ドラえもん・のび太のポケモンストーリー@wiki

トレーナー その1

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No.001『Fで始まるやつ』


「野比ぃ!
廊下に立っとれ!!」
先生の罵声が学校中に鳴り響き、僕はバケツを持たされ、教室の外に叩き出される。
理由は簡単。テストで0点をとったからだ。

「またのび太が立たされた。
やーい、やーい立たされのび太~♪」
ジャイアンが僕を馬鹿にする。
続けてスネ夫が、僕に追い討ちをかける。
「いつもの事だよ。
いっそのこと、幼稚園からやり直せばいいのにね。」
教室から、ドッと皆の僕を嘲る様な笑い声がする。

確かに、廊下に立たされ屈辱を味わうのはいつもの事だ。
だが、いつもの事といって馴れるものでもない。
正直苦しい。

「あ~あ。この世にテストや学校が無ければなあ」
僕はそう呟き、いつもの様に六時間目の授業を廊下で過ごす。

そしていつもの様に六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
僕はこの毎日の繰り返しに嫌気がさしていた。



「ただいま。」
学校から帰った僕は、真っ直ぐ部屋に向かい横になった。

ドラえもんが居ない事は分かっている。
最近新しい猫との付き合いが出来たらしい。

「あ~あ。変わらない日々……。嫌いじゃないけどなんだか嫌だなぁ。」
きっと僕は明日も学校へ行き、怒られて笑われてというループを無限に繰り返すのだろう。
ゴールの見えないマラソン、15回規定の無い延長戦。
本当にうんざりだ。脱出したい。

しかし、そこまで考えて僕は気づいた。
考えるだけでは何も解決しない。僕は今まで何をしてきた?いや、何もしていない。
この毎日は日々の怠惰の結果。しょうがない事。
だがそこで諦めてはいけない。前に進めない。

よし。今日からやろう!
この不毛な繰り返しをぶち壊そう!
そのためにはまず宿題をして……。





「グー……。グー……。」



そこでいつもの如く僕の意識はブッ飛んだ。



「ムニャムニャ……ん?
今何時……?」
その数時間後、僕は目覚めた。
僕の完全な寝惚け眼は、手に取った時計が七時を告げているのを映し出した。
「七時!?いかん!ポケモンが始まる!!」
そこで僕の頭のスイッチは完全にオンに切り替わった。僕はやかましく階段をかけおりる。
さっきの決心などとうに忘れていた。

僕は驚異の速さで居間にたどり着き、襖を開いた。
先客のドラえもんがテレビの前で座っている。

ポケモンは既に始まっていた。
「やあ、のび太君。帰ってたの?」
僕は「うん」とだけ頷き、テレビの前に座る。

画面の前で生き生きと輝く登場人物やポケモン達……。それを見てるだけで心が癒される……。
マンネリ化した僕の生活とは違った物を与えてくれている……。

しかし、至福の時が終わるのは早い。
気づいたら、もう次回予告。お楽しみはまた来週へと去ってゆく。
「終わったね……。」
ドラえもんが感慨深げに呟く。
僕はまた「うん」とだけ言っておいた。

「のびちゃーん、ご飯よー。」ママの声が聞こえた。
「のび太君、ご飯らしいよ。行こう。」
「うん。」
夕御飯か。ピーマン出てきたら、やだな。
僕は夕御飯の餃子をたいらげ、自分の部屋に向かった。



風呂に入り歯を磨き床につく。いつもの事だ。
何ら変わりは無い。
「のび太君、おやすみ。」
そしてまたドラえもんがいつもの押し入れの二階で寝るのもいつもの事。
そして僕もいつもの様に布団に潜る。
しかし、今日は一つだけいつもと違っていた。

眠れない。

そこで僕としては珍しく、今日の事をおさらいしてみた。

「ええと……。
まず、家を出て宿題忘れて立たされて給食残して怒鳴られて……。」
悲惨と人は言うかも知れない。しかし、これが僕の日常だ。

僕は今日の反芻を続ける。
「スネ夫に馬鹿にされて……ジャイアンにジャンピングネックブリカーを食らわされて……。
家に帰って昼寝して……。
ポケモン観て餃子食って……」
いいことと言えばポケモンを観たことと晩御飯が餃子だった事だけだ。
つくづく僕には良いことが無い。
それ以上考えても、嫌なだけなので別の事を考える事にした。
「それにしても今日のポケモンは凄かったなァ。
はぁ、この世界にポケモンが居たらいいのに……。
……………そうだ。」
僕はここであるアイデアを思いついた。
この方法を使えば、今日の現状も打破出来るかも知れない。



そうと考えてから僕の行動は早かった。
気配を絶ち、ドラえもんが寝ている押し入れの襖を開け、玩具箱をガチャガチャとあさり、目当ての物を取り出す。
「あった!スペアポケットだ!」
半月型の袋を取り出し、僕は言う。
更に僕はその中から目当ての道具を探す。
「あれはあるかな……?あ、あった!」
袋の中から明らかに開け口の面積を越えた箱を取り出す。

それはドラえもんが「もしもボックス」と呼んでいる物だった。
道具の説明はするまでも無いだろう。
僕はその中に入って高らかに言った。

「もしもこの世界にポケモンが居たら!」

するとボックスの外の景色が歪み出した。
「おおおっっッ!!」
僕は期待の声を上げたが、景色はすぐに元の状態に戻り始め、それは完全におさまった。
辺りはシーンとして一見、何も変わっていない。
とりあえず、僕はボックスの外に出ることにし、それをやった。
外に出ても、別に変わった気配は見られなかった。
「本当に変わったのかなあ……?
実感がないんだけど」
僕は一瞬もしもボックスの効果を疑い、外に出て本当に効果を発揮したのか確かめようとしたが、それはヤボなことと思い、止めた。
「とにかく、この世界はポケモンの世界に変わった!
よし!明日を楽しみにして……」
僕は寝た。
希望に満ち溢れた明日を夢見て……。



No.002『DREAMS COME TRUE』



「ジィリリリリリリ!!!!」
僕の部屋に凄まじい音を立て、ベルが鳴り響く。
うるさい。僕はもう少し寝たいんだ。ほっといてくれ。
「……タクン……びた君………のび太君……!!」
誰かが僕の体を揺する。
きっとドラえもんだろう。
タイマーは余裕を持つため七時に設定してある。
登校時間まで、まだ一時間以上ある。
五分くらいいいじゃん。
「ん……。まだ七時だよ……あと五分……。」
僕は起きるのが嫌で布団に潜り込む。
すると、突然僕の体を覆っていた布団が取り上げられ、特徴のあるダミ声の叫びが聞こえた。
「ふざけるなぁッ!!!
もう八時だぞ!遅刻だぞ!」
「えっ!」
僕は慌てて時計を掴む。
その短針は確かに八時を告げていた。
そこで僕の眠気は一気に覚め、それは先生への恐怖に次第に変わってゆく。
「ちッ、遅刻だあああああああ!!」
僕は跳ね起き、急いで服を着替える。
靴下が左右で違うやつだったけど、気にする暇は無い。

階段を転げる様に下り、台所のパンを一枚失敬してそれを食べながら学校へダッシュする。
僕は昨日の事など全て忘れてしまっていた。



キーンコーンカーンコーン。

一時間目の授業を告げるチャイムが鳴る。
僕がそれを耳にしたのは校庭を突っ切り、校舎に向かう途中だった。
「うおあああああああ!!!!」
最後の力を振り絞り僕は下駄箱へ向かう。
その時間、実に30秒。
ちなみにその距離100m。
僕は下駄箱を通過し、二階の教室へ向かう。
「やった、教室だ……。」
長かった……。疲れがどっと出る。これだけ頑張ったんだから、先生も許してくれるだろう。

教室の扉まであと2、3m。
「えーと……ここは……こうであって……。」
先生の声も、微かながら聞こえる距離だ。そいや、一時間目って何の授業だっけ。

まあ、思い出してもさほど意味はないと思い、僕は先生という名のモンスターがいる教室へ、一歩を踏み出した。
「ええと、次の問題は……誰に当てようかな……。」
「おはようございます」
僕は引き戸をガラリと開けた。皆の視線が僕に集中される。
先生は僕を見てニヤリと笑う。
あれ、おかしいな。いつもは鬼人の如く怒り始めるのに。
僕はとりあえず愛想笑いを返してみた。
歯を磨いていなかった事に気づいた。

先生は言った。
「野比君、いいタイミングに来たな。この問題は君に解いてもらおうか」
最悪のタイミングに来てしまったようだ。



先生は意地悪だ。いきなり来た僕がいきなり頭が良くなっていきなり問題を解けるハズないだろ。
「ええと……あの……そのですね……。」
僕は何か言いたそうにモジモジする。
何の解決にもならない事が分かっていながらもモジモジする。
しかし、それは先生の気に触ったようだ。先生の雷が落ちた。
「野比ィ!さっさと解かんか!」
「は、はいィィ!」

僕はイソイソとチョークを取り、先生へ聞こえないよう、愚痴を溢しながら黒板へ向かう。

「突然なのに僕に解ける訳が……」
ここで僕の言葉は中断した。

信じられない。何だ、これは。ここは学校だよね?
僕はそう思った。
黒板には、こう書いてあった。
『ライボルトが、ラグラージに「かみなり」で攻撃したとき、ダメージはどうなるでしょう。』
ライボルト?ラグラージ?ポケモン?

僕の頭が混乱しだす。
「何だ!?野比君解けないのか?」
先生が、また同じセリフを繰り返す。

書けるよ。書けるよ。書けますよ。
でもさ、学校でさ、なんかあれでしょ、あれ。

「野比ィ!」 「はい!!!!!」
先生の喝が飛ぶ。
もう、どうなっても知らないぞ!
僕は黒板に、『ダメージは無し』と書いた。



書いた後、僕は恐る恐る先生の顔色を伺おうとした。その時、
「ハッハー!のび太の奴馬鹿だぜぇ!
こないだ習ったタイプの相性も分かってねぇ!
ラグラージは水タイプだから『効果は抜群』だぜぇ!」
ジャイアンが言った。
しかし、先生の反応は違った。
先生は、「うん」と頷き言った。
「よし、野比君、正解だ。席につきたまえ。
後、剛田、いつも見掛けで判断するなと言ってるだろうが!」
「えっ?なんで?」
ラグラージは、水・地面タイプだよバーカ。
僕は怒られるジャイアンを見て、心の中で呟いた。

僕は鞄を置き、席に着く。
すると、気分も冴えてきて昨日の事を思い出してきた。
やっぱり、『もしもボックス』の効果は発動していたらしい。
あの問題はそのためだろう。
と、するともしかして……。
僕は席が隣であるスネ夫に一つの疑問をぶつけてみた。
「スネ夫、この世界にポケモンっているよね?」
僕がそう訊くと、スネ夫は何か異様な物を見る目付きでこっちを見、答えた。
「は?何言ってるの?
たくさんいるじゃん。」
キター!
僕は嬉しくてたまらず、子踊りを始めた。

スネ夫は小さく、「ついに頭がおかしくなったか。」と呟いた。

「えへ、えへ、えへ、えへへへへへへ。」
僕はその日一日、気持ち悪い笑いが止まらなかった。



今日は全てが上手くいった。
僕のポケモンの知識はピカイチで、先生が出す問題も全て余裕。
マジで気持ちよかった。
しずかちゃんも僕を凄いと言ってくれた。

そして、時間は終礼の時間。そのチャイムが鳴り、僕は席につく。
すると、先生の話が始まる前に前列から何かの紙が配られてきた。
それには大きな太文字で、こう書いてあった。

『トレーナー試験ついに開催!!!』

「トレーナー試験?なんじゃそりゃ?」
僕は首を捻った。
考えても分からなかったので、とりあえずまたスネ夫に聞いてみることにした。

「スネ夫ー。トレーナー試験って何?」
スネ夫はまた、先程と同じ様な反応を見せ、ボソリと言った。
「トレーナーになるための試験だよ。
僕達は、今年から受験資格があるんだ。
だから参加用紙が配られてきたのさ。」
「えっ?トレーナーになるためには試験がいるの?」
「当たり前じゃないか。
そんなのも知らないのか?」
僕はスネ夫の言葉に耳を疑った。
ゲームではそんなイベントなかったぞ。
スネ夫は続ける。
「今年から僕も試験を受けるんだ。
受かったらアイドルトレーナー!かっこいいじゃないか。」
この身長でアイドル?
僕は吹き出してしまった。



しかし自分に酔いしれて、スネ夫は僕が吹き出した事に気づいていない。
僕は聞いた。
「僕でも受けられるの?」
すると、突如スネ夫は現実にカムバックしてきて、僕に冷たく言い放った。
「のび太が?プフフフフ……。
無理に決まってんじゃん。
受けたとしても、一次試験で足切りだよ。
まあ、多分僕も今年は無理だろうけどね。」
僕はスネ夫に腹が立ち、会話はそこで打ち切った。
しかし、僕は密かに決意していた。
トレーナー試験を受けてやろうと。


終礼直後、僕は脱兎の如く教室を飛び出した。
家までノンストップで走る。
右手には一枚の紙を握りしめながら。

「ただいまぁッ!!」
僕は勢いよく靴を脱ぎ散らかし家に入る。
ママは何処だろう。台所かな?
僕は台所に向かった。
案の定ママはそこにいた。
僕はママに一枚の紙をつきつけた。
「ママ!僕、トレーナー試験受ける!
僕、トレーナーになるんだ!」



No.003『PADDLE』

ママは面食らった表情で参加用紙と僕の顔を二、三回見比べる。
そしてママは僕に一言聞いてきた。
「本当にトレーナーになりたいの?」
「うん。」
ママの無粋な質問に、僕はとりあえず頷いておいた。

ママは携帯のバイブの様に、プルプルと震えだす。

「たっ、大変だわ………」
そう言うとママは台所を飛び出し、居間へ向かった。
何がなんだか分からないけど、僕もとりあえずその後を追った。

居間にはドラえもんが居た。どら焼きを食べながら、電波少年の再放送を見ている。

「ドラちゃぁーん!!!」
ママは突如、ブレイクタイム中のドラえもんに抱きついた。
何故だか知らないけど、目には涙を浮かべている。
僕、何か悪い事したっけ?

ママはドラえもんに言う。
「のびちゃんが……のびちゃんが……トレーナーになるって言うのよ!」
「なんだってーー!!!ウッ、ゴホンゴホン!」
ドラえもんは驚きの余り、どら焼きを喉に詰まらせた。

何故そんなに皆驚くんだろう。とりあえず、僕はその訳を聞いてみた。
「ねえ、何でそんなに驚いてるの?」
僕の言葉がよっぽど奇妙だったらしい。
ママとドラえもんは僕の顔を見つめ、丸い目を更に丸くする。
この世界の常識ってイマイチ掴めないなあ……。



少しの間、水をうったような静寂が走る。
なんだよ、本当に。

そして三秒後、関を切った様に二人の言葉はマシンガンの様に返ってきた。
「のびちゃん、頑張ってね!ママ、応援するから!」
「のび太君!僕は嬉しいよ……。やっと僕の心が君に伝わったんだね……。ウッ、ウッ。」

「よし!今日はのびちゃんの好きなハンバーグを作るわ!
後、パパにもこのことを知らせなきゃね!」
え?えっ?えっ!?
ドラえもんは泣き出しママは狂った様に喜びだした。
本当に何がなんだか分からない。
僕は、取り残されたような気分でちょっとなんかアレだ。

混乱している僕を尻目に、ドラえもんは言った。
手には何故か参加用紙が握られている。
どうやらいつのまにか僕のをひったくってたらしい。
「よし!僕は今から申し込みの電話をしてくるよ!
ママさんは夕飯の準備、お願いね。」
ドラえもんは電波少年そっちのけで居間を飛び出す。
「なんなの?本当に。」
訳の分からぬまま、僕はまたもその後を追った。



「ガリガリガリガリ、ガリガリガリガリ」
僕がドラえもんに追いついた時、彼は既にダイヤルを回してしまっていた。

「ドラえも……」「シーッ!」
僕が話しかけようとすると、ドラえもんは「静かに!」のジェスチャーをしてきた。
目が完全に「黙れ」と言っている。
とりあえず僕は黙る。

「もしもし……、ええ、あ、はい……。二人です……」
電話が繋がり、ドラえもんは何者かに何かをしゃべっている。
ドラえもんの会話は続く。
「ああ、はい。10才です。
三日後ですね?
ええ……分かりました。明日に書類を送りますね。それじゃあ。」
ガチャン!
ドラえもんは電話を切った。

とりあえず僕は「トレーナー試験」が如何な物であるのか聞いてみようとする。

「あの……ドラえもん……?」
「あ、のび太君。申し込みはちゃんとしておいたから。
いやーのび太君がまさかトレーナーになりたいと言い出すとは思わなかったなぁ。
あ、ついでに僕も出るから一緒に頑張ろう!」
……会話は成立しなかった。



ドラえもんはスキップしながら、ルンルンと二階に上っていった。
またもや取り残された僕はその場に立ち尽す。
受けようとは言ったものの、結局「トレーナー試験」について、色々な事が謎のままだ。
ただ、スネ夫やママやドラえもんの言動から、それがこの世界ではかなりメジャーなものということは読みとれる。
そして、それを受ける事によってママが喜んでくれる様な物であることもわかった。

「とにかく、この世界の常識みたいな物だから、他人にとやかく訊くのはマズイな……。」

そこで、僕は偉大なるネットの力を借りる事に決めた。



僕の部屋の向かいの部屋。
1980年代の原作では物置になってるらしいが、今は2007年代。
「置き場が無いから」という理由で我が家のパソコンはそこに据えられた。物置というのに変わりは無いが。

「うんしょっとぉ!」
僕は使われなくなった家具の山を越え、パソコンというゴールを目指す。
途中で何度も体を擦り剥き、頭を打ちながらもなんとかパソコンまで辿りつくことが出来た。
僕は家具の山から適当に椅子を一つ引っ張り出し、それに座ってパソコンの電源を入れた。
そしてYahooの検索画面に検索ワードを打ち込む。
ブラインドタッチが出来ない僕は人差し指一本でキーボードを叩く。
「ええと……。トレーナー試験っと。」
僕は検索ボタンをクリックした。

「うわあああああ…………。」
膨大な量の検索結果が出てくる。
思わず僕は呟いた。
「凄いや……」
圧倒的な知名度に僕は少し驚きを隠せない。
しかし、気圧されていても仕方ない。
とりあえず、検索結果の一番上にあるサイトを開き、僕はそこからトレーナー試験の情報を得る事にした。



そこを開くと、いくつかの項目が目に飛び込んできた。
とりあえず、「トレーナー試験の意義」の欄をクリックしてみた。
僕はそれを読む。

「ええと……。なになに……?
『以前、トレーナーの増加によるポケモンの虐待、及び絶滅寸前のポケモンの乱獲、ポケモンを使った犯罪は増加の傾向にあった。
これの原因はトレーナーの質の低下に因るものが大きかった。
昔は子どもから大人まで誰でもいつでも、職業としてのトレーナーの資格を簡単に手に入れる事が出来ていた。
自由に各地のジムを渡り歩く事が出来たが、同時に資格を持ったトレーナーによるポケモンを利用する犯罪が世の中を台頭してきた。
その為、我がポケモン協会はトレーナーの職業性を廃止するにあたった。
しかし、大多数の要望により数年後、廃止は取り止められた。
そしてその代わりにトレーナー試験というものが出来、それから今に至るまでそれは存続している。』

ふーん。トレーナー試験ってこんなルーツがあったんだ。」
僕は感心し、呟く。
僕は次の項をクリックした。



その欄には、「トレーナー資格による特権」と書いてあった。

「ええと……。
『1・現在、法律では「営利目的」でのポケモンバトル、複数のポケモンの育成を禁止しているが、トレーナーの資格を持った者はこの限りではない。

2・ポケモンセンター等の宿泊施設及び、リニア等の公共機関をいつでも無料で利用してよい。

3・ポケモンを自由に捕獲、交換してよい。

4・一般人の立ち入り禁止区域、危険区域に入る事が出来る(ジョウトのシロガネ山等)

………etc。』

トレーナーって凄いなあ。」
特権が多すぎて、全ては詳しく読めなかったが、とりあえずトレーナーという物が優遇されていることはわかった。

トレーナーの実体がわかったところで、最後の欄を開く。

「ええと………?
『トレーナー試験の実体』?

『毎年、全国の各会場でトレーナー試験が行われている。
試験は一次から四次試験まであり、その全ての課題をパスしたものだけがトレーナーの資格を手に入れる事が出来る。
ちなみに今年は記念すべき、第50回大会。』

五十回?凄いなあ!」
歴史の深さを感じ、僕は感嘆の声を漏らす。



続きがある様なので、とりあえず次のページも閲覧することにした。

「ええと………?
『トレーナー試験の「試験官」は毎年適任と思われるトレーナーが各地方の試験会場にランダムで送り込まれる(だいたいが、ジムリーダーやバトルフロンティアのトレーナーであるが)。
試験課題はその試験官に全て一任される。
ちなみにトレーナー試験は世界の資格の中でもトップクラスの難関。
ポケモンと触れ合う事が目的の子供や老人も参加している為もあって、その倍率は5000倍を越える。』

…………5000倍!?」
親戚の叔父さんから聞いたけど、司法試験の倍率は確か50倍。
単純計算で、司法試験の100倍も難しい事になるじゃないか!
ママやドラえもんがあんなに狂喜した訳がやっと分かった。
自分の息子が、弁護士や医者になりたいといえば、両親は間違いなく喜んでくれるだろう。
余りの倍率に僕はガタガタと震えだす。

無理だ。なんなの5000倍って。
30人のクラスでも一番下の方なのに……。

僕は絶望の余りキーボードに突っ伏す。

諦めようかな?
そんな考えが浮かんでくる。
5000倍という現実に、僕の心は完全に折られてしまった。



「ハァ……。」
僕は浮かない顔で部屋に戻る。
帰宅時のワクワクとした希望は今の僕には少しも無かった。

そして僕はいつもの様に現実逃避の為に枕を取り出す。
「おやすみ……。」
そして僕は夢の中に逃げ出した。




どれ程の時間が経ったのだろう。
ママの僕を呼ぶ声で目が覚めた。

「のびちゃーん!ご飯よぉー。」
呼ばれて、僕は寝惚け眼を擦り浮かない顔で階段を降り、台所へ向かう。

駄目なんだ。僕の心はもう……。

台所に入ると豪勢な料理が僕を待っていた。
ママが頑張ってくれたのだろう。
パパも既に帰ってきていた。
パパが言った。
「のび太、試験を受けるのか?」
僕は「うん」とだけ答えた。
パパはまた言う。
「パパもな、昔トレーナーになりたくて何度も何度も受験したんだ。
でもな、俺は無理だったんだ。
そこで俺の挑戦は途絶えてしまったんだ。」
「そうなんだ……。」
僕は目の前の不合格者を見て更に気落ちする。



しかし僕の言葉を聞いてか聞かずか、パパは続けた。
「でもな、のび太。
俺の夢はまだ途絶えた訳じゃない。
俺は嬉しかったよ。お前がトレーナーになるって言ってくれて。
俺の夢は次なる世代、つまりお前に受け継がれたんだ!
まあ、確かに試験だ!
受かる人もいれば落ちる人もいる!
しかし、それにドーンとぶつかってゆけ!
男の子だろ!」
僕は頭をガーンと殴られたような衝撃を受けた。
そうだ。倍率5000倍がなんだ。男なら立ち向かわねばならない。
僕は間違っていた!

自然と目から一筋の滴が流れる。
先ほどまでの自分の情けなさ、ふがいなさがそうさせる。
「どうした?」
パパが突然泣き出す僕を不思議に思い、聞いてきた。
僕は
「ううん。なんでもない」
そう言い、涙を拭くと夕飯を口の中にかき入れた。
「今年は無理でもいい!
絶対トレーナーになってやる!」
僕は一層強い決心を固めた。

茶碗を台所に出すと三日後に控えた試験の為に、部屋で僕は勉強を始めた。

いつもと違って、今日は眠くならなかった。
いつもと違って。