お城と舞台と観客と
とんてんかん。とんてんかん。
その舞台の上では人の声、ドリルの轟音、のこぎりの刻む音、そういった様々な音が響いている。
それでも大道具の組み立てがほとんど終わった物から、順次着色に入っていた。
それでも大道具の組み立てがほとんど終わった物から、順次着色に入っていた。
城っぽい背景から城の背景へと変わる瞬間。
その背景担当はやはり美術部や創作部といった文系中心のメンバーだった。
その背景担当はやはり美術部や創作部といった文系中心のメンバーだった。
その中でも、もくもくと手を動かす美術部の面々。
美術部の一人である大型台は一度ざっと塗って、一度距離を取り、状態を確認。
再び塗るという作業を繰り返す。不良なのに。
他の美術部の面々は他で作業をしており、手伝いすらなく完全な一人作業になっている。
彼の普段の素行から考えると当然の結果であるが。
ただ、台はそのことには一切気にすることなく、もくもくと作業をしている。
再び塗るという作業を繰り返す。不良なのに。
他の美術部の面々は他で作業をしており、手伝いすらなく完全な一人作業になっている。
彼の普段の素行から考えると当然の結果であるが。
ただ、台はそのことには一切気にすることなく、もくもくと作業をしている。
ちなみに那賀と省は二人で"城の中"や"塔の内部"といった場面で使う物の着色を担当している。
何やら創作部の葎と一緒に作っている所を見ると仕掛けを用意しているらしい。かなり派手な演出でもするのだろうか?
神柚鈴絵の方は美術部の部長として、全体のまとめ役としての立ち位置になっている。
とはいえ今は、コスプレ部の秋月京となにやら話している。
魔女役としての配役もあるので、その打ち合わせをやっているのだろう。
何やら創作部の葎と一緒に作っている所を見ると仕掛けを用意しているらしい。かなり派手な演出でもするのだろうか?
神柚鈴絵の方は美術部の部長として、全体のまとめ役としての立ち位置になっている。
とはいえ今は、コスプレ部の秋月京となにやら話している。
魔女役としての配役もあるので、その打ち合わせをやっているのだろう。
その作業も終盤に差し掛かり、一人首を捻っている。
「うーむ……大体こんなものでいいとは思うが……」
元より背景は登場人物を引き立たせるものとの考えから、あまり目立たないように配色していた。
それにしても何か、足りない。……気がする。
といっても普通の人から見れば必要十分なのだが、台としては納得がいっていなかった。
それにしても何か、足りない。……気がする。
といっても普通の人から見れば必要十分なのだが、台としては納得がいっていなかった。
軽く悩みながらその背景を見続ける。だからといって悩みが解決しそうにもなかったが。
「しょうがない。真田のオヤジにでも聞くか」
一人ごちり振り向く。その瞬間、一人の少女と目が合ってしまった。
この状況では手伝おうとしても邪魔になる、しかし帰ることもしなかった。
客席にポツリと座っていた、一般には"後輩"と言われる少女。
客席にポツリと座っていた、一般には"後輩"と言われる少女。
――後鬼閑花がそこにいた。
「お、ちょうどいい。そこの一年! これをどう思う?」
台はその姿を確認すると、指で城を示しながら躊躇なく尋ねた。
突然声を掛けられた閑花はびくりと体を震わせると、しばらくして声を出す。
突然声を掛けられた閑花はびくりと体を震わせると、しばらくして声を出す。
「すごく……大きいです……」
「その発言は危険だ!」
「? 何がです?」
「……そんな"私わかってません"みたいな顔するな。わかってて言ってるだろうそこの一年」
「その発言は危険だ!」
「? 何がです?」
「……そんな"私わかってません"みたいな顔するな。わかってて言ってるだろうそこの一年」
きょとんとする閑花に対し、台は思いっきり顰め面をする。
そんな余所行きの猫を被った少女に対し、台はもう一度聞く。
そんな余所行きの猫を被った少女に対し、台はもう一度聞く。
「それで、どう思う?」
「いえ、綺麗だと思いますよ。これなら大丈夫だと思います」
「ふむ、そうか……ならこれで完成にするか。きっと俺の感覚の方がおかしかったのだろうな」
「いえ、綺麗だと思いますよ。これなら大丈夫だと思います」
「ふむ、そうか……ならこれで完成にするか。きっと俺の感覚の方がおかしかったのだろうな」
閑花の言葉に納得すると、台は肩を大きく回し、終わりを宣言し、休憩とばかりにどっかりと客席に腰を下ろした。
「え、そんな私の意見だけで終わりにしてもいいんですか?」
さっさと座られてしまい微妙に逃げづらくなった閑花は、あくまで余所行きの態度を崩さない。
微笑すらうかべながら台へと問いかける。
その問いに台は一瞬唸った後、閑花へと向き直る。
微笑すらうかべながら台へと問いかける。
その問いに台は一瞬唸った後、閑花へと向き直る。
「んー。まあそうだな。お前はずっと座って舞台を見てただろ。役者が動く所も見ているだろう?
そういった全てを見て、全体のイメージを持っている奴の意見が欲しかっただけだからな。
お前がいいといってるなら、あれはそう悪いもんじゃないだろう」
そういった全てを見て、全体のイメージを持っている奴の意見が欲しかっただけだからな。
お前がいいといってるなら、あれはそう悪いもんじゃないだろう」
あっさりとそう言いながら、台は伸びをする。
「しっかし疲れるな……なんでだ? 作業量はそう多くないはずなのにな」
「それは、単純に一人でやってるからだと思います」
「あー。なるほどな」
「それは、単純に一人でやってるからだと思います」
「あー。なるほどな」
余所行きの言葉に納得の頷き。そこで言葉のキャッチボールは終わってしまう。
とんてんかん。とんてんかん。
あいかわらずの喧騒の中、何故かこの二人の付近だけ、妙に静かな気がしてくる。
その微妙な静けさの中、今度は台が唐突に口を開く。
「お前もあそこに混ざってきたらどうだ?」
「いえ、手伝いすることなかなかなくて……。専門スキルある人がやってるので素人の私だとかえって邪魔になりますから」
「そうか」
「いえ、手伝いすることなかなかなくて……。専門スキルある人がやってるので素人の私だとかえって邪魔になりますから」
「そうか」
再び言葉のキャッチボールは終わる。
沈黙が場を支配する。
沈黙が場を支配する。
正直、気まずい。そんな事を思いながらもいまさら離れるわけにもいかず、台はその場で休憩する。
――そして、ふと、見つけた。こちらをちらちら見ている一人の少女の姿を。
「なるほど」
台は小さく誰にも聞かれない程度に呟いた。
これは、自分がいると邪魔だと察し、台は立ちあがると、閑花に顔だけを向けた。
台は小さく誰にも聞かれない程度に呟いた。
これは、自分がいると邪魔だと察し、台は立ちあがると、閑花に顔だけを向けた。
「さて、俺は休憩終了だ。そっちも忙しくなりそうだな」
「? どういうことですか?」
「すぐわかる」
「? どういうことですか?」
「すぐわかる」
それだけを言って台は立ち去り、閑花は言葉の意味を測りかねて呆けてしまう。
台が去った後、一人の少女がやってきた。
そのやってきた少女――河内静奈は息を切らせながら閑花の元までくると、一瞬の躊躇の後、
そのやってきた少女――河内静奈は息を切らせながら閑花の元までくると、一瞬の躊躇の後、
「あ、えーと。後輩ちゃん……って変な言い方だけど、ちょっと、手伝って欲しいことがあるって秋月先輩が言ってたの」
小さな声で伝える。
「え?」
疑問系の言葉を発し、固まる閑花に対し、河内静奈はもう少し大きな声で続けた。
「だから、いっしょに演劇やろうよ!」
「……うん、ありがとう」
「……うん、ありがとう」
その静奈の言葉に、数瞬閑花は思案し、閑花は目を細めてお礼を言う。
そして二人も並ぶようにして秋月の元に歩いて行った――
そのすぐ後に、閑花も魔女役に選ばれたりしたのは、また次の話。
終わり。
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