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Se-Se-Se-Senpai, Could you lend me your Ja-Ja-Ja-Japanese-English dictionary!?
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Se-Se-Se-Senpai, Could you lend me your Ja-Ja-Ja-Japanese-English dictionary!?
「せせせ先輩、わわわ和英辞典を貸していただけないでしょうか!?」
「何スクラッチしてんだよ。ヤだよ。……絶対に嫌だよ!」
「そんなに!?」
「何スクラッチしてんだよ。ヤだよ。……絶対に嫌だよ!」
「そんなに!?」
二時限目の授業を後に控えた休み時間のことだった。
お馴染みの後輩が、珍しく本気で慌てたようすで俺の教室に滑りこんで来た。教科の重ならない他の学級の知
り合いから借りるという、忘れ物をしたときの常套手段を使うつもりだったようだが、当てにされた俺は断固と
して拒否した。
斬って捨てられた後輩は、雷に撃たれたような表情で、その場に崩れ落ちた。
お馴染みの後輩が、珍しく本気で慌てたようすで俺の教室に滑りこんで来た。教科の重ならない他の学級の知
り合いから借りるという、忘れ物をしたときの常套手段を使うつもりだったようだが、当てにされた俺は断固と
して拒否した。
斬って捨てられた後輩は、雷に撃たれたような表情で、その場に崩れ落ちた。
「がーん。なんという冷たい視線、なんという情け容赦なしのおことば……。これには、さすがの私も傷つきま
した。……スクラッチだけに」
「……割りかし余裕あるじゃねーか」
した。……スクラッチだけに」
「……割りかし余裕あるじゃねーか」
それ言いたかっただけだろ。満足したならもう帰って欲しい。
「だいたい、どのツラ提げて和英辞典貸してくれ、だ。先週の“最低携帯着信事件”のこと、俺はまだ忘れてな
いからな」
「あれですか。嫌な事件でしたね……」
「ほんとにな」
いからな」
「あれですか。嫌な事件でしたね……」
「ほんとにな」
推理小説の登場人物が、後のち犯人の動機に関わってくる過去の悲劇を仄めかすようにしみじみと語る後輩だ
ったが、犯人はお前で被害者は俺だ。※『先輩、/犬派ですか/猫派ですか/閑花ちゃん派ですか?』参照。
あんな行為を躊躇いなく実行する奴が、まさかリアルに出るとは思わなかった。ちなみに今、後輩の携帯電話
の着信音は、その件についての反省文になっている。……断っておくが、それにしても、別段激怒した俺が強要
したのではない。
ったが、犯人はお前で被害者は俺だ。※『先輩、/犬派ですか/猫派ですか/閑花ちゃん派ですか?』参照。
あんな行為を躊躇いなく実行する奴が、まさかリアルに出るとは思わなかった。ちなみに今、後輩の携帯電話
の着信音は、その件についての反省文になっている。……断っておくが、それにしても、別段激怒した俺が強要
したのではない。
「私だって、あれから猛省しましたですもん! “Trust me!”/トラスト・ミー!/我を信じよ!」
「うるせーよ!」
「うるせーよ!」
やけに流暢な発音がかえってこちらをおちょくっているようにしか聞こえず、憎たらしさ三倍増しだった。
頑なな態度で突っぱね続ける俺に、後輩は腕時計をちらりと見て「ああもぉこんな時間……」と嘘くさい涙声
で呟き、泣き落としに作戦を変更してきた。
頑なな態度で突っぱね続ける俺に、後輩は腕時計をちらりと見て「ああもぉこんな時間……」と嘘くさい涙声
で呟き、泣き落としに作戦を変更してきた。
「ねぇ先輩、後生ですからっ! お借りした和英辞典にイタズラするほど、閑花ちゃん非常識じゃありません!
性的な単語を蛍光ペンでなぞったり、みかんの油であぶりだしを仕掛けたり、カドにピ――(※自主規制)を擦
り付けてピ――(※自主規制)したり、英作したり、英和辞典と一ページずつ交互に挟んでいき引っ張っても抜け
ないようにしたりなんて、そんなこと考えてもいません!」
「いや英作はしろよ」
性的な単語を蛍光ペンでなぞったり、みかんの油であぶりだしを仕掛けたり、カドにピ――(※自主規制)を擦
り付けてピ――(※自主規制)したり、英作したり、英和辞典と一ページずつ交互に挟んでいき引っ張っても抜け
ないようにしたりなんて、そんなこと考えてもいません!」
「いや英作はしろよ」
何のための和英辞典だよ。
「貸したげたら? 先輩くん」
後輩に思わぬ助け舟が出されたのは、そんな小競り合いを三度ばかり繰り返した後のことだった。
まるっこい頭の左右にとんがりリボン、ブレザーを羽織った下にはだぶだぶベスト。ミミズクみたいな近森と
とろ。
一時期は隣の席同士にもなったし、実際に活動のディープなとこまで目撃したから、彼女のちょっと変わった
“趣味”については俺もだいたい知っている。
今回もまた、恋する乙女に味方してあれこれとお節介を焼くつもりなのだろう。
まるっこい頭の左右にとんがりリボン、ブレザーを羽織った下にはだぶだぶベスト。ミミズクみたいな近森と
とろ。
一時期は隣の席同士にもなったし、実際に活動のディープなとこまで目撃したから、彼女のちょっと変わった
“趣味”については俺もだいたい知っている。
今回もまた、恋する乙女に味方してあれこれとお節介を焼くつもりなのだろう。
「近森先輩……」
近森さんは不安げな後輩に「まかせて」と囁いて、お姉さんぶったウインク。し損ねて一瞬、もう片方の瞼ま
で閉じてしまったのを俺は見逃さなかった。……そんなことはどうでもいいか。
果たして近森さんは、使命感に燃える熱い瞳で、俺の前に立ちはだかったのだった。ナリはそう大きくもない
が、ある種、聳え立つ巨熊のような威圧感があった。
で閉じてしまったのを俺は見逃さなかった。……そんなことはどうでもいいか。
果たして近森さんは、使命感に燃える熱い瞳で、俺の前に立ちはだかったのだった。ナリはそう大きくもない
が、ある種、聳え立つ巨熊のような威圧感があった。
「先輩くん、ここは一度自分の気持ちを整理してみようよ」
訳知り顔で人差し指なんぞ立ててみせる近森さん。相変わらず俺の名前を覚える気はないらしい。
「先輩くんは貸した英和辞典に『うへへ好きな子のリコーダーをチュッパチュッパ!』的なイタズラをされるの
がイヤなだけだよね?」
がイヤなだけだよね?」
細かい指摘をするなら、英和辞典ではなく和英辞典なんだが、……まあ、そうだ。知り合いが困っているとい
うのなら、貸すのだって吝かではない。
だが、この後輩に限っては、その行為はいろいろな意味で“危険”だ。……最低な前科もあるし。
うのなら、貸すのだって吝かではない。
だが、この後輩に限っては、その行為はいろいろな意味で“危険”だ。……最低な前科もあるし。
「わ、私そんなことしませんっ! 確かにこれが一週間前なら可愛らしいイタズラをちょこちょこやって、何も
知らない先輩を見て影でほくそ笑んでいたかもしれませんが、少なくとも謹慎中の今週だけは我慢の子です!」
「どんだけたち悪いんだよお前」
知らない先輩を見て影でほくそ笑んでいたかもしれませんが、少なくとも謹慎中の今週だけは我慢の子です!」
「どんだけたち悪いんだよお前」
涙ながらに訴えるロクデナシに、しかし近森さんは何ひとつ疑問を抱かないようすでうんうんと頷いた。
「だったら何とかなるよ、ゼッタイ大丈夫だよ! 大好きな人との約束だもん、女の子が守らないはずないよ!」
「む……」
「む……」
そうまで力説されると、女子に抱いている幻想も手伝って、信じてもいいような気がしてくる。後輩はむしろ
そういう“約束事”により強くこだわるタイプかもしれない。
そういう“約束事”により強くこだわるタイプかもしれない。
俺の揺らぎを察して、近森さんが畳み掛けるように身を乗り出す。ちょっと、いやかなり怖い。
「あのね先輩くん。英語の授業って恋愛にも通じるって、あたし思うんだ」
「は……?」
「は……?」
それから彼女は、まるで少女漫画のヒロインみたいに、胸にふたつの手を重ねてひとりで勝手に暖かな気持ち
になってから、陶然と脈絡のない持論を展開。
になってから、陶然と脈絡のない持論を展開。
「自分の想いを伝えられるように、相手の気持ちを分かってあげられるように、そのためにどうやるのが一番い
いのかをいつだって思いやるの」
いのかをいつだって思いやるの」
「だから何なんだ」と俺がツッコむより早く、近森さんはクワッと目を見開き、変装後を思わせる奇態なポー
ズを見せつけて叫んだ。
ズを見せつけて叫んだ。
「つまり、ちゃんと英語の授業を受けることが、後輩ちゃんをさらに魅力的な女の子にするであろうということ
は、たぶん間違いないと推測されるッ!!」
は、たぶん間違いないと推測されるッ!!」
……?
こいつは話をややこしくする天才だと思う。視界の端では、後輩が「ざっつらいと!」とガッツポーズ。
こいつは話をややこしくする天才だと思う。視界の端では、後輩が「ざっつらいと!」とガッツポーズ。
「気持ち、分かってやれよ」
それで言いたいことは全て言い終わったのか、去り際に妙に男前に俺の肩を叩いてから、近森ととろは廊下側
の席に戻っていった。お前は何なんだ。
の席に戻っていった。お前は何なんだ。
「先輩、和英辞典を貸してくださいませんか」
ぐだぐだになった空気の中、後輩が改めて俺の対面に立って頭を下げる。
(なんかもう、どうでもいいや……)
何が何だか分からないが、近森さんの介入を経て、いつのまにか後輩に対する意地みたいなものがへなへなに
萎えていることに、そのとき俺は気づいてしまった。あのどうしようもなく硬化していた気持ちを、今はもう思
い出せない。
さすがは愛の戦士カップルウォッチャーといったところか。俺たちカップルじゃないけど。
俺は観念して、鞄から和英辞典を引っ張り出す。この手に掛かるずしりと重さが、彼女のいう“思いやり”の
証しなのだろうか。感化されたわけではないが、ふとそんなことを考えた。
萎えていることに、そのとき俺は気づいてしまった。あのどうしようもなく硬化していた気持ちを、今はもう思
い出せない。
さすがは愛の戦士カップルウォッチャーといったところか。俺たちカップルじゃないけど。
俺は観念して、鞄から和英辞典を引っ張り出す。この手に掛かるずしりと重さが、彼女のいう“思いやり”の
証しなのだろうか。感化されたわけではないが、ふとそんなことを考えた。
「……今回だけだ」
不機嫌を装って重みを突き出す。
後輩は、ぱっと表情を明るくして、うやうやしく和英辞典を受け取った。
後輩は、ぱっと表情を明るくして、うやうやしく和英辞典を受け取った。
「ありがとうございます! ……わぁい! だから先輩大好き!」
「ばか、声がでかい!」
「ばか、声がでかい!」
飛びついてくる後輩を躱しながら何気なく視線をやると、近森さんがお互いの健闘を讃えるように親指を立て
ていた。……そんなことをされても困るけれど。
俺は返答代わりに少しだけ肩を竦めてみせた。
ていた。……そんなことをされても困るけれど。
俺は返答代わりに少しだけ肩を竦めてみせた。
おわり
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