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ドラーモン作大長編 その9 - (2006/12/28 (木) 10:52:56) のソース
サイユウシティ・ポケモンリーグ。 リーグ受付広場にいた人たちは全員床に倒れている。 どうやらマヒしているようだ。 その中を一人の少年と四人の女性が歩いていく。 「バッジを……持たぬ者が……入ることは許……」 受付のそんな警告も無視して少年達は奥に入っていく。 階段を上がると、そこには奇妙な髪型をした男が立っていた。 「いささか礼を欠いた挑戦者のようだな」 そう、彼がポケモンリーグ四天王のカゲツだ。 少年が一礼をする。 「僕は出木杉といいます」 カゲツはその面子を見て驚愕する。 「君たちは……ジムリーダーの君たちがなぜ!!」 ツツジが言い放つ。 「なぜって……私達はあなた方より強いからここにいるべきだと思いまして」 アスナが一歩踏み出す。 「とりあえずコイツは私の獲物ね」 アスナはそう言いながらバクフーンを繰り出した。 カゲツもグラエナを出して応戦する。 『炎タイプのジムリーダー、しかも手持ちはジムにいた頃と違うようだな』 苦戦は免れないが、四天王として彼らの横暴を許すわけにもいかないのだ。 しかしその思いとは裏腹に、バクフーンの大文字がグラエナの身を焦がしていく。 『フヨウ、プリム、ゲンジ……すまん、俺はダメらしい』 ---- 注:鬼畜出木杉 ポケモンリーグ、第3の間。 氷使いのプリムは敵を待ち続けていた。 不法な挑戦者の侵入報告があってから小一時間、まだここには現れない。 「カゲツさんやフヨウさんが頑張っているのかしら」 もしかしたら撃退できたのかもしれない。 リーグ四天王である我々がバッジも集められないトレーナーに負けることは有り得ないはずだ。 「ここですね、3人目がいる場所は」 現れたのは女、しかも見覚えのある顔だ。 「あなたは……カナズミのジムリーダー……」 そう、確かツツジという名だ。 その後からも次々と見覚えのある顔が現れる。 「フエンとヒワマキのジムリーダーまで……」 まるでジムリーダーの反乱のようだ。 そして最後に現れたのは少年と見知らぬ女、そして…… 『あれは、まさかっ!』 青装束の女がひきずっているのはフヨウだ。 しかしその体を包んでいた布切れは無く、健康的に焼けた肌は白い汚物で塗れ、なすがままにされてもフヨウの目は虚空を彷徨っている。 「まさか、フヨウさんを!」 プリムも女性だ、フヨウのされた酷い仕打ちは容易に推測できる。 「すいません、バトル自体は5分とかからず終わったんですが」 少年が悪怯れることもなく答える。 ---- 注:鬼畜出木杉 プリムは怒りに身を震わせた。 このかわいい顔をした少年がフヨウを一時間近く凌辱し続けたのだ。 「なんと非道な振舞い、私が成敗してくれましょう!」 イズミが笑う。 「出木杉様、なんかオバさんが怒り狂ってるよ」 「えー、オバさんにはあんまり興味ないや。勝手にやってよ」 出木杉はフヨウの股ぐらを弄びながら答える。 それを聞いたツツジがバトルの舞台に上がる。 「出木杉様、こんな年増でも遊び道具にはなりますわよ」 ツツジがバンギラスを繰り出す。 「ジムリーダーとして、いや女として恥を知りなさい!」 プリムはオニゴーリで戦いに挑む。 しかしプリムの奮戦も虚しく、ツツジの前になすすべもなかった。 岩雪崩の流れ岩に当たり、足を挫いたプリムはその場に座り込んでいる。 その目の前を少年と四人の女性が通り過ぎていく。 無残な姿で引きずられていくフヨウを、プリムはただ見過ごすしかなかった。 フヨウが引きずられた跡がカタツムリの通った後のようにぬめっている。 純潔を失った証のような跡を見ながらプリムは泣き崩れる。 「ごめんなさい、ごめんなさい、フヨウさん……」 ---- ミクリは一人、待ち続けていた。 侵入者はおそらくルネで話題になっていたデキスギという男だろう。 マグマ団とアクア団を壊滅させた力量はおそらく四天王、そして自分すら圧倒しているだろう。 「さて、どんな少年なのか……」 その答えはすぐに分かった。 出木杉本人が人を引きつれ、この場に現れたからである。 『ゲンジ殿は敗北したか。付き添いはジムリーダー達、なのか』 彼女等の目に見覚えがある。 ミクリも女性ファンは多いからわかる、あれは憧れの人物に盲信するような目だ。 「ふ、フヨウ君…ひどい……」 引きずられてきたフヨウは散々嬲られた姿を晒している。 『悪のカリスマ、というわけか……』 「こんにちは、僕は出木杉といいます」 「ああ、噂は聞いているよ。君の友達にも会ったさ」 出木杉は「野比君かな、それとも剛田君かな?」と推測している。 「不法な挑戦とはいえ、私はチャンピオンとしてここで挑戦を受けなければならない」 「じゃあさっさと負けて帰ってくださいよ、あなたダイゴさんより弱いんだから」 前チャンピオンと比べられてミクリの心中も穏やかではない。 「そのような口を聞けなくしてやろう!」 ---- 「いけ!ホエルオー」 ミクリが繰り出したホエルオー、その威容が出木杉を威圧する。 しかし出木杉は眉一つ動かさない。 「仕方ないな、僕の本気を見せてあげますよ」 ツツジ達四人も本気の出木杉は見たことがない。 全員が見守る中、出木杉がボールを投げた。 現れたのは緑と赤のツートンカラーのポケモン。 「そ、それはポケモン……なのか!」 「デオキシスというんですよ、チャンピオンなのに知らないんですか?」 デオキシスが10万ボルトでホエルオーを一撃のもとに葬る。 「な、ホエルオーがただの一撃……」 「どうしました?次のポケモンを出してくださいよ」 ミクリはドククラゲ、ルンパッパと繰り出すがサイコキネシスの前になすすべがない。 「こいつならどうだ!」 ミクリのナマズンに対して10万ボルトで攻撃するデオキシス。 しかしナマズンには効果がない。 「相性の事すら知らないのか、反撃のじしんだ!」 地震がデオキシスを襲う。 しかし出木杉はニヤニヤと笑っている。 「何がおかしい……な、何いっ!」 デオキシスの受けた傷が治っていく。 『まさか、じこさいせいまで使えるのか……』 出木杉はわざとダメージを受け、これみよがしに自己再生を使ってみせたのだ。 その瞬間、ミクリは自分に勝機がないことを悟った。 ---- ポケモンリーグ殿堂。 出木杉は満足気に自分の名を殿堂入りさせた。 部屋から出ると、四人の女性が膝を落としている。 「さてフラグも立てたことだし、君たちには飛んでもらうよ」 各々にいくつかの道具を渡し、彼女達はその場を去っていった。 入れ違いにマユミがやってくる。 「出木杉様、デオキシスはどうでした?」 「ああ、悪くないよ。僕が育てたあのデオキシスだ」 対ミクリ用に10万ボルトを覚えさせたが、特にその必要もなかったようだ。 「ここにいた人間は全員連れ出しました。ポケモンリーグは私達のものです」 「ああ、これで僕はチャンピオンとしてアイツらを迎えることになる」 それまでは玩具で暇をつぶそう。 玩具とは殿堂に閉じ込めてあるフヨウである。 「そうだ、もう少し玩具を増やそう。ちょっと外出してくるよ」 どこに行くかは分からないが、マユミは楽しそうに部屋を後にする出木杉を見送った。 ポケモンリーグ会場はすべての通信が寸断され、その周りは何匹ものポケモンに守護される「魔の城」と化してしまったことをドラえもん達はまだ知らない…… ---- トクサネシティ。 前日、生死の境をさ迷っていたのび太はなんとか持ちなおした。 ドラえもんは感心する。 「それにしてもポケモン世界の医学はすごい発達してるんだなぁ」 瀕死のポケモンを5秒ほどで完治させる世界である。 病気ではない外傷は比較的簡単に完治してしまう世界なのだ。 「細胞を電子データ化して再構築する、ポケモン転送技術と同じものらしいね」 しずかは分かっていないようだが、とりあえずのび太が無事だということは分かったようだ。 面会が許可され、ドラえもんとしずかは病室に入る。 「やあ、とりあえず助かったよ」 のび太がベッドに腰掛けながら応対する。 「よかった、本当によかった」 ドラえもんは目に涙を浮かべる。 「骨折のほうは今夜の治療で完治するってさ」 ギプスをしている右腕が痛々しい。 「それにしても、誰がのび太さんをこんな目にあわせたの?」 しずかの問いに、のび太はベッドのシーツを握り締める。 「ナギさん……ナギさんにやられたんだ……」 「そんな馬鹿な!」 ドラえもんもしずかも、ナギの人柄はよく分かってるつもりだ。 しかし被害者ののび太が嘘を言うとも思えない。 「どういうことなの?」 「出木杉の奴と関係あるような事を言っていたんだけど」 ドラえもんは考えを巡らせる。 出木杉が関係あるとすれば、おそらくプレーヤーの干渉によってゲーム世界に変化が起き始めているに違いない。 ---- 「このままでは大変なことになりそうだ」 深刻なドラえもんの顔にのび太としずかも不安そうだ。 「ボクは今からもしもボックスのリセットをかけてくるよ。こんな危険な世界に皆を置いてはおけない!」 ドラえもんは病室を駆け出していった。 その日の夜。 治療により骨折を完治させたのび太と付き添いのしずかの二人の前にドラえもんが帰ってきた。 しかし、その口から出た事実は二人の想像を遥かに越えていた。 「もしもボックスが……壊されてた……」 「な、なんだってっ!」 ドラえもんが深刻な顔で告げる。 「ボックスが壊れていては元の世界に戻せないんだ」 しずかが心配そうに話に聞き入る。 「それに、もっと重要な問題があるんだ……」 「元に戻せないことより重要なことってなんなのさ!」 のび太の問いにドラえもんが重い口を開く。 「もしもボックスの事を知ってるのはボクらだけだ。ということは……」 「私たちの中に壊した犯人がいるってことなの?」 しずかの問いに頷くドラえもん。 「ボクとしずかちゃんはずっと一緒に旅をしていた。のび太くんも壊すような真似はしないだろう」 のび太がごくりと唾を飲む。 「じゃあジャイアン、スネ夫、出木杉の中の誰かが……」 三人を重い空気が支配する。 ---- 120番道路、古代塚。 一人の女がその塚の前に立っていた。 「ここが三匹目の居場所ね……」 古代塚の中央に内部への入り口がある。 それはつい最近崩され、現れたものだ。 中に入った女…ツツジは小部屋の中央に立ち、レアコイルを呼び出した。 このポケモンはツツジのものではないが、この部屋の仕掛けを解除するのに必要なものだ。 「フラッシュ!」 レアコイルが激しく光り輝くと、小部屋の奥の壁がガラガラと音を立てて崩れ落ちる。 レアコイルを従え、ぽっかりと開いた横穴を進んでいくと、大きな部屋に出た。 中央に立たずむ巨大な鋼の塊。 「封印されし伝説のポケモン、レジスチル……」 その塊の真ん中にあるいくつもの点が光り、巨大な体がゆっくりと動きだす。 ツツジは舌を出す。 「あいにく、アンタと戦うつもりはないわ」 懐から出したのはマスターボール。 「アタシの物になりなさい!」 マスターボールが放られ、レジスチルの巨体を吸い込む。 「ふふふ……これで3体の封印ポケモンは私の物……」 懐からマスターボールを取出し、放る。 現れたのはレジアイスとレジロック。 「すごい、すごいわ!」 ツツジはその威容に囲まれて、高らかに笑い続けた