「おいフカヒレ」
「フカヒレじゃねーってちーちゃん。何度も言うようだけどシャークだから」
「てめー、その呼称はやめろって言ってんだろうが。つうかシャークはねーよ、テメーなんかフカヒレで十分だ」
「フカヒレじゃねーってちーちゃん。何度も言うようだけどシャークだから」
「てめー、その呼称はやめろって言ってんだろうが。つうかシャークはねーよ、テメーなんかフカヒレで十分だ」
二人の少年少女がライディングボードに乗りながら互いに睨み合っている。
眼鏡をかけた少年、鮫氷新一が後ろに乗る眼鏡をかけた少女―長谷川千雨に悪態をつき、千雨もそれに対して同じく悪態で返答をする。
このようなやりとりを山田太郎との遭遇から何度も繰り返していた。
眼鏡をかけた少年、鮫氷新一が後ろに乗る眼鏡をかけた少女―長谷川千雨に悪態をつき、千雨もそれに対して同じく悪態で返答をする。
このようなやりとりを山田太郎との遭遇から何度も繰り返していた。
「そんなことよりもこれからどーすんだ」
「当分は友達捜し、かな。何人か俺と一緒でこの島に連れてこられているんだよ」
「ふーん。私もクラスメイトと担任の教師が来てっからな。一応は、合流しようかと考えている」
「当分は友達捜し、かな。何人か俺と一緒でこの島に連れてこられているんだよ」
「ふーん。私もクラスメイトと担任の教師が来てっからな。一応は、合流しようかと考えている」
はぁと重く溜息を吐きながら千雨はガリガリと頭をかく。
このふざけたゲームに頭は暴発寸前、叫び出したい気持ちでいっぱいだった。
だが現実でそんなことをしても解決などしない。千雨は他の参加者と比べても頭の回転が速い為にわかってしまう。
このふざけたゲームに頭は暴発寸前、叫び出したい気持ちでいっぱいだった。
だが現実でそんなことをしても解決などしない。千雨は他の参加者と比べても頭の回転が速い為にわかってしまう。
(あーくそっ!! 何で私がこんな目に合わなくちゃなんねーんだよ。普通の女子中学生に殺し合いさせんな!)
イライラが収まらない千雨はこめかみを押さえて湧き出しそうになる怒りの感情を自制した。
今なら何でも素手で倒せる気がする。それ程に感情は暴発寸前だった。
今なら何でも素手で倒せる気がする。それ程に感情は暴発寸前だった。
「ちーちゃん」
「んだよ、人が考え事してる時に」
「んだよ、人が考え事してる時に」
怒りを必死に抑えている途中で割り込まれたことが不満なのか、千雨は少し目を吊り上げて顔を上げる。
何かあったのかと横を見ても代わり映えのない景色が延々と流れているだけであり、適当にあしらおうとするが。
何かあったのかと横を見ても代わり映えのない景色が延々と流れているだけであり、適当にあしらおうとするが。
「遠くに人がいる」
「あーはいはいそうですかーそんなのどうでもい……いやよくねえよ!」
「俺としちゃあ片方は美少女っぽいからぜひお近づきになりたいからこのまま突き進もうぜ!
クックック……この鮫氷新一の魅力をたっぷりと教えてやるよ!」
「お前アホだろ」
「なんだとぅ! 貧乳のくせに生意気な……」
「おいちょっと待て。テメー今の言葉をもう一度」
「なんだとぅ!」
「違うわ! その後だ、どうも聞き捨てならないことを口走っていなかったか?」
「はて? なんのことやら?」
「誤魔化してんじゃねーよ! 貧乳とか止めろよ! 割と気にしてんだよ!」
「貧乳はステータスだと思うけどね、俺は。ああ! もちろん俺はオッケーだから!」
「テメーの趣味なんて聞いてねえよ!」
「貧乳バカにすんなよ! 貧乳にもよさがあるじゃん!」
「もうお前それ以上喋るな」
「あーはいはいそうですかーそんなのどうでもい……いやよくねえよ!」
「俺としちゃあ片方は美少女っぽいからぜひお近づきになりたいからこのまま突き進もうぜ!
クックック……この鮫氷新一の魅力をたっぷりと教えてやるよ!」
「お前アホだろ」
「なんだとぅ! 貧乳のくせに生意気な……」
「おいちょっと待て。テメー今の言葉をもう一度」
「なんだとぅ!」
「違うわ! その後だ、どうも聞き捨てならないことを口走っていなかったか?」
「はて? なんのことやら?」
「誤魔化してんじゃねーよ! 貧乳とか止めろよ! 割と気にしてんだよ!」
「貧乳はステータスだと思うけどね、俺は。ああ! もちろん俺はオッケーだから!」
「テメーの趣味なんて聞いてねえよ!」
「貧乳バカにすんなよ! 貧乳にもよさがあるじゃん!」
「もうお前それ以上喋るな」
二人はライディングボードを動かすのを止めて不毛な言い争いを始めてしまった。
ああ言えばこう言う、延々と互いを罵り合い、周りのことなどお構いなしである。
そして蚊帳の外に置かれた二人――森近霖之助と椎名深夏は固まった。
どうすればいい、二人に浮かんだ共通の感情だ。
結局はこのまま放っておく訳にもいかないと判断して、今も口論を続けている新一達に訝しげに近づいた。
ああ言えばこう言う、延々と互いを罵り合い、周りのことなどお構いなしである。
そして蚊帳の外に置かれた二人――森近霖之助と椎名深夏は固まった。
どうすればいい、二人に浮かんだ共通の感情だ。
結局はこのまま放っておく訳にもいかないと判断して、今も口論を続けている新一達に訝しげに近づいた。
「なあ、君達……少し静かに」
「「うるせー! 引っ込んでろ陰気眼鏡! 趣味悪い服装してんじゃねーよ!!」」
「…………ほう」
「り、霖之助……?」
「「うるせー! 引っ込んでろ陰気眼鏡! 趣味悪い服装してんじゃねーよ!!」」
「…………ほう」
「り、霖之助……?」
新一達の暴言に霖之助の目がスッと鋭くなっていく。額には青筋が浮かび、口も吊り上がっている。
誰が見てもわかるぐらいに怒りの表情を顔全体に貼りつけていた。
誰が見てもわかるぐらいに怒りの表情を顔全体に貼りつけていた。
「よし、深夏さっさと行こうか」
「ええっ!? こいつらどうすんだよ!」
「放っておこう、接触しても僕達に利はない」
「ええっ!? こいつらどうすんだよ!」
「放っておこう、接触しても僕達に利はない」
そう捨て台詞を吐いて霖之助はスタスタと歩き出した。深夏はそれを慌てて引き止め、連れ戻す。
そして口論は依然と収まってない。むしろ、前よりもヒートアップしているかのようだ。
この場から立ち去ろうとする霖之助、大きな声で互いを罵り合っている二人。
深夏はこの頭の痛くなる状況を何とか解決したころには生徒会の仕事一年分をやり終えた錯覚に襲われた。
そして口論は依然と収まってない。むしろ、前よりもヒートアップしているかのようだ。
この場から立ち去ろうとする霖之助、大きな声で互いを罵り合っている二人。
深夏はこの頭の痛くなる状況を何とか解決したころには生徒会の仕事一年分をやり終えた錯覚に襲われた。
◆ ◆ ◆
「いやぁ、情報交換は強敵でしたね」
「ミスト乙。テメーは何もやってねーし、ほとんどは森近さんがまとめてただろ。つうかまともに喋れ」
「何言ってるのさ、俺は常にまともでパーフェクトな美少年だぜ?」
「一回鏡見てこい」
「君達は相変わらずだね……」
「……頭が痛くなるわ、こいつら」
「ミスト乙。テメーは何もやってねーし、ほとんどは森近さんがまとめてただろ。つうかまともに喋れ」
「何言ってるのさ、俺は常にまともでパーフェクトな美少年だぜ?」
「一回鏡見てこい」
「君達は相変わらずだね……」
「……頭が痛くなるわ、こいつら」
四人は近くにあったファーストフード店に入りそれぞれが持っていた情報の共有、つまるところ情報交換を終了したところだ。
この情報交換で侃々諤々とした議論が繰り広げられたのだがここでは割愛させてもらう。
この情報交換で侃々諤々とした議論が繰り広げられたのだがここでは割愛させてもらう。
「しかし霖之助すげえな! あたしには何が何だかさっぱりだったぜ。とりあえず魔法すげーってことはわかったけど」
「別に大したことはしていないよ。千雨の持ち寄った“魔法”の情報と僕が元々持っていた“魔法”の情報。
それらを誰にでもわかるようにしただけさ」
「別に大したことはしていないよ。千雨の持ち寄った“魔法”の情報と僕が元々持っていた“魔法”の情報。
それらを誰にでもわかるようにしただけさ」
当初、この情報交換は難航していた。千雨が持っていた“魔法”の情報と霖之助が持っていた“魔法”の情報。
二つの情報がごちゃまぜになり、新一は最初の数秒で机に突っ伏し、深夏も最初は頑張って理解しようと努力していたが数分後にはギブアップ。
千雨にいたっては話し合う前からどうでもいいといった風で情報を開示した後は奥の厨房にあったハンバーガーを勝手に拝借してダルそうに食べていた。
二つの情報がごちゃまぜになり、新一は最初の数秒で机に突っ伏し、深夏も最初は頑張って理解しようと努力していたが数分後にはギブアップ。
千雨にいたっては話し合う前からどうでもいいといった風で情報を開示した後は奥の厨房にあったハンバーガーを勝手に拝借してダルそうに食べていた。
「まあこういう情報整理は得意な方だからね。個人的にも“魔法”の違いに興味が湧いたこともあってかすんなり理解できたよ」
四人が出した情報を整理し、誰にでもわかるように噛み砕いてまとめる。
それは常人からすると険しいことだった。何しろ、世界観の違う“魔法”を上手くまとめて誰にでもわかるようにするというのだ、簡単な訳がない。
だが、霖之助はそれを苦にすることもなくやってのけた。
それは常人からすると険しいことだった。何しろ、世界観の違う“魔法”を上手くまとめて誰にでもわかるようにするというのだ、簡単な訳がない。
だが、霖之助はそれを苦にすることもなくやってのけた。
「まあ出来上がったメモは各自後で写しておいてくれ、それよりもだ……!」
霖之助は“魔法”についてまとめたメモをデイバッグの中にしまい、新たなメモ用紙を机に載せる。
気のせいか目は先程よりも爛々としており、思わず千雨は少し身体を後ろに引いてしまった。
気のせいか目は先程よりも爛々としており、思わず千雨は少し身体を後ろに引いてしまった。
「できれば千雨にはもっと現代の知識、そうだな……特にパソコンの話をもっと聴かせてくれないか?」
「それは別に私に聞かなくてもわかることでしょう、椎名さんかフカヒレにでも聞いてください。私よりは丁寧に教えてくれると想います」
「それは別に私に聞かなくてもわかることでしょう、椎名さんかフカヒレにでも聞いてください。私よりは丁寧に教えてくれると想います」
千雨は立ち上がり、ハンバーガーの包装紙をくしゃくしゃに丸めてゴミ箱へと投げ込んだ。
そしてそのままふらふらと長い椅子に身体を預けて横になる。
放送近くになったら起こしてください、そう言い残して千雨はまぶたを閉じて睡眠に入った。
そしてそのままふらふらと長い椅子に身体を預けて横になる。
放送近くになったら起こしてください、そう言い残して千雨はまぶたを閉じて睡眠に入った。
「はぁ……彼女は聡明そうだからきっと詳しく説明してくれと思って聞いてみたが……残念だ」
「その理屈だとあたしは聡明でないということですか」
「そんなことはない、ただ彼女は色々と知ってそうだったからね。君も聡明であると僕は思うよ」
「ふん、よく言うぜ」
「その理屈だとあたしは聡明でないということですか」
「そんなことはない、ただ彼女は色々と知ってそうだったからね。君も聡明であると僕は思うよ」
「ふん、よく言うぜ」
そんな風に軽口を二人で交わしている内にあることに深夏は気づいた。
目の前にいる新一が先程から黙りこくっている。最初は陽気に喋っていたのが今は口を閉じて宙をぼんやりと見ているだけ。
何かあったのだろうか。深夏はなぜだかは知らないが無性に気になってしまった。
目の前にいる新一が先程から黙りこくっている。最初は陽気に喋っていたのが今は口を閉じて宙をぼんやりと見ているだけ。
何かあったのだろうか。深夏はなぜだかは知らないが無性に気になってしまった。
「おい、フカヒレ。どうかしたのか」
「ん、ああ……なんでもないよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「そうか、ならいいけどよ……体調悪いんだったらきちんと言ったほうがいい――」
「んー、大丈夫大丈夫。俺はまだ深夏ちゃんでエロイ妄想できるから全然平気さ!」
「――やっぱ気のせいだったわ」
「ん、ああ……なんでもないよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「そうか、ならいいけどよ……体調悪いんだったらきちんと言ったほうがいい――」
「んー、大丈夫大丈夫。俺はまだ深夏ちゃんでエロイ妄想できるから全然平気さ!」
「――やっぱ気のせいだったわ」
深夏は新一がイイ笑顔でサムズアップするのを鼻で一蹴して、椅子をぐるりと回して再び霖之助に向き直る。
心配したあたしがバカだった、と心中でごちる。
霖之助にいたっては気にすらしていない。我関せずといった空気を出している。
心配したあたしがバカだった、と心中でごちる。
霖之助にいたっては気にすらしていない。我関せずといった空気を出している。
「よっと、ちょっとトイレ行ってくるわ~」
そんな二人に軽くウインクをして、新一はトイレへと鼻歌を歌いながら向かっていった。
その姿が見えなくなった後、深夏はこっそりと霖之助に問いかける。
その姿が見えなくなった後、深夏はこっそりと霖之助に問いかける。
「あいつら、本当に大丈夫なのか」
「何がだい?」
「フカヒレはいっつもへらへらしててさ……何か口を出せば茶化したり笑っていたり。
長谷川は“魔法”の情報を出したくらいで全然協力しようって感じじゃねえし。
あいつらはここが殺し合いの島だって理解してんのか」
「何がだい?」
「フカヒレはいっつもへらへらしててさ……何か口を出せば茶化したり笑っていたり。
長谷川は“魔法”の情報を出したくらいで全然協力しようって感じじゃねえし。
あいつらはここが殺し合いの島だって理解してんのか」
深夏は新一達にほんの少しだが嫌悪感を持っていた。どちらも殺し合いについて深く考えていない。
新一はかわいい女の子との出会いがあったらいいな、千雨はこんな殺し合いなんてどうでもいい。
どちらも殺し合いを止めることについては消極的な考えだ。
新一はかわいい女の子との出会いがあったらいいな、千雨はこんな殺し合いなんてどうでもいい。
どちらも殺し合いを止めることについては消極的な考えだ。
「こうしている間にもこの島の何処かで人が、友達がっ! 死んでいるかもしれないだぞ……」
「だろうね。誰も死なないということはありえない。そんな甘いゲームではないはずだ」
「だからこそ! あたし達は協力して誰も死なせないように努力すべきなんだ! なのに……」
「だろうね。誰も死なないということはありえない。そんな甘いゲームではないはずだ」
「だからこそ! あたし達は協力して誰も死なせないように努力すべきなんだ! なのに……」
そう言ってうつむく深夏を霖之助は頭をがしがしと撫でることで前へと無理矢理に向かせた。
深夏はそれに驚いたのか身体をビクっと震わせて顔を赤く染める。
深夏はそれに驚いたのか身体をビクっと震わせて顔を赤く染める。
「おっと、すまない。つい癖が出てしまった。魔理沙がそんな顔をしている時によくやっていたからね」
「ううん、サンキュー霖之助……。そうだよな、落ち込んでても仕方ないよな! あたしは、やってやる。絶対にこんなゲームを、潰してやる!」
「ううん、サンキュー霖之助……。そうだよな、落ち込んでても仕方ないよな! あたしは、やってやる。絶対にこんなゲームを、潰してやる!」
この意志が何処までも貫けるように。その決意を示すかの如く、今出来る最高の笑みを浮かべて、霖之助に宣言した。
◆ ◆ ◆
「げほっがはっっっ! はぁ……はぁっ」
新一はトイレで胃液を勢い良く吐き出していた。つい数秒前に深夏達と話していた時とは違い、顔は真っ青で全身はブルブルと震えている。
断続的に吐かれる息は荒く、口の中には粘ついた酸味が広がってすごく気分が悪い。
断続的に吐かれる息は荒く、口の中には粘ついた酸味が広がってすごく気分が悪い。
(もう嫌だ……)
新一の頭にあるのは恐怖だった。最初の山田太郎との邂逅。それは良くも悪くも頭に強烈に残っていた。
自分ではとてもではないが振るえそうにない巨大な刀を軽々と振り回す軍人の女性。
それを最初に見た時に生まれた感情は純粋な恐怖。これが自分に突き刺さって死ぬのか? それを否定したい、されどしきれない。
そして自分自身に対して疑問が生まれる。こんな化物がいる島で生き残れるのか? 最終的に惨たらしく殺されるのではないか?
自分ではとてもではないが振るえそうにない巨大な刀を軽々と振り回す軍人の女性。
それを最初に見た時に生まれた感情は純粋な恐怖。これが自分に突き刺さって死ぬのか? それを否定したい、されどしきれない。
そして自分自身に対して疑問が生まれる。こんな化物がいる島で生き残れるのか? 最終的に惨たらしく殺されるのではないか?
(俺はまだ死にたくねえ! 死にたくねえよ!!)
それでもあの時の新一は善意が上回った。千雨をこのまま見捨てることはできない、仲間に誇れる自分でありたいといった考えが一時的とはいえ恐怖を上回った。
それに新一は普段はおちゃらけていて臆病ではあるが、心の奥底では深い優しさと大人びた考えを持つ少年だ。あのような行動に出るのは特段に不思議ではない。
それに新一は普段はおちゃらけていて臆病ではあるが、心の奥底では深い優しさと大人びた考えを持つ少年だ。あのような行動に出るのは特段に不思議ではない。
(怖い……何かに立ち向かうのも、誰かと一緒にいるのも!)
だが、臆病な心は優しさと勇気を打ち砕く。最初から無条件で信頼できるのは親友達だけ。
他の参加者はいつ寝首を掻かれるかわかったものではない。
精一杯の勇気を振り絞って助けた千雨でさえまだ疑っているのだ、ついさっき会ったばかりの霖之助、深夏に関しての疑心はなおさらだ。
他の参加者はいつ寝首を掻かれるかわかったものではない。
精一杯の勇気を振り絞って助けた千雨でさえまだ疑っているのだ、ついさっき会ったばかりの霖之助、深夏に関しての疑心はなおさらだ。
(何が誰も死なせないだよ……! んなこと無理に決まってるじゃねえか! あんな化物のような強さの女がいるのに……)
深夏の甘い理想に暴言を吐く一方でこれからの道のりの暗さに新一は顔をしかめる。首輪の解除、危険人物の対処、脱出に関しての方法。
何もかもが未確定であり、最悪、存在しないという場合もある。
何もかもが未確定であり、最悪、存在しないという場合もある。
(クソッ!! もう、逃げ出してえよ……スバル、カニ、レオ……っ! お前ら何処にいるんだよ……)
疑心と恐怖が蔓延る戦場で新一は内に秘める負の感情を抑えて必死に抗ってきた。
だが、そのやせ我慢も限界に来ている。わざとおどけてみせたり、いつも通りに変態的発言も散々にしてきた。
それでも、新一の心は晴れなかった。むしろ、心は曇っていく一方であった。
その蓄積は限界に達し、無理矢理にでも一人になってトイレでありのままの自分を吐き出すといった結果になってしまった。
だが、そのやせ我慢も限界に来ている。わざとおどけてみせたり、いつも通りに変態的発言も散々にしてきた。
それでも、新一の心は晴れなかった。むしろ、心は曇っていく一方であった。
その蓄積は限界に達し、無理矢理にでも一人になってトイレでありのままの自分を吐き出すといった結果になってしまった。
(でも……此処から逃げ出しても生き残れない。武器も何も無いこんな有様じゃあこの先……!)
今の新一の手元にある物は移動用に使うライディングボード、あらゆる粉が入っている粉セットの二つしかないのだ。
ライディングボードは盾としても鈍器としても使えなくはないが新一の筋力では満足に扱うこともできない。
粉セットは論外。逃亡には使えるかもしれないが武器としては落第点だ。
ライディングボードは盾としても鈍器としても使えなくはないが新一の筋力では満足に扱うこともできない。
粉セットは論外。逃亡には使えるかもしれないが武器としては落第点だ。
「俺は、どうすればいいんだよ」
◆ ◆ ◆
(ったく、頭が痛くなる状況だな、おい)
千雨は長椅子に身体を預けて眼を閉じている。意識は依然とハツラツとしており睡魔はやってきてはいない。
深夏達には仮眠を取るといったが実際は落ち着いて一人で考える時間が欲しかったのだ。
深夏達には仮眠を取るといったが実際は落ち着いて一人で考える時間が欲しかったのだ。
(あーあー何が『絶対にこんなゲームを、潰してやる!』だ。勝手にやってろっての)
バカみたいな正義感を持つ深夏のような人間は千雨からしては、ある種嫌悪の感情を抱き、一緒に行動したくないタイプなのだ。
無論、言葉にも表情にもはっきりと出しはしないが。
無論、言葉にも表情にもはっきりと出しはしないが。
(そんなもんよりいかに安全にかつ早く脱出できるか、だろうが。私は早く帰りたいだけだ、主催者なんざ知ったことか)
ただここから脱出したいという千雨の目的とは相反する深夏の目的である主催者の打倒。
主催者の打倒というのは並大抵のことではない。何しろ、ゲームマスターに反抗するというのだ。
命を賭ける程に危険であることに違いはない。
主催者の打倒というのは並大抵のことではない。何しろ、ゲームマスターに反抗するというのだ。
命を賭ける程に危険であることに違いはない。
(つうかなんでわざわざ危険を冒す? リスクが大きすぎるって。それにリターンが返ってくる保証もない。
そんな条件で勝負に乗れるか!)
そんな条件で勝負に乗れるか!)
千雨の思考は既にこの会場からさっさと逃亡するという目的で固まっていた。それもできるだけ安全に且つ早く正確に。
わざわざ主催者と戦うなんて真っ平御免なのだ。
わざわざ主催者と戦うなんて真っ平御免なのだ。
(今んとこ信用できる奴って言ったら……ネギ先生は筋金入りのお人好しだから、まあ信じてもいいだろう。
那波は、ただのクラスメイトだしわかんねえ。あの犬のガキについてはちょっと会ったぐらいで知り合いですらねえ。
椎名さんと森近さんはわからん。椎名さんはあれだし、森近さんもそれに一応は付き合っている。
ほぼ白だと思うが……私を騙してる可能性だってまだ捨てきれない、保留だ。
フカヒレは、見捨ててもおかしくない所を助けてもらった訳だし…………信用しても、いいのか?
一応、知り合いは適度にできた。後はこっから脱出するだけだ)
那波は、ただのクラスメイトだしわかんねえ。あの犬のガキについてはちょっと会ったぐらいで知り合いですらねえ。
椎名さんと森近さんはわからん。椎名さんはあれだし、森近さんもそれに一応は付き合っている。
ほぼ白だと思うが……私を騙してる可能性だってまだ捨てきれない、保留だ。
フカヒレは、見捨ててもおかしくない所を助けてもらった訳だし…………信用しても、いいのか?
一応、知り合いは適度にできた。後はこっから脱出するだけだ)
千雨はこれまで一歩引いた距離から人間観察を続けてきた。全ては自分が生き残る為に。
誰と一緒に行動するのが自分の安全につながるか、後ろを気にせずに行動できるか。
これからの方針についての構想を冷静に、客観的な思考で構築していく。
誰と一緒に行動するのが自分の安全につながるか、後ろを気にせずに行動できるか。
これからの方針についての構想を冷静に、客観的な思考で構築していく。
(でも、こんな短期間で何もかもがわかってちゃ苦労はないか。ったくよ、やっぱ現実はクソゲーってやつかねぇ。
このゲームの攻略法は優勝だけってのもな……。やってらんねーよ、畜生)
このゲームの攻略法は優勝だけってのもな……。やってらんねーよ、畜生)
クリア方法は優勝だけ。手っ取り早い方法はゲームに乗って皆殺しという単純極まりない。
そして、それをなせるのは強者たる力を持つ参加者のみ。
千雨は最初に出会った山田太郎のような圧倒的な力を持ちはしないし、ちょっとパソコンが出来るだけの普通の女子中学生だ。
だから、不本意ながらも他の参加者との協力を選択した。あくまでも最低限の交流。必要以上に他人の領域へと踏み込まない自分なりの流儀を掲げて。
そして、それをなせるのは強者たる力を持つ参加者のみ。
千雨は最初に出会った山田太郎のような圧倒的な力を持ちはしないし、ちょっとパソコンが出来るだけの普通の女子中学生だ。
だから、不本意ながらも他の参加者との協力を選択した。あくまでも最低限の交流。必要以上に他人の領域へと踏み込まない自分なりの流儀を掲げて。
(まだやりたいこともやり残したことも腐るほどあるんだ、こんなどこかもわかんねえ島で死ねるかよ。
絶対に、生き残ってやる……! このゲームから絶対におさらばしてみせる)
絶対に、生き残ってやる……! このゲームから絶対におさらばしてみせる)
千雨は改めてこのゲームの攻略を心中で誓う。しかし、千雨は殺人の覚悟も、人が死ぬことの恐怖もまだ知らない。
傍からみるとハリボテの誓いを彼女は立てる。それが脆く、あっさりと崩れ落ちそうだと自分では理解も出来ないにもかかわらずに。
傍からみるとハリボテの誓いを彼女は立てる。それが脆く、あっさりと崩れ落ちそうだと自分では理解も出来ないにもかかわらずに。
(私が傷つかないというハッピーエンドでな!)
森近霖之助はひたすらに待ちの姿勢を崩さず。
椎名深夏は正義の鉄槌を主催者に食らわせるために直進する。
鮫氷新一は欺瞞と恐怖が渦巻く戦場を恐れて苦悩する。
長谷川千雨は都合のいい理想を叶えるために考察する。
この時の四人の思考は四人とも異なっていたが一応の団結はしていた。明確な確執もなく、このまま一緒に行動することにもなっていた。
だが、この後の放送で、四人は…………。
椎名深夏は正義の鉄槌を主催者に食らわせるために直進する。
鮫氷新一は欺瞞と恐怖が渦巻く戦場を恐れて苦悩する。
長谷川千雨は都合のいい理想を叶えるために考察する。
この時の四人の思考は四人とも異なっていたが一応の団結はしていた。明確な確執もなく、このまま一緒に行動することにもなっていた。
だが、この後の放送で、四人は…………。
【H-8/一日目・早朝】
【椎名深夏@生徒会シリーズ】
【状態】健康、新一と千雨に対して不満
【装備】
【持ち物】支給品一式、はずれと書かれた紙
【思考】
基本:こんなゲームに乗ってたまるか! 打倒主催!
0.燃えてきたぜ~!
1.休息する。
2.基地に向かう。
3.生徒会の仲間との合流。
※森近霖之助と情報交換を行いました。
【状態】健康、新一と千雨に対して不満
【装備】
【持ち物】支給品一式、はずれと書かれた紙
【思考】
基本:こんなゲームに乗ってたまるか! 打倒主催!
0.燃えてきたぜ~!
1.休息する。
2.基地に向かう。
3.生徒会の仲間との合流。
※森近霖之助と情報交換を行いました。
【森近霖之助@東方Project】
【状態】健康
【装備】
【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3(武器は入ってない)
【思考】
基本:ゲームにはとりあえず乗らない。
0.とりあえず今は乗らない。
1.休息する。
2.基地に向かう。
※椎名深夏と情報交換を行いました。
【状態】健康
【装備】
【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3(武器は入ってない)
【思考】
基本:ゲームにはとりあえず乗らない。
0.とりあえず今は乗らない。
1.休息する。
2.基地に向かう。
※椎名深夏と情報交換を行いました。
【長谷川千雨@魔法先生ネギま!】
【状態】深夏と霖之助に対して不信
【装備】
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:自分が傷つかない形でのゲームの脱出。主催? 知るか!
0.最善の選択を常に選び続ける……。
1.休む。
2.どこか安全なところに隠れる。
【状態】深夏と霖之助に対して不信
【装備】
【持ち物】支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:自分が傷つかない形でのゲームの脱出。主催? 知るか!
0.最善の選択を常に選び続ける……。
1.休む。
2.どこか安全なところに隠れる。
【鮫氷新一@つよきす】
【状態】信じること、死ぬことへの強い恐怖
【装備】
【持ち物】 支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのは、粉セット
【思考】
基本:とりあえず今は乗らない。仲間を殺してまで生きたいとは思わない。
0.もう……嫌だ。
1.休息する。
2.対馬ファミリーとの合流。
【状態】信じること、死ぬことへの強い恐怖
【装備】
【持ち物】 支給品一式、ライディングボード@魔法少女リリカルなのは、粉セット
【思考】
基本:とりあえず今は乗らない。仲間を殺してまで生きたいとは思わない。
0.もう……嫌だ。
1.休息する。
2.対馬ファミリーとの合流。
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