、同時に信頼する瞳と言葉。
「星刻、どうか……」
最後まで、目前の主従は通じ合っていた。
「どうか死なないで」
「当然です。必ず私は、天子様の元に戻ってきます」
「当然です。必ず私は、天子様の元に戻ってきます」
暗い夜の、月明かりに照らされたあぜ道で、
主と従者は再見の誓いを交わしていた。
主と従者は再見の誓いを交わしていた。
「それなら……約束」
俯いた少女が星刻へと、すっと小指を差し出した。
「もう一度、ここで、わたしとしてほしい」
「……はい」
「……はい」
男も微笑んで、応じる。
絡められた、小指と小指。
絡められた、小指と小指。
「永続調和の……」
「……契りを」
「……契りを」
そうして二人は再び誓い合った。
いずれまた出会うこと、生きて願いを叶えること。
永遠かもしれない別れを、暫く、惜しんで。
いずれまた出会うこと、生きて願いを叶えること。
永遠かもしれない別れを、暫く、惜しんで。
やがて指は、解かれた。
【B-5/野外あぜ道/1日目-深夜】
【主:衛宮切嗣@Fate/Zero】
[主従]:セイバー
[状態]:健康、令呪(2画)
[装備]:背負い袋(基本支給品)グロック17、タバコ、不明支給品x1
[方針/目的]
基本方針:詳細不明。ひとまず従者(セイバー)とは別行動。
1:星刻と行動。
[主従]:セイバー
[状態]:健康、令呪(2画)
[装備]:背負い袋(基本支給品)グロック17、タバコ、不明支給品x1
[方針/目的]
基本方針:詳細不明。ひとまず従者(セイバー)とは別行動。
1:星刻と行動。
【従:黎星刻@コードギアス反逆のルルーシュ】
[主従]:天子(蒋麗華)
[状態]:健康
[装備]:輪刀 覇幻@戦国BASARA、双眼鏡
[方針/行動]
基本方針:天子を守るために動く。
1:ひとまず切嗣と行動。
[主従]:天子(蒋麗華)
[状態]:健康
[装備]:輪刀 覇幻@戦国BASARA、双眼鏡
[方針/行動]
基本方針:天子を守るために動く。
1:ひとまず切嗣と行動。
【主:天子(蒋麗華)@コードギアス反逆のルルーシュ】
[主従]:黎星刻
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)不明支給品x2
[方針/目的]
基本方針:星刻が心配。
1:セイバーと行動(?)
[主従]:黎星刻
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)不明支給品x2
[方針/目的]
基本方針:星刻が心配。
1:セイバーと行動(?)
【従:セイバー@Fate/Zero】
[主従]:衛宮切嗣
[状態]:令呪による強制『天子の騎士(けん)となれ』
[装備]:何らかの刀剣(風王結界により不可視、詳細不明)
[方針/行動]
基本方針:考慮中。ひとまず主(衛宮切嗣)とは別行動。
1:天子の守護。
[主従]:衛宮切嗣
[状態]:令呪による強制『天子の騎士(けん)となれ』
[装備]:何らかの刀剣(風王結界により不可視、詳細不明)
[方針/行動]
基本方針:考慮中。ひとまず主(衛宮切嗣)とは別行動。
1:天子の守護。
【輪刀 覇幻@戦国BASARA】
毛利元就の扱う、均整のとれた質実剛健な輪刀。
毛利元就の扱う、均整のとれた質実剛健な輪刀。
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