姫ふたり ◆7RGbmc1fRg
本来のマスターと別れ、天子の守護を命じられた騎士が取った選択は帰陣だった。
傭兵たる主と護者たる従。姫たる主と王たる従。それぞれが主従を入れ替えた野外のあぜ道より一路元いたホテルへと舞い戻る。
現在はそのホテルの一室にて天子は待機し、セイバーはその側に着いている。
傭兵たる主と護者たる従。姫たる主と王たる従。それぞれが主従を入れ替えた野外のあぜ道より一路元いたホテルへと舞い戻る。
現在はそのホテルの一室にて天子は待機し、セイバーはその側に着いている。
本来ならば弱者を救うため各所を巡り、殺し合いに乗った不埒な輩を討つべきなのであろう。
だが現在セイバーに課せられた令呪の束縛は『天子の騎士(けん)となれ』ということのみ。
それは天子の忠実な配下となり、命に代えても彼女を護れという命令に他ならない。
これを命題に置くならば、魔術や武術の心得などなく、戦力的にはかつて自分と行動を共にしたアイリスフィール以下の天子をそう連れまわすわけにはいかなかった。
だが現在セイバーに課せられた令呪の束縛は『天子の騎士(けん)となれ』ということのみ。
それは天子の忠実な配下となり、命に代えても彼女を護れという命令に他ならない。
これを命題に置くならば、魔術や武術の心得などなく、戦力的にはかつて自分と行動を共にしたアイリスフィール以下の天子をそう連れまわすわけにはいかなかった。
「……護者との別れ、さぞかし辛いものだと御察しします、天子様」
「うん……でも約束したから。星刻は必ず私の元に戻ってくるって」
「うん……でも約束したから。星刻は必ず私の元に戻ってくるって」
当初は長年連れ添った護者と離れ離れになったせいか、寂しさと怯えが入り混じっていた天子もセイバーが膝を着き、忠節を示すといくらか心を開いてくれた。
天子───王の上に立ち、血に塗れることを許されない、ただ在るだけで民の心の拠り所となる存在。
王であるセイバーよりも、天意の代行者と言える天子の階位は上の存在にある。騎士としてだけでなく、王としても礼節を払うべき相手だ。
そのような相手を護るのは騎士の本懐と言えるし、アイリスフィールと同じく姫の属性を持つ天子とセイバーの相性は良好と言える。
天子───王の上に立ち、血に塗れることを許されない、ただ在るだけで民の心の拠り所となる存在。
王であるセイバーよりも、天意の代行者と言える天子の階位は上の存在にある。騎士としてだけでなく、王としても礼節を払うべき相手だ。
そのような相手を護るのは騎士の本懐と言えるし、アイリスフィールと同じく姫の属性を持つ天子とセイバーの相性は良好と言える。
状況は奇しくも以前のものと酷似していた。
キリツグはサーヴァントと離れ、別の部下を連れ単独行。
サーヴァントであるはずのセイバーは、令呪を持たない偽のマスターの守護に着く。
キリツグはサーヴァントと離れ、別の部下を連れ単独行。
サーヴァントであるはずのセイバーは、令呪を持たない偽のマスターの守護に着く。
キリツグの言う、最優のサーヴァントを最優のままに使い切る方法とやらそのままだ。
恐らく、この判断は正解なのだろう。この異常の極みと言える局面でもキリツグはその考えを変えることはなかった。
主と従者の連携が肝と言えるこの戦いで、互いの意思疎通すらなしに戦えるとはセイバー自身も思ってはいない。
──だから期待してしまっていた。キリツグがこれまでの態度を改め、自分に接してくれるのではないかと。
恐らく、この判断は正解なのだろう。この異常の極みと言える局面でもキリツグはその考えを変えることはなかった。
主と従者の連携が肝と言えるこの戦いで、互いの意思疎通すらなしに戦えるとはセイバー自身も思ってはいない。
──だから期待してしまっていた。キリツグがこれまでの態度を改め、自分に接してくれるのではないかと。
「ねぇ、セイバー。ひとつ聞いてもいい?」
「ええ、構いませんよ。今の私は貴女の騎士(けん)なのです。なんなりと仰ってください、天子様」
「ええ、構いませんよ。今の私は貴女の騎士(けん)なのです。なんなりと仰ってください、天子様」
そして対極的に、主従として最高峰の信頼を寄せ合っている天子と星刻の姿。
……羨ましいと思った。あのような主人を得られた星刻を、あのような配下を従えられる天子を。
互いに信頼を置き、相手への嫌疑など最初からないものを当然とする美しき主従の絆への羨望。
王であったときも、英霊の座へと至った今でも、セイバーが得ることの出来なかったものをこのか弱い少女は得ている。
……羨ましいと思った。あのような主人を得られた星刻を、あのような配下を従えられる天子を。
互いに信頼を置き、相手への嫌疑など最初からないものを当然とする美しき主従の絆への羨望。
王であったときも、英霊の座へと至った今でも、セイバーが得ることの出来なかったものをこのか弱い少女は得ている。
「セイバーは、キリツグのことが嫌いなの?」
天子から発せられた問いにセイバーは声を詰まらせる。
騎士道とは相反するキリツグの戦法、自分をないものとして扱うキリツグの態度。
世界の救済という同じ目的を持つにも関わらず、そのための手段が違うだけでここまですれ違ってしまう。
騎士道とは相反するキリツグの戦法、自分をないものとして扱うキリツグの態度。
世界の救済という同じ目的を持つにも関わらず、そのための手段が違うだけでここまですれ違ってしまう。
「──はい。少なくとも、私とは相容れない種の人間です」
「でも本当は、セイバーはキリツグと仲良くしたい?」
「でも本当は、セイバーはキリツグと仲良くしたい?」
天子の言葉に再びセイバーは困惑の色を浮かべる。
「……キリツグは、私にはなにも話してはくれない。私を嫌う理由も、なにもかも……。
私がかける言葉も全て聞き流しているのです。どうしようもないでしょう……これでは……」
「……いじわるなのね、キリツグは」
私がかける言葉も全て聞き流しているのです。どうしようもないでしょう……これでは……」
「……いじわるなのね、キリツグは」
英雄だから、女だてらに王として戦っていたから。そんな自分だけでなく、それを許容した周囲も許せなかった。
……全てアイリスフィールから伝え聞いた話だ。その真意を、私はキリツグから直接聞くことすらできない。
いつかは、またいつかはと日を重ねても埋まらない決定的な溝。その溝を埋めようとしても、キリツグはそれを拒絶する。
セイバーという従者と分かり合おうという努力すら放棄している。
そして今回の主従入れ替え。
……全てアイリスフィールから伝え聞いた話だ。その真意を、私はキリツグから直接聞くことすらできない。
いつかは、またいつかはと日を重ねても埋まらない決定的な溝。その溝を埋めようとしても、キリツグはそれを拒絶する。
セイバーという従者と分かり合おうという努力すら放棄している。
そして今回の主従入れ替え。
……決定的だった。もう私とキリツグは、お互いを分かり合うことなど出来ない。
それが悲しかった。天子と星刻の契りを見せられたあとだからこそ辛かった。
それが悲しかった。天子と星刻の契りを見せられたあとだからこそ辛かった。
ズウゥン──
その時僅かな揺れと、なにかが崩落したかのような音が聞こえた。
すぐ様窓から身を乗り出しセイバーは外を確認。
音源の方角は南西。距離はそこまで遠いわけではない。
夜間であることや、千里眼スキルのないことを差し引いてもその変化はすぐに認められた。
橋が破壊されている──!
すぐ様窓から身を乗り出しセイバーは外を確認。
音源の方角は南西。距離はそこまで遠いわけではない。
夜間であることや、千里眼スキルのないことを差し引いてもその変化はすぐに認められた。
橋が破壊されている──!
あの場にて戦闘が起こったと見て間違いないだろう。
複数のサーヴァントが呼び出されていることからも、他の参加者も一流の手足れが揃っているのは確実だ。
ならば戦闘の余波で石橋を破壊してみせる者がいてもなんらおかしくはない。
すぐにでもあの場に向かわなければならない。もし天子のような守るべき者たちがいるのなら救わなければいけない。
複数のサーヴァントが呼び出されていることからも、他の参加者も一流の手足れが揃っているのは確実だ。
ならば戦闘の余波で石橋を破壊してみせる者がいてもなんらおかしくはない。
すぐにでもあの場に向かわなければならない。もし天子のような守るべき者たちがいるのなら救わなければいけない。
(だが──今は天子様がいる!)
この暗闇のなか、少女に一人きりで過ごせなどあまりに惨過ぎる。
だが連れて行くこともまた危険が伴う。天子を守護することが最優先ならば戦闘に介入するなど最も避けるべきことだ。
静観するか? しかし騎士としての義務が、王としての誇りがそれを悪手と断ずる。
意思は身体を動かし、あの場へと赴けと急かす。だが後ろには守るべき天上の御子。
取れる手は三手。守護対象を置き出陣、安全策を取り静観、守護対象と共に出陣。
だが連れて行くこともまた危険が伴う。天子を守護することが最優先ならば戦闘に介入するなど最も避けるべきことだ。
静観するか? しかし騎士としての義務が、王としての誇りがそれを悪手と断ずる。
意思は身体を動かし、あの場へと赴けと急かす。だが後ろには守るべき天上の御子。
取れる手は三手。守護対象を置き出陣、安全策を取り静観、守護対象と共に出陣。
……どうする?
☆ ☆ ☆
八意永琳が主の髪を梳き乾かし、身なりを整えるのを手伝った後に報告したことは2つほどであった。
そう遠くない場所での爆発音と橋の崩落。方角は違うがどちらも戦闘が発生したものと見たほうがよい。
殺し合いに招かれる以上、不死であるはずの自分たち蓬莱人が死ぬこともあり得るのは前提に置くべきだ。
八雲紫に勝ち、第二次月面戦争時の借りを返すことを最終目標に定めた永琳であるが、姫である輝夜の守護はそれを上回る。
八雲紫に勝利することとはつまり、1.輝夜を守りぬき、2.八雲紫の企みを粉砕し、3.この《異変》を解決することを差すのだ。
そう遠くない場所での爆発音と橋の崩落。方角は違うがどちらも戦闘が発生したものと見たほうがよい。
殺し合いに招かれる以上、不死であるはずの自分たち蓬莱人が死ぬこともあり得るのは前提に置くべきだ。
八雲紫に勝ち、第二次月面戦争時の借りを返すことを最終目標に定めた永琳であるが、姫である輝夜の守護はそれを上回る。
八雲紫に勝利することとはつまり、1.輝夜を守りぬき、2.八雲紫の企みを粉砕し、3.この《異変》を解決することを差すのだ。
敵に捕捉される危険がある以上、すぐさまこの場から離れることを永琳は献策する。
撤退ルートはこの温泉から最も近い西側の橋よりの脱出。
崩落した北側の橋からの撤退はならず、南へと繋がる橋は距離がある。
さらに南側は橋がひとつきりのため、橋を落とされたり待ち伏せをされたら中央への移動手段が封じられるという要因が存在した。
撤退ルートはこの温泉から最も近い西側の橋よりの脱出。
崩落した北側の橋からの撤退はならず、南へと繋がる橋は距離がある。
さらに南側は橋がひとつきりのため、橋を落とされたり待ち伏せをされたら中央への移動手段が封じられるという要因が存在した。
だがその策も姫の言葉ひとつで切って捨てられる。
「言ったでしょ。動かなきゃ物語は始まらないって。僅かの危険も恐れては異変解決なんてできやしないわ」
主にこう言われてしまっては永琳も従うしかない。
だが危険確実の爆発音と、まだ事故の可能性もあり得る橋の崩落ならば後者であると永琳は強く主に薦める。
これが永琳にできる最大限の譲歩だ。輝夜の保護も重要だが、そればかりでは八雲紫を打倒はできない。
折衷案とも言える半端な策ではあるが、危険を避けつつも異変解決の糸口を掴む初めの一歩だ。
だが危険確実の爆発音と、まだ事故の可能性もあり得る橋の崩落ならば後者であると永琳は強く主に薦める。
これが永琳にできる最大限の譲歩だ。輝夜の保護も重要だが、そればかりでは八雲紫を打倒はできない。
折衷案とも言える半端な策ではあるが、危険を避けつつも異変解決の糸口を掴む初めの一歩だ。
そして輝夜と共に南へと歩を進め、『さぁここでなにが起こったか調べましょう』と言うところで見止めたふたつの人影。
橋の残骸を挟み対峙するは当代風の黒い衣装に身を包んだ金髪碧眼の美丈夫と、彼に守られるよう背後に身を隠した銀髪の小さな女の子。
橋の残骸を挟み対峙するは当代風の黒い衣装に身を包んだ金髪碧眼の美丈夫と、彼に守られるよう背後に身を隠した銀髪の小さな女の子。
どこかの姫と、そのボディガードってところかしら?
あちらも姫の護衛を優先しているのか、今のところ睨み合うのみで仕掛けることはない。
あちらも姫の護衛を優先しているのか、今のところ睨み合うのみで仕掛けることはない。
「この場で起こったことを知っているのなら教えてほしい! こちらに交戦の意思はない!」
黒服の男が声を張り上げるが信用できるか否か。現在は判断材料が少な過ぎる。
──さて、どうしましょう……この選択如何によっては益とも不益とも転ぶ。ここはひとまず慎重に……
──さて、どうしましょう……この選択如何によっては益とも不益とも転ぶ。ここはひとまず慎重に……
「それはこちらも同じことよ!今を生きている人間として、私たちもこの《異変》を解決したいの! あなた達も知っていることがあるなら教えて!」
……輝夜、お願いだから私の話を聞いてください。
☆ ☆ ☆
「えぇ……と、セイバーさんでよかったかしら? 主である蓬莱山輝夜に代わり応対をさせてもらうわ、八意永琳よ」
「相違ありません、エーリン。天子様も不安がられていた様子でしたので……。そちらの姫には、感謝しています」
「相違ありません、エーリン。天子様も不安がられていた様子でしたので……。そちらの姫には、感謝しています」
場所を変え、情報交換の場を設けようというセイバーの提案を受けた輝夜はそれを了承。
セイバーたちが元居たホテルの一室へと移動し、輝夜は小難しい話は永琳に任せると告げ天子と一緒に別室へ。主に代わって交渉の席に付いたのは従者二人。
セイバーたちが元居たホテルの一室へと移動し、輝夜は小難しい話は永琳に任せると告げ天子と一緒に別室へ。主に代わって交渉の席に付いたのは従者二人。
元より雑事は従者に任せる輝夜と、まだまだ幼い天子ならば妥当な判断と言える。
ガラスのテーブルを挟み、革張りの高級そうな椅子に腰を下ろすとあらまぁ……──近くで見るとますますいい男。
ガラスのテーブルを挟み、革張りの高級そうな椅子に腰を下ろすとあらまぁ……──近くで見るとますますいい男。
「まずはお互い如何なる者なのか明かしておきたいと思うのだけど、そちらの主は天子……つまり皇帝と解釈していいのかしら?」
「……はい。彼女こそが中華という一つの天下を治めるお方です。お二方は、何処の姫とその従者であられるか」
「その言葉には些か齟齬があるわ。正確に言えば輝夜は『元』姫。面倒事が重なって、あの子が幼い時からずっと竹林の奥で隠れ暮らしていたの。
外界とは隔絶している分、私たち《外の世界》の情報には疎くて──」
「……はい。彼女こそが中華という一つの天下を治めるお方です。お二方は、何処の姫とその従者であられるか」
「その言葉には些か齟齬があるわ。正確に言えば輝夜は『元』姫。面倒事が重なって、あの子が幼い時からずっと竹林の奥で隠れ暮らしていたの。
外界とは隔絶している分、私たち《外の世界》の情報には疎くて──」
……嘘は言っていない。意図的に一部の情報を伏せただけ。
もっとも外の世界出身であろうセイバーに、幻想郷や月人のことを話したとて気が触れているだけと思われるであろうが…。
もっとも外の世界出身であろうセイバーに、幻想郷や月人のことを話したとて気が触れているだけと思われるであろうが…。
「あの石橋の崩落については、なにか情報は?」
「……ごめんなさい。私もあなたたちと同じで、駆けつけたときには既にあの光景。 あれが故意の犯行か、事故かすらも知りえないことよ」
「……ごめんなさい。私もあなたたちと同じで、駆けつけたときには既にあの光景。 あれが故意の犯行か、事故かすらも知りえないことよ」
……これは嘘。既にこの件の犯人など目星が付いている。
瓦礫の隙間を埋めるようにバラ撒かれていた天狗の新聞。水流が完全に堰き止められた河。
わざわざこんなことをして得をするのは小さな流れ水も渡れない者だけ。
そう、吸血鬼・レミリア・スカーレットの仕業だ。
瓦礫の隙間を埋めるようにバラ撒かれていた天狗の新聞。水流が完全に堰き止められた河。
わざわざこんなことをして得をするのは小さな流れ水も渡れない者だけ。
そう、吸血鬼・レミリア・スカーレットの仕業だ。
大方向こう岸に渡ろうと、吸血鬼の膂力に任せて橋を破壊したのだろう。
「……そうですか、残念です。改めて問いますが、私達の共通する目的はこの《異変》の解決です」
「だけれどお互い主を守りながら、《異変》を解決しなくちゃならないってのが辛いところねぇ。現状戦えるのは貴方だけのようだし」
「だけれどお互い主を守りながら、《異変》を解決しなくちゃならないってのが辛いところねぇ。現状戦えるのは貴方だけのようだし」
戦いは男に任せる、というのも随分全時代的な話だがこの場限りはそれを許そう。
幻想郷に住む妖や一定の実力者では当然のスキルと言える飛行能力が軒並み封印されていることから、私や輝夜の能力、その他弾幕に関しても制限を受けていることは容易に推察できる。
恐らくは私に支給された現代兵器以下の威力にまで落とされているだろう。でなければ拳銃を支給する意味などなくなってしまうのだから。
幻想郷に住む妖や一定の実力者では当然のスキルと言える飛行能力が軒並み封印されていることから、私や輝夜の能力、その他弾幕に関しても制限を受けていることは容易に推察できる。
恐らくは私に支給された現代兵器以下の威力にまで落とされているだろう。でなければ拳銃を支給する意味などなくなってしまうのだから。
能力の制限、不死性の排除、弾幕の威力減退。いつもの半分の実力も出せるかどうかというところだ。
だが吸血鬼が橋を破壊したことから見ても、身体能力に関する制限はされていないのでは? というのが私の見解だ。
この条件であるならば荒事に慣れた男手の存在はありがたい。
幸いセイバーは紳士的であり、弱者の守護に己の意義を見出す性質を備えている。
さらに自分は医療に通じているとも伝えているので、セイバーは私達を守らざるえない。
だが吸血鬼が橋を破壊したことから見ても、身体能力に関する制限はされていないのでは? というのが私の見解だ。
この条件であるならば荒事に慣れた男手の存在はありがたい。
幸いセイバーは紳士的であり、弱者の守護に己の意義を見出す性質を備えている。
さらに自分は医療に通じているとも伝えているので、セイバーは私達を守らざるえない。
「戦えるのが貴方だけとなると困ったわね……。チームを分散できないわ」
「移動は危険を伴う。したがってそのような場に主を連れ出すわけにもいかない。 ですが《異変》を解決するためには他の協力者、情報、兵糧、武器などの調達は必須……」
「移動は危険を伴う。したがってそのような場に主を連れ出すわけにもいかない。 ですが《異変》を解決するためには他の協力者、情報、兵糧、武器などの調達は必須……」
もっと戦力が必要になる。八雲紫と戦うにも、殺し合いに乗った者たちと戦うにも。
それが八意永琳とセイバーの共通見解。現状戦力足りえるのがセイバーのみでは守りと攻めを同時に行うことができない。
騎士王とて率いる兵がいなければ一介の戦士に過ぎず、月の賢者とて動かせる駒がなければ献策のしようもない。
それが八意永琳とセイバーの共通見解。現状戦力足りえるのがセイバーのみでは守りと攻めを同時に行うことができない。
騎士王とて率いる兵がいなければ一介の戦士に過ぎず、月の賢者とて動かせる駒がなければ献策のしようもない。
手詰まりだ。
「──えーりぃん、まだ話終わらないの? 私たちもう待ちくたびれちゃったわ」
二人が長い思慮の時間に入り、会話もしばらく途絶えた頃しびれを切らした姫が天子を連れ従者たちの部屋へと押し入る。
永琳が部屋に備え付けられた時計を見ると、もう一時間以上経過していた。これ以上は時間の無駄になるかもしれない。
永琳が部屋に備え付けられた時計を見ると、もう一時間以上経過していた。これ以上は時間の無駄になるかもしれない。
「聞いて聞いてセイバー! 輝夜ね、月のお姫様だったんだって! 他にもたくさんお話してくれたよ?」
「なんと、月の姫とは……ふふっ、それには私も驚きました天子様。ならば天子様と同じく、私も礼を尽くさねばなりませんね」
「なんと、月の姫とは……ふふっ、それには私も驚きました天子様。ならば天子様と同じく、私も礼を尽くさねばなりませんね」
硬い表情の多かった天子が今ではほころんだ顔を見せている。
よほど輝夜との話が楽しかったのだろう。
よほど輝夜との話が楽しかったのだろう。
「で、話はまとまったわけ? 私たちはこれからどうするべきだと永琳は思った?」
「……ひとまずはここに留まるべきね。外は危険も多いですし、大人数で動けばそれだけ敵にも気取られる。
本音を言えば探索班、待機班とチームを分けたいところなのだけれど、戦力がまったく足りていないわ」
「ひとまず……ってそれいつまで待つつもりよ? 永琳、私がここでなにを為すと言ったか、覚えているでしょう? またずっと閉じ込められるなんてごめんよ」
「……ひとまずはここに留まるべきね。外は危険も多いですし、大人数で動けばそれだけ敵にも気取られる。
本音を言えば探索班、待機班とチームを分けたいところなのだけれど、戦力がまったく足りていないわ」
「ひとまず……ってそれいつまで待つつもりよ? 永琳、私がここでなにを為すと言ったか、覚えているでしょう? またずっと閉じ込められるなんてごめんよ」
《異変》を解決するため、幻想郷の一員として、為すべきと思ったことを為す。
その輝夜の意思についていくと永琳は言った。そして今、輝夜の興味は内ではなく未知なる外へと向いている。
篭っているだけでは何も得られない。行動を起こせば何か得られるものもある。
その輝夜の意思についていくと永琳は言った。そして今、輝夜の興味は内ではなく未知なる外へと向いている。
篭っているだけでは何も得られない。行動を起こせば何か得られるものもある。
「……わかりました、輝夜。どこまでもあなたの供をする。それが私の為すべきことですものね」
どれだけ永琳が策謀を巡らそうとも、輝夜の気まぐれな行動ひとつでそれは無用のものと化す。
それを嫌と思うことはない。月の姫は美しい御心のまま、自らのあるがままに自由に過ごせばよい。
従者の了解を得ると輝夜はくるりと向き直し、セイバーと相対する。
それを嫌と思うことはない。月の姫は美しい御心のまま、自らのあるがままに自由に過ごせばよい。
従者の了解を得ると輝夜はくるりと向き直し、セイバーと相対する。
「──ごめんなさいセイバー、私たちは行かねばなりません。一緒に行くか、それとも留まるか……。
無理強いはしないわ。あなたはあなたの主を守ることに、全力を傾けるべきですもの。
あと、それとねセイバー。これは私からのお願いなんだけど……」
無理強いはしないわ。あなたはあなたの主を守ることに、全力を傾けるべきですもの。
あと、それとねセイバー。これは私からのお願いなんだけど……」
セイバーだけに聞こえるよう、彼女の耳元で輝夜はそっと呟く。
(……麗華から大体の事情は聞いたわ。元の主と喧嘩して、別れたって──)
(別にそのことを咎めるつもりはないわ。……ただね、麗華も政略結婚させられそうになったり、結構苦労したらしいの)
(──あの子をちゃんと守ってあげて。それだけ、私からのお願い。)
(別にそのことを咎めるつもりはないわ。……ただね、麗華も政略結婚させられそうになったり、結構苦労したらしいの)
(──あの子をちゃんと守ってあげて。それだけ、私からのお願い。)
「……内緒話ですか、輝夜?」
「主は大事にしなさいって忠告しただけよ。はい、さっさと行くわよー。永琳荷物持って」
「主は大事にしなさいって忠告しただけよ。はい、さっさと行くわよー。永琳荷物持って」
輝夜の号令の元永琳が背負袋を持ち、部屋から出ていこうとする。
仮の主の小さな手がセイバーを掴む。一緒に行きたい。私たちもみんなと行こう?
その目から発せられる意思はセイバーとて汲み取っている。だが……
仮の主の小さな手がセイバーを掴む。一緒に行きたい。私たちもみんなと行こう?
その目から発せられる意思はセイバーとて汲み取っている。だが……
決断の時は迫る。
【C-5/ホテル/1日目-黎明】
【主:蓬莱山輝夜@東方儚月抄】
[主従]:八意永琳@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:《異変》を解決する。
1:動かなければ始まらない
[主従]:八意永琳@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:《異変》を解決する。
1:動かなければ始まらない
[備考]
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※天子からセイバー組の事情や、天子自身の話を聞きました。
その他二人で話したことの詳細は不明です。
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※天子からセイバー組の事情や、天子自身の話を聞きました。
その他二人で話したことの詳細は不明です。
【従:八意永琳@東方儚月抄】
[主従]:蓬莱山輝夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:ブリタニア軍制式拳銃@コードギアス(弾数x12)、ブリタニア軍制式拳銃のマガジン(専用弾12発入り)x2
ワルサーWA2000@Fate/Zero(弾数x6)、ワルサーWA2000のマガジン(300 Win Magnum弾6発入り)x4
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
[方針/行動]
基本方針:輝夜に付き従う。八雲紫に勝つ。
1:私は私の為すべきことをするだけよ
[主従]:蓬莱山輝夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:ブリタニア軍制式拳銃@コードギアス(弾数x12)、ブリタニア軍制式拳銃のマガジン(専用弾12発入り)x2
ワルサーWA2000@Fate/Zero(弾数x6)、ワルサーWA2000のマガジン(300 Win Magnum弾6発入り)x4
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
[方針/行動]
基本方針:輝夜に付き従う。八雲紫に勝つ。
1:私は私の為すべきことをするだけよ
[備考]
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※橋を破壊した犯人はレミリアだと思っています。
※「~程度の能力」や弾幕、不死性、飛行などの特殊能力は制限を受けている。ただし身体能力に関する制限はされていないと推理しています。
※セイバーを男だと思っています。
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※橋を破壊した犯人はレミリアだと思っています。
※「~程度の能力」や弾幕、不死性、飛行などの特殊能力は制限を受けている。ただし身体能力に関する制限はされていないと推理しています。
※セイバーを男だと思っています。
【主:天子(蒋麗華)@コードギアス反逆のルルーシュ】
[主従]:黎星刻
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)不明支給品x2
[方針/目的]
基本方針:星刻を信じる。
1:セイバーと行動
2:輝夜は友だち
[主従]:黎星刻
[状態]:健康
[装備]:背負い袋(基本支給品)不明支給品x2
[方針/目的]
基本方針:星刻を信じる。
1:セイバーと行動
2:輝夜は友だち
【従:セイバー@Fate/Zero】
[主従]:衛宮切嗣
[状態]:令呪による強制『天子の騎士(けん)となれ』
[装備]:何らかの刀剣(風王結界により不可視、詳細不明)
[方針/行動]
基本方針:天子の守護。
1:留まるべきか、否か──
[主従]:衛宮切嗣
[状態]:令呪による強制『天子の騎士(けん)となれ』
[装備]:何らかの刀剣(風王結界により不可視、詳細不明)
[方針/行動]
基本方針:天子の守護。
1:留まるべきか、否か──
[備考]
※輝夜が月の姫であるという事は、天子を楽しませるための空想話だと判断しています。
※輝夜が月の姫であるという事は、天子を楽しませるための空想話だと判断しています。
| 前:ある女の受難 | 投下順に読む | 次:フラワリングナイト |
| 前:Evilution | 時系列順に読む | 次:フラワリングナイト |
| 前:夜だから眠れない | 蓬莱山輝夜 | 次: |
| 八意永琳 | 次: | |
| 前:運命の星夜 | 天子(蒋麗華) | 次: |
| セイバー | 次: |