先輩とモホロビチッチ不連続面(前編)
「先輩、スイカ割りしましょう!」
「……ここで?」
「おおっとスイカ割りと聞いちゃ、黙っちゃいられねえぜ!」
「……ここで?」
「おおっとスイカ割りと聞いちゃ、黙っちゃいられねえぜ!」
夕方のくせに白昼としか視えない光の強さに目を細めながら学園の正面玄関をくぐったところ、いつもの後輩
といつもの後輩ではない後輩たちが、スイカをモーニングスターのようにブン回しながら襲来した。危なっ。
といつもの後輩ではない後輩たちが、スイカをモーニングスターのようにブン回しながら襲来した。危なっ。
「スイカって地球に似ていると思いません? 緑の大地、群青の海、赤い溶岩、そして蠢くうざい種! すごい
ですねガイア理論ですね宇宙の神秘を感じますね。……破壊しましょう! そしてモホロビチッチ不連続面まで
食べつくしちゃいましょう!」
「お!? 何その偏差値高そうな台詞っ!!」
「地球に喩えた意味あった?」
ですねガイア理論ですね宇宙の神秘を感じますね。……破壊しましょう! そしてモホロビチッチ不連続面まで
食べつくしちゃいましょう!」
「お!? 何その偏差値高そうな台詞っ!!」
「地球に喩えた意味あった?」
一人でも手に負えないのに、今日なんか同じくらいやかましい久遠荵と二人掛かりである。嫌がらせか。
「ばうわう、ザッキー先輩!」
「……よう、久遠」
「……よう、久遠」
何それ知らない。わんわん王国の公用語ですか? 久遠は相変わらず仔犬みたいな落ち着きのなさ、もとい元
気のよさで駆け回っている。
気のよさで駆け回っている。
「こんにちは、先崎先輩」
「こんにちは」
「私もがんばってウォラメロ、割っちゃいます」
「発音!!」
「こんにちは」
「私もがんばってウォラメロ、割っちゃいます」
「発音!!」
……念のため確認しておくが、ウォラメロとはウォーターメロン=スイカのことである。
烏揚羽蝶のような黒髪の黒咲あかねに会釈を返す。久遠と同じ演劇部で、よくつるんでいる子である。初めは
綺麗な長い髪のせいで深窓の令嬢めいた印象だったが、実際に会話してみるとこれがけっこう一筋縄ではいかな
い感じだった。
烏揚羽蝶のような黒髪の黒咲あかねに会釈を返す。久遠と同じ演劇部で、よくつるんでいる子である。初めは
綺麗な長い髪のせいで深窓の令嬢めいた印象だったが、実際に会話してみるとこれがけっこう一筋縄ではいかな
い感じだった。
「先輩先輩、あかねちゃんの髪に見惚れている場合じゃないですよ。長いのがお好きなら伸ばしますし。そんな
ことよりスイカですよ」
ことよりスイカですよ」
後輩がようよう抱えたスイカを平手でベシベシ叩く。なんか味が落ちそうなのでやめてもらいたい。
「ていうか……」
俺は今更だがバカみたいな大玉スイカを見て慄然とした。
「でっか!? ……絶対ぬるくなってて不味いし、割ってもこんな食えないだろ」
「調理実習室の冷蔵庫借りました」
「私が貸しました」
「調理実習室の冷蔵庫借りました」
「私が貸しました」
突然の声に振り返ると、白壁やもり教諭が音もなく背後に立っていた。この夏で一番怖かった。白壁教諭は胸
を張って続けた。
を張って続けた。
「何故なら、冷たくないスイカはスイカでないからです」
「白壁先生っ、ピントのズレた言い訳ありがとうございます!」
「それに、スイカ割るってあちこちで宣伝してきたから、きっと処理係も集まります」
「白壁先生っ、ピントのズレた言い訳ありがとうございます!」
「それに、スイカ割るってあちこちで宣伝してきたから、きっと処理係も集まります」
もはや割ることにしか興味がなさそうな白壁教諭は、とても家庭科教諭とは思えなかった。
どうせなら「スイカは夏の水分補給にいいんですよ」とかそういう解説をして欲しい。
どうせなら「スイカは夏の水分補給にいいんですよ」とかそういう解説をして欲しい。
「ところで西瓜割りって漢字で書くとなんかエロい……」
「わう?」
「よく分からんが何だかすごく久遠の教育に悪い感じだから黙っとけ」
「ひどいです! 私はどうでもいいとおっしゃるのですかっ!?」
「お前がエロ言ったんだろ!」
「わう?」
「よく分からんが何だかすごく久遠の教育に悪い感じだから黙っとけ」
「ひどいです! 私はどうでもいいとおっしゃるのですかっ!?」
「お前がエロ言ったんだろ!」
後輩がむくれて頬を膨らませた。
「いつもそう……。カマトトぶっている女ばかり天然とか純粋とか持て囃される……ぶぅ……」
「最低限、お下劣な頭の中身をお外に出力しない努力をしてから言えよ?」
「そこまでっ! 夫婦喧嘩はわんこも食わないっ」
「誰が夫婦だ不吉なこと言うな!」
「さっすが荵ちゃん分かってる!」
「最低限、お下劣な頭の中身をお外に出力しない努力をしてから言えよ?」
「そこまでっ! 夫婦喧嘩はわんこも食わないっ」
「誰が夫婦だ不吉なこと言うな!」
「さっすが荵ちゃん分かってる!」
後輩の周囲は今日も混沌としていた。……巻き込まれて毎回その一部になってしまっている俺はもう何も言え
ない。フェードアウトする方法を教えてくれる親切な人か、身代わりになってくれる親切な人か、俺に優しくし
てくれる親切な人を熱烈希望だ。
ない。フェードアウトする方法を教えてくれる親切な人か、身代わりになってくれる親切な人か、俺に優しくし
てくれる親切な人を熱烈希望だ。
「ご婚約おめでとう」
たぶん親切な人ではない黒鉄懐が、目尻の嘘の涙を拭いながら肩を叩いてきた。金ぴかの頭髪が第二の太陽と
化し、体感温度をじりじり上げてくる。何て奴だ。
化し、体感温度をじりじり上げてくる。何て奴だ。
「あの小さかったシュンが……変わり果てた姿になって……」
「そこは立派にしておけ」
「そこは立派にしておけ」
だいたい黒鉄は俺の幼少期など知るまい。会ったのは今年になってからだ。
後輩が何とも言い難い顔をして、「あっ」と思いついたように久遠を追って脱兎と駆け出した。黒鉄のような
派手なタイプは苦手らしく、あまり近づきたがらない。
派手なタイプは苦手らしく、あまり近づきたがらない。
「押忍です先輩、兄がいつもお世話になっております。……ほら、行くよ、兄貴っ!」
妹さんの黒鉄亜子が慌ただしくやって来て、慌ただしくお辞儀して、慌ただしく兄貴の耳を引っ張ろうとして
背が足りず摘み損ね、慌ただしく兄貴の手首を掴んで去っていった。「えっ、ちょ、スイカがオレに食べられた
がってんだけど……?」「ちょっと離れるだけ。兄貴が先輩といると……はかどりすぎるのよ」「何が?」「魅
紗が」「ああ……」
背が足りず摘み損ね、慌ただしく兄貴の手首を掴んで去っていった。「えっ、ちょ、スイカがオレに食べられた
がってんだけど……?」「ちょっと離れるだけ。兄貴が先輩といると……はかどりすぎるのよ」「何が?」「魅
紗が」「ああ……」
理解しがたい会話をしながら遠ざかっていく黒鉄兄妹をボケーっと見送る。
いつの間にか、正面玄関前の人工密度がえらいことになっていた。見知った顔、見知らぬ顔、みんなそんなに
スイカが好きなのか、暇で仕方がないのか。あれよあれよと参加することになっている俺に言われたくはないだ
ろうケド。
いつの間にか、正面玄関前の人工密度がえらいことになっていた。見知った顔、見知らぬ顔、みんなそんなに
スイカが好きなのか、暇で仕方がないのか。あれよあれよと参加することになっている俺に言われたくはないだ
ろうケド。
「相変わらず、サキザキの周囲は混沌としてるね」
黒鉄兄妹と入れ替わりに声を掛けて来たのは、隣のクラスのサイトウだった。聞き捨てならないことを言う。
どう見ても核になっているのは俺ではなく後輩だと思うが。
どう見ても核になっているのは俺ではなく後輩だと思うが。
「スイカを割るって聞いて。せっかくだからご相伴にあずかろうかと」
「スイカ好きなのか」
「夏っぽいから」
「スイカ好きなのか」
「夏っぽいから」
……サイトウの考えることはよく分からん。俺が言うのも何だが、社交的に見えて、教室の隅からクラスを見
渡してフッと笑っているような斜に構えた感じもあり、妙に子供っぽいところもあるのだ。
昆虫のサナギの中でそれまで幼虫だったものは一度全てドロドロに溶けてから再構成されるというが、人間も
同じで、高校生くらいの年齢ではまだ完全に固まりきっていないのかもしれない。肉体も精神も毎日のように更
新され、あるいはその日の気分で見える世界が変わりさえする。
サイトウを見ていると、何となくそんなことを考える。そういう奴である。
渡してフッと笑っているような斜に構えた感じもあり、妙に子供っぽいところもあるのだ。
昆虫のサナギの中でそれまで幼虫だったものは一度全てドロドロに溶けてから再構成されるというが、人間も
同じで、高校生くらいの年齢ではまだ完全に固まりきっていないのかもしれない。肉体も精神も毎日のように更
新され、あるいはその日の気分で見える世界が変わりさえする。
サイトウを見ていると、何となくそんなことを考える。そういう奴である。
「あーっ、サイトウ先輩じゃんっ!」
サイトウを発見して飛んできたのは小柄な鷲ヶ谷和穂。フリーダムイーグルというお察しなあだ名で知る人ぞ
知る騒動屋だった。
知る騒動屋だった。
「今日もトロッコ持ってる!? また占ってよボクのこと!」
「タロットだろ」
「タロットだろ」
「芥川カナ?」「そうに違いないのだわ!」「“鼻”……一体何の暗喩なんだ……?」「決まってますよそん
なの!」 ……歴史研究会だったかの面子と大型魅紗の濃ゆい意味深トークをBGMに、鷲ヶ谷は過干渉の父親
を見るような目で俺を見た。背が低いので見下しの角度を作るために必死に仰け反っているのがいっそ微笑まし
い。
なの!」 ……歴史研究会だったかの面子と大型魅紗の濃ゆい意味深トークをBGMに、鷲ヶ谷は過干渉の父親
を見るような目で俺を見た。背が低いので見下しの角度を作るために必死に仰け反っているのがいっそ微笑まし
い。
クソッ何だこいつら。俺をボケの波状攻撃で殺す気か? “フリーダムイーグル”鷲ヶ谷和穂、“後輩”後鬼
閑花、“わんわん王”久遠荵。女三人寄ればというやつで、若さを失いつつある俺では長期戦では分が悪い。
閑花、“わんわん王”久遠荵。女三人寄ればというやつで、若さを失いつつある俺では長期戦では分が悪い。
箸休めではないが、距離感が一定でまだ落ち着いて話せるサイトウに逃げる。
「しかし、サイトウはタロットカードなんてやってたんだな」
意外と言う意味ではなく、身近では初めて会った。あまつさえカードセットを学校に持ってくるまでする人は
かなりの珍種という気がする。
かなりの珍種という気がする。
「あそびだけどね」
「ほう。俺は卓上同好会部長の加藤だが、タロットカードなら我々の活動内容とも合わないことないな」
「同じく副部長の田中。サイトウくん、卓上同好会に入らないか? 我々は君のような戦士を待っていた!」
「今なら即レギュラーだぜ!?」
「ほう。俺は卓上同好会部長の加藤だが、タロットカードなら我々の活動内容とも合わないことないな」
「同じく副部長の田中。サイトウくん、卓上同好会に入らないか? 我々は君のような戦士を待っていた!」
「今なら即レギュラーだぜ!?」
俺とサイトウの会話は弾む前にシャボン玉のように弾けて消えた。春からずっと新入会員を募集していたらし
い卓上同好会の上級生がどこからともなく現れ、馴れ馴れしくサイトウに絡んでいく。
い卓上同好会の上級生がどこからともなく現れ、馴れ馴れしくサイトウに絡んでいく。
「入ってくれるんなら俺たちの分のスイカもあげるぜ!?」
「俺はあげないぜ? 田中のはあげるぜ?」
「俺が勝負で加藤から巻き上げていれば同じだぜ?」
「……こういう卓上的な発想も身に付くから将来的にもお役立ちだし、今なら即レギュラーだし、これもう入ら
なきゃ嘘だぜ?」
「俺はあげないぜ? 田中のはあげるぜ?」
「俺が勝負で加藤から巻き上げていれば同じだぜ?」
「……こういう卓上的な発想も身に付くから将来的にもお役立ちだし、今なら即レギュラーだし、これもう入ら
なきゃ嘘だぜ?」
この人たち三年なのに良いのかなぁ受験とか……と思うが、口には出さない。俺だって突っ込み先を選ぶくら
いできるのだ。いやほんとに。
いできるのだ。いやほんとに。
「ちょっと勧誘なら後にしてよっ! サイトウ先輩はボクと先約があるんだっ!」
「まあ、そういうことなんで」
「まあ、そういうことなんで」
鷲ヶ谷が両腕を猛禽類の翼のように広げ、怪鳥音を発して卓上同好会を威嚇。サイトウもやかましい先輩より
はやかましくも可愛い後輩のほうがマシと思ったか乗っかる。「ぐわっやられた!」「やはり卓の上でなければ
力が出ないか」 ノリのいい二人が体をくねらせながら退場。こわい。
はやかましくも可愛い後輩のほうがマシと思ったか乗っかる。「ぐわっやられた!」「やはり卓の上でなければ
力が出ないか」 ノリのいい二人が体をくねらせながら退場。こわい。
「並べるからちょっと待って」
サイトウが準備万端用意していたマットの上にタロットカードを展開。タロット業界ではスプレッドというの
だったか。
だったか。
「今日こそ【世界】のカード当てるんだっ」
……そういうゲーム的な物ではまったくなかったと思うが、まあ鷲ヶ谷楽しそうだからどうでもいいや。わざ
わざまた顰蹙を買いにいくこともないだろう。
何となく、よく鷲ヶ谷と一緒にいる小鳥遊雄一郎を探す。鷲ヶ谷の隣だとまず鷲ヶ谷がやたら目立つし背の高
低差がちょっと面白いためかすぐ分かるのだが、単品ではウォーリーと化す。
わざまた顰蹙を買いにいくこともないだろう。
何となく、よく鷲ヶ谷と一緒にいる小鳥遊雄一郎を探す。鷲ヶ谷の隣だとまず鷲ヶ谷がやたら目立つし背の高
低差がちょっと面白いためかすぐ分かるのだが、単品ではウォーリーと化す。
少々厳つい顔をしたウォーリーは、花壇のそばで二年の近森さんと歓談中だった。近森さんの瞳は好奇心に爛
らんと輝いている。
らんと輝いている。
「どうなのどうなの?」
「別にどうも……」
「お似合いだと思うけどなぁ! どっちも鳥類だしね!」
「別にどうも……」
「お似合いだと思うけどなぁ! どっちも鳥類だしね!」
これはあれか、鷲ヶ谷との関係について質問責めにされてるのか。俺のクラスメイトでもある近森ととろさん
は、好いた惚れた切った張ったの恋愛沙汰に目がないのだ。……たまーにああやって焚き付けたりもする。
は、好いた惚れた切った張ったの恋愛沙汰に目がないのだ。……たまーにああやって焚き付けたりもする。
「私と先輩もお似合いだと思います。どっちも人類ですしね」
「どんな台詞でも手当たり次第に拾ってテキトーに改変して使うお前の執念と応用力はある意味すごいと思う」
「どんな台詞でも手当たり次第に拾ってテキトーに改変して使うお前の執念と応用力はある意味すごいと思う」
俺の顔を見上げてはにかんでみせる後輩を躱す。
相手が俺でなければ通用することもあっただろうにな。つくづく残念な子ではある。
相手が俺でなければ通用することもあっただろうにな。つくづく残念な子ではある。
『いよよーしッ! そろそろスイカ割り大会、始めますよ! 司会はワタクシッ、報道部部員、B72でお送り
しますっ!!』
しますっ!!』
校庭から重量挙げ部の筋肉愛好家たちの手で神輿のように運ばれてきた朝礼台。その上で、マイクを握った女
子が拳を突き上げる。
子が拳を突き上げる。
『アタッカーになりたい人は、ちゃんと名前書いたかな? 読める字でお願いね!』
形式としては、参加希望者が名前を書いたくじを、司会者がボックスから引き、その順番でスイカにアタック
を掛けていく。
この実際にスイカを割るという行為に挑む者を“アタッカー”と呼ぶ。
アタッカーはアイマスクで目隠しをした上で、先端を地に突いた木製バットの尻に額を当てたまま十周以上回
転する。そうして方向感覚を狂わせた後、規定位置からスタート。距離にして十五メートルほどだろうか。
アタッカーに対する支援及び妨害は自由参加。何人掛かりでも構わない。日頃の行い、人望が物を言う競技か
もしれない。ただし、認められる手段は声掛けのみとされていた。
を掛けていく。
この実際にスイカを割るという行為に挑む者を“アタッカー”と呼ぶ。
アタッカーはアイマスクで目隠しをした上で、先端を地に突いた木製バットの尻に額を当てたまま十周以上回
転する。そうして方向感覚を狂わせた後、規定位置からスタート。距離にして十五メートルほどだろうか。
アタッカーに対する支援及び妨害は自由参加。何人掛かりでも構わない。日頃の行い、人望が物を言う競技か
もしれない。ただし、認められる手段は声掛けのみとされていた。
『つーまーりー! アタッカーのカラダに触ったり、スイカをずらしたり、スイカを包丁で切り分け始めたり、
スイカをドーム状の鉄板で覆ったり、バットをスポーツチャンバラのやつにすり替えたり、まきびしをばらまい
たり、バナナの皮を敷き詰めたりしては、ぜーったいにっ、いけません! 過去いました』
「違反者は、スイカにありつけないどころか、パワーオブザゴリラなお仕置きを受けてもらうからな!!」
スイカをドーム状の鉄板で覆ったり、バットをスポーツチャンバラのやつにすり替えたり、まきびしをばらまい
たり、バナナの皮を敷き詰めたりしては、ぜーったいにっ、いけません! 過去いました』
「違反者は、スイカにありつけないどころか、パワーオブザゴリラなお仕置きを受けてもらうからな!!」
白壁やもり教諭がせいいっぱいの威厳を絞り出して注意し、真田基次郎教諭が不敵に笑いながら拳を鳴らす。
マイクを使わないのにさすがの大声だ。あれで美術教師というのだから世の中分からない。
マイクを使わないのにさすがの大声だ。あれで美術教師というのだから世の中分からない。
『さぁて!! さぁてさぁて!! スイカ割り大会、栄えある第一の刺客を発表しますよ――!?』
司会者報道部B72のアオリと、軽音部のドラムロールが、場のテンションを最高潮に持っていく。地を揺る
がすような歓声の中、誰かがごくりと唾を呑む。
たかだかスイカ割りにえらい騒ぎだと正直自分の中のつまらない部分が思うが、よくよく考えるとこんなイベ
ントはもう一生のうちでもそうそうあるものではないかもしれない。
がすような歓声の中、誰かがごくりと唾を呑む。
たかだかスイカ割りにえらい騒ぎだと正直自分の中のつまらない部分が思うが、よくよく考えるとこんなイベ
ントはもう一生のうちでもそうそうあるものではないかもしれない。
――夏っぽいから
そう答えたサイトウは、あるいは俺よりもよほどまともな感性をしているのかもしれなかった。
ちょっと気になりだしたじゃないか。
この二度とはないかもしれない青春のひと時、その口火を切るのが一体誰なのか――
ちょっと気になりだしたじゃないか。
この二度とはないかもしれない青春のひと時、その口火を切るのが一体誰なのか――
つづく
前:ダブルストップ・あなざー 次:記憶の中の茶道部