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Mohikan meets girl 2話目

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Mohikan meets girl 2話目


520 名前:[[◆G9YgWqpN7Y]] [sage] 投稿日:2009/12/13(日) 16:17:22 ID:KBcWiwB8

「どうしてこうなった……」

那賀は頭を抱えつつ唸るように言う。
目の前にはあの路地裏で殴られていたはずの女が、パフェを頬張りつつ目の前に座っていた。

ここは深夜のファミレス。
そこにはモヒカン男と綺麗な女性が同じ席に座り、
同じジャンボパフェを食べるという一種異様な光景があった。

「にゃにはたまかかえへるのひょー。おれいなんひゃからたひぇなひゃいー」
「口一杯にしたまま喋るな。ていうかなんであんたはそんなに元気なんだ」

目の前の女は、ついさっき殴られて転がっていたと思えないくらい元気だった。

肩で切り揃えられたセミロングの黒髪。二重のパッチリとした目。
口元は目の前のジャンボパフェの前で満面の笑みを作っている。
制服から同じ学園の生徒、おそらく三年だろうと推測する。
あかぬけた女性で、モデルをやっているといわれても思わず納得する程の容姿だった。

そんな美女であったが、額にたんこぶを作りながらジャンボパフェをリスのように目一杯頬張ってる姿は、
なんて言うか、すべてを台無しにしている。

その女性は、口の中の物を飲み込んでから再び口を開く。

「そりゃー、額で受けたからねー。どっちかというと痛かったのあいつの方かも?」

手に持ったスプーンをヒラヒラと振りながら話す女性。
そんな女性に対し那賀は問いかける。
内心俺は何をやっているんだと自問しながらであるが、これもまた成り行きだと思うことにする。

「それよりなんであんなことになってたんだ? 何が原因だ?」
「別れ話」

その問いに女性はあっさりと簡潔に答えた。

「なるほど」

この女が別れ話を切り出して男が逆上した。そんな所か。
那賀はその一言で納得する。

しかし、女性の言葉には続きがあった。

「あいつから別れ話切り出されて、私が問い詰めたの。最終的には殴られちゃったけど」
「あー、そうなのか?」

どうやら切り出したのは男の方だったらしい。
那賀は適当に相槌をしつつ、続きを促す。

「やっぱり相手の女の事まで罵ったら怒るわよね。これって自業自得って奴かな?」
「そりゃそうだ」

男としては自分の事なら何を言われようとも我慢できた。
しかし、新しい彼女へと矛先が向き、我慢しきれなくなったということらしい。

「言う方も言う方だが、怒る方も怒る方だ。ま、どっちもどっちだな」
「……うん、そうよね。今は言い過ぎたと反省してるけど」

後半はほとんど呟きになって、那賀としてもかろうじて聞き取れた程度だった。
しかし、那賀には特に何をいえることなどない。慰める必要もないと判断していた。

「ふう。別に助ける必要はなかったな……」
「本人目の前にしてそんなこと言わないでよ」

那賀の軽口に女性は苦笑して答える。

「はいはい。そうか」

その様子を見て女性の心の中で整理がついていることを確認した。
もう一人にしても大丈夫だろう。
そして那賀はあっさり立ち上がると、突然の行動に驚いた女性に言った。

「じゃ、ごっそさん。俺はもう行くぞ。いい加減かえらねぇと明日がきついからな」
「そんな格好してるのに意外と規則正しいのね。わかったわよ」

那賀の言葉に女性は軽く溜息を吐くと、会計を済ますために立ち上がる。
女性は会計を済ませ、そのまま二人は一緒に外に出た。

外はまだ寒い。さっさと帰らないと風邪ひきそうだな。
那賀はそう思い、女性のことを気にすることもなくそのまま進む。
もう関わり合うこともないだろう。女性は今年三年である以上もうすぐ卒業だ。
そうなったらカップル撲滅運動の対象からも外れる。

「あ……」

女性が何か言おうとしているのはわかったが、那賀は無視してそのまま帰って行った。



「あ、そういやあの女の名前も聞かなかったな」

那賀がそのことに気づいたのは家に帰った後だった。


○        ○       ○


「畜生……舐めやがって……」

一人の男が電柱の陰に隠れるようにして、二人がファミレスから出てくる所を見ていた。
絞り出すように悪態を吐く。

「つまりこの俺よりあの不良を選んだってことだよなぁ」

目の前で見た光景を男はそう解釈する。
見た目はそれほど悪くない男だった。
しかし、今の表情はひどく歪んでいて、一種近寄りがたい印象を与えていた。

男は女に一度振られていた。女に彼氏ができてもまだ追っていた。
女が男と別れ、チャンスが来たと思っていた。

しかし、目の前に新たな男が女といっしょにいた。
それも見た目あまり近寄りたくないタイプの男と。
彼の歪んだ愛は、その瞬間はっきりとした憎悪に変わっていた。

「あんな、どうでもいいような男とは食事を食べて、俺を振るなんてなぁ」

端正な顔立ちの男は顔をさらに歪める。
手はブルブルと震え、足に力が入りすぎ、踏みつぶした小枝が粉々になっていた。

「ああ……もういい。この手に入らないなら……壊すだけだ……」

おもむろにポケットから紙を取り出す。
男はそこに書かれた電話番号にかけ始める。

「ああ……俺だ……」
『――――』
「いいぞ……女の方は好きにしていい。男の方は……」
『――――』
「頼んだぞ」

「地奈……俺を振った罰は……受けてもらうぞ……」

男は呟く。歪んだ表情は、陰気で、矮小で、不気味だった。


○        ○       ○


次の日の夕方、那賀は一人でいた。
そこは学校の屋上で、双眼鏡を持ってグラウンドを眺めている。
その表情は真剣そのもの。覗きと思われて当然の挙動をしている。
その那賀がしていることは、

「……この卒業まであと少しということで、カップル候補共の動きが活発になっているな」

那賀はメモ帳を取り出し書き始める。
結局やっていることはいつもの情報収集だった。

「あそこに二人……あれは後一週間くらいで成立するな……。
 む……あれは一級危険人物……いよいよ乗り込むべきか」

ぶつぶつ呟きながら眺め続けているその姿は、はっきり行って不気味だった。


そこへ、那賀のいる屋上に数人の影が現れる。

全員がナイフを手に持ち、呟き続ける那賀へとゆっくり近づいていく。
那賀が気づく様子は見えない。


その影は、那賀のすぐそばまでやってくる。
そのまま音もなく、ナイフを振り上げ那賀の背に向けて振り下ろす。


そして、人が倒れる音がした。


那賀が背後の音と異変に気づき振り返ると、数人の男たちが倒れている状況が見て取れた。
手にはナイフを持っている。
その様子から自分に危害を加えようとしていたことを察する。

「……これ、先公がやったのか?」

しかし問いかけた先は倒れる男たちではなく、その向こう。
黒い塊を両手に持った一人の教師。
その教師は柔和な笑顔を浮かべ、口を開く。

「生徒の危機とあっては、黙って見ているわけにもいかないよ」

その教師に対する印象はおおよそ平凡という表現は相応しいと思えた。
穏やかそうな雰囲気を纏い、優しい教師といってもいいだろう。

しかし、その両手にあったのは射出式のスタンガンだった。
那賀はその持ち物と教師という役職のちぐはぐさに違和感を覚える。



教師は那賀のその表情に気づいたのだろう。笑顔を苦笑に変え、言葉を続ける。

「ああ、これかい? 最近生徒指導のために夜の繁華街にも見回りしているからね。 
 念のための護身用なんだ。こんな物、使わないならそれに越したことはないんだけどね」

そう言って、倒れている男に視線を移し、那賀へと尋ねる。

「しっかし、君は何かしたのか? これまた物騒な……」
「わかんねぇ。色々悪さはしちゃいるが、ここまでされる事をした覚えもない」

那賀は、教師の言葉に続き、答える。
那賀には全く心当たりはない。
その様子に再び教師は唸ると、さらに質問する。

「そうか、それじゃあ、何か変わったことはあったかな?」
「……うーむ。柄にもなく人助けしたことぐらいか?」

変わったことといってもそれ位しかない。
脅して立ち去らせた男という可能性も考えるが、男の方から別れ話をしている以上それもないだろう。

どうやら那賀に理由がわからないようだと教師は納得し、頷く。

「……そうか。なら、この男たちに聞いた方が早いか」

そう言いながら教師は、一人の男を起こす。
その慣れた手つきに那賀は違和感をおぼえるが、
教師が呻きとともに起きた男へ質問を浴びせることで、意識は質問へと向けられすぐに忘れた。

「さて、何が目的かな?」

その時の教師の表情は那賀からは見えなかった。
しかし、男は震えと共にあっさりとしゃべり始める。

「お、俺達は依頼されただけだ! そいつを怪我させろという事と、女を連れて来いと言われただけだ!」
「女とは誰だ?」
「この学園の高等部の3年の女だ! 俺は名前聞いてねぇ。俺はこっち担当だったからな!」

その言葉に那賀は反応する。

「……もしかして、あの女か?」

昨日助けた女が攫われた? なぜだ?
理由不明の展開に那賀の理解は追いつかない。

しかし、教師は冷静に、男から落ち合い場所を聞き出すと、再びスタンガンで眠らせる。
さらに携帯を取り出しどこかに掛け、話し始めた。

「あ、真田先生ですか? 屋上に悪い子が4人ほど眠っているのでそっちでなんとかして下さい。
 私は、ちょっとこれから野暮用があるのでそっちの方に行きます」

それだけ言うと、教師は携帯を切る。

「さて、それでは行きましょうかね」
「……行くって、どこに?」
「当然、その女生徒を助けにですよ」

何でもないことのように言う教師に那賀は驚く。

「先公、何考えてやがる。まずは警察じゃないのか?!」

那賀の当然の指摘に、教師は穏やかに頷いた。

「ええ、そうですね。しかし、そういうのは真田先生に任せましょう。
 私たちがまず動く方が、すべてを穏便に済ますのに丁度いいのですよ」

そう言って教師は笑う。ここまで来てもそれは穏やかな笑みだった。
そして、その表情にまま、那賀に話す。

「もちろん君のことも頼らせてもらいますからね」
「……何考えてやがる?」

那賀は不審の表情を浮かべる。
しかし教師は取り合わず、さっさと出口に向かう。
その動きに対し、那賀は一瞬の逡巡の後、その教師についていく。

その途中、歩くペースを変えず、教師は口だけを動かした。

「そうそう、私の名前を憶えてますか?」
「……大里 巧」
「ええ、その通り。よく憶えてくれました。
 それと今の作戦の間は教師と生徒ではなく、戦友です。
 私のことは名前で呼んでも構いませんよ?」
「先公で十分だ」
「うーん。それは残念ですね」

そして二人は巧の車に乗り込む。
誘拐された女性を救出する、その目的のため動き出した。





続く。


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