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挑戦者 その19 - (2007/03/27 (火) 00:00:44) のソース

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……やがてその場が澄み渡っていく。 
ジャイアンの目にもはっきり映った。 
ルカリオとアブソルが、重なり合って倒れているのを―― 
「同士討ちか……」 
ジャイアンは呟きながらルカリオをボールに収める。 
ワンテンポ遅く、ササもアブソルを戻した。 
「テッカニン!」「ストライク!」 
繰り出された二体は互いに睨み合う。 

(……何なんだ、こいつは) 
ササの思考が疑問を上げる。 
ミヤのことを警察に突き出さなかったのも、ジャイアンの言ったとおり。 
警察がミヤを捕まえてくれれば、それで済むと思ったから。 
そして、ミヤは捕まり、その後脱獄した。 
だから自分で制裁を―― 
(それは俺のわがままなのか……) 

「テッカニン、きりさくだ!」 
瞬間飛び込むテッカニンの先。 
佇む相手に刃が触れる瞬間。 
赤い光が、ストライクを包んだ。 
「!?……え」 
空を切るテッカニンの攻撃を見ながら、ジャイアンは目を見開く。 

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「終わりだ」 
ササが一声告げ、銀のメダルが投げられる。 
弧を描きながらそれはジャイアンの前に落ちた。 
「すまないな。こんな戦いさせてしまって…… 
 私は間違っていたようだ」 
そう告げると、ササは立ち去ろうとする。 
ジャイアンは銀メダルを拾い、そして 
「待てよ!」 
と一声掛けてササの元へ向かう。 
振り返るササにメダルを突き出す。 
「俺はいらないよ。 
 あんたも十分強かったからな!」 
目を見開くササ。 
ジャイアンは微笑みながら、返答を待つ。 
すると、ササもにっと笑い、メダルを受け取った。 
「私は先にドームへ向かおう。 
 お前も勝ち残れよ!」 
ササはそう言って、山を降りていった。 

「とりあえずは……助かったみたいだ」 
ジャイアンは冷や汗を拭う。 
(危なかった……俺の中で残っているのはテッカニンと……) 
ジャイアンはボールを確かめる。 
コドラ、ルカリオ、テッカニンのボール、そしてその脇にもう一つ。 
(こいつだけだ……) 

その問題児がもうすぐ日の光を浴びることになるとは、ジャイアンはまだ知らない。 

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東の山道―― 
逆巻く『ほのおのうず』が木々を焚きつける。 
燃え盛る炎が辺りを紅で包み込む。 
戦いはどんどん激しさを増していく。 
ふと、二体の巨石が宙に浮かび上がった。 
(……『じゅうりょく』の効果が切れたんだ!) 
舌打ちしながら、ユリはボールに手を掛ける。 
(またハスブレロを戻してピッピを――) 

「ハッハァ!!」 
突如茂みから飛び出してきたスキンヘッズ。 
ユリと、ユウトの視線もそいつに向けられた。 
「俺の名はジョウ! 
 今さっきメダルを取られたリーグ関係者と出会ったぁ! 
 さあ、メダルを持っているのはどっちだぁ!?」 
(!チャンス)「あっちよ!!」 
ユリはすかさずユウトを指す。 
「え?えぇ!?」 
不意を突かれたユウトを後に、ユリは駆け出す。 
ハスブレロもバクーダもしっかり戻して―― 

「よおし、こっちだな!」 
ジョウはにやりと笑いながらユウトの前に立ち塞がる。 
「行け、カゲボウズ、コロボーシ、チェリンボぉ!!」 
一気に三体のポケモンがジョウによって繰り出される。 
「あいつからメダルを奪えぇ!!」 

飛び掛るポケモンたちも、それを指揮するジョウ自身も気づいていなかった。 
ユウトが笑っていることに―― 

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「……ふう、危なかった」 
大分駆けた所で、ユリは木に支えられて一息つく。 
(あのままじゃ危険だった。 
 ダブルバトルのせいかしら。かなり強かった…… 
 ま、速くドームへ戻っちゃえばいいんだけどね!) 
ユリは思考を切り替え、ドームへ向かっていく。 

「……ちょっと聞きたいんだけどさぁ」 
ユウトはメダルを弄りながら言う。 
「な、なんだ……」 
下敷きにされているジョウは、痛々しげに聞き返す。 
辺りに散らばる三匹とも、ジョウのポケモン。 
今は『さいみんじゅつ』のあとの『ほのおのうず』により瀕死状態。 
「どうしてメダルを持っているのに僕のメダルを欲しがったの?」 
「……あ、ああ。簡単なこと。 
 メダルを余分に持っておけば、もしも強敵に出会った時にも逃げられる。 
 そのほうがライバルも減らせ……ぶっ!」 
ユウトはジョウの顔を足蹴に地面に降り立つ。 
「ふうん。やっぱりそうか」 
頷くユウトの後ろで、ジョウがゆっくり立ち上がる。 
「こ、の……くそ野ろ」「さいみんじゅつ」 
ルナトーンの目が光り、ジョウは白目をむいて倒れた。 

「やっぱり、同じことを考える人もいるんだねえ」 
ユウトの弄ぶメダルは二つあった。 
両方とも銅色のメダルだ。 

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少し時間を戻し―― 
ドーム入り口―― 
(しめしめ、現れたぞ……) 
スネ夫は段々と近づいてくる男を見つけた。 
間違いなく銅メダルを持っている。 
(あと少し……もうちょい近づいたら……) 
男はにこやかに笑いながら走っている。 
恐らく早い内にメダルを取れたことがうれしかったのだろう。 
(ふふ、すぐに僕のになるけどね~!) 
男とドームの間には何も無い。 
スネ夫は静かに、グラエナの『どろぼう』が出来る範囲を考えた。 
(もうちょい、もうちょい……今!) 
「グラエナ、どろぼう!」 
繰り出されたグラエナは四肢を唸らせて飛び込んでいく。 
その黒い毛並みを凝視する男。 
そして―― 
「なに!?」 
スネ夫が息を呑む。 
グラエナと男の間に突然つるが伸びてきたのだ。 
つるは男の体に結びつき、浮かび上がらせる。 
グラエナもそこまで届かない位置に。 
急いで辺りを確認すると、つるの先にマスキッパ。 
それに二人の人影が見える。 
(くそ!僕の獲物を!) 
スネ夫は物陰から飛び出した。 

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マスキッパのつるに縛られた男は苦痛で呻いている。 
「た、助けてくれー!!」 
スネ夫がふと目をやると、男は左手の指を三方向に伸ばしていた。 
(なんだあの手の形……癖かな?) 
スネ夫はまだ知らない。 
もうじきこの左手の形に多大な恩恵を受けることを。 
ただ、これは現実世界の話なので今は関係ない。 
(そんなことより) 
「グラエナ!つるをかみくだけ!!」 
猛進するグラエナの牙に捕らえられ、つるはブチブチと切られた。 
解放される男はバランスを保つ。 
「少年、ありがとう!!」 
男はスネ夫に礼を言う。 
見るとやっぱり、左手の指が三方向に。 
「あの、いったいそれは何――」 
「つるのムチ!」 
鋭い声が届く。 
同時に緑のつるがスネ夫と男の間を突き刺す。 
スネ夫が目を向けると、二人の女が走ってきているのがわかった。 
(くそ、あいつら諦めてないな…… 
 !!そうだ、こうなったら) 
「あの、あなた名前は!?」 
なるべく切羽詰った風で、スネ夫は男に聞く。 
「ああ、少年。名乗るのが遅れたね。 
 私の名前はミング。 
 しかしてあの連中はいったい?」 
「ミングさん。 
 あいつらはあなたからメダルを奪おうとした悪い奴らです!」 

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二人の女はスネ夫たちと対峙した。 
マスキッパを連れているのは、和服姿の女。 
もう一人は短い金髪をたなびかせている。 
「やい、お前ら!メダルを取ろうとしたな!!」 
(よし、これで!) 
「まさか仲間がいたとはね……」 
声を出したのは金髪の女。 
「サエ!やっちまいな!!」 
「マスキッパ、さっきの男を捕らえて!」 
サエと呼ばれた和服女は指示を出す。 
つるのムチがミングの周りを旋回し、そして―― 
「ライボルト、ほのおの牙」 
ミングの繰り出すポケモンが、つるのムチを焼き切る。 
「カラ、そっちは任せたよ!」 
サエは金髪の女に告げ、ミングと向かい合う。 
カラと呼ばれた方の女はポケモンを繰り出した。 
静電気を弾けさせながら現れた、小柄な白い体。 
でんきりすポケモン、パチリスだ。 

(ふふふ、やったぞ! 
 ミングは完全に僕のことを味方だと思ってる!) 
スネ夫は笑いを堪えながら、勝利への算段をした。 
(なんとか一対一に持ち込めたんだ。 
 ミングはきっと勝てるだろう。 
 油断しているすきにグラエナの『どろぼう』でメダルを奪い、とっととドームへ――) 
「パチリス、メロメロ!」 
パチリスが相手にアピールする。 

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(……メロメロ? 
 あれ、僕はまだポケモンを――) 
途端に青ざめながら、スネ夫は振り返る。 
グラエナがいた。 
すっかり興奮した様子でパチリスを凝視しながら。 
「し、しまったぁ!」 
(まあずいぞ!すっかり出したままなのを忘れてた。 
 グラエナがメロメロにかかっちまった! 
 これではまともに戦えないな……いったん戻さなきゃ) 
ダラダラとよだれを垂らすグラエナをボールに収めながら、考え直す。 
(こうなれば……絶えずミングの戦いを監視して 
 勝ちそうなところでグラエナと交代すればいい!) 
「ほら、早く次を出しな!」 
と、カラが催促してくる。 
(うるさい奴だな…… 
 兎に角次は……次は……!! 
 あれ、性別なんて図鑑ないから分からないぞ?) 

スネ夫は相手を『どく』や『ねむり』にするのが大好きだ。 
弱っている相手を叩きのめせる……なんと楽しいことだろう! 
だがそれ故に、自分のポケモンが状態異常になることは嫌っていた。 
『メロメロ』も『こんらん』も、すぐに対策を打たなければ気がすまないのだ。 
だから手持ちにはいつもオスとメスのポケモンを入れておいた。 
だけど――今、性別はわからない。 

(こうなったら……50%の確立に賭ける!) 
スネ夫の思考が一つの答えを導き出す。 
(50%で絶対に『メロメロ』を解いてみせるぜ!) 
決心して、スネ夫はポケモンを繰り出す。 

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