【FILE】No.1
【DATE】2013 / 3 / 9
【NAME】〝Awaken I Am〟
【PLACE】夜の国〝Owl City〟
【SUMMERY】〝D.R.U.G.S.〟と〝カノッサ機関〟による武力衝突
夜の国屈指の都市であるこの町にて〝
カノッサ機関〟の連絡員が連絡を絶った
不審に思う機関の上層部へとある一報が入る
普段から緊張状態にあった〝D.R.U.G.S.〟による宣戦布告である
機関はこの声明に対し交戦の構えを示し〝能力者〟を中心とした戦力を〝Owl City〟へと投入することを決定した
〝Owl City〟に先遣されていた〝D.R.U.G.S.〟勢力と〝カノッサ機関〟勢力は午後六時に交戦
時を同じくして双方の能力者部隊が、周辺区域にて衝突、一気に戦闘は激化した
またそれらの能力者だけでなく〝第三勢力〟と呼ぶべき新たな戦力も出現し、戦場は激しさを増す
膠着する戦場〝D.R.U.G.S.〟と〝カノッサ機関〟――――双方譲らない激戦は、一つのヘリの音によって幕を閉じる
戦場に降り立った〝Cypress〟――――〝D.R.U.G.S.〟の代表たるその人の宣言によって、一応の終結を迎えた
そして彼はその宣言の中で〝対機関〟の強硬姿勢と世間一般の人々に対する〝D.R.U.G.S.〟の理念である〝自治〟を訴えたのだ
また〝カノッサ機関〟の秘書であった〝ソレイユ=ナイトシェイド〟の宣誓は、同時に波紋を投げかけるのだろう
戦いは今、始まったばかりである、ということを……
【BATTLE】
――――〝Ⅰ〟
≪D.R.U.G.S.≫ Closed Δ VS ココノエ・クチハ ≪カノッサ機関≫
〝Owl City〟の中央から外れた廃工場の奥にて、この戦闘は始まった
およそ機関との闘争の渦中に居るとは思えずただマイペースに己が仕事である麻薬売買に精を出していたClosed Δ
彼らに対し両手の魔銃を以って機関の研究員たる
ココノエ・クチハは戦闘をしかけた
〝矢〟を精製するΔの攻撃に対しクチハは自分の得物である魔銃を多種多様な形に変化させ対応する
悪と悪との対戦は互いに譲らずΔは堪らず自身の本性を剥き出しにした
おぞましいその悪意を言葉にして撒き散らすその姿は悪の種を嬉々としてばら撒く死の商人のそれであった
その彼を前にしてもクチハは一歩も屈せず、むしろ真っ向から対抗してみせた
僅かにその端正な顔の下の本性を露にするも〝Cypress〟の号令によりΔが離脱する形で勝負の幕は降りる
次の戦いの予感を残して……
――――〝Ⅱ〟
≪D.R.U.G.S.≫ 霧崎舞衣 VS 〝No.110〟梔子 冴 ≪カノッサ機関≫
〝Owl City〟内の交差点、止めた黒いセダンの上の人影が揺れた
〝D.R.U.G.S.〟傘下〝富嶽会〟会長秘書の霧崎舞衣――――
彼女に戦いを挑んだのは〝機関〟の中でも一二を争う剣の使い手である
梔子 冴 であった
敵を前にしても尚、その柔らかな物腰を崩さぬ舞衣
対する冴はその類まれなる剣の腕を行使し、常人では扱いきれない〝大剣〟――――創虚を振るう
それでも舞衣は踊るかのような華麗な動きを以って互角以上に戦った
女の身とは思えぬほどに磨きぬかれた二つの華、いくつもの剣閃を重ねて、終わりは唐突であった
〝Cypress〟の言葉により舞衣はその戦闘体勢を解いたのだ、結局のところ、彼女の働きは業務に過ぎず
重ねる形でインカムによる撤退命令、冴は余力を残したまま、その場を後にした
――――〝Ⅲ〟
≪D.R.U.G.S.≫ ロバット・ムルシエ VS 月彗 ≪第三勢力≫
この街で行われた無数の存在の中でも一際異質な存在、それがこのロバット・ムルシエであった
獣人のファミリー、この奇妙奇天烈な相手を前にしても、その存在を乱さないのはかつての機関の次席であった月彗の実力が故か
その高い能力を相手するのにロバットの所属する〝キマイラ〟は十分すぎる力を持っていた
音波弾と茨、双方の能力は常人ならば辿る事すらできないほどに
知力体力あらゆる力を駆使し、二つの力と力は砕ける時すらも分からないと言いたげに重なり合った
ロバットの放った〝グリート・レクイエム〟戦闘全てを伏線にした最強の刃は月彗の身体を一刀の元に切り裂いた
しかし、それは月彗の能力の一端に過ぎなかった――〝木偶人形〟そこに残るのは、また別の悪意
ロバットは勝った、しかし、完全な勝利ではない、残香はどこか燻った熱のような味わいであったのだろう
――――〝Ⅳ〟
≪D.R.U.G.S.≫ ビスク・フランコ VS ガガルル・レシフィード ≪カノッサ機関≫ VS ヘケメト&アウ・ダァコル ≪第三勢力≫
恐らくは一番の激戦であったのだろう、悪と悪の戦いに混じりこむもう一つの色
それは無色であったとしても、異なる互いの黒とは異質な色合いであって
必然、生まれるのは対立、ぶつかる三つ巴の力が、激しき結果を生んだのだから
〝Owl City〟内のナイトクラブ〝Marvelous〟――――そこに居たのはモーゼルを操る
ビスク・フランコ
その悪意へと戦いを挑むのはドラグナーであり、カノッサの騎士たるガガルル・レシフィード
そしてもう一つ世界屈指の〝トラブルメイカー〟
ヘケメト&アウ・ダァコルの姿であった
ビスクの握る〝M500〟はハンターマグナムとも呼ばれる世界最強の拳銃でもあった
しかしその反動をものともせず、まるで手足のように扱う彼はその名に恥じないハンターでありガンマンであったのだろう
能力をものともせず変幻自在の射撃術を見せる姿は夕暮れを背にしても遜色の無いほど
対するガガルルはその毅然とした態度を、その悪意の前であっても緩めはしなかった
紡ぐ言葉は確かな勝利の言葉、自身を鼓舞するその音律がその存在をただひたすらに肯定する
〝モンスターテイマー〟彼女の能力は、彼女とその〝愛馬〟を一つの存在へと昇華させる
その二つの強大な力を前にしても、マイペースを貫くのがヘケメトという男であった
変幻自在の棘の能力、そして溢れ出る魔力は、力を持つ者だけが赦される特権のよう
誰にも従属せず誰にも束縛されないその力を彼は余すところ無く曝け出した
最初に撤退したのはビスクであった、マルコ坊ちゃんなる人物の手にひかれるようにその場を後にし
残されたガガルルとヘケメト、騎士と戦士のぶつかりあいは凄まじい力と力のぶつかり合い
勝者はなく、敗者もなかった、ただ各々の心に波紋をなげかけて――――
――――〝Ⅴ〟
≪D.R.U.G.S.≫ トーリ=ヨハンセン VS 〝No.616〟ブラックハート ≪カノッサ機関≫
誰かが言った、彼らは〝作られた存在〟である、と――――
それが、後天的なものか先天的なものか、或いは人為的なものか自然的なものか、もしくは、望んだものか望まなかったものか
答えは分からない、ただ重ねあう言葉だけが真実であった
人を恨み、人を憎み、人を妬み、その存在を肯定してきた
ブラックハートにとって
〝作られた存在〟でありながら、まだ人であろうとするトーリ=ヨハンセンは許されざる存在であったのだろう
ならば、その二つがぶつかり合うのは、きっと必然――――
〝Mother's Lust Quicksilver〟トーリの扱う〝活性〟と〝抑制〟の能力
その姿はまさに変幻自在、攻撃防御とあらゆる形へとその身を変え、また咲き誇る
それが彼が〝Cypress〟の従属たる〝Children of Bodom〟の一員である理由なのだろう
相手するブラックハートは能力者という生易しいものではなかった
――――〝兵器〟だ、ガトリングにレーザー、ミサイル、その全てはただひたすらに人斬り包丁でなく
微塵の躊躇も微塵の情けも無く、眼前のトーリを虐殺せしめようとした
互いにボロボロになりブラックハートの放つ最後の必殺技〝ワイルドライオット〟その凄まじい雷撃をトーリは真っ向から受ける
そして〝Mother's Lust Quicksilver〟によりその威力を増大、空気中の電位差を高め、雷を呼び起こした
……決着は付かない激戦と舌戦、残ったのは直しきれない過ちのよう
――――〝Ⅵ〟
≪D.R.U.G.S.≫ ルシオ=ガーランドルフ VS 〝No.10〟リーネ・ヴァーゼン・フォルテ ≪カノッサ機関≫
彼はどこまでも自由気ままで彼女はどこまでも美しい姫君で
騎士が謡う幾万編の愛の詩も、少女の琴線一つ揺らせないのなら
多分彼はどこまでも、灰色のまま、その曖昧な存在を愉しむのだろう
戦いに意味を見出せなかったルシオにとって、彼の元へと降り立ったリーネの姿は、ある種天使のようであった
考えるよりも早く、伝えるよりも強く、紡がれるのは誘いの言葉、俺と一緒に遊ばない、なんて
そんな言葉を丁寧に対処するのはさすがと言うべきか、柔らかい物腰はかわいらしいその身から紡がれるべき音
先に手を出したのはルシオであった、倒したら一緒に遊んでくれるとの言葉に釣られてか攻撃を始める
〝Boys Like Girls〟――――代替の能力は彼には過ぎた代物で、それに対処するのはリーネの魔力の腕
可憐な身に似合わず強力な力、冷や汗という言葉では足りないほどに彼を追い込んだ
言葉を交わす中で、ルシオが逡巡するのはリーネの思う〝世界〟――――悲しいと思った、リーネがそう思ってしまっていることが
だからルシオはリーネには正しい道を歩いて欲しかった、日陰で生きる事を選択した彼にとって、リーネの姿は眩しすぎたから
わざとリーネの攻撃を受け、最後に決めるのは〝Boys Like Girls〟により彼の拳を代替させた風
倒れこんだリーネを介抱し、ルシオはまた、との約束をした
明日の事なんて分からなくて、次があるかは分からないけど……
ルシオが預けた上着と、ハンカチと、ハットと……リーネの柔らかな頬に溶けた接吻
リーネの返すとの言葉に、ルシオは上機嫌にその場を後にした
――――〝Ⅶ〟
≪D.R.U.G.S.≫ フランチェスコ=ヴィエリ VS 〝No.961〟シック・ボーイ ≪カノッサ機関≫
人を殺す事が罪であるならば、一体誰がそれを罰してくれるのであろうか
フランチェスコ=ヴィエリの逡巡は、戦いの中にあっても変わらなかった
〝ロッチナ・ファミリー〟の元、何十年とその命令の下で人を殺し続けて
――――手に入れたものは、全て泡沫の中に消えたのだから
相対したのは享楽の中を生きる紳士、
シック・ボーイ、二つのロートルが銃身を重ねた
〝Hospital Requiem〟――――〝背負い水〟とも呼ばれる特殊な水を扱うヴィエリに対し
それに真っ向から向かうのはシック・ボーイの能力、その身をゴキブリに変える凄まじい力だ
その戦いの中でヴィエリは問いかけるだろう、戦い続ける事の意味を
シック・ボーイは答える〝溺れる〟ということを――――その言葉がヴィエリに強い衝撃を与えた
彼の信じた〝D.R.U.G.S.〟は、ロッチナが今のロッチナになってから代わってしまった
それは存在意義の消滅であった、背中に乗るのはただ殺した躯の、物言わぬ重さだけ
突撃するシック・ボーイ、それすら読みきって、彼は〝Hospital Requiem〟により向かい風を作り出す
けれども、シック・ボーイの老獪さはその上をいった、彼はその風に乗せて己が得物を手元に引き寄せた
生まれて初めての完敗、だが気分は悪くなかった、生きる意味を、見つけたような気がしたから
――――だが、その思いは、彼のボスによって摘まれた
アレッサンドロ・ディ・ロッシの銃弾が彼を貫いた時、残る表情が、その無念さを伝えるのだろう
――――〝Ⅷ〟
≪D.R.U.G.S.≫ ヴィセンテ=リベラ VS アルフォンス=ヴェント ≪第三勢力≫
戦いの中に於いて、その身体というものは高いアドバンテージになる
2mを越す体躯の持ち主であるヴィセンテ=リベラにとって、彼に向かい来たアルフォンス=ヴェントの小柄な体躯は
まさに児戯であったのだろう、アルフォンスを殺すということなど……
だが違った、リベラの攻撃をアルフォンスは容易にいなしてみせた
〝大気〟の能力は、それこそ、風に舞う一陣の葉っぱのよう、触れることすら出来ぬ領域の中の存在
面白い、と思った、それでこそ――――殺す意味がある、とも
リベラの能力〝Gaia's Judgement〟は破壊と再生の能力、潰せば潰すほど強くなる強力な力
それでもアルフォンスはその姿勢を崩さなかった、どれだけ危険な目にあおうとも、向ける刃をずらさなかった
焦りだすのはリベラであった、これほど強い相手とは、今まで戦ってきたことは無かったから
一瞬の判断のミス、それを逃さずアルフォンスの一撃がリベラの身を捉えた
空中へと舞い上がるその身を、躊躇無くアルフォンスは葬った、そこには何の逡巡も無く
それこそが強さであるのだ、アルフォンス=ヴェントという存在の価値ともいえた
最終更新:2013年03月11日 10:08