砂鉄の楼閣(後編)◆/VN9B5JKtM
1. 魔女は己が罪業を暴かれ Witch_the_1st-G.
暗い病院の廊下、曲がり角の向こう側で明かりが灯る。
曲がり角から転がるようにしてナインが飛び出して来る。その直後、轟音と共に炎が噴き出し壁を焦がす。
再び明かりの落ちた廊下で、
ミュウツーはナインに念を送る。
『少しは落ち着け。無闇に突っ込んで行っても勝てる相手ではないだろう』
「うるさい。私は別にあんたから殺してやってもいいのよ?」
『だから落ち着けと言っている。オレ達は何のために手を組んだ?』
怒りと憎しみの篭った目で睨まれる。
今のナインはどう見ても冷静ではない。これ以上怒りを買えば本気で襲って来かねない。
『心配するな。オレもお前の邪魔をするつもりはない。要は自分の手でヤツを殺したいのだろう?』
「ええ……ついでに言うとあんたも殺したいところだけどね」
ラッドは病院の東廊下、そのほぼ中央に陣取っている。前後どちらから攻撃しても、辿り着く前に炎に飲み込まれる。
だが、内側には病室を挟んで中庭がある。前後が駄目なら横を突けば良い。
『オレがしばらくヤツを引き付ける。お前はその間に中庭を通ってヤツの近くの病室に移動しろ。接近すればあの武器も怖くないだろう』
「ふうん、自分から囮になってくれるなんて、随分と殊勝な心がけじゃない」
『オレはなるべく消耗せずにヤツを倒したいだけだ。距離があればヤツの火炎放射をかわすのは訳無いからな』
「……いいわ、乗ってあげる」
そして中庭に駆け出すナインを見送ると、ミュウツーは曲がり角から飛び出す。
直後、予想通りに炎が放射される。
「あぁん? 何だ、宇宙人野郎じゃねえか。テメェも焼かれに来たのかぁ? つーかテメェは俺を利用するんじゃなかったのかよ?
あー、まぁそんな事は今更どうでもいいか。何たって、テメェはここで俺にぶっ殺されるんだからな!
できれば一番最後にぶっ殺したかったけどよぉ。テメェから死にに来るんならしょうがねぇよなぁ!」
ラッドが叫びながら炎を撒き散らす。
床が、壁が、天井が焼け焦げるが、火災報知器が警報を鳴らす気配はない。
どうせ参加者以外の利用者は居ないのだから意味がないという事か。
そんな事を考えている内に、ラッドの隣の病室から、ドアを突き破ってナインが飛び出してきた。
首を狙った斬撃を横に飛んでかわすと、ラッドは素早く火炎放射器をデイパックに仕舞い、両手を胸の前で構える。
「
ラッド・ルッソ! ナナリーの仇……お前は、私が――殺す!!」
「おいおいおい、確かにあのお嬢ちゃんを殺したのは俺だけどよぉ、それについてはあっちの宇宙人野郎も同罪じゃねぇのか?
つーかその前にあっさり捕まって人質にされたテメェはどうなのよ?
テメェが捕まらなきゃあのお嬢ちゃんもあんな簡単には死ななかったんじゃねぇのか?
何たってあんなバカでけぇロボットに乗ってやがったんだしよぉ! このロボットがあるから自分は死にません、とか思ってやがったんだろうなぁ」
「ッ……黙れっ!」
怒りで攻撃が単調になっているが、それでも武器がある分ナインの方が有利か。
あれなら自分が手を出さずとも大丈夫だろう、ミュウツーがそう考えた瞬間。
戦闘中の二人の横に砲弾が撃ち込まれ、病院の廊下に猛毒のガスが広がった。
◇ ◇ ◇
話は放送直後まで遡る。
ギラーミンの放送を聞き終えたゼロは、デイパックの口を開いて地図と名簿を乱暴に投げ込むと、身を沈めていたソファーから立ち上がった。
ナナリーが死んでしまった今、ゼロにとっては誰が死のうが関係ない。
強いて言えば戦闘力の高い参加者や徒党を組んだ参加者、自分を警戒している参加者に死んで欲しい、その程度だ。
(残り24人、殺し合いは順調に進んでいるようだな。
やはり
水銀燈は生きていたか。できれば悪評を広められる前に始末しておきたいが、奴自身も殺し合いに乗っている。今は放置していてもさほど問題はあるまい。
それよりも優先すべきは先ほどの連中だ。奴らは殺し合いに反抗している上に実力もある。何よりC.C.の姿を見られているのが致命的だ。
危険人物としてC.C.の情報が広がるのも時間の問題か。今後はルルーシュの姿も使う必要が出てくるかも知れないな……)
頭の中で素早く考えを纏めると、ゼロは移動を開始した。
疲弊した体は更なる休息を欲していたが、いつまでも休んでばかりいられない。
いくつかの理由から、最初の目的地にはE-3エリアの中央にあるホテルを選んだ。
まず近い。ゼロの現在地はE-3の西側、ホテルまでは歩いて数分の距離だ。
そして駅と市街地の中間に位置するここは、殺し合いを良しとしない参加者が拠点としている可能性がある。
それに何より。
(ナナリーの遺体を保存するためには大量の氷が必要だ。ホテルならば業務用の大型製氷機があるかも知れないからな……)
それから十分後、ゼロは――いや、ルルーシュはホテルの浴場に居た。
幸いこのホテルには大浴場があったため、まずはナナリーの遺体を清める事にしたのだ。
「ナナリー……」
ありったけの慈しみを込めて。丁寧に、丁寧にその身を清めていく。
白く滑らかな肌には火傷の跡が残り、見れば見るほど痛々しい。
その顔が苦悶に歪んでいる訳ではなく、眠っているように穏やかな表情を浮かべている事が唯一の救いだろうか。
ルルーシュはナナリーの体を洗い終えると、バスタオルで優しく包み込み、そっと抱き上げる。
「ナナリー……お前はきっと悲しむんだろうな……。それでもオレは……お前を殺した奴を、許せそうにない……!」
浴場を後にしたゼロは、氷を手に入れるためレストランに向かった。
厨房を覗くと、期待通り大型の製氷機を発見する事ができた。中にはギッシリと氷が詰まっている。
大き目のポリ袋に氷を入れてタオルでくるみ、ナナリーの遺体を取り囲むようにデイパック内に並べる。
これで遺体の保存はできるだろう。あとは速やかに他の参加者を探して殺し、ナナリーを生き返らせるだけだ。
ゼロは他の参加者を探すため、ホテルの全部屋を見て回ることにした。
そして一つの部屋の前に立ちドアに手を伸ばすが、鍵がかかっていて開かなかった。その隣も、向かい側も同様だ。
鍵、出来ればマスターキーが無いかとフロントに向かうと、ご丁寧に全部屋の鍵が揃って並べられていた。離れた位置に一つだけぽつんと置かれているのはマスターキーだろうか。
こんな目立つ位置に鍵が置いてあるのに、わざわざドアの鍵を壊して侵入するようなバカは居ないだろう。どうやら一部屋ずつ見て回る必要は無くなったらしい。
レストランなどの施設にも人影は無かったため、ゼロはホテルの利用者は居ないと判断して立ち去った。
次にゼロが向かったのは劇場だ。
傍の地面には大穴が開き、壁には戦いの爪痕が刻まれている。
ここで大規模な戦闘があったのは間違いない。ならば首輪の一つでも見つかるかも知れない。
そう考え探索を開始しようとした瞬間、魔王の聴覚が僅かな物音を捉えた。
物陰に身を潜め、耳を澄ます。
音の正体は北から高速で近づく足音、それも複数。
程なくして、北から病院方面へ向かう一団が現れた。
人数は四人、その誰もが身に纏う雰囲気からして只者ではない。
その内の一人は恐らく
サカキの情報にあったメイド服の女。
それに何より四人の間に漂うピリピリとした雰囲気が彼らの関係を物語っている。
(なるほど、勝ち残るために手を組んだか)
放っておけば勝手に参加者を減らしてくれるだろう。ならば無理に接触する必要はない。
ゼロはそう考え、物陰に隠れて四人をやり過ごそうとした。
その中の一人、黒の騎士装束を纏う女に気付くまでは。
(なっ……! ネモだと!? あの女……間違いない。奴が……ナナリーの埋葬者――!)
ナイン・ザ・コードギアス。ナナリーと行動を共にし、その死を看取り、必ず蘇生させると誓いを立てた――ナナリーの騎士。
その身に纏う衣装は、“ナイトメア・オブ・ナナリー”の称号と“コードギアス”の名と共にネモから託されたもの。
そしてC.C.にはそれが、ナナリーの墓の傍らにあった土くれと同じ、ネモの成れの果てだと一目で分かってしまった。
ゼロの中のルルーシュが暴れだすのを抑えつける。
自分は瞬間移動の連続行使による疲労が残っている。それに対して相手は相当な実力者が四人、明らかに分が悪い。
幸いルルーシュにもここで戦っては不利だと判断する程度の理性は残っていた。
奴らが他の参加者との戦闘に入ったら隙を見て殺す。そう決意を固め、ゼロは四人の後を追った。
当然ゼロは病院付近での戦闘中、白スーツの男を追って女が病院内に飛び込んだ時も迷わず女を追跡した。
そして病院内での女と白スーツの会話から、女の他に白スーツと異形がナナリーの死に関わっていると知る。
この情報からゼロは『女とナナリーを白スーツと異形が襲撃。マークネモで応戦するが、異形の手によって女が人質に取られたせいでナナリーが白スーツに殺された』と推測した。
本当はもう一人、
園崎詩音も関わっているのだが、それはゼロが知るはずもない。
ここで明確な仇を見つけたルルーシュの怒りが爆発する。今度はC.C.も止めようとはしなかった。
ナナリーを殺した白スーツの男、それに加担した異形、そしてナナリーを守れなかった無力な騎士。
三人の罪人に等しく死を与えるため、ゼロは毒ガス弾、MH5を撃ち込んだ。
静寂に包まれた病院の廊下に、カツ、カツと硬質な靴音が響いては消えてゆく。
まるで滲み出るように、薄闇の中から現れたのは漆黒の魔王。
「異形は逃したか。瞬間移動の類か、それとも毒に耐性でも持っていたか……いずれにせよ毒で死なぬのならばこの手で首を刎ねるまでだ」
毒霧が晴れゼロが姿を見せた時、その場に残っていたのは白スーツの男だけだった。
異形の姿は忽然と消え失せ、女の居た場所からは廊下の奥に何かを引きずったような跡が続いている。
ゼロは一人残された男に声をかける。
「猛毒の味はいかがかな?」
「テ、メェ……ぶっ殺す……」
「ふむ。お気に召して頂けたようで何よりだ」
ラッドの左肩に足を乗せ、体重を掛ける。
ベキベキ、と枝を踏み折るような音が鳴り響き、靴裏から骨が砕ける感触が伝わってくる。
「一応名乗っておこうか。私は魔王ゼロ、貴様を断罪する者だ」
そう宣言すると同時、ゼロは無造作にラッドの左腕を掴み、引っ張った。
筋肉が、血管が、神経が。ブチブチと千切れ、肩から先が引き千切られる。
「ガッ、アアアァァアッッ!!」
「ナナリーを手にかけたその罪、万死ですら生温い。貴様は虫ケラのように殺してやろう」
右腕をもぎ取る。左膝を踏み潰す。右足をねじ切る。右肩を踏み砕く。肋骨を踏み折り、臓腑を握り潰し、顔面を蹴り潰す。
「理解できたか? 貴様は――魔王の逆鱗に触れた」
ゼロは止めを刺すため破魔の紅薔薇を手に取り、目線を下ろしたところで、自分を見上げるラッドの視線に気付いた。
――気に食わない。
コイツはナナリーを手にかけた大罪人だ。
己の罪を悔いながら惨めに死んでいかなければならない、それなのに。
毒に体の自由を奪われ、魔王の膂力で四肢をもがれ、全身をズタボロにされて死を目の前にしたこの状況でも、コイツは自分を殺す事しか考えていない。
コイツには正義も理想も何も無い、ただの殺人狂だ。
生きるために殺すのではなく、殺すために生きる、そんなタイプの人間。
この殺し合いで人を殺すのも、己が生き残るためでもなければ優勝して『力』を手に入れるためでもない。殺したいから、ただそれだけの理由。
そんな人間にナナリーの命を奪われた事が、ゼロにはたまらなく許せなかった。
ゼロの怒りを助長するかのように、狂った笑みを顔に貼り付け、殺人狂が口を開く。
「おい、仮面野郎。魔王だか何だか知らねぇが、テメェは今こう思ってんじゃねぇのか?
コイツの手足は俺がぶっ千切ってやった、これでもうコイツは文字通り手も足もでねぇ。
こんな死にかけのイモムシみてぇに這いずる事しかできねぇ野郎に俺が殺されるわけがねぇ、ってなぁ!」
「ふん、当然だ。我はゼロ、魔女C.C.との契約により不死を継承した魔王だ。
貴様のような只人に滅ぼされる道理などなかろう」
その一言が。
刀を鞘に収めるように。
鍵穴に鍵を差し込むように。
パズルの最後のピースをはめるように。
最初からそれに合わせて作られた物のように。ラッドの頭の中にスルリと入り込み、カチリとはまり込む。
――殺意のスイッチが入る。
「ヒ、ハハハ、ヒャァッハハハハァ!! そうかいそうかい、テメェがそうだったのかよ! やっと会えたぜ。なぁ、『不死者』さんよぉ。
ヘヘッ、嬉しいぜぇ……! 思った通りだ、最ッッ高に緩み切ってやがる。
――決定だ。テメェは殺す。絶対に殺す! 死んでも殺す! 何が何でも殺す! 誰が何と言おうと殺す! 完膚なきまでに殺す!
殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺し「遺言はそれだけか?」
ラッドの不快な叫び声を断ち切るように、破魔の紅薔薇が振り下ろされる。
槍の穂先がラッドの背を貫き、紅く染まった床に墓標のように突き立つ。
昆虫の標本のように磔にされたラッドがビクビクと痙攣を繰り返し、溢れ出た鮮血が血溜まりを広げる。
僅かに漏れる呻き声が聞こえなくなったのを確認したゼロは、ラッドのデイパックを拾い上げ中身を自分のデイパックに流し込む。
そしてラッドの首を切り落とし首輪を回収するため、和道一文字を取り出そうとデイパックに手を入れ。
(待てよ。死体の首を狩るのは後でも出来る、それよりも今は逃げた女だ。
何かを引きずったような跡……これは恐らくあの女が這って移動した跡だろう。
つまり奴は毒ガスで満足に動けない。まだ病院内に居ると見て間違いないだろうが……。
放っておけば仲間と合流する可能性もある。解毒剤が支給されている可能性も否定できない。先にあの女を追うべきか)
そう思い直し踵を返すと、ナインを追って歩き出した。
背後でラッドが再生を始めた事に気付かずに。
ゼロの誤算。それは四肢を引き千切られ、内臓を潰され、その身を串刺しにされてもなお死なない者――不死者の存在だ。
「あー、痛ぇ。痛ぇなぁ、チクショウ。俺が覚醒してなかったら間違いなく死んでたぜ?
にしてもあのヤロウ、自分で魔王とか名乗るだけあってマジでとんでもねぇな。蝶の羽でも毟り取るみてぇに、俺の手足を軽々と引き千切りやがった。
それだけでも十分に化物だってのに、おまけに不死者だぁ? そりゃぁあんな風に、俺が死ぬはずがない、なんて態度を取りたくもなるよなぁ。
でもな、仮面野郎。言ったはずだぜ? テメェは死んでも殺すってよぉ……!」
異形が消え去り、魔女が逃げ去り、そして魔王が立ち去った戦場跡で。
残された狂人が一人。静かに、静かに殺意を燃やしていた。
【E-5 病院内1階東廊下/一日目 夜】
【ラッド・ルッソ@BACCANO!】
【状態】:四肢断裂、両肩骨折、肋骨骨折、顔面骨折、脇腹に裂傷、内臓破裂、腹部貫通(破魔の紅薔薇で串刺し状態)、毒(大)、全て再生中、不死者化
【装備】:破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero
【道具】:なし
【思考・状況】
1:あのギラーミンとかいう糞野郎をぶっ殺す。
2:そのためにこの会場にいるやつを全員殺す。とにかく殺す。
3:ゼロは絶対に殺す。
4:ラズロ(リヴィオ)は特に念入りに殺す。
5:御坂と黒スーツの男(ウルフウッド)、子供(梨花)も殺す。あ? 人形? 人形は「殺す」モンじゃなくて「壊す」モンだろ?
6:ギラーミンが言っていた『決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者』(不死者)は絶対に殺す。
7:宇宙人(ミュウツー)は出来れば最後の最後で殺す。
8:左腕が刀になる女(ブレンヒルト)も見付けたら殺す。 詩音はまあどうでもいい。
9:ギラーミンが言っていた『人間台風の異名を持つ者』、『幻想殺しの能力を持つ者』、『概念という名の武装を施し戦闘力に変える者』、
『三刀流という独特な構えで世界一の剣豪を目指す者』に興味あり。
10:グラハムについて少し気になる。
【備考】
※麦わらの男(ルフィ)、獣耳の少女(
エルルゥ)、火傷顔の女(
バラライカ)を殺したと思っています。
※自分の身体の異変に気づきましたが、不死者化していることには気付いてません。
※リヴィオとラズロの違いに気付いていません。また、ラズロ(リヴィオ)のことを不死者だと考えています。
※ゼロのことを不死者だと思っています。
◇ ◇ ◇
ナインは敵の襲撃から逃れるため、病院の廊下を移動していた。
ARMSの移植による身体機能の向上、そしてアヴァロンの守り、この二つが毒ガスからナインの命を救った。
とは言えそれは「辛うじて死は免れた」というレベルでしかない。猛毒に蝕まれた今のナインには立って歩く力すら残っていない。
それでもナインは止まる訳にはいかない。歩けないのなら這ってでも移動する。
彼女には全てを犠牲にしてでも為さねば成らない事があるのだから。
「待ってて、ナナリー。私が、必ず、生き返らせるから」
指先が何か硬い物に触れ、その何かが伸ばした右手を上から押さえつける。
見上げた彼女の目の前で。
「初めまして、と言っておこうか。私は魔王ゼロ。……いや、ルルーシュ・ランペルージと名乗った方が分かりやすいかな?」
漆黒の髪に紫の瞳を持つ少年が彼女を見下ろしていた。
「ランペルージ……? まさか、ナナリーの」
「その通り、オレはナナリーの兄だ。お前の衣装からネモの気配を感じ、後を付けさせてもらったが……さっきの会話から大凡の事情は把握できたよ」
それはつまり、自分が足手纏いになったせいでナナリーが殺されてしまった事も知られたという事か。
ルルーシュと名乗ったこの男がナナリーの兄だというのなら、ナナリーを殺したあの二人だけではなく、ナナリーを守れなかった自分に殺意を抱くのも納得できる。
そして恐らくこの男が殺し合いに乗る理由も自分と同じ、ナナリーを生き返らせるため。
ならばまだ手を組む余地はある。
「ナナリーを生き返らせる、お前はそう言っていたな」
「そうよ。私はナナリーを守れなかった……。だからせめて、優勝してナナリーを、いえ、この殺し合いに呼ばれた他の参加者も」
「何のために生き返らせる?」
予想外の質問だ。
何故、と考えて、ボロボロに崩れ去るネモの最期の姿が、ナインの行動方針を決定付けたネモの最期の言葉が思い浮かぶ。
「何のため……? それは、ネモと約束したから……。ナナリーを元の世界に返すために、ナナリーに、もう一度この世界を感じてもらうために……」
「違うな、それはただの口実だ。自分のせいでナナリーを死なせてしまった、お前はその事実から、自分の罪から逃げているだけだろう?」
「何、を言って……」
ナナリーに生きて欲しい、自分は確かにそう思っていると胸を張って言える。
だが、それと同時に心の中である疑念が渦を巻く。
自分は本当に、ルルーシュの言葉を完全に否定する事ができるのだろうか。
ルルーシュの言葉がナインの心の傷を抉る。
「ナナリーが生き返れば、他の全参加者が生き返れば。自分の犯した過ちが、ナナリーを死なせてしまった罪が、他の参加者を殺した罪が、全て無かった事になる。
お前はそう信じている、いや、そう信じたいんだろう?」
それを認めてしまえば何かが終わってしまう。
直感的にそう悟ったナインはルルーシュの言葉を必死に否定する。
「ちが、う……違う! 私は、私はナナリーのために……!」
「ナナリーのため、だと……?」
ミシリ、と。踏みつけられた右手から骨が軋む嫌な音がする。
目の前の少年から、空間ごと凍てつくような強烈な殺気が放たれる。
「ナナリーのために人を殺す、だと……?
ふざけるな……。ふざけるな! 貴様はナナリーの何を見ていた!? ナナリーは貴様に何と言った!?
ナナリーが、あの心優しいナナリーが殺し合いを望んでいると、貴様は本気でそう思っているのか?
自分のために人を殺して回ったと、そう聞かされてナナリーが喜ぶとでも思っているのか?
冗談も大概にしろ!
貴様の行動はナナリーのためなどではない。貴様はただ己の罪の免罪符にナナリーの名を利用しているだけだ!
自らの手で人を殺しておきながらその責任だけを一方的にナナリーに押し付ける、貴様がしている事はそういう事だ!
貴様はナナリーを! その死を! その遺志を! 汚し続けている!! そんな事にも気付かないのか!?」
ベキベキと右手が踏み砕かれるが、その程度の痛みに構っている暇はない。
「違うっ!! 私は! 私は……ナナリーの騎士だから……!」
「ならば、その言葉をナナリーの前でも言えるのか?」
ルルーシュがナインの前にデイパックを下ろし、ゆっくりと口を開いていく。
絶望が、口を開ける。
「ナ、ナリー………………?」
「分からないなら教えてやる。お前はナナリーの騎士でも何でもない、ただの魔女だ」
その火傷の跡が、ナナリーを守れなかった自分を責めているようで。
その閉じ切った瞳が、ナナリーの意志を踏みにじる自分を否定しているようで。
希望が、音を立てて崩れてゆく。
「あ……あ……あ、あああぁぁぁぁあぁぁあぁあっっっ!!!」
0. 魔王は咎人に裁きを下す Zero.
ゼロが最初にナインを発見した時、隙を見てナインを殺すつもりでその後を追った。
そして病院での戦闘でナナリーの直接の仇であるラッドを惨殺したことで、完全にとはいかないまでも溜飲を下げたゼロは冷静な思考を取り戻した。
確かにナナリーを守り切れなかった罪は許し難いが、その目的次第では怒りを押し込め一時的に――もちろん最後には自分の手で殺す事が前提だが――手を結んでも良いとさえ考えていた。
だが、病院の廊下を這いずるナインの姿を見たゼロは、そこに奇妙な感覚を覚えた。
例えば目の中に睫毛が入ったような、例えば爪の間に砂粒が挟まったような。小さな、けれども決して無視できない違和感。
その女が妄執にとらわれているような、そんな雰囲気を感じたゼロは、その正体を確かめるため「何故ナナリーを生き返らせるのか?」と問いかけた。
ナインに投げかけた質問はゼロ自身にも言える事だ。ゼロは追い詰められたナインがどう反応するかを見極めたかった。
だがその女は最後の最後で自分の罪に向き合う事なく、「ナナリーのため」と言い逃れをしようとした。
当然それはゼロの望むものではなく、手を組むどころか逆に鎮静しかけたはずの怒りを再燃させることとなった。
ナナリーを蘇らせる、確かにその目的は一致していた。だが、たとえ目的が同じでもこの女と手を組むなど有り得ない、それがゼロの出した結論だった。
「あ……ああ……っ! ナナリー! 許して……! 私は、私は……」
「貴様がナナリーの名を呼ぶな」
ゼロは仮面を被ると、両の肩当てを合わせ、巨大な槍を組み上げる。
50の艦隊と5000の兵を率い、東の海で最大の戦力を持つと言われるクリーク海賊団の首領、ドン・クリーク。その最強の武装、大戦槍。
本来は1tもの重量を誇り、打ち込む力が強ければ強いほど強力な爆発を起こす槍。制限されているとはいえ、優に100kgを超えるその槍をゼロは軽々と持ち上げる。
「ナナリーは私が蘇らせる。もっとも」
ナインの頭上に大戦槍を掲げ、
「その隣に貴様の居場所はないがな」
振り下ろそうとした瞬間。
オレンジ色の閃光が目の前を走りぬけ――槍の穂先が跡形も無く消し飛ばされた。
◇ ◇ ◇
ロベルタ、そしてリヴィオとの戦闘終了後。体力の限界が訪れたのか、緊張の糸が切れたのか、あるいはその両方か。
美琴はべちゃりと地面に倒れ込んだ。
「美琴! 大丈夫なの?」
「あー、正直ちょっと厳しいかも……電池切れそう……。真紅、悪いけど怪我の手当てお願い」
と言っても二人とも今まで銃で撃たれた経験など無く、治療法など知るはずもない。
とりあえず傷口を水で洗い流し、止血後に消毒するぐらいしかできない。
もしアイツがまだ生きていて、この場に居たら。アイツなら、
上条当麻ならどうしただろうか。
美琴は考える。いや、考えるまでもなかった。
何があろうとも、誰が相手だろうとも、そんな事はお構いなしに苦しんでいるナインを救いに行く。そうに決まっている。
アイツは美琴の雷撃を受けても最後まで拳を握ることはなかった。自分が殺されかけたその瞬間でさえ美琴を救おうとしていた、そんな底無しの馬鹿で、底無しのお人好しだ。
結局自分は伸ばされたその手を取る事はできなかったけど。それは確かに自分の救いになった。
美琴は考える。
自分が逃げたせいで
衛宮切嗣は死んでしまった。
自分が逃げたせいで
ストレイト・クーガーは死んでしまった。
そして今、自分が逃げればナインが死んでしまうかも知れない。
(私は、もう逃げない)
真面目な顔を作ると、美琴の傷口に包帯を巻いている真紅に向かって口を開く。
「真紅、ゴメン。やっぱり私はナインさんを見捨てられない。
私のワガママで真紅を危険に巻き込むのは筋違いだって分かってる。でも、きっと私一人じゃ止められないから……。
お願い、真紅! 私に、あなたの力を貸して!」
「美琴、あなたは何を言っているの?」
「う……、やっぱりダメか……」
「今更そんなこと確認するまでもないでしょう? 美琴の足りない部分は埋めてみせる、私はそう言ったはずなのだわ」
「真紅……! ありがとう。……私、あなたに会えて本当に良かった」
自然と口に出してしまったが、それは紛れもなく美琴の本心だった。
真紅は赤く染まった頬を隠すように、そっぽを向いて言葉を続ける。
「それに、あのラッドという男が言っていた事も気になるのだわ」
「アイツ? 何か言ってたっけ?」
「美琴を殺しに病院に来た、あの男は確かにそう言っていたのだわ。そして美琴が病院に居る事を知っていたのは私達以外には一人だけ……」
「まさか……アイツがあすかさんを?」
「その可能性が高いのだわ」
「そっか……ならこうしちゃいられないわね。真紅、行くわよ」
そしてロベルタ達の荷物を回収する暇も惜しんで病院内に足を踏み入れた美琴達が見たものは。
倒れ伏すナインに向かって巨大な槍を振り上げている、見るからに怪しい黒仮面の男だった。
二人が戦闘し、勝利を収めた男がナインに止めを刺そうとしている。そうとしか考えられない光景だ。
美琴は反射的にポケットからコインを取り出し、超電磁砲を放った。
男が腕を振り下ろす寸前、間一髪のところで。音速の三倍で飛来する弾丸が、槍の先端を吹き飛ばした。
「アンタ……何やってんのよ」
自分が止めなければ確実にナインは殺されていた。そう思うと、間に合ったという安堵よりも先に怒りが込み上げてきた。
抑え切れない怒気が溢れ出てバチバチと火花を散らす。
髪が静電気を帯びたようにブワッと広がり、前髪が一房、角のように逆立つ。
「見ての通り、これよりこの魔女の処刑を執り行う。邪魔をするな」
「処刑、ですって? ……ふざけんじゃないわよ。そんなこと、絶対にさせない……!」
「ほう……ならばどうすると言うのだ?」
全身に傷を負い、体力は尽きかけ、だがそれでも。
「決まってんでしょ……。力ずくでも止めてみせる」
「愚かな……。只人が魔王に刃向かうか」
譲れない思いを胸に、雷の超能力者(レベル5)が今、魔王に挑む。
【E-5 病院内1階西廊下/一日目 夜】
【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】
【状態】:疲労(極大)、悲しみ、怒り、焦り≪ルルーシュ≫
【装備】:穂先がなくなった大戦槍@ワンピース
【道具】:基本支給品一式×6、MH5×3@ワンピース、治療器具一式、防刃ベスト@現実、電伝虫@ONE PIECE×2、
忍術免許皆伝の巻物仮免@
ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの、
謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×2(サカキ、土御門)、ナナリーの遺体(首輪あり)、ビニール袋に入った大量の氷
螺湮城教本@Fate/Zero、トーチの火炎放射器@BLACK LAGOON(燃料70%)、不明支給品0~1個(未確認)
【思考・状況】
0:真紅と美琴を排除し、ナインを処刑する。
1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。
2:異形(ミュウツー)は見つけ次第、八つ裂きにする。
3:『○』に関しては……
4:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。
5:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。
6:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。
7:C.C.の状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。
8:首輪を集めて古城跡へ戻る。
【備考】
※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。
※水銀燈から真紅、ジュン、
翠星石、
蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。
※会場がループしていると確認。半ば確信しています
※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。
※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(
ウソップ)の情報を土御門から聞きました。
※C.C.との交代は問題なく行えます。
※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。
※
北条沙都子達と情報交換しました。
※ナイン、ラッド、ミュウツーの三人がナナリーの死に関わっていると確信しました。
※ラッドを殺したと思っています。
【
ブレンヒルト・シルト@終わりのクロニクル】
【状態】:疲労(中)、背中に火傷(小)、毒(中)、精神的ダメージ(大)、右手骨折、左腕欠損(ARMSで代替)、ARMS復旧
【装備】:汗で湿った尊秋多学院制服(左袖欠損)、ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS(左腕に擬態)、全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero
アリス・ザ・コードギアスの衣装@ナイトメア・オブ・ナナリー
【道具】:支給品一式×2(食料一食、水1/5消費)、アンフェタミン@Fate/Zero
【思考・状況】
基本行動方針:優勝狙い?
0:ナナリー……私はどうすれば……?
【備考】
※ARMSコアの位置は左胸です。
※アリスの衣装はネモが変化した姿です。ネモの意識、特別な力はありません
※髪を切りました
※ARMSは電撃を学びました、以後電撃を浴びても操作不能にはなりません。
※ARMSは毒ガス(MH5)を学びました、以後毒ガス(MH5)に対する耐性が向上します。
【真紅@ローゼンメイデン(漫画版)】
【状態】:左腕損失
【装備】:庭師の鋏@ローゼンメイデン 蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
【道具】:基本支給品一式、不明支給品0~2個(未確認)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本。
真紅の左腕(損傷大)
【思考・行動】
0:ゼロを撃退し、ナインを助ける。
1:殺し合いを阻止し、元の世界へ戻る。
2:北へ向かい地下鉄を調査する。
3:列車に乗って、会場全体を一通り見ておきたい。地下鉄調査後再び電車に乗って最終的にはG-7駅を目指す。
4:ループを生み出している何かを発見する。
5:翠星石のローザミスティカを手に入れる。
6:劇場にて起こっている戦闘が気になる。
7:あすかを殺した相手を見つけたら仇を取る。
【備考】
※参戦時期は蒼星石死亡以降、詳細な時期は未定(原作四巻以降)
※あすか、クーガーと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※美琴と情報交換し、学園都市や超能力の事を大雑把に聞きました。
※蒼星石が居る事や、ホーリエが居ない事などについて疑問に思っていますが、参加時期の相違の可能性を考え始めました。
※ループに気付きました。ループを生み出している何かが会場内にあると思っています。
※情報交換済みの人物:ルフィ、
前原圭一、クーガー、美琴
※彼らの知人:レナ、沙都子、梨花、魅音、詩音、切嗣(圭一)、ゾロ、チョッパー、
ハクオロ、
アルルゥ、
カルラ(ルフィ)
※要注意人物:アーチャー(遭遇)、ライダー(詳細ではない)、バラライカ(名前は知らない)、ラッド
無常、ラズロ、ヴァッシュ、
カズマ、クロコダイル、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
カズマとアーチャーは気に食わないので、出来れば出会いたくもない
※ライダー、ハクオロ、
レッド、佐山、小鳥遊に関しては100%信用はしていません。
※対主催チーム(佐山、小鳥遊、蒼星石)の存在、悪魔の実の能力者の弱点(カナヅチ)を知りました。
※参加者によっては時間軸が異なる事を知りました。
※nのフィールドへは入れない事。ローゼンメイデンへのボディへの干渉の可能性を考え始めました。
※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。 ○の中心にワープ装置があるのではという仮説を立てています。
※蒼星石の記憶を引き継ぎました(バトルロワイアル開始から死亡まで)
※あすかを殺したのはラッドではないかと思っています。
【
御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
【状態】:疲労(極大)、全身打撲(中)、脇腹の切り傷(止血及び応急処置済み)、左肩と右ふくらはぎに銃創(止血及び応急処置済み)
自分への強い嫌悪感、多大な喪失感、強い決意、契約:ローゼンメイデン(真紅)
【装備】:ポケットに数枚のコイン
【道具】:基本支給品一式(水1/2消費)、コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り93枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、病院で調達した包帯や薬品類
【思考・状況】
0:ゼロを撃退し、ナインを助ける。
1:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
2:人は絶対に殺したくない。
3:真紅に着いて行く。
4:切嗣とクーガーの死への自責
5:上条当麻に対する感情への困惑
6:ナインは出来る事ならば説得したい
7:あすかを殺した相手を見つけたら仇を取る。
【備考】
※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
※会場がループしていると知りました。
※切嗣の暗示、催眠等の魔術はもう効きません。
※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
※危険人物などについての情報は真紅と同様。
※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
※あすかを殺したのはラッドではないかと思っています。
◇ ◇ ◇
美琴とゼロが対峙している頃、ミュウツーはD-6エリアの湖の畔に佇んでいた。
ミュウツーにとって幸いな事に、MH5が撃ち込まれたのはラッドとナインの争う地点だった。
着弾地点から距離があったためガスは空気中に拡散し、濃度の薄まった毒ガスには人よりも強靭な肉体を持つミュウツーを行動不能に陥らせるほどの威力がなかった。
ガスを吸い込んだ瞬間、ミュウツーはそれを毒ガスだと判断。素早くデイパックからどこでもドアを取り出してD-6エリアに移動した。
自分は運良くどこでもドアを持っていたためあの場から離脱できたが、間近で高濃度の毒ガスを浴びたナインは生きてはいないだろう。
ロベルタは初めから同盟に乗り気ではなかったし、リヴィオの目的はパニッシャーだ。あの二人は自分達が居なければいつ殺し合ってもおかしくない。
つまり同盟は実質的に崩壊した事になる。
(やはり急拵えの同盟、互いに信頼関係が無ければ長続きするはずもないか……)
ミュウツーがナインを追ったのも、ナインをラッドと戦わせて自分の被害を抑えるためだ。
ナインの暴走、ミュウツーの保身、そしてロベルタとリヴィオの反目。同盟の抱えていた不安要素が一気に重なった結果の崩壊だ。
やはり勝者が一人しかいない以上、信用できない他人と組むのは難しい。優勝を狙うならば一人で戦うしかない。
(となると今の装備だけでは厳しいな。……『3つの湖に隠された力を解き放て』か)
どこでもドアで移動可能な13エリアの内、既に禁止エリアに指定されていたF-6を除いた12エリア。その中からD-6を選んだのも脱出する瞬間に「褒美」とやらが頭をちらついたからだ。
恐らくは強力な武器、あるいは参加者の情報といったところか。
何にせよ自分の邪魔になるような物ではないだろう。ならば貰っておいて損はない。
――それに可能性としては僅かだが、もしかしたらマスターの声が聞けるかも知れない。
僅かな希望を抱き、ミュウツーは湖の探索を始める。
【D-6 湖畔/1日目 夜】
【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
【状態】:疲労(中)、背中に火傷(小)、毒(小)
【装備】:機殻剣『V-Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
【道具】:基本支給品一式、どこでもドア@ドラえもん(残り1回)
【思考・行動】
1:生き残り、カツラを救う。
2:D-6の湖を調べる。
3:隙を見て参加者に攻撃を加える。
4:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
5:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……?
【備考】
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
※V-Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
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最終更新:2012年12月05日 02:44