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夏企画仁科の怪談

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nisina

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夏企画仁科の怪談


 夏が来る。
 日は高く昇り、蝉が残り僅かな命で必死に泣いている。
 花火大会、夏祭、長期に渡る夏休み。この季節しかないかき氷の出店や、店先の「冷し中華始めました」というのぼり。
 ただ、夏が来た。
 それだけなのに、大人が忘れてしまった期待感を彼等は持っているはず。生徒達は待っていたはず。この季節を。

 夏が来た。楽しい夏が。

 夏が来たのだ。
 そう、私達の季節がね……。




 第0回:【Raising DarkSide】




 ねぇ知ってる?
 なんで学校には怪談が多いか?

 それはね、それを皆が欲しがるからなの。
 つまらない日常のちょっとしたスパイスとして、非日常の事を皆知りたがる。
 夏はそれが加速するわ。ふふ。きっと皆、開放感を持て余しているのね。

 もうひとつ、人が多い事もその理由ね。
 それは彼らを呼び寄せるの。彼らの一部には、その存在を知ってほしいって人もたくさんいる。
 でも、彼らと会える人はほんのちょっぴり。
 だから、一度彼らと会える人を見つけたら、彼らは逃がさない。
 彼らに会った人はどう思うかしらね? きっと他の人に話すわ。たとえどれほど荒唐無稽な話でも……。
 それは噂となって広がって行く。最初は小さなグループから。そしてクラスに広がり、学年全体に広がる頃にはきっと学校全体がそれを知る。
 それは決して消えない。
 何年たっても、ずっと生徒達に受け継がれて行くはず。
 なぜ消えないのか。解るわよね?
 そう、「みんながそれを欲しがる」からよ。

 だから私は、少しだけそのお手伝いをしているの。
 簡単な事よ。仕入れた噂を、他の人に広めるだけ。
 ただそれだけで、噂は広がって行く。
 中には噂を便りに、彼らと会う人も居るかも知れないわ。そうなれば、私も本望って所ね。

 そうそう。世の中には私の知らない事だって沢山あると思うわ。
 だから、もし何か知ってたら私に教えて欲しい。いえ、自分で広めても構わない。
 噂が広がる事そのものが、私の望みだからね。

 別に学校に限った話じゃ無くてもいいわ。
 学校だけがの舞台じゃない。学校が特別なのは、そこが噂の力を強くする特別な場所だから。
 関係ない話でも、学校でその話はしたたかに成長する。噂話の温床。それが学校よ。


 え? 私が誰かって?
 もちろん、仁科の生徒よ。学年? それはいいじゃない。
 名前?
 皆はふーちゃんって呼んでくれる。

 噂をたどれば、もしかしたら私にたどり着くかもね。
 その時はちゃんと教えてあげる。私の事をね。ふふふ。

 さて、さっそく誰かに噂を流さなきゃ。
 もちろん、あなたも手伝ってくれるわよね?
 あなたはそれを求めてる。
 だから、私とお話してる。

 そうね。まず最初はあなたに聞かせてあげようかな。
 どんな話がいいか、じっくり考えてあげる……。


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