香月ひとり並行世界調査班
どうもみなさん、こんにちは。知らない人ははじめまして。わたくし、澤永泰介(31番)という多分どこにでもいそうな普通の学生でございます。
原作では親友の伊藤誠のあまりのヘタレっぷりのほうが目立ってしまっているせいで、どうも影が薄いキャラという扱いを受けておりますです。ハイ。
――さて。そういう話は今は置いておいて。話を進めましょう。
今わたくし――いや俺は、聖杯戦争などという殺し合いゲームに巻き込まれてしまっている最中でございます。
さらに、今俺の目の前には銃を持った白衣姿のおねーさんがその銃の銃口を俺に向けているではありませんか!!
無論、現在俺はホールドアップしているわけなのですが……さて、なぜこんな状況に置かれているのでありましょうか?
「あ…あの~そろそろその物騒なものを下ろしてくれませんかねえ~……?」
「ああそれは無理よ。まだ貴方が本当にこの殺し合いに乗っていないと確信できたわけじゃないからね」
泰介に銃――コルト・ガバメントを突きつけている女性、香月夕呼(24番)はさらりとそう言い放った。
「だ…だから俺は本当に乗ってないんですよ! これから知り合いを探しに行こうとしていたところで……
それに俺に支給されたモノをよぉ~く見てくださいよ! ハズレのハズレ、大阪名物ハリセンですよ!? これでどうやって人を殺すっていうんスか!?」
そう言いながら泰介は大慌てで自分のデイパックからそれ――ハリセンを取り出した。
おまけとばかりにそれで近くの木を2、3回スパーンと叩いてみせる。
「――確かに、それじゃあ人は殺せないわねェ……」
「でしょ!? だから俺をさっさと解放して……」
「だから言ったでしょ。それは無理。無理なものは無理。確かに今は乗っていないかもしれないけど、いずれ何かしらの理由で殺し合いに乗る可能性だってあるもの。だから黙って貴方を行かせることはできないわ」
「んな無茶苦茶な……」
「――ところで貴方……澤永といったわねェ?」
「今度は何デスカ?」
「――貴方はこの世界の『可能性』というものを考えたことがある?」
「は?」
突然この女は何を言い出すのだ、と泰介は思った。
そんな彼の疑問など知るわけもなく、夕呼は語り始める。
「この世界は……全て確率から成り立っている……つまり、その構成の謎を解き明かせば人間は特別な世界に飛び立つことが可能になる……」
「はぁ……?」
「この世に存在する可能性は無限大……そのひとつ、ひとつが別の世界としてこの世のどこかに存在するッ!
私たちが普段暮らしていたあの世界も、今ここで起きている聖杯戦争というゲームも、そしてそれにあたしたちが参加させられているのもそのうちのたったひとつに過ぎない!
あらゆる可能性が存在するぶんだけ『並行世界』――たとえば、あたちの世界では存在するはずがないものが普通に存在する世界とかがあってもおかしくはない!
その証拠としてあの言峰綺礼という男はこんな言葉を言っていた! そう、『魔術』!! あたしたちが存在していた世界などには存在していない……あるはずがない神秘!
それをあの男はまるで『普通に存在している』かのようにさらりと言ってのけた! つまりっ! この島はありとあらゆる可能性がひとつに交錯している場所――『クロス・ゲート』だといっても過言ではないッ!」
――次々と泰介にはわけのわからないことを論じていく夕呼。
「某ミステリー調査班のメンバーもきっとこんな感じで毎回リーダーのメガネの電波理論を聞かせれていたんだろうなあ……」とそんな夕呼の話を嫌々聞かされている泰介は心の奥底でそう思った。
おそらく今の彼女には聖杯戦争も殺し合いも関係ないのかもしれない。
そう。自身が今まで立証しようとしていた並行世界の存在――その存在の謎を解き明かせるかもしれない千載一遇の好機が訪れたのだから。
しかし、今夕呼が言っていたことにはひとつ間違いがある。
それは、実は『魔術』というものは彼女や泰介――そしてこの殺し合いに参加している全ての参加者が住んでいるこの世界にはもともと存在しているモノだということだ。
魔術、およびソレを酷使する者たち、魔術師は普段はそのことを表向きにせず、正体と存在を隠しているだけに過ぎないのである。
――そのことがアダとなり今回彼女をここまで暴走させていることになったのだが…………
――それと関係ない話だが、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグという1人の魔法使いがこの世界には存在する。
万華鏡のごとく、同時に運営される並行世界を『個』として移動できる『第二魔法』の使い手である。頻繁に俗世と関わる変人で、はるか未来の常識を体現していると言われている男だ。
もし、夕呼がこの男と出会えたら、彼女は間違いなく喜びで発狂寸前までイッてしまってもおかしくないだろう。
「――とまあ、兎にも角にもあたしはこの機を使ってそれを完全に立証しようと考えているわけ。そういうことなのよわかった!?」
夕呼が話を終えたのは話を始めてから数十分、いや下手をしたら1時間以上の時が過ぎた後だった。
よくこの間に他の参加者――特に殺し合いに乗った者が現れなかったものである。
「……すいません。俺にはさっぱりわかんね~っす…………」
いつの間にかぐったりと近くの木にもたれかかっていた泰介はいろいろな意味で痛くなった頭を押さえながら答えた。
「ふむ……どうして白銀といい貴方といい、みんなあたしの言っていることを理解してくれないのかしら……?」
そんな泰介を見て、夕呼は自分の言ったことにどこか間違いでもあっただろうか、と思った。
「――なんか女の人の馬鹿でかい声が聞こえると思って来てみたら…………澤永、あんたなにやってんの?」
「ん?」
「あ? ――おお、西園寺じゃないか!!」
近くで人の声がしたので夕呼と泰介がほぼ同時に目をそちらの方へ向けると、そこには呆れた顔をした泰介のクラスメイトである西園寺世界(28番)がつっ立っていた。
【時間:1日目・午後3時30分】
【場所:森林地帯】
澤永泰介
【装備:ハリセン】
【所持品:支給品一式、携帯電話(旧式)】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)西園寺じゃないか!(とりあえず俺を助けてくれないか?)
2)夕子のもとから(いろんな意味で)早く逃げたい。誰か助けてくれ……
3)誠たちと合流したい
【備考】
※泰介の携帯はかなり古い機種でカメラも付いていない(原作1話参照)
香月夕呼
【装備:コルト・ガバメント(.45ACP弾 7/7)】
【所持品:予備マガジン(.45ACP弾7発入り)×3、支給品一式】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)澤永の知り合い?
2)並行世界の存在を立証する。(殺し合いには乗る気も乗らない気もないが、邪魔するものは容赦なく力ずくでねじ伏せるつもり)
3)とりあえず、まりもや武たちと合流できるならば合流したい
西園寺世界
【装備:なし】
【所持品:支給品一式(ランダムアイテム不明)、携帯電話】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)澤永と……なんか変な人がいる
2)誠と刹那を探す
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最終更新:2010年06月27日 15:54