フラワリングナイト ◆Su10.RK3MU
【001】
月満ちて光垂る殺し合いの夜。
巨大な墓石を思わせる薄灰色な建物の中において、ささやかなお茶会が開かれていた。
丸いテーブルには三人の主が向かい合うように着席しており、その後ろにはそれぞれの従者が控えている。
巨大な墓石を思わせる薄灰色な建物の中において、ささやかなお茶会が開かれていた。
丸いテーブルには三人の主が向かい合うように着席しており、その後ろにはそれぞれの従者が控えている。
幼き姿でありながらも絶対的な実力を持つレミリア・スカーレットと、その瀟洒なメイドである十六夜咲夜。
彼女達に敗北し、名目上は捕虜という扱いのインテグラと、彼女の忠実な老執事であるウォルター。
そして、そこに新しく合流したトゥスクルの皇ハクオロと、彼の忠臣であるトウカである。
彼女達に敗北し、名目上は捕虜という扱いのインテグラと、彼女の忠実な老執事であるウォルター。
そして、そこに新しく合流したトゥスクルの皇ハクオロと、彼の忠臣であるトウカである。
「トゥスクルに幻想郷……、どちらも我々の世界では存在を知られてない国家だな」
「私も、英国(グレートブリテン)という国名には覚えがないが、これは――」
「幻想郷は外の世界とは隔絶した隠れ里だからね。知らないのは無理もないけど」
「私も、英国(グレートブリテン)という国名には覚えがないが、これは――」
「幻想郷は外の世界とは隔絶した隠れ里だからね。知らないのは無理もないけど」
言葉を交わす主人らの前にはそれぞれメイドと執事の淹れた紅茶が湯気を立てている。
そのうち二つは透明で真っ当な紅茶。残りの一つは吸血鬼の為の赤く紅く濃い真っ当ではない紅茶だ。
どちらも道中の商店と、今滞在している病院の中にて幸運にも調達できたものである。
特にティーセットに関して言えば、高貴な彼らに相応しい代物が見つかったのはまさに幸運と表す他ないだろう。
そのうち二つは透明で真っ当な紅茶。残りの一つは吸血鬼の為の赤く紅く濃い真っ当ではない紅茶だ。
どちらも道中の商店と、今滞在している病院の中にて幸運にも調達できたものである。
特にティーセットに関して言えば、高貴な彼らに相応しい代物が見つかったのはまさに幸運と表す他ないだろう。
先刻、レミリアとインテグラが邂逅し、その従者同士の勝負の決着がついた後のこと。
彼女達はインテグラの所持していたリボンの巻かれた人形を用い、もう一組の主従とコンタクトすることに成功した。
インテグラは当初、この人形にかかったまじないについては全く以って信じてなかったので、
ここには偶然――あるいは運命の悪戯というべき転換と喜劇があったのだが、その経緯はさておき、
ハクオロと名乗る者と互いにこの殺し合いを覆そうという意思を確認しあった後、両者は病院で合流することとなった。
これは、まず彼らはそこを目的地としていたことと、インテグラ達が向かう方角も同じくそちらであったからだ。
彼女達はインテグラの所持していたリボンの巻かれた人形を用い、もう一組の主従とコンタクトすることに成功した。
インテグラは当初、この人形にかかったまじないについては全く以って信じてなかったので、
ここには偶然――あるいは運命の悪戯というべき転換と喜劇があったのだが、その経緯はさておき、
ハクオロと名乗る者と互いにこの殺し合いを覆そうという意思を確認しあった後、両者は病院で合流することとなった。
これは、まず彼らはそこを目的地としていたことと、インテグラ達が向かう方角も同じくそちらであったからだ。
そして、あちらこちらに目移りするお嬢様を彼女のメイドといっしょになだめすかしながら進むことおよそ一時間。
予想よりも大きく立派だった総合病院の前でハクオロとトウカの二人と合流し、今に至るというわけである。
予想よりも大きく立派だった総合病院の前でハクオロとトウカの二人と合流し、今に至るというわけである。
【002】
面を向かい合わせ、改めて八雲紫の目論みの破壊と自分達の生還とを最終目的とすることを確認しあった三組は、
あらかたの情報交換を終え、では具体的にどう行動すればいいのかという話へと移ろうとしていた。
あらかたの情報交換を終え、では具体的にどう行動すればいいのかという話へと移ろうとしていた。
「――まずは尋ねたいのだが、あの八雲紫とは何者でどのような実力を備えているのか。
また、その背景や仲間の存在など、分かっていることがあるのなら情報を提供して欲しい」
また、その背景や仲間の存在など、分かっていることがあるのなら情報を提供して欲しい」
インテグラの問いに、レミリアは「んー」と少し難しい顔をした。その質問に対する明確な回答を持ち合わせていないからだ。
「あいつはよくわからない奴なのよねぇ。割と有名な奴ではあるんだけど、そうそう人前に姿を現す奴じゃないし。
まぁ……、好かれている奴ではないから友達とか仲間はいないんじゃないかしら?
式神はいるみたいだけど……後は、あー、そうね。咲夜が説明して。知ってること全部をこいつらにね」
まぁ……、好かれている奴ではないから友達とか仲間はいないんじゃないかしら?
式神はいるみたいだけど……後は、あー、そうね。咲夜が説明して。知ってること全部をこいつらにね」
曖昧なことを曖昧なままに言うのは沽券に関わるのか、レミリアは説明を途中でメイドに放り投げる。
なんとも横着だが、メイドはそんなことに不満な様子はひとつ見せず、一礼してテーブルに歩み寄ると、よどみなく説明を続けた。
なんとも横着だが、メイドはそんなことに不満な様子はひとつ見せず、一礼してテーブルに歩み寄ると、よどみなく説明を続けた。
「詳しくは判明していませんが、八雲紫は“境界を操る程度の能力”の持ち主だと言われています」
境界を操ると聞いて、インテグラとハクオロ、そして後ろに控える従者達の顔に怪訝な表情が浮かぶ。
炎や氷を操れたり、力が強かったり足が速かったりというのならば分かりやすいが、境界を操るとは実に曖昧な表現だ。
炎や氷を操れたり、力が強かったり足が速かったりというのならば分かりやすいが、境界を操るとは実に曖昧な表現だ。
「物体と物体。物事と物事。概念の中にある境目――境界と名のつくものならなんでも操ることのできる能力ですわ。
具体的に言うと……空に浮かぶ月と水面に映る月との境界を曖昧にして、水面から月の上へと移動したりできるそうです。
これは本物と偽物の境界を限りなく曖昧にしたという場合ですね。逆に境界をはっきりさせることで結界を張ったり――」
具体的に言うと……空に浮かぶ月と水面に映る月との境界を曖昧にして、水面から月の上へと移動したりできるそうです。
これは本物と偽物の境界を限りなく曖昧にしたという場合ですね。逆に境界をはっきりさせることで結界を張ったり――」
“知ってることを全部”というのが主の命令だからか、メイドは八雲紫がこれまでに起こしたとされる事象を延々と述べ上げた。
その気になれば夢の世界にでも移れるだとか、何者も寄せ付けない結界を張れるのだとか。
はたまた、《隙間》を使えば一瞬にしてどこにでも姿を現すことができるのだとか。
主人であるレミリアもけっこう知らないことがあったりしたらしく、時に「へぇ」とか「ほぅ」などと息を漏らしている。
しかし、残り二人の主人であるインテグラとハクオロの顔にそんな暢気さは欠片もなかった。
話を聞けば聞くほどに眉間に皺が寄り、口角の端が引き絞られるばかりだ。
なにせ、あらゆる事象をあったりなかったりにすることのできる八雲紫の能力は神の領域ではないかと思えるほどなのである。
これから対決しようとする相手の強大さばかりを知らされるのは、ただ心にノミを打たれているようなものでしかなかった。
その気になれば夢の世界にでも移れるだとか、何者も寄せ付けない結界を張れるのだとか。
はたまた、《隙間》を使えば一瞬にしてどこにでも姿を現すことができるのだとか。
主人であるレミリアもけっこう知らないことがあったりしたらしく、時に「へぇ」とか「ほぅ」などと息を漏らしている。
しかし、残り二人の主人であるインテグラとハクオロの顔にそんな暢気さは欠片もなかった。
話を聞けば聞くほどに眉間に皺が寄り、口角の端が引き絞られるばかりだ。
なにせ、あらゆる事象をあったりなかったりにすることのできる八雲紫の能力は神の領域ではないかと思えるほどなのである。
これから対決しようとする相手の強大さばかりを知らされるのは、ただ心にノミを打たれているようなものでしかなかった。
「では、我々はそんなことができる相手にどうすればいい?」
聞き終わり、ハクオロが苦々しい口調でレミリアへと尋ねた。
話を聞いても平然としているレミリアなら、あるいは具体的な打開策を持っているのではと希望的に考えたからだ。
話を聞いても平然としているレミリアなら、あるいは具体的な打開策を持っているのではと希望的に考えたからだ。
「さぁね。とりあえず勝負するってなら私は負ける気がしないけど」
だが、幼き吸血鬼の返答はつれないものであった。
ハクオロは、そして隣のインテグラも彼女の気ままさと展望のなさに大きな溜息を吐く。
ハクオロは、そして隣のインテグラも彼女の気ままさと展望のなさに大きな溜息を吐く。
「しかし、このような幼子があのような得体の知れない妖怪変化を倒せるというのですか?」
溜息を吐く主人の後ろで意見を述べた――いや、うっかりと口を滑らせてしまったのはハクオロの忠臣トウカだ。
事実、レミリアの見た目は幼子のそれでしかない故にその感想は無理もないが、しかし言ってしまうには相手が悪い。
事実、レミリアの見た目は幼子のそれでしかない故にその感想は無理もないが、しかし言ってしまうには相手が悪い。
「あー? 口の利き方に気をつけたほうがいいわよ。弱いのは」
レミリアの表情が悪魔のものに変わり、吸血鬼の紅い視線がトウカを穿つ。
その気などなかったのだが、戦士として一流が故に、トウカは反射的に腰に佩いた刀へと手を伸ばしてしまい、そして――
その気などなかったのだが、戦士として一流が故に、トウカは反射的に腰に佩いた刀へと手を伸ばしてしまい、そして――
「あれ?」
と、手に空を切らせた。見れば主である聖上から預かり、彼を守るために佩いていた刀がなくなっている。
一体いつから、どこでなくしてしまったのか? 失ったのだとしたら、これはさすがにうっかりではすまされないだろう。
顔を青くしてトウカは辺りを二度三度と見回し、そしてレミリアの後ろに控えるメイドがその刀を持っていることに気づいた。
一体いつから、どこでなくしてしまったのか? 失ったのだとしたら、これはさすがにうっかりではすまされないだろう。
顔を青くしてトウカは辺りを二度三度と見回し、そしてレミリアの後ろに控えるメイドがその刀を持っていることに気づいた。
「これはお返ししますね」
メイドはにこりと微笑んで刀を差し出し、呆気に取られたトウカは「あ、かたじけない」と受け取ってしまう。
これはどういうことなのかと、トウカの頭の中は混乱に満ちていた。
だが、その一部始終を見ていた他の面々もそれは同じ、いやあるいはそれ以上に混乱し驚いていた。
一触即発――と思われる瞬間まで確かに刀はトウカの腰にあったのだ。それが一瞬にしてメイドの手中に渡った。
これでこの光景を目にするのも繰り返し三度目になるインテグラと彼女の執事達すらももまた目を丸くするばかりであり、
ただにこにこにやにやとしているのは、レミリアと彼女のメイドだけである。
これはどういうことなのかと、トウカの頭の中は混乱に満ちていた。
だが、その一部始終を見ていた他の面々もそれは同じ、いやあるいはそれ以上に混乱し驚いていた。
一触即発――と思われる瞬間まで確かに刀はトウカの腰にあったのだ。それが一瞬にしてメイドの手中に渡った。
これでこの光景を目にするのも繰り返し三度目になるインテグラと彼女の執事達すらももまた目を丸くするばかりであり、
ただにこにこにやにやとしているのは、レミリアと彼女のメイドだけである。
「どうやら分はわきまえたようね」
目を白黒させるトウカを見てレミリアは表情を一転させ、ふふと笑う。
トウカというと未だ釈然としない様子だったが、彼女がいたずらに燻られるのもよくないと悟ったインテグラが話を元に戻した。
トウカというと未だ釈然としない様子だったが、彼女がいたずらに燻られるのもよくないと悟ったインテグラが話を元に戻した。
「それじゃあどうすればいい?
仮に戦えば君に勝算はあるとしても、そんな力の持ち主ではまず見つけることができるかどうかというとこからして問題だぞ」
仮に戦えば君に勝算はあるとしても、そんな力の持ち主ではまず見つけることができるかどうかというとこからして問題だぞ」
八雲紫をどう捉えるか? その問題は現状不可能に思えるがしかしレミリアは動じる様子もない。
血の注がれたカップより口を離すと、小さな唇を紅く濡らしながら次の言葉を吐いた。
血の注がれたカップより口を離すと、小さな唇を紅く濡らしながら次の言葉を吐いた。
「仮に――じゃないわ。これは絶対。
それとね。私達が殺し合いをしないとなったら痺れを切らして出てくるんじゃないかしら? あいつはそんな奴よ。多分」
それとね。私達が殺し合いをしないとなったら痺れを切らして出てくるんじゃないかしら? あいつはそんな奴よ。多分」
メイドに口元を拭いてもらっているレミリアを見ながら、インテグラはふむと唸る。
殺し合いを続けなければ全員死ぬというルールがあったが、裏を返せば何かなんでも殺し合いを完遂したいのだとも取れる。
実際、あの最初の場所での八雲紫の口ぶりには殺し合いさえしてくれれば他はいいというニュアンスがあったのも事実だ。
殺し合いを続けなければ全員死ぬというルールがあったが、裏を返せば何かなんでも殺し合いを完遂したいのだとも取れる。
実際、あの最初の場所での八雲紫の口ぶりには殺し合いさえしてくれれば他はいいというニュアンスがあったのも事実だ。
「なるほど。確かに現状で我々が取れる手段というのはそれくらいしかないのかもしれない。
楽観的になるわけではないが、殺し合いをしないということを当面の目標とするのも悪くないだろう。
仲間と合流したいのもあることだし……ハクオロ殿、この方針に何か疑問はないだろうか?」
楽観的になるわけではないが、殺し合いをしないということを当面の目標とするのも悪くないだろう。
仲間と合流したいのもあることだし……ハクオロ殿、この方針に何か疑問はないだろうか?」
問われ、ハクオロはインテグラの前でふむと頷いた。
「確かに、殺し合いを放棄するというのはこちらとしても前提として置いていたものなのでその方針に異論はない。
だが八雲紫を釣り出す為に殺し合いを止めるとなると、それはこの島全体で行われている全てを掌握する必要がある。
インテグラ殿はその点においてなにか手立てを考えておられるだろうか?」
だが八雲紫を釣り出す為に殺し合いを止めるとなると、それはこの島全体で行われている全てを掌握する必要がある。
インテグラ殿はその点においてなにか手立てを考えておられるだろうか?」
問い返され、インテグラは苦笑しゆるゆると首を振った。
「いえ、全くありません。
しかし、方策があろうがなかろうが、どれだけそれが難儀なことであろうとそれは同じことではありませんか。
我々はそれを実行しなくてはいけない。元々、最初からそのつもりだったはずだ」
しかし、方策があろうがなかろうが、どれだけそれが難儀なことであろうとそれは同じことではありませんか。
我々はそれを実行しなくてはいけない。元々、最初からそのつもりだったはずだ」
然り、とハクオロはインテグラの言葉に首肯した。
「その通りだ。我々はこの悪逆非道な行いを認めてはいない。いかな艱難が待ち構えていようと食い止めねばならない」
そしてインテグラとハクオロの二人は顔を突き合わせ目的を具体的な計画へと練り上げてゆく。
「さしあたっては、我々がこうやって合流できたように仲間となる者等を探し、取り入れていくしかないでしょう。
我々にはまだ手も足も足りてはいない。」
「加えて、実際に殺し合いを是としている者を食い止めることも肝要だ。それに弱き者を保護し守る術も必要となる」
「足の向くまま運の向くままに任せたのでは三日という日数は短く思えますが――」
「その点は、なにかしら狼煙のようなものなどで衆目の注意を集めることをしないと――」
「しかしその場合、襲撃の意図で寄ってくる者や、寄ってくる者の背を狙う者も――」
「我々は自分達も含めて全ての者を守らなくてはいけない。故に安易には――」
我々にはまだ手も足も足りてはいない。」
「加えて、実際に殺し合いを是としている者を食い止めることも肝要だ。それに弱き者を保護し守る術も必要となる」
「足の向くまま運の向くままに任せたのでは三日という日数は短く思えますが――」
「その点は、なにかしら狼煙のようなものなどで衆目の注意を集めることをしないと――」
「しかしその場合、襲撃の意図で寄ってくる者や、寄ってくる者の背を狙う者も――」
「我々は自分達も含めて全ての者を守らなくてはいけない。故に安易には――」
インテグラもハクオロも共に組織を指揮する立場にいるものだ。作戦の立案はよどみなく瞬く間に組み上げられて――
「おーい。こらこら。誰が一番偉いか忘れたのかい?」
ドミノか、あるいはジェンガのようにそれは幼子の足で蹴っ飛ばされる。
【003】
「勝手に話を進めちゃ駄目。手下が増えるのはいいけどね、行き先は決めるのは私なんだから。咲夜、地図!」
メイドから地図を受け取るとレミリアはそれをテーブルの上に広げ、小さな指先を歩き回らせる。
「ここ、病院でしょ? だから次は~……えーと、この《遊園地》ってなに?」
レミリアの問いに、しかし答える者は誰もおらず場に沈黙が落ちる。
そして数秒。答えられるのが自分しかいないことに気づいたインテグラが慌てて口を開いた。
そして数秒。答えられるのが自分しかいないことに気づいたインテグラが慌てて口を開いた。
「遊園地というのはあれだ……その、楽しい乗り物が、観覧車とかメリーゴーランドとかがある施設だ」
「楽しい乗り物?」
「うーん……、すまんな。私も知識はあるが、実際のところは詳しくない」
「楽しい乗り物?」
「うーん……、すまんな。私も知識はあるが、実際のところは詳しくない」
子供の仕草のままに聞いてくるレミリアにインテグラはたじろぎ苦笑して誤魔化す。
幼くしてヘルシング家当主となってしまったインテグラにとって、遊園地などの子供らしい遊びなどは到底縁がない。
そして、それからより自分よりもずっと年長の大人ばかりを相手にしてきていたからか、子供相手はどうしても苦手だった。
なのでレミリアが見た目相応の仕草を見せると途端にインテグラはしどろもどろになってしまう。
心理的な盲点なのか、トラウマや願望に起因するのだとしたらカウンセリングが必要だなと、インテグラは内心思った。
幼くしてヘルシング家当主となってしまったインテグラにとって、遊園地などの子供らしい遊びなどは到底縁がない。
そして、それからより自分よりもずっと年長の大人ばかりを相手にしてきていたからか、子供相手はどうしても苦手だった。
なのでレミリアが見た目相応の仕草を見せると途端にインテグラはしどろもどろになってしまう。
心理的な盲点なのか、トラウマや願望に起因するのだとしたらカウンセリングが必要だなと、インテグラは内心思った。
「まぁ、どちらにしろ遊園地には一度行ってみるとして……。天文台は別にいいわよね。どこでも星は見えるし」
レミリアが遊園地に強い興味を示さなかったことを、インテグラは複雑に思う。
彼女が遊園地で遊ぶなどと言い出してしまうのは困るが、そう思わせることのできなかった自分もまたどこか情けない。
やはり子供は鬼門だなと思いつつ、インテグラはもう冷めてしまっている紅茶を口に流し込んだ。
彼女が遊園地で遊ぶなどと言い出してしまうのは困るが、そう思わせることのできなかった自分もまたどこか情けない。
やはり子供は鬼門だなと思いつつ、インテグラはもう冷めてしまっている紅茶を口に流し込んだ。
「漁港にある市場じゃ、並んでるのは魚ばかりよね。人がいないんじゃ並んでないかもしれないけど……」
インテグラの苦心(?)をよそに、レミリアの指先は地図の上をとことこと南に進んでゆく。
山の西側をぐるりと迂回して辿りついたのは《デパート》であった。
山の西側をぐるりと迂回して辿りついたのは《デパート》であった。
「デパートって何かしら?」
レミリアがインテグラの顔を覗き見る。
よくよく考えれば、ハクオロ達も異文化圏から来たということが判明している以上、こういう質問は全てこちらに来るのだ。
インテグラはこれではまるでガヴァネス(女家庭教師)だなと思いつつ、今度は先ほどよりも落ち着いた態度で説明をした。
よくよく考えれば、ハクオロ達も異文化圏から来たということが判明している以上、こういう質問は全てこちらに来るのだ。
インテグラはこれではまるでガヴァネス(女家庭教師)だなと思いつつ、今度は先ほどよりも落ち着いた態度で説明をした。
「小さなお店がいくつも入った大きな建物のことだ。
パン屋、時計屋、靴屋、本屋、宝石店、あらゆる店がひとつに集まったそこだけでなんでも揃う巨大な建物のことだよ」
パン屋、時計屋、靴屋、本屋、宝石店、あらゆる店がひとつに集まったそこだけでなんでも揃う巨大な建物のことだよ」
今度はそれなりに説明できたろう。
そう、ほっと胸を撫で下ろし、しかしキラキラと輝くレミリアの眼を見てインテグラは「自分の馬鹿ー!」と頭の中で叫んだ。
そう、ほっと胸を撫で下ろし、しかしキラキラと輝くレミリアの眼を見てインテグラは「自分の馬鹿ー!」と頭の中で叫んだ。
「決めた! 次はデパートに行くわよ!」
大人相手の権謀術数はすでに修めている。怪物を御する術なら心得ている。だから次は子供をあやす手管が欲しい。
そう、インテグラはころころと笑う幼き吸血鬼を見て思った。
そう、インテグラはころころと笑う幼き吸血鬼を見て思った。
【004】
「~~~~♪」
上手でない鼻歌交じりに一番偉いお嬢様であるレミリアは日傘を片手に振って夜道を先へ先へと歩いてゆく。
そして、その後を彼女の“捕虜”であるインテグラは苦笑いを浮かべて追っていた。
日傘は彼女達の袋に入っていたものだ。
袋の中の道具を見せ合った際に、必要だというので彼女達の持っていた拳銃と交換してもらったのである。
そして、その後を彼女の“捕虜”であるインテグラは苦笑いを浮かべて追っていた。
日傘は彼女達の袋に入っていたものだ。
袋の中の道具を見せ合った際に、必要だというので彼女達の持っていた拳銃と交換してもらったのである。
「申し訳ありません、ハクオロ殿。このような成り行きに巻き込んでしまい」
隣を歩くハクオロにインテグラは謝罪の言葉を述べる。
とはいえ、別にここは彼女が特別悪いというわけでもなく、ハクオロもそれを承知していた。
とはいえ、別にここは彼女が特別悪いというわけでもなく、ハクオロもそれを承知していた。
「いや、それには及びません。
こちらこそ、このような知見のない地において早々にインテグラ殿のような勝手を知る方と出会えて幸運だと思っています。
それにそれはあの子にしてもそうだ。まず掴むべき八雲紫の情報がこうも早く得られたというのは大きい」
こちらこそ、このような知見のない地において早々にインテグラ殿のような勝手を知る方と出会えて幸運だと思っています。
それにそれはあの子にしてもそうだ。まず掴むべき八雲紫の情報がこうも早く得られたというのは大きい」
ハクオロとインテグラは神妙に目を細め、先を行くレミリアの背を見る。
「ええ、些かできすぎのきらいもあるほどです。……ハクオロ殿はこれが八雲紫の思惑の内である可能性もあると考えますか?」
「さて……、判断するにはまだ私には知らないことが多すぎる」
「さて……、判断するにはまだ私には知らないことが多すぎる」
殺し合いの舞台に下りてより数時間。広い島の中ですでに三組の主従が遭遇し、手を組んで道を同じくしている。
これは偶然というには出来すぎていると考えても不思議ではない。
ならば盤上に駒を配した八雲紫の思惑がそこにあるのか、あるいはこれはただの“運命”の悪戯なのか。
これは偶然というには出来すぎていると考えても不思議ではない。
ならば盤上に駒を配した八雲紫の思惑がそこにあるのか、あるいはこれはただの“運命”の悪戯なのか。
「とりあえず、行く当てがない現状、彼女の稚気の向くままに行く先を決めるのも愚作ではないでしょう」
「そうですね。なにしろ、彼女は私達の中で一番偉いのですから」
「そうですね。なにしろ、彼女は私達の中で一番偉いのですから」
インテグラが笑い、そしてつられてハクオロも吹き出した。
月はまだ高い。運命も回り始めたばかり――
【A-3/病院近くの路上/1日目-黎明】
【主:レミリア・スカーレット@東方儚月抄】
[主従]:十六夜咲夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:風見幽香の日傘@東方儚月抄
[方針/行動]
基本方針:八雲紫の言うことは聞かない。現状を楽しむ。
1:デパートに向かう。
[主従]:十六夜咲夜@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:風見幽香の日傘@東方儚月抄
[方針/行動]
基本方針:八雲紫の言うことは聞かない。現状を楽しむ。
1:デパートに向かう。
【従:十六夜咲夜@東方儚月抄】
[主従]:レミリア・スカーレット@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:黒龍@戦国BASARA
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
茶葉とティーセット(一式)@現地調達、輸血用血液パック(多数)@現地調達
[方針/行動]
基本方針:レミリアお嬢様に従う。
1:レミリアお嬢様に従う。
[主従]:レミリア・スカーレット@東方儚月抄
[状態]:健康
[装備]:黒龍@戦国BASARA
背負い袋(基本支給品)、不明支給品x2
茶葉とティーセット(一式)@現地調達、輸血用血液パック(多数)@現地調達
[方針/行動]
基本方針:レミリアお嬢様に従う。
1:レミリアお嬢様に従う。
【主:インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING】
[主従]:ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING
[状態]:健康
[装備]:ワルサーPPK@現実(弾数x6)、ワルサーPPKのマガジン(.380ACP弾x6発入り)x6
[方針/行動]
基本方針:状況(バトルロワイアル)の打破。屋敷へと帰還する。
1:レミリア組、ハクオロ組と同行しながら、殺し合いを停滞させるために動く。
2:アーカード、セラスとの合流。
[主従]:ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING
[状態]:健康
[装備]:ワルサーPPK@現実(弾数x6)、ワルサーPPKのマガジン(.380ACP弾x6発入り)x6
[方針/行動]
基本方針:状況(バトルロワイアル)の打破。屋敷へと帰還する。
1:レミリア組、ハクオロ組と同行しながら、殺し合いを停滞させるために動く。
2:アーカード、セラスとの合流。
[備考]
※参加時期は、北アイルランド地方都市ベイドリックでアンデルセンと対決した後。(1巻)
※参加時期は、北アイルランド地方都市ベイドリックでアンデルセンと対決した後。(1巻)
【従:ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[主従]:インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING
[状態]:健康
[装備]:アゾット剣@Fate/Zero
背負い袋(基本支給品)、通信用人形(青リボン)@東方儚月抄、不明支給品x1
茶葉とティーセット(一式)@現地調達、輸血用血液パック(多数)@現地調達
[方針/行動]
基本方針:インテグラお嬢様に従う。
1:インテグラを警護し続ける。
[主従]:インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@HELLSING
[状態]:健康
[装備]:アゾット剣@Fate/Zero
背負い袋(基本支給品)、通信用人形(青リボン)@東方儚月抄、不明支給品x1
茶葉とティーセット(一式)@現地調達、輸血用血液パック(多数)@現地調達
[方針/行動]
基本方針:インテグラお嬢様に従う。
1:インテグラを警護し続ける。
[備考]
※参加時期は、北アイルランド地方都市ベイドリックでアンデルセンと対決した後。(1巻)
※参加時期は、北アイルランド地方都市ベイドリックでアンデルセンと対決した後。(1巻)
【主:ハクオロ@うたわれるもの】
[主従]:トウカ@うたわれるもの
[状態]:健康
[装備]:通信用人形(赤リボン)@東方儚月抄
[方針/行動]
基本方針:他の参加者と協力して八雲紫を討伐し、島から脱出する。基本的に参加者は殺めるつもりは無い。
1:レミリア組、インテグラ組と同行しながら、殺し合いを停滞させるために動く。
[主従]:トウカ@うたわれるもの
[状態]:健康
[装備]:通信用人形(赤リボン)@東方儚月抄
[方針/行動]
基本方針:他の参加者と協力して八雲紫を討伐し、島から脱出する。基本的に参加者は殺めるつもりは無い。
1:レミリア組、インテグラ組と同行しながら、殺し合いを停滞させるために動く。
[備考]
※参加時期は、アニメ20話『初陣』直前。その為、まだ自分の正体(ウィツァルネミテア)には気付いていません。
※参加時期は、アニメ20話『初陣』直前。その為、まだ自分の正体(ウィツァルネミテア)には気付いていません。
【従:トウカ@うたわれるもの】
[主従]:ハクオロ@うたわれるもの
[状態]:健康
[装備]:六爪@戦国BASARA
背負い袋(基本支給品)、大量のパンツ@そらのおとしもの、洋酒(木箱入り)@北斗の拳
[方針/行動]
基本方針:ハクオロを守りながら他の参加者と協力して八雲紫を討伐し、島から脱出する。基本的に参加者は殺めるつもりは無い。
1:周囲に気を配り、ハクオロを守る
[主従]:ハクオロ@うたわれるもの
[状態]:健康
[装備]:六爪@戦国BASARA
背負い袋(基本支給品)、大量のパンツ@そらのおとしもの、洋酒(木箱入り)@北斗の拳
[方針/行動]
基本方針:ハクオロを守りながら他の参加者と協力して八雲紫を討伐し、島から脱出する。基本的に参加者は殺めるつもりは無い。
1:周囲に気を配り、ハクオロを守る
[備考]
※参加時期はハクオロと同じく、アニメ20話『初陣』直前。その為、まだハクオロの正体(ウィツァルネミテア)は知りません。
※参加時期はハクオロと同じく、アニメ20話『初陣』直前。その為、まだハクオロの正体(ウィツァルネミテア)は知りません。
【風見幽香の日傘】
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング&ウォルター・C・ドルネーズに支給。
花を操る妖怪、風見幽香の持っている日傘。
一見、普通の日傘だが弾幕を防御できるくらいに頑丈。その上紫外線も完全カットしてくれる。ついでに雨傘にもなる。
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング&ウォルター・C・ドルネーズに支給。
花を操る妖怪、風見幽香の持っている日傘。
一見、普通の日傘だが弾幕を防御できるくらいに頑丈。その上紫外線も完全カットしてくれる。ついでに雨傘にもなる。
【通信用人形(青リボン)】
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング&ウォルター・C・ドルネーズに支給。
地底での異変の際に八雲紫が用意し、アリス・マーガトロイドを介して霧雨魔理沙に手渡された物。
頭のリボンを外す事で、対となる赤リボンの人形の持ち主と会話する事ができる。要するに通話先が限定されている携帯電話のような物。
本来は戦闘支援機能もあるが、このロワではその機能は取り外されている。
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング&ウォルター・C・ドルネーズに支給。
地底での異変の際に八雲紫が用意し、アリス・マーガトロイドを介して霧雨魔理沙に手渡された物。
頭のリボンを外す事で、対となる赤リボンの人形の持ち主と会話する事ができる。要するに通話先が限定されている携帯電話のような物。
本来は戦闘支援機能もあるが、このロワではその機能は取り外されている。
【ワルサーPPK】
レミリア・スカーレット&十六夜咲夜に支給。
ドイツのワルサー社が開発した小型拳銃。全長が15cm程度と小さく、士官や警官が好んで携帯していた。
007のジェームス・ボンドのメインアームとしても有名。
レミリア・スカーレット&十六夜咲夜に支給。
ドイツのワルサー社が開発した小型拳銃。全長が15cm程度と小さく、士官や警官が好んで携帯していた。
007のジェームス・ボンドのメインアームとしても有名。
【茶葉とティーセット】
十六夜咲夜とウォルターとが、市中の商店にて調達。
インテグラお嬢様が文句を言わずに飲む程度の紅茶とティーセット一式。
十六夜咲夜とウォルターとが、市中の商店にて調達。
インテグラお嬢様が文句を言わずに飲む程度の紅茶とティーセット一式。
【輸血用血液パック】
十六夜咲夜とウォルターとが、病院にて調達。
本来は失血した者に輸血するためのものだが、吸血鬼にとってはそのままおやつや食料になる。
二人はこちらの用途でこれを調達した。ちなみにレミアリはB型の血が好みらしい。
十六夜咲夜とウォルターとが、病院にて調達。
本来は失血した者に輸血するためのものだが、吸血鬼にとってはそのままおやつや食料になる。
二人はこちらの用途でこれを調達した。ちなみにレミアリはB型の血が好みらしい。
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