「怖いよぉ……稟くん。一人は嫌だよぉ」
生い茂る草、大自然の恵みを一身に受けた深緑の大地。月明かりが葉の隙間をすり抜け地面を照らす。
物音がない無音の空間、そこに一つの声が響いた。
深夜の暗闇の草原の中、一人の少女がうずくまっていた。
物音がない無音の空間、そこに一つの声が響いた。
深夜の暗闇の草原の中、一人の少女がうずくまっていた。
リシアンサス。神王ユーストマの一人娘である。リシアンサスは泣いていた。
突然の殺し合い、人の首が飛ぶ場面、それに加えてこの暗い草原。
リシアンサスの心は限界を超えていた。
突然の殺し合い、人の首が飛ぶ場面、それに加えてこの暗い草原。
リシアンサスの心は限界を超えていた。
「稟くん……稟くん!助けてよぉ、もう……耐えられないよ」
許容範囲を超えた心は軋み、行動意欲すらも奪う。
リシアンサスは殺し合いに乗る気はない。いや、乗れないの間違いだ。
恐怖で支配されたこの島で殺し合いに乗るなどリシアンサスには不可能だ。
リシアンサスは殺し合いに乗る気はない。いや、乗れないの間違いだ。
恐怖で支配されたこの島で殺し合いに乗るなどリシアンサスには不可能だ。
人を殺すこと。それは平時では禁忌であり、やってしまったら取り返しの付かないものである。
だが。この島は違う。
人殺しが合法的に許されたこの島では罪に問われない。
むしろ生き残るために必要なのだ。
だが。この島は違う。
人殺しが合法的に許されたこの島では罪に問われない。
むしろ生き残るために必要なのだ。
そのことがリシアンサスは何よりも恐い。簡単に禁忌が破られたことが。
それを平気で破るであろう人達が。
それを平気で破るであろう人達が。
「それにやだよ……人を殺すなんて。稟くんだけじゃなくてリンちゃん達もいるのに。
殺せる訳ないじゃん、友達を」
殺せる訳ないじゃん、友達を」
誰か。人と会いたい。されど動きたくない。リシアンサスは迷いに迷っていた。
「誰かいるのかい?」
その時、リシアンサスに呼びかけたのか声が聞こえた。
自分と同じくらいの年頃の女の子の声だろうか、リシアンサスは呼びかけに応えていいのかどうか迷った。
自分と同じくらいの年頃の女の子の声だろうか、リシアンサスは呼びかけに応えていいのかどうか迷った。
(どうしよう、この呼びかけている人が殺し合いに乗っていたら。私は殺されちゃう……
そんなのやだ。死にたくない!もっと生きていたい!)
そんなのやだ。死にたくない!もっと生きていたい!)
リシアンサスは呼びかけに応えずだんまりを決め込む。
人と会いたい。だけど怖くて会いたくない。矛盾した感情がリシアンサスの中で蠢いている。
人と会いたい。だけど怖くて会いたくない。矛盾した感情がリシアンサスの中で蠢いている。
「何だいるじゃん。なあ、ちょっといいか」
「ひっ」
「ひっ」
草原の闇の奥から出てきたのは茶髪のショートカットの少女。
高町亮子。呪われたヤイバの子供、ブレードチルドレンの一人である。
高町亮子。呪われたヤイバの子供、ブレードチルドレンの一人である。
「あ~、そんな怖がらなくていいぞ。あたしは乗ってないから」
「来ないで!う、嘘をついてるかもしれないじゃん!信用できないよ……」
「来ないで!う、嘘をついてるかもしれないじゃん!信用できないよ……」
リシアンサスは立ち上がり、身構える。
信用した瞬間に後ろからグサリと殺されてしまう。
リシアンサスの頭の中にはそれしかなかった。
信用した瞬間に後ろからグサリと殺されてしまう。
リシアンサスの頭の中にはそれしかなかった。
「そんなことしないって!あたしは本当に殺し合いに乗ってなんてない。
こんなふざけたゲームをぶち壊すために動いている。信じてくれないかな」
「でも……!」
こんなふざけたゲームをぶち壊すために動いている。信じてくれないかな」
「でも……!」
この殺し合いの島では誰がいつ寝首をかくか分からない、
リシアンサスはどうしてもそのことを拭いきることができなかった。
殺し合いに参加させられるだけじゃなく自分の知り合いであるプリムラが死んだ後なのだ。
情緒不安定になることも仕方がない。
リシアンサスはどうしてもそのことを拭いきることができなかった。
殺し合いに参加させられるだけじゃなく自分の知り合いであるプリムラが死んだ後なのだ。
情緒不安定になることも仕方がない。
「はぁ、じゃあこれでどうだい」
「へ……」
「へ……」
どすんという音と同時にリシアンサスの間抜けな声が響いた。
亮子は信用を得るために手に持っていたデイバックをリシアンサスの方へ投げたのだ。
亮子は信用を得るために手に持っていたデイバックをリシアンサスの方へ投げたのだ。
「どうして……」
「どうしてってそりゃあたしが乗ってないことの証明になるだろう。ほら、腰にも何もつけていない、
あたしは丸腰だよ」
「どうしてってそりゃあたしが乗ってないことの証明になるだろう。ほら、腰にも何もつけていない、
あたしは丸腰だよ」
リシアンサスは考える。
この人なら信じてもいいんじゃないか?
一緒に知り合いを探してくれるんじゃないか?
信じてみよう。
そう思ったら肩の荷が軽くなったように感じた。
この人なら信じてもいいんじゃないか?
一緒に知り合いを探してくれるんじゃないか?
信じてみよう。
そう思ったら肩の荷が軽くなったように感じた。
「ぁ……」
それと同時にリシアンサスは再び地面にへたりこんだ。
◆ ◆ ◆
「本当にごめんなさい……」
「いいよ、別に気にしなくても。最終的にはあたしを信じてくれたんだしさ」
「いいよ、別に気にしなくても。最終的にはあたしを信じてくれたんだしさ」
数分後、リシアンサスと亮子は情報交換をしていた。
リシアンサスも先程よりは落ち着いているが顔色は悪い。
最も、人と会えて少しずつではあるが笑顔を取り戻しているが。
リシアンサスも先程よりは落ち着いているが顔色は悪い。
最も、人と会えて少しずつではあるが笑顔を取り戻しているが。
「ほら、これでも飲んで元気だしなよ」
そう言って亮子はリシアンサスに水が入ったペットボトルを差し出す。
ぞれをリシアンサスは掴み、キャップを開けてゴクゴクと飲む。
ぷはぁ、と息を吐きそして再び口を付ける。
そして勢いよく全ての水をあっという間に飲んでしまった。
ぞれをリシアンサスは掴み、キャップを開けてゴクゴクと飲む。
ぷはぁ、と息を吐きそして再び口を付ける。
そして勢いよく全ての水をあっという間に飲んでしまった。
「あ、ごめん。亮子ちゃんの水だったのに」
「いいよ、気にすんじゃないって。困ったときはお互い様だしね」
「いいよ、気にすんじゃないって。困ったときはお互い様だしね」
亮子は豪快に笑って、リシアンサスはそれを見てはにかむ。
ここには確かにあった。
この不条理が蔓延ってる島で結ばれた信頼が。
ここには確かにあった。
この不条理が蔓延ってる島で結ばれた信頼が。
「えへへ、ありがと」
平和が。
「何笑ってんだい。だからいいってのに」
「うん……亮子ちゃ……っ……あ」
「うん……亮子ちゃ……っ……あ」
だけどそれも泡沫のように。
「…………え?」
消えてしまった。
◆ ◆ ◆
何が起こった。
突然リシアンサスが血を吐いて倒れた。
突然リシアンサスが血を吐いて倒れた。
「おい……」
呼びかけた。返事はない。
「おい……」
もう一度。やっぱり返事はない。
「おい……!?」
どう見ても。
「嘘……だろ、なぁおい!!!」
死んでるんだ。
おかしい。おかしい。
おかしい。おかしい。
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい何かが何かがなにかが何かがなにかがなにかがナニカガナニカっがががががっがあががあはがあああ。
思考にノイズが走る。ジリジリと頭の中が火花を散らす。
「――――――――」
声にならない叫びを上げた。ああ、人事のように考えてるこの頭が憎たらしい。
「――――――――――――――――」
あたし、人殺しちゃった。あの水、毒でも入ってたのかな。
それよりどうしよう。遺体を隠さな……違う。そうじゃない。
あたしの信条はなんだっけ?
それよりどうしよう。遺体を隠さな……違う。そうじゃない。
あたしの信条はなんだっけ?
“殺るくらいなら殺られるほうがマシ”
だめじゃん。
人殺しちゃったよ?そんなの全部パーになったよ?
自分の中の“ナニカ”に変わっていく。
あたしではない。“高町亮子”ではない、別の“ナニカ”に。
ああそういえば人殺し?別にいいじゃん。だってあたしは。
人殺しちゃったよ?そんなの全部パーになったよ?
自分の中の“ナニカ”に変わっていく。
あたしではない。“高町亮子”ではない、別の“ナニカ”に。
ああそういえば人殺し?別にいいじゃん。だってあたしは。
人類抹殺をしなくちゃいけないんだから
そうだよ。そうそうそうそう。人類抹殺。極めて重要なことだ。
どいつもこいつも皆殺し。
理緒も。
ラザフォードも
カノンも。
あの弟も。
こうす……け……も?
どいつもこいつも皆殺し。
理緒も。
ラザフォードも
カノンも。
あの弟も。
こうす……け……も?
――――浅月香介――――
おい。今、あたし何を考えてた。
ナニカおかしくなってなかったか。
オセロの石が裏返るように。
イロガカワッテイク。
ナニカおかしくなってなかったか。
オセロの石が裏返るように。
イロガカワッテイク。
まさか。
これがブレードチルドレンの呪い?
だってあたし今。
人殺しをなんとも思わなかったよ?
やだ。
これがブレードチルドレンの呪い?
だってあたし今。
人殺しをなんとも思わなかったよ?
やだ。
「い……や……だ。恐いよ……!」
自分が消えて行く感覚。
ココロにポッカリと穴が開いたような。
ココロにポッカリと穴が開いたような。
「こう……すけぇ」
助けて。タスケテタスケテタスケテ。
アタシガ。
“ナニカ”ニカワルマエニ。
アタシガ。
“ナニカ”ニカワルマエニ。
「助けてよ」
【リシアンサス@SHUFFLE!死亡】
【C-9/一日目・深夜】
【高町亮子@スパイラル~推理の絆~】
【状態】スイッチが――
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~2
【思考】
0. ――――助けてよ
※近くにリシアンサスのデイバッグ、遺体、不明支給品1~3、空のペットボトルが落ちています。
【状態】スイッチが――
【装備】なし
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~2
【思考】
0. ――――助けてよ
※近くにリシアンサスのデイバッグ、遺体、不明支給品1~3、空のペットボトルが落ちています。
【毒薬入りの水】
毒が入ってます。それだけ。強いていうならば、無味無臭。
容器の見た目は全員に配られた水と同じ。説明書もなし。これを入れたのは相当陰湿な者であろう。
毒が入ってます。それだけ。強いていうならば、無味無臭。
容器の見た目は全員に配られた水と同じ。説明書もなし。これを入れたのは相当陰湿な者であろう。
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