「そっちは見つかったか」
「全然。どこかの民家に隠れているのかもね。さすがに一件ずつ虱潰しに捜すことは厳しいよ」
「全然。どこかの民家に隠れているのかもね。さすがに一件ずつ虱潰しに捜すことは厳しいよ」
二人があちこちを捜し回った結果、藤林杏は見つからなかった。
一つ一つの家の中まで探した訳ではないから丁寧な捜索とは言えない。
だが、時間もたっぷりとあるわけではないから仕方ないのだ。もうすぐ放送が始まる、これを聞き逃したら情報面で不利になってしまう。
一つ一つの家の中まで探した訳ではないから丁寧な捜索とは言えない。
だが、時間もたっぷりとあるわけではないから仕方ないのだ。もうすぐ放送が始まる、これを聞き逃したら情報面で不利になってしまう。
「それでその子は?」
「ああ、杏ちゃんを捜している最中に遭遇してね」
「初めまして、た、高町なのはですっ!」
「ああ、杏ちゃんを捜している最中に遭遇してね」
「初めまして、た、高町なのはですっ!」
そしてツインテールをぴょこぴょこと揺らしながら丁寧におじぎをする少女、高町なのは。
樹は杏を捜している途中、前からおどおどしながら歩いてきたなのはを見つけ、声をかけたのだ。
可愛い女の子だからという理由で優しく接していた樹になのはは当初は苦笑いだったが、今ではもうスルースキルを早々に身につけて慣れてしまった。
樹は杏を捜している途中、前からおどおどしながら歩いてきたなのはを見つけ、声をかけたのだ。
可愛い女の子だからという理由で優しく接していた樹になのはは当初は苦笑いだったが、今ではもうスルースキルを早々に身につけて慣れてしまった。
「さてと、鳴海……杏ちゃんの代わりになのはちゃんが入った。だからといってこれからの方針を変えるってわけでもないだろう?」
「別に高町と藤林が入れ替わったところで基本的な方針に変更はない。このまま島の全貌を確かめるために行動をする。
だが、できればお前も行動を共にしてほしい」
「ありゃりゃ、気分でも変わったのかい?」
「藤林の代わりに入った高町は子供だ。戦力が下降してしまった現在の状況でただでさえ少ない人数を分けるのは危険だと俺は考える」
「別に高町と藤林が入れ替わったところで基本的な方針に変更はない。このまま島の全貌を確かめるために行動をする。
だが、できればお前も行動を共にしてほしい」
「ありゃりゃ、気分でも変わったのかい?」
「藤林の代わりに入った高町は子供だ。戦力が下降してしまった現在の状況でただでさえ少ない人数を分けるのは危険だと俺は考える」
樹の単独行動を遠まわしに止めようと歩はやんわりと自分達と行動を共にしようと提案をした。
単独行動はフットワークが軽くなる一方で襲われるデメリットも増大する。
いくら拳銃を持っていたとしてもこの島で生き残れるとは限らない。
戦場に絶対など存在しないのだから。それならば1%でも生き残れる確率が多い方を選ぶべきだ、歩はそう考えたのだ。
単独行動はフットワークが軽くなる一方で襲われるデメリットも増大する。
いくら拳銃を持っていたとしてもこの島で生き残れるとは限らない。
戦場に絶対など存在しないのだから。それならば1%でも生き残れる確率が多い方を選ぶべきだ、歩はそう考えたのだ。
「……俺様は一匹狼だからその提案には乗れないね。出来れば俺様もなのはちゃんの騎士様になりたいけどさ、俺様も親友が心配でさ、早く見つけたいのさ。
そんな心配そうな顔するなって、俺様を誰だと思っているんだい? 自他共に認める天才! 緑葉樹だよ?」
「そんな天才でも此処ではあっさりと死ぬかもしれない」
「そうですよ、一人でなんて危険です!!!!」
そんな心配そうな顔するなって、俺様を誰だと思っているんだい? 自他共に認める天才! 緑葉樹だよ?」
「そんな天才でも此処ではあっさりと死ぬかもしれない」
「そうですよ、一人でなんて危険です!!!!」
なのははともかくとして歩はどこか樹に対して危険性を感じていた。
自分などどうにでもなってしまえ。歩は樹を見ていると昔の自分を想起させたのだ。
加えて、杏の時のような失態はもう懲り懲りだった。仲間を失いたくない、おおっぴらには言わないがその気持ちが樹を引き止める一番の要因だった。
自分などどうにでもなってしまえ。歩は樹を見ていると昔の自分を想起させたのだ。
加えて、杏の時のような失態はもう懲り懲りだった。仲間を失いたくない、おおっぴらには言わないがその気持ちが樹を引き止める一番の要因だった。
「約束するよ、俺様は鳴海達よりは“先”には絶対に死なない。だから単独での行動を許してほしい、頼むよ」
「…………わかった」
「鳴海さん!?」
「だけど、その約束は変えろ。先も後もない、俺達は全員ここから生きて帰るんだ……藤林も含めてな」
「当然さ、こんな馬鹿らしい所で死にたくはないし。もし死ぬとしたら美少女の膝の上! ってね」
「…………わかった」
「鳴海さん!?」
「だけど、その約束は変えろ。先も後もない、俺達は全員ここから生きて帰るんだ……藤林も含めてな」
「当然さ、こんな馬鹿らしい所で死にたくはないし。もし死ぬとしたら美少女の膝の上! ってね」
樹はペコちゃんスマイルをしながらサムズアップ、歩が先程抱いた危険性は間違いだったのではないかと思うぐらいに脳天気な行動。
自分の抱いてた心配は気のせいだったのではないか。そして、樹の道化染みた行動に思わず笑ってしまう。それにつられてなのはも薄く哂う。
自分の抱いてた心配は気のせいだったのではないか。そして、樹の道化染みた行動に思わず笑ってしまう。それにつられてなのはも薄く哂う。
(とりあえずは今は味方というカテゴリーに入れても問題はないか……)
数時間前の問答では何処か怪しさがあった樹だが今は何の気配もない。ひとまずは放置という方向性に歩は決めた。
「さてと、じゃあ俺様は行くよ」
「放送が近いんだ、もう少しゆっくりしていってもいいんじゃないか?」
「それもそうなんだけど、杏ちゃんのことで時間も押しているしね。行動は迅速にしなきゃいけないさ」
「放送が近いんだ、もう少しゆっくりしていってもいいんじゃないか?」
「それもそうなんだけど、杏ちゃんのことで時間も押しているしね。行動は迅速にしなきゃいけないさ」
否定出来ない。杏を捜す手間をかけたせいで行動に遅れが出ていることは確かだ。
これ以上ズルズルと引きずるわけにもいかない。こうしている間にも何処かで人が死に、脱出への道も閉ざされていく。
故に仕方が無いことだ、生きてさえすればまた会えるのだから。
これ以上ズルズルと引きずるわけにもいかない。こうしている間にも何処かで人が死に、脱出への道も閉ざされていく。
故に仕方が無いことだ、生きてさえすればまた会えるのだから。
「……死ぬなよ、緑葉」
「また無事で会いましょう!」
「ああ、鳴海となのはちゃんもね」
「また無事で会いましょう!」
「ああ、鳴海となのはちゃんもね」
最後にニヤリと笑って樹は太陽の光が照り始めた早朝の街に消えていく。
それを二人は最後の消える一瞬まで見送った。
誰もが言わなかったことではあるがもしかすると今生の別れになるかもしれないのだ。それならばせめて最後まで仲間を目に焼き付けておきたい。
それを二人は最後の消える一瞬まで見送った。
誰もが言わなかったことではあるがもしかすると今生の別れになるかもしれないのだ。それならばせめて最後まで仲間を目に焼き付けておきたい。
「行ってしまいましたね」
「ああ、俺達はまだ待機だ。高町の話も詳しく聞いていないし聞かせてくれない」
「はい、わかりました」
「ああ、俺達はまだ待機だ。高町の話も詳しく聞いていないし聞かせてくれない」
「はい、わかりました」
こうして着々と放送の時は近づいていく。何もかもを絶望に塗り潰していく放送に二人は耐えられることができるのだろうか。
それはこの時に知る由もない。未来はわかるはずのない未知のものだから。
そう、“一部”を除いて。
それはこの時に知る由もない。未来はわかるはずのない未知のものだから。
そう、“一部”を除いて。
◆ ◆ ◆
「……もう俺様は一人だ。いい加減出てこいよ」
「わかっていたのかい?」
「ご丁寧にPDAにメールを送ってきたのはアンタじゃないか」
「わかっていたのかい?」
「ご丁寧にPDAにメールを送ってきたのはアンタじゃないか」
歩達から離れて数分が経った後、樹は背後を振り返り腰に指していたスチェッキンを水平に構えた。
安全装置は当然解除。いつでも撃てるようにトリガーには指をかけている。
銃口を向けた先、家の影から現れたのは白いスーツに身を包み、少し長い髪を後ろに束ねた若い男。
百人中百人が見てもかっこいいと言われるであろう端正な顔立ち。
だが、違う。彼は他の参加者とは違う。
安全装置は当然解除。いつでも撃てるようにトリガーには指をかけている。
銃口を向けた先、家の影から現れたのは白いスーツに身を包み、少し長い髪を後ろに束ねた若い男。
百人中百人が見てもかっこいいと言われるであろう端正な顔立ち。
だが、違う。彼は他の参加者とは違う。
「首輪を付けていない、アンタは何者だい?」
参加者の象徴たる首輪を付けていないという大きすぎる違いが樹の警戒心を最大級にまで引き上げる。
だが男はそんな樹の心境はお構いなしに堂々と前へと足を進める。一歩ずつ。着実に。
だが男はそんな樹の心境はお構いなしに堂々と前へと足を進める。一歩ずつ。着実に。
「それ以上は近づくな。この拳銃が見えないのか? それに安全装置も外している。いつでも撃てるんだ、こっちは」
その男は拳銃を向けられているというのに威風堂々としていた。こいつには恐怖心というものがないのか。
樹の頬から一滴の汗がたれ落ちる。緊迫した空気が場に張り詰める。
樹の頬から一滴の汗がたれ落ちる。緊迫した空気が場に張り詰める。
「まあそう固くならずにしてくれないか? ほら、リラックスリラックス」
「できるならそうしたいんだけど……あいにくと敵の目の前で気を抜けるほど腑抜けてはいないんでねっ!」
「できるならそうしたいんだけど……あいにくと敵の目の前で気を抜けるほど腑抜けてはいないんでねっ!」
迫りつつある男に恐怖を抑えきれずに樹はトリガーを引く。引く。だが銃口からは弾丸が発射されない。
安全装置は外れている。トリガーは確かに引かれている。
なぜ。男を殺せない。
安全装置は外れている。トリガーは確かに引かれている。
なぜ。男を殺せない。
「……嘘だろ」
「どうやら私はここで死ぬ運命ではないようだ。運命の螺旋は私という存在をまだ終わらせてくれない」
「どうやら私はここで死ぬ運命ではないようだ。運命の螺旋は私という存在をまだ終わらせてくれない」
そして男は樹に後一歩という所まで近づく。逃げるべき? 逃げれない。
この近距離からでは逃げることは敵わず。
この近距離からでは逃げることは敵わず。
「抵抗はおすすめしない。そもそも私はキミに危害を加えるつもりはない」
「いい加減質問に答えてくれない? というかさ、わざわざ俺様に直接会ってまで果たしたい用件は何?
PDAに『君と話したいことがある、出来れば単独行動をとって欲しい』なんてメールを送りつけてまで俺様と話したいことなんてあるとは思わないけど」
「ふむ、その辺りを丁寧に語ってもいいが立ち話も何だ。とりあえずそこのカフェで一杯どうかね? それと出来れば銃口を下げてくれると嬉しいな」
「いい加減質問に答えてくれない? というかさ、わざわざ俺様に直接会ってまで果たしたい用件は何?
PDAに『君と話したいことがある、出来れば単独行動をとって欲しい』なんてメールを送りつけてまで俺様と話したいことなんてあるとは思わないけど」
「ふむ、その辺りを丁寧に語ってもいいが立ち話も何だ。とりあえずそこのカフェで一杯どうかね? それと出来れば銃口を下げてくれると嬉しいな」
男は樹の横をそのまますり抜けて近くのカフェに入っていく。樹は未だに拳銃を握り締めているにもかかわらず背中を向けている。
あれでは撃ち殺してくださいと言っているようなものだ。
あれでは撃ち殺してくださいと言っているようなものだ。
(何なんだよ、あの男は……! 明らかに常識の範疇を越えているって。
下手に断って機嫌を損ねさせる訳にはいかないし、ともかくついていくしかない、かな。それになんだかんだ言ってこれはチャンスなのかもしれない。
主催者の内情をほんの少しでも知ることができればそれは俺様の切り札となりうる)
下手に断って機嫌を損ねさせる訳にはいかないし、ともかくついていくしかない、かな。それになんだかんだ言ってこれはチャンスなのかもしれない。
主催者の内情をほんの少しでも知ることができればそれは俺様の切り札となりうる)
樹は拳銃を腰につけているホルダーに戻して男の後を追うようにカフェの中に入る。
中は英國風でなかなかに凝っている。ちなみに看板にはビクトリアと出ていた。
中は英國風でなかなかに凝っている。ちなみに看板にはビクトリアと出ていた。
「まあそこでゆっくりと腰をかけていてくれ。今コーヒーを入れる」
「……はいはいわかりましたよ」
「……はいはいわかりましたよ」
男は奥の厨房に入りガサゴソと戸棚を漁る。コーヒーの豆やカップなどを探しているのだろう。
その間、樹は椅子に座り、思考に徹していた。
考えることは無論この状況について。疑問点は挙げればきりがない。
その間、樹は椅子に座り、思考に徹していた。
考えることは無論この状況について。疑問点は挙げればきりがない。
(さて、何故俺様? 緑葉樹がコンタクトを取られる理由は? あくまで一般的な高校生であるはずの自分を御指名する理由は?)
あの時の自分は男に殺されてもおかしくなかった。だけど、現在こうして五体満足で生きている。
殺される状況だというのに生かされた、それは樹の頭を悩ませる。
厨房からはコーヒー豆をごりごりと細かく砕く音と共に香ばしいコーヒー独特の臭いが風に乗ってやってくる。
ああ、あの男は本気で自分とコーヒーを飲むつもりなのか。
樹はため息を吐き、厨房の方で鼻歌を歌いながら準備をしている男を視覚、聴覚から出来るだけ無視して思考の海に身を沈める。
殺される状況だというのに生かされた、それは樹の頭を悩ませる。
厨房からはコーヒー豆をごりごりと細かく砕く音と共に香ばしいコーヒー独特の臭いが風に乗ってやってくる。
ああ、あの男は本気で自分とコーヒーを飲むつもりなのか。
樹はため息を吐き、厨房の方で鼻歌を歌いながら準備をしている男を視覚、聴覚から出来るだけ無視して思考の海に身を沈める。
(脱出への重要な人物でもあるまいし、殺し合いでの立ち位置だって決して優位なんて言えない。
俺様よりも“できる”奴はいるはずだ。ああ、もう! 何が何だかわからないよ)
俺様よりも“できる”奴はいるはずだ。ああ、もう! 何が何だかわからないよ)
そうして頭を抱えて思考を続けている間にコーヒーの入ったカップがテーブルに置かれる。
顔を上げると男が出会った時と変わらない笑みを顔に貼り付けて前の椅子へとゆったりと座る姿が目に写った。
顔を上げると男が出会った時と変わらない笑みを顔に貼り付けて前の椅子へとゆったりと座る姿が目に写った。
「警戒しなくてもいい。毒は入っていないからね」
「だろうね。アンタはあの時、俺様をいつでも殺せたんだ、今更毒殺だなんてチャチな真似はしないでしょ」
「はははっ、キミは面白いね」
「だろうね。アンタはあの時、俺様をいつでも殺せたんだ、今更毒殺だなんてチャチな真似はしないでしょ」
「はははっ、キミは面白いね」
コーヒーに口を付けると上質な苦味が疲れていた頭を覚醒させる。こんな男が作ったコーヒーなんてと思うが舌は正直でおいしいとささやいている。
余りコーヒーに通ではない樹でさえ良い豆を使っていることがわかるぐらいに味がいい。
悔しいことにこの男の淹れたコーヒーはとても満足だった。
余りコーヒーに通ではない樹でさえ良い豆を使っていることがわかるぐらいに味がいい。
悔しいことにこの男の淹れたコーヒーはとても満足だった。
「さて、こうして落ち着いて会談の場を作ったんだ、そろそろ話してくれてもいいんじゃない?」
「そうだね、まず何から語ればいいものやら……キミを殺さない理由からでいいかな?
そもそもキミを殺す理由が私にはない。理由がないのに人を殺すシリアルキラーでもないのだから当然のことだと言える」
「信用するとでも?」
「別に信じようとも信じなくともどちらでもいい。私にとってそれは重要なことではないからね」
「そうだね、まず何から語ればいいものやら……キミを殺さない理由からでいいかな?
そもそもキミを殺す理由が私にはない。理由がないのに人を殺すシリアルキラーでもないのだから当然のことだと言える」
「信用するとでも?」
「別に信じようとも信じなくともどちらでもいい。私にとってそれは重要なことではないからね」
男は静かにカップに口をつけて優雅にコーヒーの味を楽しんでいる。
その姿はまるでどこかのモデルだ。こんな場所でなければ街行く女性の心を引き寄せてしまうことだろう。
プレイボーイを自称する樹からしてみると気分のいいものではないが。
その姿はまるでどこかのモデルだ。こんな場所でなければ街行く女性の心を引き寄せてしまうことだろう。
プレイボーイを自称する樹からしてみると気分のいいものではないが。
「さて、本題へ入ろう。キミは、既知感というものを経験したことがあるだろうか。既視ではなく既知、既に知っている感覚……まあこれは誰かの受け売りなんだけどね。
ちなみに私はあるんだよ、信じられないかもしれないがね」
「…………俺様は至ってノーマルな学生なんだ、アンタの戯言に付き合っている程バカじゃない」
「……キミは自分の中にある得体の知れないものに困惑しているのではないかな?」
「………………!」
ちなみに私はあるんだよ、信じられないかもしれないがね」
「…………俺様は至ってノーマルな学生なんだ、アンタの戯言に付き合っている程バカじゃない」
「……キミは自分の中にある得体の知れないものに困惑しているのではないかな?」
「………………!」
樹は否定出来ない。自分が考えていたことが全て言い当てられている。それはまだ内に秘めていた事だというのに何故。
「何故知っているかって? 言っただろう、既知感というものを経験していると。だからなんとなくだけどわかるんだよ」
男の放った言葉には嘘は見られない。何もかもを知っているかのような口ぶり、苛立たしい。
万物はこの男を中心にして回っているとでも言いたいのだろうか、顔には出さず樹は心中で舌をうつ。
万物はこの男を中心にして回っているとでも言いたいのだろうか、顔には出さず樹は心中で舌をうつ。
「まあ結論から述べさせてもらうと『この世界には秘密がある』、月並みな言葉だがね」
「……」
「黙っていては話が進まない、何か言葉を発してくれないかな」
「……わかったよ。確かにこの世界はおかしい。何もかもが狂ってやがるしそれに順応する俺様達の頭もどこかネジが一本飛んでるとしか思えない」
「……」
「黙っていては話が進まない、何か言葉を発してくれないかな」
「……わかったよ。確かにこの世界はおかしい。何もかもが狂ってやがるしそれに順応する俺様達の頭もどこかネジが一本飛んでるとしか思えない」
樹がこの島に降り立ってから少ししか時間は経っていない。だが、短くとも濃密な時間を過ごしてきたのだ。
そして、他の参加者よりも考察を重ねてきた結果、この世界の秘密の片鱗へと辿り着けた。
そして、他の参加者よりも考察を重ねてきた結果、この世界の秘密の片鱗へと辿り着けた。
「それにこのデイバックについてもだ。これについて俺様達は疑問を抱くこと“すら”しなかった……いや、出来なかったって言った方が正しいか」
そう、手がかりはすぐ近くにあったのだ。何でも入るデイバックなんておかしいにも程がある。なのに気付かなかった。いや、気付けなかった。
あたかも、この技術が当たり前に存在しているかのように考えていたのだから。
認識の変遷。それを気付かせずに行った主催者の強大さが今の樹には身にしみて理解できる。
あたかも、この技術が当たり前に存在しているかのように考えていたのだから。
認識の変遷。それを気付かせずに行った主催者の強大さが今の樹には身にしみて理解できる。
「俺様達の当然、つまり常識は崩されている……?」
「然り。ここでは何も信じることが出来ない」
「だけど、まだ引っかかることがあるんだよね」
「なんだい? 遠慮せずに言うといい」
「俺様はこの拳銃の使い方を知っていた。これも既知かい?」
「私が肯定せずとも、その領域までたどり着いているキミなら理解できるはずだ。この世界の秘密が」
「ああ、そうだね。遠慮なく言わせてもらうよ」
「然り。ここでは何も信じることが出来ない」
「だけど、まだ引っかかることがあるんだよね」
「なんだい? 遠慮せずに言うといい」
「俺様はこの拳銃の使い方を知っていた。これも既知かい?」
「私が肯定せずとも、その領域までたどり着いているキミなら理解できるはずだ。この世界の秘密が」
「ああ、そうだね。遠慮なく言わせてもらうよ」
樹の頭に浮かぶ1つの考え。それは取るに足らない幻想、頭が狂っているとしか思えない仮想。
だけど現状で出る答えはそれしかなかった。ならばそれを放つしかない。
そう、この世界は――。
だけど現状で出る答えはそれしかなかった。ならばそれを放つしかない。
そう、この世界は――。
「世界は繰り返されている、何度も何度も。この殺し合いの時間だけを切り取って」
信じたくない。されど、男の口から出た幾つもの断片が繋がり合った結果、理論を導き出している。
世界の繰り返し。それは樹の知る魔法では存在しない。
知り合いの神王、魔王ですら時間のループを延々と続かせることは不可能であろう。
世界の繰り返し。それは樹の知る魔法では存在しない。
知り合いの神王、魔王ですら時間のループを延々と続かせることは不可能であろう。
「俺様達は……決められた道を進んでは戻って、進んでは戻って……その繰り返しをしているだけだっていうのか」
「私はそう考えている。この既知感を壊すまで、殺し合いは続くのかもしれない。
そして、我々の脳内には前回の、幾千、幾万もの殺し合いの記憶がこびりついているだろう、身体がもう覚えてしまっているんだ。武器の使い方も魔法についての耐性も。
故に元々持っていた常識が崩れている、と仮定した」
「私はそう考えている。この既知感を壊すまで、殺し合いは続くのかもしれない。
そして、我々の脳内には前回の、幾千、幾万もの殺し合いの記憶がこびりついているだろう、身体がもう覚えてしまっているんだ。武器の使い方も魔法についての耐性も。
故に元々持っていた常識が崩れている、と仮定した」
こびりついた記憶がもたらした恩恵はバトル・ロワイアルというゲームを行うには凄く便利だ。
刃物や銃火器の扱い、異世界交流、あらゆることがスムーズに進むのだ。
余計なロスタイムはなくなるし、その分早期決着にも結びつく。
刃物や銃火器の扱い、異世界交流、あらゆることがスムーズに進むのだ。
余計なロスタイムはなくなるし、その分早期決着にも結びつく。
「……俺様はアンタの言ったことを全部信じた訳じゃない。まだ、半信半疑だ」
いきなりどこからともなく現れて、フランクに話しかけてきた男を全面的に信じる方がどうかしている。
加えて、相手は高確率で主催者側の人間だ、今話したことは全てブラフだという可能性は非常に高い。
だが、この不可解な現象をまとめるには男が伝えてくれたことを信じざるを得ない。
加えて、相手は高確率で主催者側の人間だ、今話したことは全てブラフだという可能性は非常に高い。
だが、この不可解な現象をまとめるには男が伝えてくれたことを信じざるを得ない。
「だけど“俺”のやることは変わらない。この既知の法則渦巻く盤面を破壊する。こんな島から絶対に、脱出してみせるよ」
「その意気だ……キミはそのまま最後まで突き進むがいい」
「言われなくても進むさ。それと最後に1つ……アンタの名前はなんだい?」
「その意気だ……キミはそのまま最後まで突き進むがいい」
「言われなくても進むさ。それと最後に1つ……アンタの名前はなんだい?」
名前という僅かな情報でも何かに利用できることがあるかもしれない。情報は吸い取れるだけ吸い取るべきだ。
それに、自分にこの世界の秘密を教えてくれた男の名が気になったという好奇心もあった。
男はそれにニヤリと笑みを浮かべながら舞台役者のように手を広げて言の葉を紡ぐ。
それに、自分にこの世界の秘密を教えてくれた男の名が気になったという好奇心もあった。
男はそれにニヤリと笑みを浮かべながら舞台役者のように手を広げて言の葉を紡ぐ。
「鳴海清隆、“元”神様さ」
【D-01/一日目・早朝】
【鳴海歩@スパイラル~推理の絆~】
【状態】:健康
【装備】:S&WM686 Plus(7/7)
【道具】:支給品一式×2、ソードサムライX @武装錬金、ハヤブサ号@スパイラル・アライヴ
357Magnum予備弾63 、樹お手製の人物表×2、不明支給品0~1、LAR Grizzlyの予備マガジン×4 、携帯電話(黒)
【思考・状況】
基本:島からの脱出。
1:高町の話を聞く。
2:高町と一緒に島の下部の調査、杏の捜索も並行して行う。第三放送時に山小屋で集合。
3:緑葉樹に対しての僅かな疑心?
※ブレードチルドレンについて詳しく語っていません。
【状態】:健康
【装備】:S&WM686 Plus(7/7)
【道具】:支給品一式×2、ソードサムライX @武装錬金、ハヤブサ号@スパイラル・アライヴ
357Magnum予備弾63 、樹お手製の人物表×2、不明支給品0~1、LAR Grizzlyの予備マガジン×4 、携帯電話(黒)
【思考・状況】
基本:島からの脱出。
1:高町の話を聞く。
2:高町と一緒に島の下部の調査、杏の捜索も並行して行う。第三放送時に山小屋で集合。
3:緑葉樹に対しての僅かな疑心?
※ブレードチルドレンについて詳しく語っていません。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】:健康
【装備】:
【道具】:支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:
1:鳴海さんに今までのことを話す。
2:春原さんはいい人です。
【状態】:健康
【装備】:
【道具】:支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:
1:鳴海さんに今までのことを話す。
2:春原さんはいい人です。
【C-01/一日目・早朝】
【緑葉樹@SHUFFLE!】
【状態】:健康
【装備】:USSR スチェッキン APS(21/20+1)
【道具】:支給品一式、予備マガジン×2、樹お手製の人物表、不明支給品0~2(切り札がある?)
【思考・状況】
基本:この島からの脱出、知り合い全員の無事の確保。既知感については?
1:島の上部を調査する。脱出の方法も同時に探る。第三放送時に山小屋で集合。
2:知り合いとの合流? もし自分以外が乗っていたら……
3:できればサブの武器がほしい。
※プリムラが自分の知り合いだと話していません。
【状態】:健康
【装備】:USSR スチェッキン APS(21/20+1)
【道具】:支給品一式、予備マガジン×2、樹お手製の人物表、不明支給品0~2(切り札がある?)
【思考・状況】
基本:この島からの脱出、知り合い全員の無事の確保。既知感については?
1:島の上部を調査する。脱出の方法も同時に探る。第三放送時に山小屋で集合。
2:知り合いとの合流? もし自分以外が乗っていたら……
3:できればサブの武器がほしい。
※プリムラが自分の知り合いだと話していません。
BACK:いろとりどりのセカイ | 時系列順 | NEXT:泣き叫んだ少年少女――今日ここに、神はいない |
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