オレと彼女は主従なカンケイ



【18:15】

どうもどうも。ご無沙汰しておりますね。
俺、澤永泰助というどこにでもいそうな普通の学生です。
まあ、ただ。
今置かれております境遇なんかは、全然普通の学生なんかじゃないんですけどね。
悲惨にも程があるんですけどね。

あのアブねー香月夕呼センセとの衝撃の出会いから数時間、
そろそろ陽も沈もうかって時間になりましたが、俺は今のところ、まだ死んでません。
で、いま、俺がどうしてるのかっていいますと―――

「遅いぞ澤永ァ、もっとキビキビ歩けっつーの」

その危ない人に付き従って、南の砂浜を目指してるんですよ。

実は最初、俺も西園寺もこの人とは別行動を取ろうって思ってたんですよ。
でもですね。
このセンセ、銃なんて持ってるじゃないですか。
俺、ハリセンですし、西園寺のランダムアイテムも【全島詳細地図】……
で、島では殺し合い真っ最中。
なんかあった時のことを考えると、ちょっとアレでもご一緒したほうが
いいのかな、なんて西園寺と相談しまして。
で、今があるわけです。



さて、ここらで我らが調査隊、全4名を紹介しときましょうか。

先頭を行くのは我らがチームの独裁者、香月夕呼センセ。
キレた天才?
それとも踏み越えたアレな人?

その次、西園寺世界。
俺のクラスメイトの、まあ、かわいい女の子。
口うるさいのがちょっとアレですけどね。

そして最後尾。俺。澤永泰介。
笑顔が素敵で女性に優しいジェントルなナイスガイ。
いぇい。

で、問題の4人目。榊千鶴。
俺がおんぶしてる女の子。

この子、センセの教え子らしいんだけど、すっごい無口でね。
出会ってからこれまで、一度も口を利いてくれなくてね。
それどころか、俺がずっと背負ってあげてるのに御礼の一言も無くってね。
まあ、それも仕方ない話なんですけどね。
なんせ榊さん、死んでるんで。


そうですね……
折角なんで榊さんとの衝撃的な出会いでもお話しておきましょうかね。



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【16:15】

16時過ぎくらいでしたかね。
絶壁に背中を預けてぐったり座り込んでる子を、西園寺が発見しましてね。
で、その制服が夕呼センセの学校のモンだって言うじゃないですか。
声をかけてみても反応がないんで近づいたはいいんですが……

「榊―――」

もう返事をしないその子、センセの生徒、だったんですよ。

その時、西園寺の膝が崩れましてね。
今思うと、この時肩を貸してあげてたらこの女、俺に惚れてたんでしょうけど。
残念ながら俺の方にも余裕なかったんで。
俺、実は死体なんて見るのこれが初めてで。
それが無念の表情なんて浮かべてたんだから、もう、ねぇ?

「なあ榊…… お前が死んだらクラスのバカ者たちを誰が抑えるんだ?
 学級崩壊の危機だろうが……」

やっぱ知り合いだけあって、センセは驚くより、怖がるより、悲しんでましたね。
その間、一分くらいのモンでしたけどね。

「よし、澤永。こいつを背負え」
「は? 何言ってるんですかセンセ?」

面食らいましたね。
でも聞き間違いでもなんでもなくて。
センセは彼女の脇に手を差し込んで持ち上げてたんですよ。
で、顎で俺を呼ぶ、と。
俺に榊さんを背負わせる気なんでしょうね。
その血まみれの体をね。
おっぱいは大きいんですけどね。

「お墓でもつくるんですか?」

西園寺、この頃はセンセにマトモな反応を期待してたんですね。
そんな感傷的なことを聞いたわけですよ。

「なーにバカなこといってるんだ西園寺。
 このあたしがそんなもったいないことするわきゃないだろ?」

で、その回答がコレ。
コレですよ。
何が【もったいない】なのか、さっぱりわかりませんよね?
そこでまたセンセの講義ですよ。

「なあ澤永、西園寺。
 世の中の医学が発展してきたのはなぁ、尊い献体の皆様の支えあってこそなんだぞ。
 理論と実験と臨床が螺旋になって、高みへと上っていくんだ」

献体ってセンセ、あなた自分の教え子なのに……
そんな常識的なこと、この時の俺は考えてました。
センセに常識とか人情とか求めるなんて、今考えればどうかしてますけどね。

「でも、香月先生。この子、先生の教え子なんでしょ?」
「教え子だったな。生きてるうちは。死ねばタダの物体だ」

うっひゃー、ドライっすねー。
でも、コレが香月夕呼って人のキャラなんですよ。

「それにな、西園寺。死体が無かったら、生きてる人間を献体にしなくちゃ
 ならなくなるじゃないか。あたしはそんなのはゴメンだ」

や、今思い出しても、そんな発想が出ること事態引きますって!
それって誰かをころ…… あわわ。
言わぬが花ってもんですよね、ここは。

「じゃあ香月さんは、その献体で何をするつもりなんです?」
「そりゃあれだ。爆弾だ」
「爆弾?」
「ここで復習だ。澤永、体内に埋め込まれたという爆弾が爆発する条件は3つ。
 それぞれ何だ?」

ハイ、正直に事前宣告します。
俺、この質問に答えられませんでした。

「えっと、主催者に逆らった場合と、この島から脱出しようとした場合、
 それから…… それから……」
「なんだ澤永、自分の生き死にが掛かっているっつーのにしっかり聞いてなかったのか?
 そんなことだと人生落第だぞ?じゃあ代わりに西園寺、どうだ?」
「24時間、死者が出なかった場合です」

西園寺も赤点仲間なんですけどね。
要領いいトコあるんですよ。

「そ、しかも全員のが一斉にドカンだ。……ヤツの言葉を鵜呑みにするならな」
「え?爆弾ってウソなの?」
「早とちるなあんぽんたん。
 だーかーら確かめるんだよ。そうかもしれない、違うかもしれない。
 まずはそれをはっきりさせないと」

なるほどなるほど!
神父のハッタリかもしれないっすもんね!

俺はそんな風にセンセの話に感心してたんですけどね。
西園寺はそうでもなかったみたいでね。
くいくいって俺の袖を引いて、何かを訴えるような上目遣いで俺を見上げて……
耳元に唇を寄せてきたんですよ。

「ねぇ……」

ナイショ話っすかぁぁああ?
興奮しましたねぇ。

「ねえ、この人にホントについていくの?」

美少女がですよ、急に顔を近づけてくるんですよ?
イヤほんと、いい思い出頂きました。

「言ってることは分かるんだけど……
 自分の生徒のこと献体とか言っちゃう人、澤永は信用できる?」

その時の俺の気持ちを素直に述べるならばこんな感じでしたね!
あ、ちょっと、そんな。
吐息が、吐息があああああ!?
あふん、いいぞ、もっとやれ!

「それに献体とかいうからには、榊さんの体を切り刻んで弄ぶんだよ。
 澤永、やれって言われたらできる?」

耳も性感帯って都市伝説じゃなかったっすね!
不肖、澤永泰助。
恥ずかしながら些か勃起しておりましたよ……

「だから、さ…… 澤永、一緒に逃げよ?」

西園寺はそういうと俺の手をぎゅっと握ってきたんです!

あの、ですよ!
あの西園寺がですよ!
あいつもこいつも告っては玉砕する、難攻不落の西園寺が!
実はレズ疑惑さえある西園寺が!
俺の手を!
ぎゅっと!
ぎゅーーーーーーっと!
汗が滲んでて、震えてる手が、俺を求めてるんですよ!

「もちろんさ、西園寺」

友永泰助、男っすからね!
頼られちゃあ、俺様に任せとけと言わざるを得なかったワケで。

「3……」
「2……」
「1……」
「ゴー!」

俺と彼女、おてて繋いでダッシュですよ。
センセ、銃持ってますからね。
まさか撃っては来ないとは思いつつも、ほら、
センセは一線越えてそうなアレじゃないっすか。
心臓はバクバクもんでしたよ!

「や、まあいいんだよ。逃げてもさ」

だから背後からそう言われたときはほっとしましたね。
このままふたりでランナウェイ。
どこまでもいけるさふたりなら。
そんな風に思ってたんですけどね。

「ただねー、もし爆弾の秘密が解明できたなら、
 生きてこの島を脱出する確率はぐんとあがっちゃうんだなー」

ごくん、と。喉がなりましたね。
先に足を止めたのは俺だったか西園寺だったか。
立ち止まっちゃったんですよ。

「残念だなー、いざ脱出だって時にそこにいないやつを
 連れてくことは出来ないからなー」

意地の悪い目でしたよ、ええ。
悪魔が人間の皮を被ってたらこんな感じなんだって笑顔でしたよ。
こいつ、俺たちを騙そうとしてんじゃね?
そんな予感がプンプンする態度でしたよ。

でもですね。
そんな餌を目の前にぶら下げられたらねぇ……

「ごめんなさい!」
「犬と呼んで下さい!!」

俺たち、引き攣った愛想笑いを浮かべて、センセの下へと戻りましたよ。
や、しょーがないでしょ、この場合。

とにかく死ぬの、ヤだもんね。



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【18:30】

……と、まあ。
そんなこんなで、今があるわけです。
煙に巻かれてるというか、良い様に使われてるというか。
その辺の力関係は理解してるんですけどね。
こりゃヤベッ!ってなるまでは、夕呼センセについていこうって、俺は思ってます。

「……」

西園寺はさっきの放送から黙り込んじゃってましてね。
まあ、同じ学校の子たちが死んだんだから、落ち込むのもわかりますけどね。
それより、まあ。
今生きてることをちょっとは喜んでもいいんじゃないのか、とか。
俺なりにこの先の西園寺を心配してるわけですが。
それ以上に、気になっているのがですね……

「澤永、おーい澤永っ!足を動かせ、足を」

や、それはその…… ぶっちゃけますとおっぱいで。
ほら、俺、榊さんを背負ってるでしょ?
死体がどろどろのぐちゃぐちゃだったら俺もちょっとアレなんですけど、
死体でも美少女のおっぱいは美少女のおっぱいですしね。
背中にあたるその感触が青少年の衝動を直撃といいますか。
こう、浸ってしまうといいますか。

「だーかーら、何ぼーっとしてんだ澤永。
 この先は見通しいいから、巻きで行くぞ」

じゃ、センセが呼んでるんで、これで!




香月夕呼(№24)
 【場所:中央森林・南西端 → 南の砂浜・海の家】
 【装備:コルト・ガバメント 07/07】
 【所持品:ガバメント予備弾 07/07 ×3、支給品一式】
 【状態:健康】
 【思考:並行世界の存在を立証】
  1)まずは爆弾について調べるか
  2)脱出の可能性をエサに澤永と西園寺を上手く使おう
  3)とりあえず、まりもや武たちと合流できるならば合流したい

澤永泰介(№31)
 【場所:中央森林・南西端 → 南の砂浜・海の家】
 【装備:ハリセン】
 【所持品:支給品一式、OLD携帯電話、榊千鶴の死体(取得)】
 【状態:健康】
 【思考:島から脱出】
  1)脱出したいし、センセについていこう
  2)誠たちと合流できたらいいな
 【備考】
  ※泰介の携帯はかなり古い機種でカメラも付いていない(原作1話参照)

西園寺世界(№28)
 【場所:中央森林・南西端 → 南の砂浜・海の家】
 【装備:なし】
 【所持品:島内詳細地図(支給品)、携帯電話】
 【状態:健康】
 【思考:島から脱出】
  1)誠と刹那を探したいが、一人では行動したくない
  2)夕呼さんについてくしかないのかな……




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香月ひとり並行世界調査班 香月夕呼 水平線まで何マイル??
香月ひとり並行世界調査班 澤永泰介 水平線まで何マイル??
香月ひとり並行世界調査班 西園寺世界 水平線まで何マイル??








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最終更新:2010年06月27日 10:53