譲れない、大切な信念握りしめて◆tt2ShxkcFQ






『雑種よ。あの下郎が言っていたことを思い出せ。
 ありとあらゆる願いを叶えられ、死者を蘇らせることも容易いのだろう?
 ならば貴様が勝ち残れば良いではないか。何もかもを手にかけて、な』





クーガーの頭の中に、アーチャーの言葉がこだまする。
何度も……何度も、意味を確かめるように、反芻するかのように。
全く考えていなかったという訳ではない、だが無意識のうちにその選択肢を排除していた。
それは、クーガーの理念や思想を否定する選択肢だ。
今まで好き勝手暴れてきた……たとえ上司に逆らおうと、自分の信念に逆らった事は一度も無い。
目の前に分厚い壁があって、それを突破しなければならないのなら、自らの能力を使用して乗り越える。
だが……自分が選ぼうとしている道の壁は、今まで経験した中で一番分厚く、冷たい血塗られた壁だ。
間違えている事は分かっている。しかしこの壁を乗り越えれば……
劉鳳、自分のせいで殺されてしまった名も知らぬ少年、自分の速さが足りず、死んでしまった大勢の人。
全員を、生き返らせる事が出来るかもしれない。水守さんも悲しまずに済むかもしれない。
自分の犯してしまった失敗を、帳消しに出来るかもしれない。

そんなことは在り得ない……理解をしているつもりだがアーチャーの言葉が頭から離れない。
クーガーの心の天秤は微かに、だが確実に傾いた。
心の温度が、急速に冷めていくのを感じる。

いいだろう……どうせ残り少ない人生だ、劉鳳の為でも、水守さんの為でもない。
俺ぁやってやる、俺のためだ、俺のためにこの分厚い壁をぶち破って全てを無かった事にする。
子供や無抵抗な野郎を殺す事にもなるだろう……許してくれとは言わない、分かってくれとも言わない。
そう……カズマ、たとえお前でも……

最速の男は今、決意をした。
全てを無かった事にするため……その血塗られた道を駆け抜ける決意を。


C-4駅の事務室、先ほどからいくつもの大きな戦闘を経て
あたり一面壁に穴が空き、水魔であった肉片が飛び散り、グロテスクな様相を作り上げている。
その異様な光景と、鼻腔をつく生臭い匂いにあすかは顔を顰める。

「シャワーですか?こんな事態ですから、できれば我慢をして……」
「あら、貴方なら我慢できるというの?この肉片を頭から浴びて」

真紅は顔やドレスからできる限り肉片を拭いながら、あすかに問いかける。
拭っても拭っても、それは赤黒く伸びて肌に纏わりついている。
想像をしたのだろう、あすかは身震いをすると真紅に向き直った。

「分かりました……この後適当な民家に入ってシャワーを浴びてください。
 ですけど、あまり長居は出来ませんからね」
「分かっているわ」

二人が会話をしている間、クーガーは身じろぎもせずフィーロ・プロシェンツォであった遺体を見つめていた。
その様子に気が付いたあすかは少し考える仕草を見せるも、歩み寄ってクーガーの肩に手を置いた。

「クーガーさん、ここで会えて良かったです。
 劉鳳が死んでしまった今こそ、僕たちHOLY隊員が力をあわせて……」
「なぁ、あずさ……」
「だから、あすかですっ」
「死んだ人間って、生き返ると思うか?」
「はい?」

予想外の質問に、あすかは間の抜けた返事をした。

「ちょっと待って頂戴……この人間は、アーチャーが殺したの?」
「アーチャー……?」

フィーロの遺体を見つめながら尋ねた真紅に、クーガーは首を傾げる。

「あの金ぴか野郎の事ですよ」
「あぁ、それは違う……こいつは女が……。だが俺の責任だ、俺の速さが足りないせいで……」
「……そう」

全てを察したかの様に真紅は俯くと、クーガーに向き直った。

「さっきの発言。貴方まさか、アーチャーのあの言葉を鵜呑みにしているという事じゃないわよね」
「……」

クーガーは押し黙って、真紅を見下ろした。
自分の膝元ほどまでしかない背丈……子供にしてもいささか小さすぎるのではないだろうか。
全身が血肉で赤黒く汚れてしまっているが、泣き喚く事も無い。
おおよそ子供らしくない言動に対して若干目を張るものがあるが、
ロストグラウンドにも大人びている子供が少なくは無い。
復興を遂げた市外を除き、インナーとして生きる子供はいつまでも幼いままでは居られないのだから。

「俺の名前はストレイト・クーガー、お嬢さん。お名前は?」
「ローゼンメイデン第五ドール、真紅よ」
「そうか。真紅……貴女に理解をしてもらう必要はない。
 俺は俺の文化、正義を信じるだけだ」
「それが、このゲームに優勝をして死んだしまった人間を生き返らせると。そういうの?」
「……」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

もはや互いに睨み合いながら話し合っていた二人に割り入るように、あすかは声を上げる。

「クーガーさん、何を言っているんですか」
「あずさ、お前は水守さんが絶望に打ちのめされる顔を見る事に耐えられるか?
 少なくとも俺には無理だ、あの人には劉鳳が必要だった。いや、必要なんだよ。これからもな……
 お前ならよく分かるだろう」
「あすかですって!水守さんって……確か本土から来た人ですよね?
 僕なら良く分かるってどういう意味ですか」
「……さっきもそうだが。どうしちまったんだあずさ、まるで記憶が抜け落ちて……」
「何を言っているんですかクーガーさん、僕は正常ですよ!
 そんな事より……このゲームに乗るってどういう事ですか!」
「そのままの意味だよ、優勝してギラーミンとか言う野郎をぶち殺す。
 そんでもって劉鳳を……死んだ人間を全員生き返らせる」

クーガーの言葉を聞いて、あすかは目を見開いてその瞳を振るわせる。

「愚かね……」

クーガーを見上げながら、真紅ははっきりとそう呟いた。

「あぁ、そうかもしれないな。愚かでも構わないさ。
 俺はここに来てからすでに数え切れないほどのミスを犯している。
 もうこれ以上間違えるわけには行かないんだ。君に分かってもらえるとも思っては居ない」
「……命は、そんなに軽いものじゃないわ」
「その通りだ、だがそれを蘇らせる方法があるとするならば」
「ギラーミンの言葉を、信用する事が出来るの?」
「だが絶大な力を持っている事は確かだ、可能性はあるさ」

「馬鹿な事を言わないでくださいっ!!」

あすかは真紅とクーガーの間に割り込むと、クーガーを見つめて叫んだ。

「馬鹿な事……?」
「参加者全員を殺して願いを叶えるなんて……
 HOLY隊員としての誇りは何処に行ってしまったのですか!!
 だいたいそんな事、劉鳳が望むわけが……」
「おいおいあずさ、勘違いをしないでくれ……
 別に劉鳳のためでも水守さんの為でもない……俺のためにやるんだ」
「えっ……」
「俺が選ぼうとしている道は間違っている、そんなことは百も承知だ……
 その為の言い訳に二人を使うわけが無いだろう」
「どうして……」
「さあ、もう話し合いに意味は無い。
 すまないが死んでくれないか……あすか」

クーガーは何時もよりも低いトーンで、そう吐き捨てた。
そして右手でサングラスを抑えながら、若干の距離をとると。
両足の踵を揃えてありったけの声で叫ぶ。

「ラディカル!グッドスピィィィィドォ!脚部限定!」

その叫びに答えるかのように、近くの地面は大きな音をたてて粒子の粒へと姿を変える。
そのそうして出来た穴が二つ、三つと開くと、虹色の粒子がクーガーの足に絡みついて
銀色と紫色を基調とした輝く流線型の装甲が姿を現した。

「クーガーさん、待ってくださいっ」
「問答無用っ!ヒール・アンド・トゥーーッ!」
「エタニティ・エイト!!」

クーガーは地面を蹴り、一直線であすかへと蹴りを繰り出した。
ぐんぐんと、目にも留まらぬ速さで接近するクーガーに対してあすかができる事は多くなかった。
とっさに呼んだ自らの八つの宝玉。
その緑色の光る宝玉が、あすかの手の前でぐるぐると回る。
間一髪、その盾でクーガーの蹴りを受け止めるが、
衝撃を受け止める準備は全くといっていいほど出来ていなかった。
あすかは僅かにも踏ん張る事は出来ず、数メートル後方のコンクリート壁を突き破って姿を消した。

そしてその場に残されたのは、凛として相手を睨みつける人形と。
無表情で、その人形を見つめる長身の男のみだ。

「真紅、逃げてくださいっ!」

真紅の後方からあすかの叫び声が聞こえる、どうやら無事なようだ。
その声に安堵しながらも、真紅は目の前のクーガーから目が離せなかった。
目にも留まらぬ攻撃……先ほどの水魔との戦い、今の蹴りを見て分かる。
ローゼンメイデン同士での殺し合い……アリスゲームを通じてなまじ戦闘経験があるからだろうか。
真紅は分かっていた。この男には、どう足掻こうが勝つ事は出来ない。
もし一撃でも蹴りを貰えば、自分の体は脆くも崩れてしまうだろう。

「真紅、恨みは無いが。ここで死んでもらおう」

サングラスをかけているせいで相手の瞳を見る事は出来ない。
だが、どこか悲しそうなその声を聞いて真紅は瞳を閉じた。
僅かに震える腕に力を入れて、その震えを押さえ込む。

「言葉に出来る寂しさは、誰かが慰めてくれる」

どこか寂しそうに、訴えるように。
真紅は口を開く。

「言葉にしない悲しみは、自分で乗り越えていくしかないのだわ」

クーガーは、そんな真紅の言葉を微動だにせず聞いている。
やがて真紅はその瞳を開いてクーガーの顔を見上げる。

「貴方は全てを一人で抱え込んで、乗り越える道を選ぶというの?」
「……」
「とても重い……押しつぶされそうになってしまうほどの重み。
 けど、それが貴方の選んだ道なのだとしたら、貴方はそれでいいのかもしれない。
 でもね、残された人はどうするの?」
「何……?」
「その水守さんという人は、貴方や死んでしまった人間をいつまでも探し、待ち続ける」

クーガーは口をあけたまま、真紅を見下ろしている。

「劉鳳さんという人は勇敢に闘ったのでしょう?だとしたら、それを伝えてあげなくてはいけないのではなくて?」
「だが、そんな事を言えば……」
「悲しむでしょうね。でも、乗り越える事は出来る。
 けれど、立ち向かう事さえ出来ない悲しみは。乗り越える事は出来ないのよ。
 私も伝えなくてはいけない、ジュンの事……のりに、雛苺に」

真紅は右腕をクーガーに向けると。
その手のひらからは数枚の真っ赤な薔薇の花弁が舞い始める。

「それでも優勝を目指すというのなら、私は貴方と戦うわ。
 私も譲れないの、負けるわけには行かない。
 貴方を止めてみせる……ローゼンメイデンの誇りにかけて」

クーガーは数歩後ずさり、顔を歪ませる。
自分の選んだ道が、水守さんをさらに傷つける?
目の前の小さな少女が言った言葉に、決心したはずの道が大きく揺らぎ始めた。

「真紅!無事ですか!?」

後方の壁からやっとの思い出這い出て来たあすかは、真紅をみると安堵の顔を浮かべる。
駆け寄ってきて真紅の前に立つと、クーガーに向かってその右手を差し向けた。

「エタニティ・エイト!!」

あすかの叫びに答えるよう、八つの宝玉のうち四つがあすかと真紅を守る様に。
残りの四つはクーガーの動きを遮るように、辺りを漂う。

「だが……俺は……」
「クーガーさん、ギラーミンの最初の言葉を思い出してくださいっ!」
「何……?」
「ギラーミンを殺して、何でも願いの叶う力が手に入るというのならば。
 必ずしも優勝をしなくてもいいはずですっ」

あすかの言葉に、クーガーや真紅は呆気に取られたように目を見開いた。

「こんなふざけた殺し合いを潰して、全員でギラーミンを叩き潰す。
 そしてその願いを叶える力とやらを奪えばいいじゃないですか」

クーガーの決意を根本から台無しにするその一言を、あすかは大声で叫んだ。


  ◇   ◇   ◇


「何だよ社長!そんな事考えてたのならもっと早く言ってくれよ!!
 何時も言ってるだろう?速さこそ全てだ!!
 もっと早く言っていたのなら、社長を蹴らずにすんだ!
 こうも早く打ち解けることが出来たんじゃないか!!」
「だから社長ってなんですか!あすかですって!」
「いや~、まさかギラーミンのやろうが時間まで操る事が出来るとは思わなかった!
 まさかあずさが除た……カズマの野郎に負けた直後から来てるとはな!」
「だからあすかですって!じょた……なんですか?」
「まぁ、気にするなよ!
 それにしても、まさかつんくが人形だったとはなぁ」
「真紅よっ!何故急に間違え始めるのかしら……」
「赤黒く汚れてたからな、人間と区別がつかなかったのさ!」

二人と一体の人形は、駅の裏。
地面がやわらかく、土が露出しているその場所に。
フィーロの遺体を埋めて……
勿論バラバラになってしまった全てをかき集める事が出来るわけも無く。
グロテスクになってしまった遺体だけを何とか埋めて。
その近くで情報交換をしていた。

「さて……大分時間がかかってしまったな。
 ラディカル!グッドスピィドォォ……脚部限定!」

クーガーの叫びと共に、再び地面が抉れて。
その銀色と紫色の装甲が姿を現した。

「……やはり、一緒には動けないの?」

真紅はクーガーを見つめて言った。

「あぁ、これからはより一層迅速に!物事を進めなくてはいけないからな!
 あの女も追わなければいけないし、ゲームをぶち壊すのなら仲間が欲しいだろう」
「忘れないで下さいよ。3時頃にまた、このC-4駅で合いましょう。
 もし会えなくても……僕たちは電車に乗ってG-7駅へと向かいます」
「あぁ、分かってる。絶対に死ぬなよ、あずさ、つんく」
「あすかですっ!」「真紅よっ!」

ムキになって言い返した二人を見つめると。
ニッと笑ってサングラスをかけなおす。
そしてクーガーは、目にも留まらぬ速さで駆け抜けだした。
ぐんぐんと二人は小さくなっていく、そしてその姿が見えなくなったとき。
クーガーは考えた。

(劉鳳……絶対お前を生き返らせて、そして一発蹴ってやる。
 水守さんを泣かそうとしているお前を、俺は簡単にはゆるさないからな……
 だが、もしこのゲームを潰す事が不可能だとしたら……その時は)

【C-4/駅周辺/一日目 午前】

【備考】
 ※駅の裏手に、フィーロの墓が作られました。単に埋めたのみ、墓標はありません。
 ※駅内事務室周辺には螺湮城教本によって召喚された水魔の残骸が散らばっています。


【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:悲しみ、左肩、右脇腹などに銃弾による傷(アルターで処置済み)、全身にダメージ(小)
[装備]:HOLY部隊制服、文化的サングラス
[道具]:支給品一式、タイム虫めがね@ドラえもん
[思考・状況]
 0:女を捜す
 1:ギラーミンに逆らい、必ず倒す。そして死んでしまった人たちを生き返らせる。
 2:無常、ラズロ(リヴィオ)、ヴァッシュ、バラライカ(名前は知らない)、アーチャー(同左)水銀燈、クロコダイル、には注意する
 3:カズマとの合流。弱者の保護。
 4:劉鳳を殺した人物を探し出し、必ず倒す。
 5:PM3時までにC-4駅に向かい。あすか、真紅と合流する。
 6:もしゲームが壊せないと分かった、その時は……?
【備考】
 ※病院の入り口のドアにヴァッシュの指名手配書が貼ってあります。
 ※ギラーミンの名前を今後間違えるつもりはありません。
 ※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書×二枚に『モヒカン男に気を付けろ byストレイト・クーガー』とメモ書きされています。
 ※通り抜けフープはバラライカの能力であると思っています。
 ※どちらの方角へ進むかは、次の書き手さんにお任せします。
 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。


  ◇   ◇   ◇


「……ぬるい、淹れなおして頂戴」
「なっ、人がせっかく紅茶を淹れて上げたのに。
 そんな言い方は無いんじゃないですかっ」

C-4エリアのとある民家。
頭から触手による血肉を被ってしまった真紅は、その不快感を拭う為、駅に程近い民家に立ち寄っていた。
シャワーから上がったばかりなのか、真紅は上気した頬であすかを見つめながら紅茶の淹れ方を説明している。
そして印象的であった真っ赤なドレスを部屋の壁につるして乾かし、この家から調達……もとい借りたTシャツに腕を通している。
露になった真紅の腕……肘の辺りには球体間接、人形である証が見えた。

「ちょっとあすか、聞いているの?」
「はいはい、聞いていますよ。
 ですけど僕は紅茶を淹れ直すつもりはありませんので」
「……全く、今度の下僕にはここから教えなければいけないようね」
「ま、また貴女は……僕は下僕ではありませんっ」

丁度リビングに当たるのだろうか。
6人掛けのテーブルで向かい合うように二人は座り、口論をしている。

「全く、そんな事よりこれからどうするか。ですよ」
「……」

言い合いを遮るかのようにあすかは言い切ると、テーブルの上に地図を広げた。
言っていることは正論だが……何故かあすかに言われると面白くない。
真紅は顔を顰めながら、散々文句を言っていた筈の紅茶を口に含んだ。

また今までのように、勝手に行き先を決めるのだろう。
そう思い込んでいた真紅だが、いつまで経ってもあすかは口を開かない。
疑問に思いながら相手の顔を見上げると、珍しくあすかは俯き、地図の一点をただただ見つめている。

「……心配なの?クーガーの事が」

真紅は相手の瞳を見つめながら、そう呟いた。

「僕は、特別クーガーさんと親しかった訳ではありません」

あすかは真紅の問いに答えるように、俯いたまま答え始めた。

「ですが、尊敬はしていたつもりです。同じHOLY隊員として。
 だから分からないんです、どうしてクーガーさんがあんな考えを……」
「分からなくていいのだわ」
「えっ……?」
「その気持ちが分かるという事は、身が裂かれるほどの悲しみに身を晒すと言う事よ」
「……」

あすかは真紅を見つめる、その瞳はとても優しくこちらに向けられている。
『言葉にしない悲しみは、自分で乗り越えていくしかないのだわ』
先ほど真紅が言った言葉の意味が、少しだけ分かった気がした。

真紅はジュンという人物が死んだと分かったとき、何も言わなかった。
……強い、とても強い心を持っている。素直にそう思った。
もしキャミィがこの場に居て、死んでしまったら。僕はそれを自分で乗り越えられるだろうか?
……分からない、分かりたくない。
『分からなくていい』真紅はそう言ってくれた。
だからきっと、分からなくてもいいんだ。
けど、クーガーさんや真紅を見て分かった事がある。
当たり前だけど、大事な人が死んでしまうという事は簡単なことじゃない。
僕は考えていた以上に、ずっと……
もうこれ以上、こんな悲しい思いをする人を作っちゃいけない。
作らせない……僕のこの「エタニティ・エイト」の力で。
目の前の分厚い壁を打ち砕いて進んで見せる……HOLY隊員の誇りにかけて。

「それより、次の目的地だけど。ここがいいんじゃないかしら」

真紅はあすかの様子を気にする事も無く、その小さな指で地図の一部を指差した。

「……図書館ですか?」
「えぇ、そうよ」
「どうして……」
「本とは、人間が記録を残すために作り出した物。人類最大の発明といってもいいわ」
「……はぁ」
「首輪の事や、このくだらないゲームの事が書いてある本が……何かあるかもしれないわよ」
「まさか……」
「可能性は高くないけれど、行って見る価値はあると思うわ。
 それに、ゲームの事は分からなくても。一体この土地が何処なのか……
 何処ならばあすかの言っていたループをさせている『何か』を隠しやすいのか、ヒントを掴めるかも知れないじゃない」
「……そうですね、行って見る価値はありそうです」

次の目的地を図書館へと決めた二人は、荷物をまとめ始める。
真紅は顔を顰めながら、まだ湿っぽいドレスへと腕を通した。
人間ではないから風邪を引く心配は無いが……寒くて仕方が無い。
あすかが淹れた紅茶を飲み干すと。真紅は自分のデイバックを持ち上げた。

「ねぇ、あすか」
「なんですか?」
「……一つ、お願いがあるのだけれど」

荷物を纏めて、自分のバックを持ち上げたあすかは首を傾げる。

「誓ってくれないかしら、私のローザミスティカを守ると」
「は?」

  ◇   ◇   ◇



「嫌ですよ!絶対に嫌です!
 そのアリスゲームって言うのに巻き込まれるのも嫌ですし、僕の力を吸われるのも嫌です!」
「……そう」

真紅は少し俯きながら、あすかの隣をひょこひょこと歩いている。

「真紅なら僕が守るから、いいじゃないですか。
 大体真紅は戦いには向いてないんですよ。
 あの触手だって、最後は運が良かった様なものじゃ……」

キッとあすかを睨みつけると、真紅はあすかの脛を思い切り蹴飛ばした。
鈍い音が響き、思わずあすかは足を抱えて片足で跳びはねている。

……あすかの言っている事は正しい。
ローゼンメイデンは、闘う事を運命とされているドール……
だが、戦いだけが目的で作られた訳ではない。
しかし、闘えないわけでもない。
ローゼンメイデンが力の真価を発揮するのは、
媒介……人間を通して力を貰える時だ。
今までの媒介、契約をしていた桜田ジュンは死んでしまった。
相性はジュンとの間ほど良いとは思えないが、それでもあすか自体の身体能力はジュンとは比べ物にならない。
もしあすかと契約をする事が出来れば、戦闘能力は今より数段上がるだろう。
力不足を痛感し、このままでは足手まといでしかない自分を変えようとあすかに契約を持ちかけるが。
相手にもされずに断られてしまった。

隣で文句を言っている少年を見上げる。
短い間だが、今まで行動を共にしてきて分かる。
自分勝手で、相手の事を考えるという事に欠けるが。根は悪い人間ではない。
正義感が強く、とても真っ直ぐな人間だ。
……守られるだけではない。あすかも、翠星石も、蒼星石も……水銀燈も。
みんなを守れる力が欲しい。

駅から図書館までへの一本道を、一人の青年と一体の人形が歩んでいく。
絶望や悲しみ、狂気に包まれているこの会場で、一筋の光を捜し求めて……



【C-4/駅周辺/一日目 昼】

【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:健康、ドレスが湿っていて不快
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)
【思考・行動】
 1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
 2:図書館へ向かい、情報収集をする。
 3:PM3時までにC-4駅に戻り。クーガーと合流する。
 4:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 4:ループを生み出している何かを発見する。
 5:翠星石、蒼星石、ゾロ、チョッパー、ハクオロアルルゥカルラと合流する。
 6:カズマ、水銀燈、クロコダイル、アーチャー、無常、ラズロ(リヴィオ)、ヴァッシュ(名前は知らない)、バラライカ(同左)に用心する。また、水銀燈が殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める。
 7:誰かと契約したい。しかし誰でもいいという訳ではない、あすかが望ましい。
【備考】
 ※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
 ※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っています。
 ※蒼星石については、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※ルフィと情報交換をし、一回目の放送までの彼の大体の行動を知りました。
  また、二人の危険人物(バラライカ、ラッド)の特徴なども簡単に聞きました。
 ※前原圭一と簡単に情報交換をし、彼の知人(レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣)と、
  要注意人物等(アーチャー、ライダー)の簡単な情報を得ました。ライダーについては詳細ではありません。
  また、対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
 ※クーガーと情報交換をし、要注意人物(無常、ラズロ、ヴァッシュ、バラライカ)の情報を得ました。
 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。



橘あすか@スクライド(アニメ版)】
【状態】:腹部に軽い痛み
【装備】:HOLY部隊制服
【所持品】:基本支給品一式、螺湮城教本@Fate/Zero、不明支給品0~2個(未確認)
【思考・行動】
 1:ギラーミンを倒し、元の世界へ戻る。
 2:図書館へ向かい、情報収集をする。
 3:PM3時までにC-4駅に戻り。クーガーと合流する。
 4:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。そのため3時までは辺りを探索、その後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
 5:ループを生み出している何かを発見する。
 6:翠星石、蒼星石、ゾロ、チョッパー、ハクオロ、アルルゥ、カルラと合流する。
 7:カズマ、水銀燈、クロコダイル、アーチャー、無常、ラズロ(リヴィオ)、ヴァッシュ(名前は知らない)、バラライカ(同左)に用心する。特にカズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
【備考】
 ※参戦時期は一回目のカズマ戦後、HOLY除隊処分を受ける直前(原作5話辺り)
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました(アリスゲームは未だ聞いてない)。
 ※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
 ※ルフィと情報交換をし、一回目の放送までの彼の大体の行動を知りました。
  また、二人の危険人物(バラライカ、ラッド)の特徴なども簡単に聞きました
 ※前原圭一と簡単に情報交換をし、彼の知人(レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣)と、
  要注意人物等(アーチャー、ライダー)の簡単な情報を得ました。ライダーについては詳細ではありません。
  また、対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
 ※クーガーと情報交換をし、要注意人物(無常、ラズロ、ヴァッシュ、バラライカ)の情報を得ました。
 ※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。




時系列順で読む


投下順で読む


Back Next
エデンの蛇(後編) ストレイト・クーガー "Radical Good Speed"(前編)
エデンの蛇(後編) 真紅 ALteration In Closed Eden
エデンの蛇(後編) 橘あすか ALteration In Closed Eden


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年12月03日 01:30