濫読者の羅針盤 @ ウィキ
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nhoshi
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#007 The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County / Mark Twain (1867)
世にも名高いキャラベラス郡の跳び蛙 / マーク・トウェイン
- The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County キャラヴェラス郡の跳び蛙が有名になる
- Aurelia's Unfortunate Young Man オーリーリアの不運な恋人
- A Complaint about Correspondents, Dated in San Francisco
- Answers to Correspondents
- Among the Fenians
- The Story of the Bad Little Boy Who Didn't Come to Grief 悪たれ小僧の話
- Curing a Cold
- An Inquiry about Insurances
- Literature in the Dry Diggings
- "After" Jenkins
- Lucretia Smith's Soldier ルークリーシァ・スミスの兵士
- The Killing of Julius Caesar "Localized"
- An Item which the Editor Himself could not Understand
- Among the Spirits
- Brief Biographical Sketch of George Washington
- A Touching Story of George Washington's Boyhood
- A Page from a Californian Almanac
- Information for the Million
- The Launch of the Steamer Capital
- Origin of Illustrious Men
- Advice for Good Little Girls
- Concerning Chambermaids
- Remarkable Instances of Presence of Mind
- Honored as a Curiosity in Honolulu
- The Steed "Oahu"
- A Strange Dream
- Short and Singular Rations
トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンで有名なマーク・トウェインの短編集。表題作では詐欺行為がストーリーの鍵になっており、その意味で「定員」の中に入ったのでしょう。
光文社文庫版『クイーンの定員』
には表題作が収録されていますが、実はこれは結構有名な作品で、他にも色々なところで読めます。うちには他に、
『ちくま文学の森10 賭けと人生』
「その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」(野崎孝訳)、文化書房
『マーク・トウェイン短編全集〈上〉』
「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる」(勝浦吉雄訳)がありました。マーク・トウェインの出世作ともいえる作品で、本人も何度かリライトしている(タイトル中の Celebrated が Notorious になるなど変化しています。)ので日本語版も複数バージョンあると思いますが、基本的な構図は同じです。手に入りやすいものでは新潮文庫版
『マーク・トウェイン短編集』
に「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」が収録されています。岩波文庫版
『バック・ファンショーの葬式 他13篇』
にはこの他に多分6が収録されていると思います。(邦題から判断しただけ。未確認。)
しかしわざわざ「定員」に入れるべきものなのか?確かに"騙し"が一つのテーマにはなっていますが、これがその後の犯罪小説に特に影響を与えているということでもないように思いますが。むしろ笑い話的に捉えられているだろうし。
では、この短篇集、「跳び蛙」以外には何が収録されているのか...
この本はトウェインの1冊目の短編集です。光文社文庫の解説では表題作の他に23編とありますが、ネットで調べてみるとソースによって収録作がまちまちです。実は全24編になっているのは見つけられず、C.H.Webb社1867年刊という情報では全27編になっています。書名は正確には The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County, and Other Sketches. 後ろに余計なのが付いていますが、これが原典のようです。上記の収録作リストはこの情報を元に作成しています。ちなみにここやここで全文が読めます。
うちには文化書房版の
短編全集
がありますが...それでも収録されているのは 1,2,6,11 の 4 つだけ。日本語訳があるのはこれだけだと思います。全体的にややブラックめの笑い話(というかバカ話)です。「定員」としては表題作だけを読めばよいということかと思います。
C.H.Webb は Charles Henry Webb. The Californian という新聞の創立者です。要はこの本は、Twain が The Californian に執筆したコラム集という感じのようです。(本にする際にリライトはしているようですが。)Jumping Frog の話だけは、初出は Satuday Press,1865年ですが、これもリライトして The Californian にも掲載されています。
さて、Twainにはむしろこれ以外にミステリ短編に見るべきものがあると思います。まずはリドルストーリーの傑作「中世のロマンス」。あらすじは北村薫の
謎のギャラリー
にも紹介されていますが、現行本では文化書房の短編全集でも読めます。あとは絶版ですが、旺文社文庫版
マーク・トウェインのバーレスク風自叙伝
にある「恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス」はたぶん同じ話でしょう。他にも
『ミニ・ミステリ傑作選』
(絶版)に収録された「私の懐中時計」を、新潮あるいは岩波の短編集で読むことができます。講談社文庫または河出文庫の『ホームズ贋作展覧会』(絶版)には「名探偵誕生」(『シャーロック・ホームズの災難』(これも絶版)の「大はずれ探偵物語」と同じ)が、『犯罪小説傑作選』(これもまた絶版)には「盗まれた白象」が収録されていました。この辺は文化書房版の短編全集には収録されています。
なお、本のタイトルとして Sketches が Stories になっている情報も見つかります。また、County が Country と記載されていることもありますが、まぁこれは誤記でしょう。