恋する乙女の小さな決意
449 名前: [[◆Q1QEUibokM]] [sage] 投稿日:2009/10/10(土) 18:25:41 ID:9nLuYh0Q
お昼休みの教室には弛緩した空気が満ちていて、思わず欠伸が漏れそうになる。
雑然とした喧騒の中で、そんな空気にわたしも浸っていた。
今わたしが座っている席は廊下側の真ん中、梢ちゃんの隣の席だ。
本当はわたしの席は窓際なんだけど、お昼休みということでこの席を借りている。
雑然とした喧騒の中で、そんな空気にわたしも浸っていた。
今わたしが座っている席は廊下側の真ん中、梢ちゃんの隣の席だ。
本当はわたしの席は窓際なんだけど、お昼休みということでこの席を借りている。
「これ可愛いー。静奈に似合いそうっ」
梢ちゃんが、机の上に広げていたファッション雑誌を指差す。
身を乗り出して覗き込むと、すごく可愛いモデルさんが微笑みかけていた。色々なヘアスタイルを紹介したページだ。
梢ちゃんが指し示しているのは、滑らかなウェーブの掛けられたロングヘアだった。
綺麗な茶色に染められた髪は、とても眩しく映る。
確かに可愛いし華やかだ。でも、わたしは唸ってしまう。
梢ちゃんが、机の上に広げていたファッション雑誌を指差す。
身を乗り出して覗き込むと、すごく可愛いモデルさんが微笑みかけていた。色々なヘアスタイルを紹介したページだ。
梢ちゃんが指し示しているのは、滑らかなウェーブの掛けられたロングヘアだった。
綺麗な茶色に染められた髪は、とても眩しく映る。
確かに可愛いし華やかだ。でも、わたしは唸ってしまう。
「うーん、もうちょっと地味な感じの方がいいなぁ……」
「そうー? 可愛いし似合うと思うんだけどな。っていうか、静奈はもうちょっと積極的になってみていいと思うよ?」
「そういうの、ちょっと苦手だから……」
梢ちゃんが色々勧めてくれるのは嬉しい。
けれど、わたしは梢ちゃんが言ってくれるほど可愛くないし、煌びやかなのは苦手だ。
目立っちゃうのは恥ずかしい。色んな人に注目されると落ち着かない。
ちょっと女子高生っぽくない考えのような気もするけど、その臆病さは変えられそうになかった。
「そうー? 可愛いし似合うと思うんだけどな。っていうか、静奈はもうちょっと積極的になってみていいと思うよ?」
「そういうの、ちょっと苦手だから……」
梢ちゃんが色々勧めてくれるのは嬉しい。
けれど、わたしは梢ちゃんが言ってくれるほど可愛くないし、煌びやかなのは苦手だ。
目立っちゃうのは恥ずかしい。色んな人に注目されると落ち着かない。
ちょっと女子高生っぽくない考えのような気もするけど、その臆病さは変えられそうになかった。
「そっか。ま、無理したっていいことはないもんね。それに今のままでも充分可愛いし」
気を遣ってくれる梢ちゃんに、申し訳なさを覚えてしまう。
気を遣ってくれる梢ちゃんに、申し訳なさを覚えてしまう。
「ごめんね」
だからわたしは、ほとんど反射的にそう謝っていた。そんなわたしに、やっぱり梢ちゃんは微笑んでくれた。
そのまま一緒に雑誌を眺めていると、梢ちゃんの席の前の人が戻ってくる。
わたしはさりげなく、そっちにちらりと目を向けた。
座っている後姿は、牧村くんのものだ。梢ちゃんの席は、牧村くんの背中をすぐ近くで眺められる最高のポジションだ。
ヘアスタイルについて話をしていたせいか、視線はつい髪の毛に向かっていく。
きめ細かい髪の毛はすごく綺麗で柔らかそうで、触ってみたくなるくらい滑らかだ。
だからわたしは、ほとんど反射的にそう謝っていた。そんなわたしに、やっぱり梢ちゃんは微笑んでくれた。
そのまま一緒に雑誌を眺めていると、梢ちゃんの席の前の人が戻ってくる。
わたしはさりげなく、そっちにちらりと目を向けた。
座っている後姿は、牧村くんのものだ。梢ちゃんの席は、牧村くんの背中をすぐ近くで眺められる最高のポジションだ。
ヘアスタイルについて話をしていたせいか、視線はつい髪の毛に向かっていく。
きめ細かい髪の毛はすごく綺麗で柔らかそうで、触ってみたくなるくらい滑らかだ。
「ちょっと前から疑問に思ってたんだけどさ」
言いながら、梢ちゃんは驚きの行動に出た。
なんと、牧村くんの背中を人差し指で突っついたのだ。
言いながら、梢ちゃんは驚きの行動に出た。
なんと、牧村くんの背中を人差し指で突っついたのだ。
……い、いいなぁー。わたしも牧村くんに触れたいー。
思わず指をくわえてしまいそうになるわたしの前で、牧村くんが振り返る。
軽く首を傾げる牧村くんの仕草が素敵で、胸の高鳴りが大きくなる。
軽く首を傾げる牧村くんの仕草が素敵で、胸の高鳴りが大きくなる。
「牧村って、ばっちり髪の手入れしてるの?」
「え? 髪?」
「うん。めちゃくちゃ綺麗だからさー、どうしてんのかなと思って」
「あ、わ、わたしも気になるっ! お手入れのコツとかポイントとかあったら、教えてほしいな」
何とか会話に参加できたわたしの前で、牧村くんは首を横に振った。
「え? 髪?」
「うん。めちゃくちゃ綺麗だからさー、どうしてんのかなと思って」
「あ、わ、わたしも気になるっ! お手入れのコツとかポイントとかあったら、教えてほしいな」
何とか会話に参加できたわたしの前で、牧村くんは首を横に振った。
「特に何もしてないよ。普通にシャンプー、リンスしてるだけだけど……」
牧村くんは自分の髪を軽く摘むと、苦笑いを浮かべる。
牧村くんは自分の髪を軽く摘むと、苦笑いを浮かべる。
「そんなに、いいものじゃないよ?」
「いやいやいや、非っ常に羨ましいんですけど!」
梢ちゃんにつられて、わたしも頷いた。あんなに細くて柔らかそうで綺麗なのに、いいものじゃないわけがない。
「いやいやいや、非っ常に羨ましいんですけど!」
梢ちゃんにつられて、わたしも頷いた。あんなに細くて柔らかそうで綺麗なのに、いいものじゃないわけがない。
「いいものだよー! そんなに綺麗な髪の子って、女の子でもなかなかいないし!」
言うと、少しだけ牧村くんが苦笑を深くしたように見えた。
あ、あれ? わたし、何かまずいこと言っちゃったかな……?
言うと、少しだけ牧村くんが苦笑を深くしたように見えた。
あ、あれ? わたし、何かまずいこと言っちゃったかな……?
「悪いと思ってるわけじゃないけど、男でこんな髪っていうのもちょっとね。女の子に間違えられることもあるし」
牧村くんはポツリと呟く。
わたしは大好きだけど、可愛い見た目はコンプレックスなのかもしれない。
牧村くんはポツリと呟く。
わたしは大好きだけど、可愛い見た目はコンプレックスなのかもしれない。
「あ、違うの。女の子みたいだって言いたかったわけじゃなくて、その、ただ、素敵だなって思っただけで」
「うん、分かってるよ。ごめんね、せっかく褒めてくれたのに」
あぅ、牧村くんに謝らせちゃった……。何も悪くないのに。
「うん、分かってるよ。ごめんね、せっかく褒めてくれたのに」
あぅ、牧村くんに謝らせちゃった……。何も悪くないのに。
「それじゃあ男の子な牧村に質問だ!」
わたしがフォローの言葉を探している間に、梢ちゃんが牧村くんを指差した。
「は、はい? 何でしょう?」
面食らった牧村くんが、改まったように背筋を正す。
わたしがフォローの言葉を探している間に、梢ちゃんが牧村くんを指差した。
「は、はい? 何でしょう?」
面食らった牧村くんが、改まったように背筋を正す。
「女の子の髪型でどんなのが好みですかっ?」
梢ちゃんは指していた手を握りマイクに見立て、牧村くんに向ける。
質問内容が聞こえてきた瞬間、わたしは胸中で親指を立てていた。
梢ちゃんは指していた手を握りマイクに見立て、牧村くんに向ける。
質問内容が聞こえてきた瞬間、わたしは胸中で親指を立てていた。
……梢ちゃん、ぐっじょぶ……っ!
思わず梢ちゃんを賞賛しそうになるけど、とりあえずその感情を飲み込む。
わたしは自然と、身を乗り出して牧村くんに視線を注ぎ込んでいた。
もちろん、耳に意識を傾けるのも忘れない。むしろそっちが主だ。
無性にドキドキする。
お洒落でちょっと派手めな髪だったらどうしよう。ベリーショートって言われたら似合うかなぁ。
髪染めるんだったら梢ちゃんに色々教えてもらわなきゃ。
あらゆる髪型をイメージしながら、わたしは意識せず自分の髪をいじっていた。
わたしは自然と、身を乗り出して牧村くんに視線を注ぎ込んでいた。
もちろん、耳に意識を傾けるのも忘れない。むしろそっちが主だ。
無性にドキドキする。
お洒落でちょっと派手めな髪だったらどうしよう。ベリーショートって言われたら似合うかなぁ。
髪染めるんだったら梢ちゃんに色々教えてもらわなきゃ。
あらゆる髪型をイメージしながら、わたしは意識せず自分の髪をいじっていた。
「えっと、なんか恥ずかしいなぁ、こういう話」
牧村くんが微かに紅潮した頬を軽く掻いている。
照れてる様子がとっても可愛くて、またニヤけちゃいそうだ。
いつもニヤニヤしている変な女だと思われてないか不安になるけれど、なかなか止められない。
欲望に忠実な自分が恨めしかった。
牧村くんが微かに紅潮した頬を軽く掻いている。
照れてる様子がとっても可愛くて、またニヤけちゃいそうだ。
いつもニヤニヤしている変な女だと思われてないか不安になるけれど、なかなか止められない。
欲望に忠実な自分が恨めしかった。
「恥なんて捨てて、ばっちりカミングアウトしてくださいな。ほら、静奈が期待の眼差しで見てるよー?」
「え? 僕、期待されてるの?」
不意に尋ねられて、わたしはほとんど反射的に首を縦に振った。
「え? 僕、期待されてるの?」
不意に尋ねられて、わたしはほとんど反射的に首を縦に振った。
「う、うん。ぜひぜひ、聞かせてほしいなぁ。きょ、興味、ある。すっごく」
髪のお手入れ法よりも、間違いなくずっとずっと気になっている。
耳を澄ませる。
教室中に広がるざわめきの中で、牧村くんの声を聞き逃さないように。
そして牧村くんは、わたしの方を見てから、照れくさそうに口を開く。
髪のお手入れ法よりも、間違いなくずっとずっと気になっている。
耳を澄ませる。
教室中に広がるざわめきの中で、牧村くんの声を聞き逃さないように。
そして牧村くんは、わたしの方を見てから、照れくさそうに口を開く。
「河内さんみたいな髪を、もうちょっと伸ばした感じがいいなぁ」
わたしの名前が出るとは思わなくて、心臓が跳ね上がった。
驚き半分、そして残りの半分は、
驚き半分、そして残りの半分は、
……牧村くんの好みに近い髪型だったなんて。嬉しい、嬉しいっ。
恥ずかしさを隠すように、ひっきりなしに髪をいじりながら。
わたしは、髪を伸ばす決意をした。
わたしは、髪を伸ばす決意をした。
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