・この文章はKーKさんサイト「南京事件資料集」より転載させていただきました。
比律悉宣言
The Articles of the Brussels Conference
千八百七十四年ブルッセル府に開きたる陸戦の法規慣例に関する万国会議の決議なり
○敵国領地に於ける陸軍の権柄
【第一条】
一の地方を以て占領せられたりと為すは現実に敵の軍隊の権力の下に置かれたる時に在り、占領は此の権力を設定し、及之を実行する地方を以て其の限界とす
【第二条】
合憲(従前の政府を云ふ以下準之)政府の権力は中止し事実上占領者の手に移れるを以て其の権内に在る総べての方策を以て成るべく公共生活の秩序を回復し維持せんことを勉むべきものなり
【第三条】
前条の目的の為に占領者は平時に於て其の国土に有効なりし法令を保存すべく、必要あるの外之を改更し中止し廃弛すべからず
【第四条】 各級の官吏役員にして占領者の諭告に依り其の職に止まる者は占領者の保護を受くべし、此等の官吏役員は其の自ら承認したる義務に背くに非ざれば之を免黜し又は懲戒の処分に付せず、叛逆あるに非ざれば裁判に付することなかるべし
【第五条】
占領軍は従来の国家の利益の為に定めたる租税、課金、収納金及手数料を徴収するに止まるべく、若し此等を徴収すべからざる事情あるときは之に相当するものを徴収するに止まるべし、且成るべく現在の体裁及慣行に依るべし。占領軍隊は合憲政府が之を行政の為に支出したると同じ割合に於て此等の収人を以て国土行政の費用に充つべきものなり
【第六条】
土地を占領する軍隊は真に国有に属する現金、資本、約券並に兵庫、運搬の方便、集積場、糧糒等総べて戦争の用に供することを得べき国有動産に限り略取することを許さる
鉄道の材料、陸地電信線、汽船及其の他海上法の範囲に属せざる船舶並に兵器貯蔵及概して各種の軍需品は会社又は一個人の所有に属するものたりとも、同様に戦争の用に供することを得べき所なるを以て、之を敵の自由処分する所に放任すべからず其の鉄道の材料、陸地電信線並に汽船及其の他の船舶は、平和に至り之を返付し且損害賠償の法を定むべし
【第七条】
占領政府は占領地内に在りて敵の国家に属する公有建築、不動産、森林及農作地の経理者たり、且用益者たる地位に立つ者なり、占領政府は此等の財産の基本を保存し、用益椎の法規に従ひ之を経理すべきものなり
第八条 自治体ノ財産及教体、仁恤、教育、技芸、学術の用に専供したる設営は国家の所有に属すと雖猶ほ私有財産と同様に取扱ふべし
総べて此等の設営、歴史上の記念物、技芸及学術の製作物を略取し、故意に損壊し、又は汚辱する者あるときは、管轄着に於て之を虔罰すべきものなり
○何人を以て交戦者及戦闘者及非戦闘者と為すや
【第九条】
戦規に基く権利及義務は独り軍隊に通用するのみならず又民兵及義勇団にして次の条件に合する者に適用す
(一)固定にして遠方より認知すべき分明なる標章を有すること
(二)公然に武器を携帯すること
(三)作戦に於て戦争の法律慣例に遵ふこと
民兵を以て軍隊又は其の一部分と為す国に於ては民兵を軍勢の名目中に包合す
【第十条】
未だ占領を被らざる地方の住民にして敵の来襲に際し第九条に依り兵戦上の編成を為すに遑なく、自然に兵器を取て起ち、襲軍に敵抗する者、戦争の法律慣例を守るに於ては、闘戦者と看倣すべし
【第十一条】
交戦者の軍勢は闘戦者及非闘戦者より成立す、敵に捕擒せられたるときは共に俘虜たるの権利を有す
○害敵の方便
【第十二条】
戦規に交戦者に於て敵に加害する方便の取拾に開し無制限の権力あるを詔めず
【第十三条】
此の原則に依り特に制禁するもの左の如し
(イ)、毒物及毒を施したる武器を使用すること
(ロ)、敵の国民又は軍隊に属する人を暗殺すること
(ハ)、武器を措き、又は防戦の術無き擲身降を請ふ敵を殺戮すること
(ニ)、無救命の宣告を為すこと
(ホ)、無用の惨害を被らす兵器弾丸又は物質並に千八百六十八年の聖比得堡(セントピートルスブルグ)宣言を以て禁じたる発射物を使用すること
(ヘ)、戦使の旗章国旗又は軍標及敵の制服並に赤十字条約の徽章を濫用すること
(ト)、戦争の必要萬止むを得ざるに非ずして敵の財産を破壊し又は略取すること
【第十四条】
奇計並に敵兵及地勢の情報を得るに必要なる方便を使用するは(第三十六条に規定したる場合を除く外)適法なりとす
○攻囲及砲撃
【第十五条】
攻囲を加ふべきは防守したる場所に限る、開放したる市邑、家屋の集合、又は村落にして防守せざるものは襲撃し又は砲撃することを得ず
【第十六条】
一の市邑、戦争の場所、家屋の集合、又は村落にして防守したるものは、突進攻撃を加ふる場合の外、襲撃軍の司令官に於て、砲撃を開く前、其の権内に在る総べての手段を以て、管轄官に其の旨を告知すべきものなり
【第十七条】
前条の場合に於ては成るべく教法、技術、理学、慈善の用に供する建築、病院及病者負傷者を集置する場所を避くる為に十分の注意を加へざるべからず、但し此等の場所を兵事に使用せざるを以て其の条件とす
攻囲を被むる者は予め攻囲者に通知したる特別顕著なる標識を以て此等の建築を表示する義務あり
【第十八条】
突撃を加へて陥れたる市邑を縦て勝利を得たる軍隊の掠奪に任ずることなかるべし
○間諜
【第十九条】
敵の占領する場処に入り隠密に又は虚妄の口実を仮り、反対の一方に報知する目的を以て事実を探窺し又は探窺せんとする者の外は何人も間諜と看做すべからず
【第二十条】
間諜は現行を差押へたるとき之を捕擒したる軍隊に行はるゝ法律に依り審判し、処分すべし
【第二十一条】
間諜一旦其の属する所の軍隊に帰着し後に至り敵に捕擒せられたるときは俘虜として取扱はるゝ外其の既住の行為に対し責問を受くることなし
【第二十二条】
軍人偽装せずして情状探知の為に敵軍の戦線内に入りたる者は之を間諜と看做すべきに非ず
軍人(又は公然軍人の使嗾を奉ずる常人)自軍又は敵軍に向ひ音信を通ずるの命を帯び敵に捕擒せられたる者は之を間諜と看做すべきに非ず
音信を齎し及概して一の軍隊若くは領地の異なる部分の間に交通を為す為に気球に乗り旅行する者若し捕擒せられたるときは同じく此の部類に属す
○俘虜
【第二十三条】
俘虜は兵器を脱せしめたる公正の敵なり
俘虜は其の敵の政府の権力に従ふものなり、之を捕擒したる一個人又は軍隊の権力に従ふに非ず
俘虜は仁愛を以て取扱ふべきものなり
総べて違令の行為あるときは之に対し必要なる厳重監制を用ヰるも妨げなし
兵器を除き凡そ彼等の一身に属するものは永く其の所有たるべし
【第二十四条】
俘虜は之を市邑、城塞、陣営又は其の他の処に留置し、或る一定の境界以外に出でざる義務を負はしむることを得べし、然れども監守上止むを得ざる必要あるに非ざれは禁錮することを得ず
【第二十五条】
俘虜は戦場の作業に直接の関係なき政府の工事に傭役することを得、但し其の事業は過度に疲労せしむることなく、又軍隊に属する者なれば其の軍人の分限を辱むることなく、軍隊に属する者に非ざれば其の官職又は社会上の地位を辱しむることなきを要す
又彼等は軍衙の定める条件に順ひ民間の事業に傭役せらるゝことを得べし
彼等の給料は彼等の状態を改良することに支出せらるべく、或は解放の日に於て彼等に交付せらるべし、但し扶持の費用は之を引去ることを得
【第二十六条】
俘虜は如何なる方法を以てするも之を強制して交戦の作用に関係する各種の事業に与らしむることを得ず
【第二十七条】
俘虜を監守する政府は之を扶持すべき義務あり
此の扶持に関する条件は交戦国の合意を以て之を約定することを得べし
此の約定なき場合に於て一般の原則としては食料及被服に関し捕者たる政府の軍隊と同等の取扱を為すべきものとす
【第二十八条】
俘虜は其の監守を司る軍隊の現行法律規則に従ふべきもなり
逃走する俘虜に対しては喚呼の後兵器を使用することを得、但し之を再捕したるときは懲罰に付し、又は更に厳重なる監禁に処すべし[但し刑罰を加ふべからず]
一旦逃脱を遂げたるの後再び捕擒せらるゝとも前の逃脱の為に処分を受くることなし
【第二十九条】
俘虜其の氏名官等を尋問せられたるときは真実を以て答ふる義務あり、背くときは其の身分に相当する俘虜に与ふる利益の一部分を削らるゝことあるべし
【第三十条】
俘虜の交換は交戦両国の合意を以て其の条件を規定す
【第三十一条】
俘虜は其の本国の法律に於て之を許す場合は宣誓の上解放せらるゝことあるべし
此の場合は一身の名誉に懸けて自国の政府に対し並に捕者たりし国の政府に対し其の約定したる条件を厳密に履行すべき義務あり
同じ場合に於て其の本国の政府は誓旨に違背する服務を要求し又は承納することを得ず
【第三十二条】
俘虜を強迫して宣誓解放を受けしむることを得ず、又敵の政府は俘虜の宣誓解放を受けんとする要求に応ずる義務なし
【第三十三条】
凡そ宣誓解放を受けたる俘虜其の名誉に懸けて誓約したる政府に反対し兵器を取るに再擒せられたるときは俘虜たるの権利を失ひ裁判に付せらるべし[罪人として刑罰に処せらるべし]
【第三十四条】
軍隊に随従すと雖直接に軍隊の一部分を為すに非ざる緒人、例へば通信員、新聞探訪者、給養掛、用達人等の如きも亦之を為すことを得。彼等は常に管轄官衙の証状及認識票を携帯するべきものとす
○病者及負傷者
【第三十五条】
病者負傷者の看護に関する交戦者の義務は此の宣言の結果に因り之に及ぶべき改修を除く外総て千八百六十四年八月二十二日ヂュネーヴァ条約の規定に依る
○一個人に対する陸軍の権柄
【第三十六条】
占領地の民衆を強迫して其の自国に反対する作戦に与らしむることを得ず
【第三十七条】
占領地の住民を強制して敵の国権に対し臣従の誓を為さしむることを得ず
【第三十八条】
家族の名誉及権利、一個人の身体及財産並に其の信教及礼拝の儀式は之を尊敬すべし
私有の財産は没収することを許さず
【第三十九条】
掠奪は之を厳格に禁制す
○徴発及課金
【第四十条】
私有の財産は尊敬すべきものなり、仍て敵軍は市町村又は住民に対し戦争の必要として一般に認められたる現品及課役に限り要求すべく、其の分量は国土の資力に比例すべし、且住民をして自国に反対する作戦に与る義務を負はしむることなかるべし
【第四十一条】
敵軍が納税の義務に代へ、又は現品の徴収に代へ、又は贖罪として課金を徴するは成る可く占領地方に於て有効なる租税の賦課徴収の方法に率由すべし
合憲政府の文官其の職に留まるときは課金の事務を補助すべし
課金は司令長官又は敵軍が占領地方に設置したる行政官衙の命令及責任を以てするの外之を徴することを得ず
凡そ課金に対しては其の差出人に領収証を交付すべし
【第四十二条】
徴発は占領地司令官の職権を以てするに非ざれば之を行ふことを得ず
総べて徴発に対しては代金又は領収証を交付すべし
○戦使[又謂軍使]
【第四十三条】
交戦者の一方の命を帯びて他の一方と談判を為すために白旗を持ち鼓吹手(喇叭士又は鼓士)一名及旗手一名を具して到る者を戦使とす
戦使並に之に随行する鼓吹手及旗手は不可害の権利を有す
【第四十四条】
敵軍より戦使を送らんたる長官は如何なる場合に如何なる事情に際しても必ず之を接待すべき義務なし
長官は戦使が其の敵の戦線内に在る機会を利用して敵の不利を計らんとすることを防止するに必要なる総べての手段を施すことを得べく、戦使たる者若し果して其の信用を濫用したる形跡あるときは之を一時拘留する権利あり
長官は予め一定の期間戦使を謝絶する旨を宣言することを得べし
此の告知を受けるたる一方より告知以後に於て敵軍に詣る戦使は不可害の権利を有せず
【第四十五条】
戦使其の特権を濫用して叛逆の所業を教唆し又は自ら不軌を為したる証拠分明にして拒否すべからざるときは不加害の権利を喪ふ
○降服[又謂開城]
【第四十六条】
降服の条件は双方の協議を以て之を定む
右の条件の名誉は軍人に背くものたるべからず
一旦規約を以て確定したるときは双方に於て之を恪守すべし
○休戦
【第四十七条】
休戦は交戦者双方の合意を以て闘戦の作用を中止するものなり、若し期間を確定せざるときは交戦者は何時を限らず闘戦作用を開始することを得べし、但し休戦の条件に従ひ適当の時期に於て其の旨を敵に告知すべきものなり
【第四十八条】
休戦は一般なるあり、局部なるあり、一般休戦に於ては交戦両国の闘戦作用を一般に中止し、局部休戦に於ては交戦軍隊の或る部分の間に於て範域を限り之を中止す
【第四十九条】
休戦は公式を以て速に之を関係の官庁及軍隊に通知すべし
通知の後は直に闘戦を中止すべきものなり
【第五十条】
休戦に際し人民の間に於ける交際は休戦規約の条項を以て之を約定すべし
【第五十一条】
一方に於て規約に違背するときは他の一方に於て之を破棄すべき権利を生ず
【第五十二条】
一個人が自己の発意を以て[即ち上官の命令に依らず]休戦規約の条項に違背したるときは単に違背者の懲罰を要請し若し損害あるときは其の賠償を要求する権利を生ずるのみ
○中立国に於て抑留し又は看護する交戦者
【第五十三条】
中立国其の邦域内に交戦国の軍勢に属する軍隊を接受したるときは之を成るべく戦場より遠隔せる地内に抑留すべし
中立国は避入の軍隊をして営内に居らしめ或は之を城塞内に拘禁し其の他抑留の目的に適したる場所に居らしむる権利あり
中立国は士官の公許を得ずして中立地域を去らざる旨を立誓する者あるとき之を解放するや否を決する権利あり
【第五十四条】
特別の条約を欠く場合に於ては中立国より其の抑留する所の兵士に仁愛主義の命ずる所に合へる食糧、被服、救護を支給すべし
抑留の為に起る出費は平和に至り之を償却すべし
【第五十五条】
中立国は交戦国の軍隊に属する病者負傷者を其の邦域を経て運送することを許可する権利あり、然れども其の輜重には他の兵員及軍用品を搭載せざるを以て条件となすべし、此の場合は中立国に於て必要なる保護監督の策を施すべし
【第五十六条】
ヂュネーヴァ条約は中立地内に拘禁する病者及負傷者にも適用す
千八百七十四年八月二十七日ブレッセルに於て記名調印す
露西亜 枢密顧問 「ハロン」 ア、ヨミニー
陸軍将官 ハ、レール
宮中顧問 博士 マルテンス
独逸 陸軍将官 「フォン」 ヴォアト、レット
陸軍将官 「フォン」 レオンロッア
陸軍佐官 男爵 ウェルク
枢密顧問 博士 ブルンチュリ
墺太利匈牙利 公使 伯爵 チョトック
陸軍将官 男爵 シェーンフェルド
白耳義 男爵 ランベルモン
陸軍佐官 モッケル
ファイテル
丁抹 総長 ウェーデル
陸軍佐官 ブルン
西班牙 公爵 テツァン
陸軍佐官 セルウェール、イ、フマガリ
海軍将官 「ド、ラ」 ペヅエラ
仏蘭西 男爵 ボウド
陸軍将官 アルノードウ
英吉利 陸軍将官 「サル」 アルフ、ホールスフォルド
希臘 陸軍佐官 マノス
伊太利 陸軍佐官 男爵 ブロン
伯爵 ランツァ
白耳義 「ド」 ランスベルヂ
陸軍佐官 「ファン、デル」シュリーク
瑞典諾威 陸軍佐官 スターフ
瑞西 連邦佐官 ハムマル
最終更新:2009年04月25日 14:40