のぞきみユ~レイ!!



【18:30】

東の村は、周囲を小高い丘陵に囲まれている。
この丘陵の至る所に、横穴が穿たれている。
横穴の多くは、鉄条網あるいはベニヤ板で封印が施されていた。
所々に敷かれている車幅の狭いレールは、トロッコ用の物だろうか。
朽ちて倒れた看板には、煤けた赤色でこう記されている。

『よいこは坑道-ココ-で遊ばない』

未だ陽は没しきらぬものの、丘陵が夕陽を遮り、周囲は既に夜の暗さに沈んでいた。
そんな日陰の中を、一組の少年と少女が歩いている。
少年は少女に肩を貸していた。
少女の足はもつれている。
2人の歩みは遅々としている。
しばらくそうして歩いていたが、休養を取るつもりなのだろうか。
用心深げに周囲を見回すと、ベニヤの腐れ落ちた坑道の1つに素早く身を潜める。



その一部始終を観察している、人で無い存在があった。
踝ほどの高さに僅かに浮揚する、8ポンドのボーリング玉程度の球体は
№39:高島一子の支給品、タマちゃん(№1208)と言う。
彼は超低空を転がるように飛行し、数十メートル先の主の下へと帰還する。

一子はさび付いたトロッコの陰に身を潜めていた。
陽の傾きと共に寒さを増す大気に、感覚の戻った掌を擦り合わせて耐えている。
横にボリュームをつけたボブから覗く耳も、赤く染まっていた。

「高島の姉さん、あいつら坑道に入ってったでぇ?」

タマちゃんは甲高い関西弁で一子に状況を伝える。



一子がそのカップル―――
№34:白銀武と№09:鑑純夏を発見したのは、放送直後のことだった。
死者の名が告げられることで漸く自らの置かれた危機的状況を理解した一子にとって、
少し先を行く彼らの存在は恐怖そのものだった。
ところが。
その気持ちはあっさりと反転し、一子は彼らとの合流を望むようになった。
偵察に飛ばしたタマちゃんからの一報によって。

「でも高島の姉さん。やつらに戦う気は無いみたいやでぇ?
 あのタケルとかいう兄さん、神父を倒すて息巻いてたさかい」

しかし、一子は動かなかった。
動けなかった。

(うぅ…… 1人だと怖いし、あのひとたちと合流したいです。
 でもでも! もし万が一、お前みたいなドジでノロマな幽霊なんて
 いらないよって言われたら……)


それから約30分。
一子は付かず離れずの距離を保ちつつ、2人を追い、機会の到来を待ち。
それで、今。
東の町に隣接する、炭坑跡にたどり着いた。

「なぁ、やつらも腰ぃ落ち着けたみたいやし、顔出す頃合やないかぁ?」
「でもでも」

タマちゃんの発破に促されることなく、一子の腰は益々重かった。
煮えきらぬ主の態度にタマちゃんは苛立ちを隠しきれず、言葉が厳しくなってゆく。

「高島の姉さんな、今のあんさんはまるきりストーカーやでぇ?」
「うー、そうかもですけど……」

それでもなお接触に躊躇いを見せる理由は、一子の性格に由来する。

一子はもともと内気で引っ込み思案な少女だ。
口下手故、上手く他人と交流できぬ性質であることも理解していた。
そこにきて、このゲームだ。
相手の警戒心が著しく高いことは容易に想像できる。
慎重になるのは極めて当然であろう。

だが、タマちゃんは主の消極的な態度についに痺れを切らした。

「しょーもないモジモジちゃんやでぇ、高島の姉さんは!
 よしゃ。ならあてが姉さんの名代でツラ出してきちゃるでぇ」

そう宣言すると同時に敢然と一子に背を向けて、坑道へと転がりだす。

「じっ、じぶんで行きますっ!」

ここにきて漸く、一子は重い腰を上げた。
タマちゃんに呆れられることを、ひいては自分のもとから去っていくことを恐れて。

「せやせや、人と話すんは人なんが一等ええでぇ!」

覚悟を決めた一子がレールの上をぎくしゃくと歩く。
2人の潜む坑道へ向かい、右足と右手を同時に前に出して。

その入り口付近で、一子は歩みを止めた。
壁面から顔だけを覗かせて、中の様子を窺うこと数秒。
十数秒。
数十秒。

「ひゃーーーー!!」

真っ赤に茹で上がった一子はバンザイのポーズで坑道から離脱。
一直線にタマちゃんの待つトロッコへと舞い戻った。

「なにやってん?」
「ちゅ……」
「ちゅー? ネズミでも出よったのん?」

一子は可憐な頬を染めながら、両の手で目を隠しながら言った。



「ちゅっちゅしてましたぁー!(ノ∀\*)」





【場所:島東部・前】

高島一子(№39)
 【装備:タマちゃん(№1208)】
 【所持品:支給品一式】
 【出身:共通ルート後半】
 【状態:ドキドキしますぅ~】
 【思考:逃亡潜伏】
  1)武と純夏が出てくるのを待って、同行を申し出る
  2)お姉さまにお茶を淹れて差し上げる

タマちゃん(№1208)【スフィアタム】
 【状態:(-・∀・-) 他のタマちゃんはいないようです】
 【思考:持ち主の命に従う】
  1)姉さん何所にいるんやろ?
  2)高島の姉さんは何か知らへん?


【場所:島東部・廃坑】

白銀武(№34)
 【装備:ワルサーP38 08/08、スタングレネード×4】
 【所持品:ワルサー予備弾装 08/08 ×3、支給品一式、改造携帯】
 【状態:健康、ただし精神的にかなりのダメージ】
 【思考:対主催】
  1)純夏以外の友人、知人を探す
  2)純夏を守り抜く
  3)みんなで無事にもとの生活に帰る
  4)言峰を直々にぶちのめす

鑑純夏(№09)
 【装備:なし】
 【所持品:萌えTシャツ、ほか支給品一式、携帯電話】
 【状態:健康、ただし罪悪感あり】
 【思考:武に従う】
  1)タケルちゃんから離れない
  2)タケルちゃんとみんなを探す
  3)彩峰さん死んでないよ……



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呪縛なし自縛霊自爆レタス添え 高島一子 ごめんねエンジェル?
呪縛なし自縛霊自爆レタス添え タマちゃん(№1208) ごめんねエンジェル?
Liar Girl 白銀武 KISS×100
Liar Girl 鑑純夏 KISS×100



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最終更新:2010年06月27日 10:51