エデンの蛇(後編) ◆b8v2QbKrCM
圭一がアーチャーに追いついたのは、駅舎の出入り口も程近い広間であった。
幾つかの売店が並び、北口と南口の両方へ行くことができる場所だ。
「はぁ……はぁ……」
「遅い。従者ならば常に我の後を追え」
身勝手にアーチャーは言い切る。
相変わらずの物言いだったが、圭一はひとつの違和感を拭い切れないでいた。
ほんの数時間程度の付き合いではあるけれど、アーチャーの横暴さは何度も目の当たりにしてきた。
故に、解せない。
アーチャーほどに傲慢な男が、果たして自分を蹴り飛ばした相手を見逃したりするのだろうか。
ひょっとしたら、あの蛸か烏賊みたいな怪物に相手をさせて終わりにしようと考えたのかもしれない。
それなら、クーガーに向けた笑みは一体――
「我があの雑種を殺さなんだことが気になるか?」
圭一は心臓が飛び出しそうになった。
アーチャーの赤い目は、心の底まで見抜いてしまうのか。
「確かに雑種同士の殺し合いは詰まらん。が、人の身を越えた悲願を懐き――身を滅ぼす者。
そうした愚か者は見ていて飽きぬ。我が愛でるに値する死に様よ」
くく、とアーチャーは笑う。
圭一が見たこともないほどに上機嫌ではあるが、それが逆に恐ろしかった。
「如何なる願いでも叶う力とやらが餌なのだ。
凡俗ばかりといえ、これだけ集まれば一人や二人は我を楽しませる者もいるだろう。
奴は多少見所があった故にしばし生かしておくことにしたまで。
我を楽しませられないのであれば、そのとき改めて死をくれてやる」
アーチャーの哄笑が周囲に響く。
底が、ない――
ゾロの一件で、圭一はアーチャーの残虐性を理解したと思っていた。
だがそれは、ある種致命的な間違いだったのかもしれない。
人の願いや苦しみ、果ては生死すら、この魔人は己の所有物も同然に扱っている。
理解できるはずがなかったのだ。
アーチャーの価値観は、余人とは明らかに異なる位置に立脚しているのだから。
「剣士に山猫、楽しみは多ければ多いほどいい。
……話は終わりだ。これを仕舞っておけ」
アーチャーは鎧の隙間から一枚の地図を取り出し、適当に放った。
風に乗ってあらぬ場所へと落ちたそれを、圭一は慌てて拾い上げる。
多少血で汚れてはいるが、一見、何の変哲も無い地図だ。
デイパックに入っているものと違う図が印刷されているわけでもない。
違いがあるとすれば、裏面に何か文章らしきものが書かれていることくらいだろう。
圭一は地図を裏返して、血に汚れて途切れ途切れになった文章に目を通してみることにした。
――ポケベルで分かった2時までの死亡者と殺害者――
――
上条当麻 殺害者:園崎●●●●●●●●●●●●――
「……嘘、だろ?」
それ以上読み進めることができなかった。
上条当麻という人物を手にかけたらしい殺害者の姓に、これ以上なく見覚えがあったのだ。
――園崎××
ああ、知らないはずがない。
圭一は自分のデイパックの中身を床にぶちまけた。
アーチャーが怪訝そうにこちらを見たのも気にかけない。
膝を突いて名簿を広げ、縋るように視線を走らせる。
あるはずだ。
きっとあるはずだ。
自分の知る彼女達以外に、全く関係のない園崎××という名があるはずなのだ――
「……んなわけ、ねぇよな……そんな都合のいいこと……あるわけ……」
【C-4/駅舎内・出入り口付近/一日目 朝】
【
前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(中)、頭部にたんこぶ×2、頬に痛み 、強いショック
[装備]:なし
[道具]:双眼鏡(支給品はすべて確認済)、不死の酒(完全版)(空)、基本支給品×2、ゾロの地図
[思考・状況]
基本行動方針:仲間を助けて脱出したい
1:早くアーチャーから逃れたい。できれば穏便に。
2:切嗣についてアーチャーには漏らさないようにする。
3:切嗣、佐山のグループと早く合流したい(切嗣のことをそれなりに信用してます)
4:万が一のときに覚悟が必要だ
5:魔法使い……?
[備考]
※時系列では本編終了時点です
※アーチャーの真名を知りません。
※クロコの名前、カナヅチという弱点を知りました。
※
橘あすかと真紅と簡単に情報交換し、
新たに彼らの仲間等(
翠星石、クーガー、チョッパー、
ハクオロ、
アルルゥ、
カルラ、ルフィ)と、
要注意人物(
カズマ、水銀燈、
バラライカ、ラッド)の情報を得ました。
また、ゾロと
蒼星石が彼らの(間接的、直接的な)知人であることを知りました。
※切嗣の推測とあすか達との情報交換から、会場のループについては把握しています。
【ギルガメッシュ@Fate/Zero】
[状態]:胴体にダメージ(中・回復中)、不死(不完全)
[装備]:黄金の鎧@Fate/Zero、必滅の黄薔薇@Fate/Zero
[道具]:なし(圭一に持たせています)
[思考・状況]
基本行動方針:主催を滅ぼし、元の世界に帰還する。必要があれば他の参加者も殺す。
1:自分を楽しませ得る参加者を見定める。
2:ゾロ、佐山、クーガーに興味。
3:圭一が自分のクラスを知っていた事に関しては・・・?
4:宝具は見つけ次第我が物にする。 王の財宝、天地乖離す開闢の星、天の鎖があれば特に優先する。
[備考]
※不死の酒を残らず飲み干しましたが、完全な不死は得られませんでした。
具体的には、再生能力等が全て1/3程度。また、首か心臓部に致命傷を受ければ死にます。
※会場が自然にループしていることを把握しました。
※悪魔の実能力者がカナヅチという弱点を知っています。
※本編での経験から、螺湮城教本を手に入れる気にはならなかったようです。
※クーガーには強い印象を受けていますが、橘あすかのことは忘れました。
※文中台詞の"山猫"とはクーガーのことです。
◇ ◇ ◇
「どりゃあっ!」
クーガーの鋭い蹴りが異形の肉体を真っ二つに両断する。
血液ともつかない体液が噴出し、耐え難い臓物臭が辺りに立ち込める。
「……これで幾つだ?」
「今のが七体目です」
アーチャーが去ってからも異形との戦闘は続いていた。
単純な戦闘能力だけで考えれば、決して手強い相手ではない。
肉体が頑強を極めているわけでもなく、万が一触手に捕らわれたとしても、
二人で戦っている以上はフォローも容易い。
だが、いくら斃しても起き上がってくる生命力には、熟練の二人も舌を巻くしかなかった。
「……再生しているというよりは、死体から新しいヤツが出てきてる感じですね」
あすかが指摘する通り、厳密にいえば異形は再生しているわけではない。
異形を斃し亡骸にするたび、そこから絶えず新たな異形が沸いてきているのだ。
「あすか、私も……」
「大丈夫です。真紅はそこにいてください」
真紅はあすかの要請で、異形の血肉の絨毯から数メートルほど離れた場所で待機していた。
少女の外観をした真紅と、あのおぞましい怪物を戦わせたくないというあすかの思いからだったが、
当の本人は足手まといのような扱いに甚く不満そうにしている。
「ぼさっとするなよ、ムスカ……いや、あずさ」
「あすかです! 訂正した上で更に間違えないでください!
ていうか何で貴方までアイツと同じ間違え方を!」
あすかとの認識の齟齬は脇に置いて、クーガーはあすかの名を呼んだ。
当然のようにというべきか、正しい呼称ではなかったが。
そうしている間にも、次なる異形が亡骸から身を起こしていた。
槍のごとく伸び繰り出される無数の触手。
しかしそれらは二人のアルターによってあっさりと迎撃されてしまう。
何度繰り返したか分からない光景。
――それゆえの油断があったかもしれない。
エタニティ・エイトを展開して異形の攻撃を防いでいたあすかの頭上を、
三本の触手が絡み合うように高速で通り抜けていった。
狙いは考えるまでもない。
後方で一人待機している真紅だ。
「しまった!」
真紅は溜息をひとつ吐き、庭師の鋏を構えた。
ローゼンメイデンは飾られ鑑賞されるるための人形ではない。
アリスゲームという名の闘争を勝ち抜くための人形なのだ。
「真紅!」
「大丈夫よ」
折り重なり一本の巨大な鞭と化した触手が真紅に迫る。
真紅は自身の胴回りより遥かに太い鞭の一撃を軽やかに回避し、その上に降り立った。
一閃。
呆気なく触手は切り裂かれ、動かぬ肉塊に成り果てる。
「――上です!」
戦果を確認する真紅の思考に、あすかの声が割り込んだ。
反射的に天井を仰ぐ。
重力に曳かれて迫り来るは"四本目"。
これほどの知性を異形が持ち合わせていたのか、或いは単なる偶然か。
先の三本を囮として打ち下ろされた最後の触手は、真紅の反応を上回る速度で距離を詰め――
「――!」
――その眼前で砕け散った。
「何だぁ……?」
クーガーは眉を顰めた。
あれほどの不尽を誇った異形が突如としてぐずぐずに崩れ、
増殖と活動を完全に停止してしまったのだ。
「制限時間、でしょうか……」
しばし警戒してみるが、活動が再開される予兆すらない。
今度こそ本当に、異形は息絶えてしまったようだ。
クーガーはアルターを装着したまま血肉の絨毯の上を歩き、事務室の穴を潜った。
アーチャーを叩き込んだせいで内装は酷く荒れていたが、
床に落としっぱなしだったサングラスは幸いにして無傷だった。
「まさか、あれが栄養源だったんじゃないだろうな」
サングラスを掛け、クーガーは忌々しげに呟いた。
事務室の中に寝かせたままだった、名も知らぬ少年の亡骸。
頭部を砕かれた以外に外傷はなかったはずのそれが、今や原型すら留めていない。
内側から何かが飛び出してきたかのように損壊し、もはや人間一人分の質量があるのかも疑わしい。
「ただの悪趣味な本だと思っていたのに……とんでもない代物だったんですね」
あすかは床に放置されていた本を拾い上げ、埃を払った。
元はといえば自分に支給された品物だったのだが、まさかこういう形で効力を知らされるとは思わなかった。
異形との戦いを踏まえて見ると、実に魔導書然とした雰囲気を漂わせている。
「大丈夫ですか、真紅」
「……………………ええ」
真紅は、不愉快そうに、心底不愉快そうに答えた。
頭上から襲ってきた触手は真紅の目前で崩壊し、その結果――真紅は血肉を頭から被る破目になったのだ。
ねとつく手触りも、鼻腔に染みる生臭さも、服と素肌の間に滑る肌触りも、全てが不快だった。
「……ねぇ、あすか。どこかにシャワーはないかしら」
【C-4/駅舎内・事務室周辺/一日目 朝】
【備考】
※事務室内部には原形を留めていないフィーロの遺体があります。
※事務室周辺には螺湮城教本によって召喚された水魔の残骸が散らばっています。
【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:健康、全身に夥しい汚れ
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)
【思考・行動】
1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
2:早く汚れを洗い流したい。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのためC-4駅で下車し、最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:翠星石、蒼星石、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラと合流する。
6:カズマ、水銀燈、クロコダイル、アーチャーに用心する。また、水銀燈が殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める。
【備考】
※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っています。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※ルフィと情報交換をし、一回目の放送までの彼の大体の行動を知りました。
また、二人の危険人物(バラライカ、ラッド)の特徴なども簡単に聞きました。
※前原圭一と簡単に情報交換をし、彼の知人(レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣)と、
要注意人物等(アーチャー、ライダー)の簡単な情報を得ました。ライダーについては詳細ではありません。
また、対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
【橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:腹部に痛み
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0~2個(未確認)
【思考・行動】
1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
2:とりあえずクーガーと会話する。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのためC-4駅で下車し、最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:翠星石、蒼星石、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラと合流する。
6:カズマ、水銀燈、クロコダイル、アーチャーに用心する。特にカズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
【備考】
※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました(アリスゲームは未だ聞いてない)。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※ルフィと情報交換をし、一回目の放送までの彼の大体の行動を知りました。
また、二人の危険人物(バラライカ、ラッド)の特徴なども簡単に聞きました
※前原圭一と簡単に情報交換をし、彼の知人(レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣)と、
要注意人物等(アーチャー、ライダー)の簡単な情報を得ました。ライダーについては詳細ではありません。
また、対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
【
ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:深い悲しみ、左肩、右脇腹などに銃弾による傷(アルターで処置済み)、全身にダメージ(小)
[装備]:HOLY部隊制服、文化的サングラス
[道具]:なし
[思考・状況]
0:女を捜す
1:ギラーミンに逆らい、必ず倒す。
2:無常、ラズロ(リヴィオ)、ヴァッシュ、ルフィ、バラライカ(名前は知らない)、アーチャー(同左)には注意する
3:カズマとの合流。弱者の保護。
4:劉鳳を殺した人物を探し出し、必ず倒す。
5:アーチャーの言葉には……?
【備考】
※病院の入り口のドアにヴァッシュの指名手配書が貼ってあります。
※ギラーミンの名前を今後間違えるつもりはありません。
※
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚に『モヒカン男と麦藁帽子の男に気を付けろ byストレイト・クーガー』とメモ書きされています。
※C-4駅事務室入り口にフィーロの荷物が落ちています。
※通り抜けフープはバラライカの能力であると思っています。
※アーチャーに、死者の蘇生を懸けて殺し合いに積極参加するよう誘惑されました。
【螺湮城教本@Fate/Zero】
読みはプレラーティーズ・スペルブック。
第四次聖杯戦争におけるキャスター(ジル・ド・レェ)の宝具。
深海の水魔の類を召喚し使役できる。
単に魔術の知識を綴った紙束ではなく、これ自体が莫大な魔力を生み出す魔力炉であり、
使用者が魔術師でなくとも魔術を発動する「怪物」ともいえる存在。
使用者は呪文を読んで詠唱するのではなく、これを使役して魔術を行使させる形を取る。
作中では表紙を裂かれても復元したことから、ある程度の自己再生能力を持つと思われる。
クトゥルー神話におけるルルイエ異本のイタリア語訳版。
表紙は人間の皮で装丁されている。
【螺湮城教本による魔術の行使について】
使用者が魔術師であってもなくても、消耗なく使役できる。
ただしロワ内では以下の制限を受ける。
- 行使可能な魔術は水魔の召喚と治癒
- 水魔召喚中に治癒の行使は不可で、治癒の行使中に召喚も不可
- 治癒に関しては、致命傷を治すことはできない(BACCANO!の不死者と同程度を想定)
- 召喚可能な水魔は等身大のみ
- 水魔一体の召喚につき、人間一人分の死体を生贄として必要とする
- 一度生贄にした死体を再利用することはできない
- 召喚された水魔は十分後に自壊する
- 制限時間以内に水魔が倒された場合は、そこから新たな水魔が召喚される
ただし大元の一体目が召喚されてから十分経過した時点で自壊する
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最終更新:2012年12月02日 17:09