アットウィキロゴ
私立仁科学園まとめ@ ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

私立仁科学園まとめ@ ウィキ

8人の魔女

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

8人の魔女



着々と公演日まで近づき、大道具も大雑把には完成。
何やらギミックが色々と仕掛けてあるが、どんな事が起こるのか一部の人間を除き不明なままであった。
一部では不安の声も聞こえてくるが、それでも時間は待ってくれない。

舞台衣装も順調に完成し、今は試着を兼ねた練習へと段階が移っている。


この日、舞台の上には5人の少女達が立っていた。
それぞれ様々なドレスで着飾り、それぞれ思い思いに自分の姿や立ち位置のチェックをしている。

その中の一人、鏡の前で、眉を寄せ、悩むように立っている少女が一人。
自分が着ている服装を何度も確認し、納得できないのか何度も見る角度を変えている。

色は漆黒。肩口を大きく開け、胸元からボディラインが強調されたシックなドレス。
スカートの長さは足首まで伸び、歩くたびにふわりと揺れる。
腰にはドレスと同じ生地のベルトがされていて、ことさら体のラインがはっきりわかる。
そんなドレスを着た少女、霧崎は腕を組み、考え込むように自分の姿を鏡で見る。

「ふむ。しかし、こういうドレスは着慣れんな」
「そんなことありませんよ。霧崎さん。とっても似合ってますよ」

霧崎の言葉に『似合う』と言う言葉を強調して返す少女が一人。
実際、背を覆うほどの長い黒髪とマッチしていて、凛とした雰囲気が強調されている。
可愛いというよりも美しいと言った方が相応しい雰囲気を纏っていた。

そして、話掛けた方の少女はというと、やはり普段の制服姿ではなかった。
何故か巫女服をベースに、至る所に純白のフリルがふんだんにつけられた服を着ている。
その少女、神柚鈴絵は手を前に組み、鏡に映る自分の姿を見る。
ちょっと情けなさそうに眉を下げ、思わず愚痴がこぼれた。

「……私の服は、なんて言うか、すっごく違和感がありますよ」
「まぁまぁ。せっかくリアル巫女さんに着てもらうんだし、そうなるとこれしかないよねー?」

明るい声が後ろから聞こえ、二人は振り返る。
そこには、スカイブルーのアシメトリドレスを着た少女。
スカートの裾ラインは斜めにカットされ、透ける素材と相まって、年齢に見合わぬ妖艶さを醸し出している。
その少女、ことコスプレ部部長、秋月京は太陽のような笑顔を二人に対し向け、手を振っていた。
年相応の動きに鈴絵も笑い、霧崎も小さく頷く。

「でも京ちゃん。これは茨姫とはかなりイメージが違うと思うよ」
「まぁ、あくまでも茨姫をモチーフにしてアレンジするって話だからねー。それに魔女役なんだし。
 これくらい大丈夫だよ、きっと」

鈴絵の抗議を京は軽く受け流す。言いながらも視線は霧崎へと向けていた。

「霧崎さんもいい感じに大人の雰囲気が出てるわ! イメージぴったりね!」
「ほう、ならばいい。慣れぬ物で見苦しいものを見せるのは、性に合わんか――」


「うおおぉぉぉおおお!! 霧埼くん最高だ!! 今すぐ僕と結婚しt――ぐげっ!」
「幸せオーラに気付いて爆走している三馬鹿が、飛び出した白秋を轢いて行ったぞー!」
「救急車ー! ……あ、この程度ではいらなそうだね。保健室保健室っと」
「白壁先生、ここは僕が運んできます。先生は引き続き、ここにいて下さい」
「あ、九重君。わかりました、よろしくお願いします」


「えっと……今の声は?」
「気にするな。いつものことだ」
「ん。ならいいか」


遠くで聞こえた阿鼻叫喚を疑問に思った鈴絵に、霧崎はさらりと答える。
鈴絵もすぐに納得の頷きを返し、あっさり今の騒動を忘れ、今度は視線を別に向けた。
その視線の先には同じく衣装を着た1年が二人立っていた。

「静奈ちゃん、閑花ちゃん。どう、うまく着れた?」

「は、はい! だ、大丈夫です!」
「……終わりました」

一人は緊張のあまり若干噛みながら、もう一人は慎重に言葉を選びながら、それぞれ答える。
その一人の様子に鈴絵は心の中だけで苦笑しながら、柔らかな笑顔を作り話しかける。

「あ、やっぱりよく似合ってるー」

静奈が着ているのはピンクのプリーツドレス。ウェスト部分に同じ色の大きなリボンが着けられている。
スカートの長さは膝上までふわりと広がり、全体的に可愛らしさが強調されたドレスだった。

一方、閑花は若草色で統一されたロングドレス。裾にはレースがふんだんに使用され、こちらも清楚の中に
可愛らしさを同居させている。

鈴絵の言葉に、静奈は顔を赤くして俯き黙り込んでしまう。
対照的に閑花は「ありがとうございます」と言いながらもその声は固い。

「私がコーディネートしたもの、当然よ」
「流石はコスプレ部部長と言ったところか」

微妙な空気に気付かないかのように京は胸を張って横から口をはさみ、霧崎も同意した。
その言葉にそれぞれの緊張した面持ちが崩れ笑顔を浮かべる。

――そんなタイミングでふと、思い出したかのように鈴絵は口を開いた。

「静奈も閑花も思い人がいるって噂聞いてるわよ。今の姿見たら一発で落ちちゃうかもよ?」

そんな軽口に、二人はハッと顔を上げ、次の瞬間別々の反応をしめした。

「にゃ、なんですか?! なんでそれを鈴絵先輩が知って……ハッ!? まさか引っかけ!?」
「さーてどうでしょう? 私は応援するからね。今は絶対いい機会なんだから、頑張ってね」
「……――!!」

真っ赤になってしまった静奈とそれを応援する鈴絵。

一方、閑花はと言うと、京に真っすぐ体を向け、がっしと手を握り、

「京先輩! このドレス、本番終わったらこのまま貸して下さい!」
「いいわよー。じゃんじゃん持ってきなさい」

謎の契約が交わされていた。

そんなこんなでなんとなく和やかなムード。
そこへ、今までいなかった魔女役が一人が現れる。

「みなさん、そこに集まってたんですね。遅れてすいません」
「ん、ちょっと遅刻よー。ロ――」

振り向きながら言った京の言葉が途中で止まる。
残りの4人も振り向き、数瞬瞬きを繰り返した。
そして最後に同時にため息をつき、沈黙してしまう。

その意味が分らず後から来た少女も沈黙する。

その少女はある意味において完璧だった。
身体はすでに成熟しており、体にぴったりフィットした虹色のロングドレスは、彼女の女性としての全てを強調していた。
豪快でありながら、女性としての色気を全面に押し出すことに成功した姿がそこにある。

「……どうしたんですか? みなさん?」

その少女――ロニコ・ブラックマンは、その沈黙の原因が自分であることをわかってないように聞いてくる。
しかし、それでも他の5人は黙ったままだった。

少女でありながら女性としてある意味完成された姿に何も言えなくなってしまう。



――そのまま、奇妙な沈黙がしばらく過ぎていく。



  *          *           *



その沈黙を破ったのは、また新しい登場人物だった。

「あ、みんな集まってる! ごめーん! 練習しよっ――ってあれ? どしたの? みんな黙っちゃって」
「……ああ、なるほど、わかった。うんうん、気持ちはわかる気がするわ」
「そういうこと。……なるほど、悪いのはこの乳ね! この乳なのね!?」
「ちょ、ちょっと! なにするんですか!? ウェルチさん!?」
「姉さん、それはみっともないから止めなさい……」

それは双子の少女。姉のウェルチはその沈黙を破るかのようにロニコにじゃれつき始め、アリスが止めるという構図になる。

状況の変化に始め茫然としていた残りの5人だったが、次第に体が震え始め、それが笑い声になる。

「あはははははっ!! なにやってるの、ウェルチさん!」
「何を隠そうこれは正義の制裁であって、決して私怨ではありません。ちっとも羨ましくなんて思ってません!」
「本音ダダ漏れです。ウェルチさん」

京が笑いながら指摘すれば、ウェルチはあっさり切り返し、閑花が思わず突っ込みを入れる。
その笑い声はしばらく続き、皆がようやく笑い終わった後、京は頷きながら双子を見る。

「うんうん、完璧! 一度着せてみたかったのよねー。他にも色々着てもらったけどこれが一番」
「私たちは着せ替え人形状態だったけどね」
「これだけの素材! いじりまわさなきゃ損じゃない。 コスプレ冥利につきるわよ!」
「まあ、いいけどね……」

双子は服の色こそウェルチがゴールド、アリスがシルバーであったが、デザイン自体は同じ。
レースたっぷりなロングドレスで、さらに裾が透けている、ピーターパンにでてくる妖精をイメージさせる雰囲気を作り出している。
その姿は、黙っているとその人形然とした美貌がさらに強調され、一瞬人間ではないような錯覚をさせた。

そんな姿で集まった8人。その中心でウェルチは全員を見まわし、口を開く。

「私たちが最後だから、これで全員そろったよね。いい加減迫君が怒りそうだし、魔女役の練習始めよ」
「はい」「うむ」「は、はい!」「YES!!」

それぞれがバラバラに返事をしながら、舞台の下で待っている迫の方へ歩き出す。



――発表会当日まであと少し。


前:お城と舞台と観客と 次:[[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
人気記事ランキング
ウィキ募集バナー