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空を飛ぶ鳥

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空を飛ぶ鳥



「おーい。挙さん。そこの角材持って来てください」
「よし、任せろ!」

重利挙の目の前には数十本の角材があった。
重さにすると数十キロ。
それを重利挙はあっさりそれを持ち上げると呼んだ男子生徒の所にもっていく。

今回の演劇、重利挙達重量挙げ部の面々はその有り余るパワーを生かし大道具の制作に携わっていた。

「はい、持ってきたよ」
「すげぇ……あ、ありがとうございます」

そしてその行動に驚きながらも受け取るのは小鳥遊雄一郎
なぜか鷲ヶ谷和穂と一緒にセットで準備に駆り出されていたりする。
そのまま立ち去る挙。雄一郎と和穂は持ってきてもらった角材に手をつける。

「そういえば、この演劇ってなにやるんだっけ?」
「んー、たしか、グリム童話の"茨姫"をアレンジするとか言ってたな」

作業しながら二人はいつものように会話していた。
隣の和穂の言葉に雄一郎は少し考えながら答える。
完全オリジナルだと、素人が多くまざる今回の演劇では
把握の問題で時間が足りないと判断したらしい。

「九重先先に言われなきゃこんな事に参加しなかったな」
「こういうのって楽しいよね」
「……やってることは地味だけどな」

和穂の言葉に半分だけ頷きながら雄一郎は作業を続ける。
釘を取り出し、さきほど運んでもらった角材を打ち付ける。
かなり地味な作業だが、場合によっては人が乗るのだ。
安全性だけはしっかり確保しないといけない。

「……ってちょっと待て! 和穂! どこ登ってる!」

釘打ち作業に真剣になりすぎていたらしい。気付くのが遅れた。
そう、気付いた時には和穂は、さっき作ったばかりの城型背景のてっぺんに登っていた。

小柄なだけあってその小動物然とした行動力には驚かされる。
だが、その城の形をした何かは、まだ建てつけ途中で安定していない。落ちて怪我でもしたらまずい。

しかし、雄一郎の心中を知らずは和穂のほほんと言葉を返した。

「気付いたらここに」
「気付いたらじゃないだろ!?」
「いやー、テッペンの先端部分の欠けが気になっちゃって」
「あー確かに欠けてるが……そんなことより危ないから降りてこい!」
「んー分った。それじゃ降り――」

あ、
と、雄一郎は心の中で叫ぶ。
和穂の体がぐらりと揺れ、バランスを崩した。

「あ、危な――」

雄一郎は瞬間の判断で受け止めるため、落下地点へ移動を開始する。

だが、届かない。後、一歩足りない。

――そして、目の前に人の形が現れた。


「――危ないですから、登らないように。それに小鳥遊君も鷲ヶ谷君をちゃんと見てあげて下さい」
「はーい」
「はい、分りました……って、俺は和穂の保護者ですか?!」

落下した和穂の体を受け止めたのは重利挙。
いち早く様子に気付いた挙は、雄一郎より前に行動を開始していた。
そして、落下する和穂をあっさり受け止めた後、二人に対して注意を行った。
これは、先輩としての責任感というものである。
その言葉に真剣に頷く二人。
頷いた二人を確認すると、重利挙も頷き返し、他の人に呼ばれてその場から去って行った。

なんとなく息をつく二人。

「挙先輩ってすごいね。僕、軽々受け止められちゃった」
「だな、よくできるよな。重いのに」
「むむ、僕そんなに重くないよ!」
「はいはい」
「むー!!」

じたばたと両手を振る和穂。
そのいつもと変わらない様子に苦笑と安堵を浮かべる雄一郎だった。----

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