夜だから眠れない ◆Su10.RK3MU
【001】
「はぁ……、極楽、極楽♪」
ゆるゆると揺れる水面の上を蕩けるような声がすべり、渡る。
ほどよく温かい湯の中に浸かり、蓬莱山輝夜はひとり“命の洗濯”を堪能していた。
ほどよく温かい湯の中に浸かり、蓬莱山輝夜はひとり“命の洗濯”を堪能していた。
あの後、小高い山の中腹に位置する温泉はすぐに発見することができた。
輝夜だけならともかく永琳がいるのだから当然のことだろう。
温泉は小さな温泉宿でもあったので、先客がいては――と、建物の中に不審人物がいないかと調査し始めたのだが
輝夜は脱衣場とその先の温泉を見つけるとそれを永琳に任せることにし、ひとり湯の中へと身を滑らせた。
輝夜だけならともかく永琳がいるのだから当然のことだろう。
温泉は小さな温泉宿でもあったので、先客がいては――と、建物の中に不審人物がいないかと調査し始めたのだが
輝夜は脱衣場とその先の温泉を見つけるとそれを永琳に任せることにし、ひとり湯の中へと身を滑らせた。
大きな石を敷き詰めてつくられた湯船。そこに湛えられた透き通った湯は地上のものとは思えぬほどに清く心地いい。
湯気のヴェールと揺れる水面の歪みは気品を損なわぬよう輝夜の肌を隠し、彼女はその中で自由に四肢を伸ばす。
周りを囲む目隠しは言い訳程度で、湯船の中からは夜空とその中に浮かぶ満月がよく見えた。
湯気のヴェールと揺れる水面の歪みは気品を損なわぬよう輝夜の肌を隠し、彼女はその中で自由に四肢を伸ばす。
周りを囲む目隠しは言い訳程度で、湯船の中からは夜空とその中に浮かぶ満月がよく見えた。
「永琳も早くくればいいのにねぇ」
恍惚とした表情を浮かべ、熱い吐息とともに言葉を漏らす。
実際に温泉に入り、「温泉は命の洗濯」だとは全く言いえて妙だと輝夜は実感していた。
実際に温泉に入り、「温泉は命の洗濯」だとは全く言いえて妙だと輝夜は実感していた。
命とは月の民ならば元より永劫に損なわれることのないものだと理解されているが、地上のモノからだとそうではない。
地上のモノは、命とは時間をかけてくすみ、汚れ、古びて乾き、あるいは熟して果てるものだと思っている。
それは確かに地上においては間違いではない。
しかし、本来不変であるはずの命が古び果てるのは地上に《穢れ》というものが存在するからだ。
《穢れ》は、あるいは業などと言い換えてもよい。
地上の命は穢れているからこそ、寿命という終りを持ち、それ故に生存競争という醜さを宿命づけられているのだ。
永遠の命を持つ月の民からすれば、生きるために奪い、喰らい、それでも結局果てる地上のモノなどは実に醜く映る。
地上のモノは、命とは時間をかけてくすみ、汚れ、古びて乾き、あるいは熟して果てるものだと思っている。
それは確かに地上においては間違いではない。
しかし、本来不変であるはずの命が古び果てるのは地上に《穢れ》というものが存在するからだ。
《穢れ》は、あるいは業などと言い換えてもよい。
地上の命は穢れているからこそ、寿命という終りを持ち、それ故に生存競争という醜さを宿命づけられているのだ。
永遠の命を持つ月の民からすれば、生きるために奪い、喰らい、それでも結局果てる地上のモノなどは実に醜く映る。
月の姫君である輝夜も以前はそう考えていた。それもあまり古い話ではない。
だが数年前より地上のモノとして地上に住むようになってからその考えはみるみる内に変化していった。
それは地上のモノからすれば緩やかに見えたかもしれないが、数千数万年と生きる者からすれば劇的なものだった。
うつろいゆく世界には色々な価値と発見があった。
月の民の在り方を否定するわけではないが、これからずっと地上のモノでもよいと思うくらいの魅力があった。
だが数年前より地上のモノとして地上に住むようになってからその考えはみるみる内に変化していった。
それは地上のモノからすれば緩やかに見えたかもしれないが、数千数万年と生きる者からすれば劇的なものだった。
うつろいゆく世界には色々な価値と発見があった。
月の民の在り方を否定するわけではないが、これからずっと地上のモノでもよいと思うくらいの魅力があった。
そして、今体験しているこの温泉――命の洗濯である。
命に課せられた寿命は穢れによる。穢れはすなわち汚れと同義である。そして洗濯とは汚れを払うことを言う。
つまり、温泉に入るということはその言うとおりに命の洗濯なのだ。
湛えた湯により身を清め、命に纏わりついた穢れを払う。そうして命は新しく新生した状態へと還されることになる。
温泉に入った時に「極楽、極楽」と口にするのも当然のことだ。
なぜならば、温泉に入る時に穢れ(死)を纏い、温泉から出る時にはそれが払われている(新生している)のだとすれば、
温泉に浸かっている間とはこれすなわち死から転生の狭間――極楽にほかならないからである。
命に課せられた寿命は穢れによる。穢れはすなわち汚れと同義である。そして洗濯とは汚れを払うことを言う。
つまり、温泉に入るということはその言うとおりに命の洗濯なのだ。
湛えた湯により身を清め、命に纏わりついた穢れを払う。そうして命は新しく新生した状態へと還されることになる。
温泉に入った時に「極楽、極楽」と口にするのも当然のことだ。
なぜならば、温泉に入る時に穢れ(死)を纏い、温泉から出る時にはそれが払われている(新生している)のだとすれば、
温泉に浸かっている間とはこれすなわち死から転生の狭間――極楽にほかならないからである。
「はぁ、極楽極楽♪」
輝夜は地上におかれた擬似的な死と新生を体験し、その狭間の中にある極楽を堪能する。
一糸纏わぬ裸で。しかしそれも当然だろう。なぜならば、生まれてきた時に服を着ているものなどいはしないのだから。
一糸纏わぬ裸で。しかしそれも当然だろう。なぜならば、生まれてきた時に服を着ているものなどいはしないのだから。
【002】
八意永琳は温泉宿の中の見回りを終えると、一室に陣取り与えられた荷物の内容を検分していた。
温泉に入りたくないのかというと嘘になるが、ここは殺し合いの場でありいつどこから危険が見舞うとも限らない。
なので、温泉は輝夜一人に楽しませ、自分は殺し合いに備えて行動しようと考えたのだ。
無論、備えるのであれば二人がかりのほうがいいだろう。しかし永琳は輝夜の積極的な体験を邪魔したくないとも思った。
彼女は今、永く止まっていた歴史を動き始めさせ、自らが生きる意義を模索しているところだ。
このような無粋な殺し合いにそれを邪魔されたくない。なので永琳はそれを一人で請け負おうと決心した。
それだけの余裕がまだこの時はあったということでもある。
温泉に入りたくないのかというと嘘になるが、ここは殺し合いの場でありいつどこから危険が見舞うとも限らない。
なので、温泉は輝夜一人に楽しませ、自分は殺し合いに備えて行動しようと考えたのだ。
無論、備えるのであれば二人がかりのほうがいいだろう。しかし永琳は輝夜の積極的な体験を邪魔したくないとも思った。
彼女は今、永く止まっていた歴史を動き始めさせ、自らが生きる意義を模索しているところだ。
このような無粋な殺し合いにそれを邪魔されたくない。なので永琳はそれを一人で請け負おうと決心した。
それだけの余裕がまだこの時はあったということでもある。
「困ったわね。不思議なことばかり増えて」
永琳のいる部屋は畳敷きの和室だったが、その中央に置かれた卓袱台の上には分解された“何か”が整列していた。
それを永琳は組み立ててゆく。するとそれは逆回し再生のように形を取り戻し、一丁の拳銃となった。
幻想郷の外で言う現代的なデザインの銃だが、その外見からは特に不思議そうなところは見当たらない。
月の賢者である永琳が不思議だというのは、その銃が《コイルガン》だったからである。
それを永琳は組み立ててゆく。するとそれは逆回し再生のように形を取り戻し、一丁の拳銃となった。
幻想郷の外で言う現代的なデザインの銃だが、その外見からは特に不思議そうなところは見当たらない。
月の賢者である永琳が不思議だというのは、その銃が《コイルガン》だったからである。
「こんなものは地上人には作れなかったはずなのだけど」
コイルガンとは簡単に言うと中に磁石の入った銃で、磁力で弾丸を押し出して発射する銃のことだ。
これそのものは現代の地上人でも作ることはできる。その原理はとても単純で決して難しいものではない。
ただし――今、永琳の手の中にあるような“実用的”なコイルガンは作れないはずだった。
これそのものは現代の地上人でも作ることはできる。その原理はとても単純で決して難しいものではない。
ただし――今、永琳の手の中にあるような“実用的”なコイルガンは作れないはずだった。
コイルガンの発射プロセスは、バレルの端に直列させた複数のコイルに順に電流を流すことで磁力を連続発生させ、
磁力線に絡められた弾丸をまるでバケツリレーのように運んで加速させ発射させるというものだ。
しかし、これにはどうしても機構上の限界値というものがあり、地上人に火薬式の銃に及ぶようなものは作れないはずだった。
なのに今手元にあるこの銃は永琳の見立てだと、通常はあり得ない火薬式の銃に匹敵する威力を持っている。
威力が同等ならば発射の際の音や反動が少ないこちらのほうが何倍も上等な銃だと言えるだろう。
磁力線に絡められた弾丸をまるでバケツリレーのように運んで加速させ発射させるというものだ。
しかし、これにはどうしても機構上の限界値というものがあり、地上人に火薬式の銃に及ぶようなものは作れないはずだった。
なのに今手元にあるこの銃は永琳の見立てだと、通常はあり得ない火薬式の銃に匹敵する威力を持っている。
威力が同等ならば発射の際の音や反動が少ないこちらのほうが何倍も上等な銃だと言えるだろう。
なぜ実現できたのか? その秘密は銃の中に組み込まれたひとつの石にあった。
地上人が“まだ発見してないはず”の常温超伝導を可能とする石である。これがあればあらゆる常識は覆る。
この銃がどこから現れたのか。それは月の賢者たる永琳からしてもとても不可思議なことだった。
地上人が“まだ発見してないはず”の常温超伝導を可能とする石である。これがあればあらゆる常識は覆る。
この銃がどこから現れたのか。それは月の賢者たる永琳からしてもとても不可思議なことだった。
しかし、不可思議ではあるが、その不可思議の答えの先は見当がついている。あのスキマ妖怪の仕業だ。
あのあらゆるものの境界を操ることでどこにでも行ける妖怪は、ひょっとしたら“別の世界”にすら行けてしまうのかもしれない。
それは最早、一妖怪の領分を遥かに越える所業であったが、しかしそんな可能性を永琳は否定できなかった。
永琳はあの得体の知れないスキマ妖怪に、一度敗北を喫しているのである。
あのあらゆるものの境界を操ることでどこにでも行ける妖怪は、ひょっとしたら“別の世界”にすら行けてしまうのかもしれない。
それは最早、一妖怪の領分を遥かに越える所業であったが、しかしそんな可能性を永琳は否定できなかった。
永琳はあの得体の知れないスキマ妖怪に、一度敗北を喫しているのである。
第二次月面戦争――戦争などと大仰ではあるが、実際に起きたことはそうたいしたことはない。
その中で永琳はなんら危機を覚えることはなかったし、物事は万事彼女の思うとおりに進行し、想定したとおりに決着した。
はずだった――が、しかし最後の最後で永琳は意表を突かれた。
どうやってか、八雲紫は永琳が月に置き残していったはずの超超古酒を持ってきて飲ませてみせたのだ。
その中で永琳はなんら危機を覚えることはなかったし、物事は万事彼女の思うとおりに進行し、想定したとおりに決着した。
はずだった――が、しかし最後の最後で永琳は意表を突かれた。
どうやってか、八雲紫は永琳が月に置き残していったはずの超超古酒を持ってきて飲ませてみせたのだ。
たかが酒一本である。それ以外の全ては永琳が勝利を収めた。しかし、上回られたということには変わらない。
あのスキマ妖怪は月の賢者の頭脳を酒一本を盗む分上回ったのである。
それはつまり月の賢者の想定を正しく読み取り、その一歩先を行ったことになる。
酒一本は、頭脳としては一回り上であることの証明であった。
これに畏怖を感じない永琳ではない。
そして、故に永琳はあれから、八雲紫が自分の想定していないなにかを持っているのではという疑念を払拭できないでいるのだ。
あのスキマ妖怪は月の賢者の頭脳を酒一本を盗む分上回ったのである。
それはつまり月の賢者の想定を正しく読み取り、その一歩先を行ったことになる。
酒一本は、頭脳としては一回り上であることの証明であった。
これに畏怖を感じない永琳ではない。
そして、故に永琳はあれから、八雲紫が自分の想定していないなにかを持っているのではという疑念を払拭できないでいるのだ。
永琳は巧智があるからこそ小さな可能性を際限なく追ってしまう。
そして限りない可能性にその思考の糸を伸ばし続ければ、それは隙を作り容易く八雲紫の思惑に絡められるだろう。
そして限りない可能性にその思考の糸を伸ばし続ければ、それは隙を作り容易く八雲紫の思惑に絡められるだろう。
「やれやれ困ったわ」
あまり困ったという風ではない表情で永琳は呟く。
今現在、永琳に与えられた情報は数多いが、しかしそれはどれも思考の堂々巡りを誘うものばかりだ。
例えば見せしめとなったあの幻想郷の住人ではない神父二人組。
彼らには悪いことをしたものだと永琳は申し訳なく思う。
なぜならば、あの場所にて『この殺し合いをなかったことにしてみろ』と提案したのは他でもない永琳自身だからである。
あの気性ならば遠からず同じ目にあっていただろうと想像できるが、あの時点で犠牲を出したのは永琳の責任に他ならない。
今現在、永琳に与えられた情報は数多いが、しかしそれはどれも思考の堂々巡りを誘うものばかりだ。
例えば見せしめとなったあの幻想郷の住人ではない神父二人組。
彼らには悪いことをしたものだと永琳は申し訳なく思う。
なぜならば、あの場所にて『この殺し合いをなかったことにしてみろ』と提案したのは他でもない永琳自身だからである。
あの気性ならば遠からず同じ目にあっていただろうと想像できるが、あの時点で犠牲を出したのは永琳の責任に他ならない。
元々、あの質問はどれほど八雲紫が願いに対し誠実であるか、またその願いの範疇はどれほどかを計るものであったが、
それも結局確かだと言える回答は得られなかった。
判明したのは、あのスキマ妖怪は自分を得体の知れないものだと見せることにひどく長けているということだけだ。
それも結局確かだと言える回答は得られなかった。
判明したのは、あのスキマ妖怪は自分を得体の知れないものだと見せることにひどく長けているということだけだ。
今は無闇に考える時ではない。そう判断すると永琳は思考の糸を手繰り寄せ、焦点を目の前の現実にあわせた。
コイルガンを脇に置き、他の“殺し合いに使う道具”を改めて見直す。
銃などとは本当に殺し合いの為の道具でしかなく血生臭いが、もうひとつあったそれも同じ銃だった。
コイルガンを脇に置き、他の“殺し合いに使う道具”を改めて見直す。
銃などとは本当に殺し合いの為の道具でしかなく血生臭いが、もうひとつあったそれも同じ銃だった。
こちらは特別驚くことのない普通の火薬式の銃である。《WA2000》と銘打たれた狙撃銃だ。
弾倉と薬室を銃床の中に移すことで銃身長を短くする機構を採用しており、狙撃銃という印象よりかはかなり小柄である。
取り回しが容易になった分、素の目視で狙いを定めるのがやや難であるが、これは弓矢に通じる永琳には問題とならない。
不恰好ながら、暗視用と熱感知用の二つにスコープが取り付けられており状況を問わず威力を発揮できる作りにもなっている。
弾倉と薬室を銃床の中に移すことで銃身長を短くする機構を採用しており、狙撃銃という印象よりかはかなり小柄である。
取り回しが容易になった分、素の目視で狙いを定めるのがやや難であるが、これは弓矢に通じる永琳には問題とならない。
不恰好ながら、暗視用と熱感知用の二つにスコープが取り付けられており状況を問わず威力を発揮できる作りにもなっている。
本来ならば先の物も含めて銃などに頼りたくはないが、しかしどちらの銃も有用であるのは確かだ。
コイルガンは密やかに速やかに殺害するのに向いているだろう。
狙撃銃があれば能力や叡智を用いなくとも遠く離れた敵を狙い撃つことができる。
無論、このような物はその身により強い穢れを呼ぶことになるが、だからといってそれを避けている場合でもない。
コイルガンは密やかに速やかに殺害するのに向いているだろう。
狙撃銃があれば能力や叡智を用いなくとも遠く離れた敵を狙い撃つことができる。
無論、このような物はその身により強い穢れを呼ぶことになるが、だからといってそれを避けている場合でもない。
「はぁ」
思わず溜息も出る。はっきり認めてしまえば、ここに連れて来られたという時点ですでに八雲紫には負けているのである。
しかしそれを認めながらも勝負を捨てるようなことは許されないし、そんな気も毛頭ない。
状況はあの第二次月面戦争と変わらない。八雲紫が状況を用意した。その中で各人が彼女の思惑通りに行動した。
永琳もその中の一人だ。そして最終的に一歩先を行かれた。
ならば今回はその意趣返しである。全てが相手の思惑の内だと認めてなお、最後に相手を一歩出し抜く。
しかしそれを認めながらも勝負を捨てるようなことは許されないし、そんな気も毛頭ない。
状況はあの第二次月面戦争と変わらない。八雲紫が状況を用意した。その中で各人が彼女の思惑通りに行動した。
永琳もその中の一人だ。そして最終的に一歩先を行かれた。
ならば今回はその意趣返しである。全てが相手の思惑の内だと認めてなお、最後に相手を一歩出し抜く。
永琳は決心した。この知恵比べ、今度こそは全力を以って挑み、必ず八雲紫を上回ってみせると。
【003】
「あ、こんなところにいたんだ」
かけられた声に振り向くとそこには襖を開けて中を覗き見る輝夜の姿があった。そして永琳はその姿に驚く。
「輝夜ったらなんて格好なの」
「あら、そうかしら? 温泉に入った後はどうすれば、なんて知らないのだもの」
「あら、そうかしら? 温泉に入った後はどうすれば、なんて知らないのだもの」
輝夜は温泉から出たままの姿――新生し(生まれた)たままの姿だった。
それはとても美しい。
お湯に濡れた肌は赤子の肌のようにほのかに赤く染まり、その上を空気で冷やされた幾条もの水滴がなぞっている。
十分に水気を含んだ豊かな黒髪は身体を抱くように張り付き、その先端から雫を垂らし続けていた。
彼女が“かぐや姫”として地上にいた頃は、都中の男が一目見ようと屋敷に殺到したらしいが、これならば然もありなん。
それはとても美しい。
お湯に濡れた肌は赤子の肌のようにほのかに赤く染まり、その上を空気で冷やされた幾条もの水滴がなぞっている。
十分に水気を含んだ豊かな黒髪は身体を抱くように張り付き、その先端から雫を垂らし続けていた。
彼女が“かぐや姫”として地上にいた頃は、都中の男が一目見ようと屋敷に殺到したらしいが、これならば然もありなん。
目を奪われるような姿だがしかし、さてどのように注意しようかと永琳は思案した。
みっともないと言えば良いだろうか。いやしかし、彼女の姿はこれでいて高貴であり非の打ち所もない。
ならば病を患うと言えば良いだろうか。まさかである。蓬莱の薬を飲んだ彼女はもう病などとは永遠に無縁なのだ。
みっともないと言えば良いだろうか。いやしかし、彼女の姿はこれでいて高貴であり非の打ち所もない。
ならば病を患うと言えば良いだろうか。まさかである。蓬莱の薬を飲んだ彼女はもう病などとは永遠に無縁なのだ。
「床が濡れてしまうわよ」
なのでこう言うことにした。豊かすぎる水は滞り溜り濁る。地上では清浄であるはずの水もまた腐れを齎すことがあるのだ。
不要な水を吸った畳も床板も本来の寿命をその分減じたことだろう。
不要な水を吸った畳も床板も本来の寿命をその分減じたことだろう。
「あぁ、そうね。これもとてもよい気分だったのだけど、それじゃあしかたないわ」
納得すると輝夜は踵を返して部屋を出て行った。脱衣場に戻るのであろう。
永琳も腰を上げてそれを追うことにする。あの姫様は多分、一人では身の支度を完璧にはこなせないだろうから。
永琳も腰を上げてそれを追うことにする。あの姫様は多分、一人では身の支度を完璧にはこなせないだろうから。
廊下に出ると開けた中庭の方から満月を見上げることができた。贋物でしかない満月を。
あれは八雲紫から月の民に対する挑発行為だろうか。それとも助けは得られないぞという通告なのだろうか。
あれは八雲紫から月の民に対する挑発行為だろうか。それとも助けは得られないぞという通告なのだろうか。
はたまた、あるいはそれは――……。
【D-5/山頂付近/1日目-深夜】
【主:蓬莱山輝夜@東方儚月抄】
[主従]:八意永琳@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:《異変》を解決する。
1:???
[主従]:八意永琳@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:なし
[方針/行動]
基本方針:《異変》を解決する。
1:???
[備考]
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※参加時期は東方儚月抄終了後。
【従:八意永琳@東方儚月抄】
[主従]:蓬莱山輝夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:ブリタニア軍制式拳銃@コードギアス(弾数x12)、ブリタニア軍制式拳銃のマガジン(専用弾12発入り)x2
ワルサーWA2000@Fate/Zero(弾数x6)、ワルサーWA2000のマガジン(300 Win Magnum弾6発入り)x4
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
[方針/行動]
基本方針:輝夜に付き従う。八雲紫に勝つ。
1:やれやれ……
[主従]:蓬莱山輝夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:ブリタニア軍制式拳銃@コードギアス(弾数x12)、ブリタニア軍制式拳銃のマガジン(専用弾12発入り)x2
ワルサーWA2000@Fate/Zero(弾数x6)、ワルサーWA2000のマガジン(300 Win Magnum弾6発入り)x4
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
[方針/行動]
基本方針:輝夜に付き従う。八雲紫に勝つ。
1:やれやれ……
[備考]
※参加時期は東方儚月抄終了後。
※参加時期は東方儚月抄終了後。
【ブリタニア軍制式拳銃】
蓬莱山輝夜&八意永琳に支給。
ブリタニア軍で制式採用されているコイルガン(拳銃)。レーザーサイト標準装備。
ピストンモーターとサクラダイト電磁誘導レールの2段加速により火薬式のものと同等の性能がある。
蓬莱山輝夜&八意永琳に支給。
ブリタニア軍で制式採用されているコイルガン(拳銃)。レーザーサイト標準装備。
ピストンモーターとサクラダイト電磁誘導レールの2段加速により火薬式のものと同等の性能がある。
【ワルサーWA2000】
蓬莱山輝夜&八意永琳に支給。
ワルサー社が警察向けに開発したセミオート式の狙撃銃。
銃床の部分に弾倉と薬室を収納するプルパップ式なので、銃身の長さが650mmと短く取り回しやすい。(全長は905mm)
これは衛宮切嗣が「魔術師狩り仕様」にカスタムしたもので、2つのスコープ(暗視/熱感知)を併用できるようカスタムされている。
蓬莱山輝夜&八意永琳に支給。
ワルサー社が警察向けに開発したセミオート式の狙撃銃。
銃床の部分に弾倉と薬室を収納するプルパップ式なので、銃身の長さが650mmと短く取り回しやすい。(全長は905mm)
これは衛宮切嗣が「魔術師狩り仕様」にカスタムしたもので、2つのスコープ(暗視/熱感知)を併用できるようカスタムされている。
| 前:Preparation | 投下順に読む | 次:約束されし死亡の旗(シチョウセイガー) |
| 前:Preparation | 時系列順に読む | 次:ある女の受難 |
| 前:永夜儚月抄 | 蓬莱山輝夜 | 次:姫ふたり |
| 八意永琳 |