斬れ。それこそが意義である。斬れ。それこそが価値である。斬れ。それこそが意味である。
斬れ。それこそが存在である。斬れ。それこそが証明である。斬れ。それこそが祝福である。
斬れ。それこそが愛情である。斬れ。それこそが喝采である。斬れ。それこそが自分である。
斬殺者の衝動が囁く。意義であり価値であり意味であり存在であり証明であり祝福であり愛情であり喝采であり自分であれ、と。
姓名 |
宮藤 帯刀 |
諱 |
千夏 |
性別 |
女性 |
年齢 |
十七歳 |
身長 |
168cm |
体重 |
63kg |
誕生日 |
6月5日 |
所属 |
元櫻の国参河國東嗚藩所属対人斬用人斬組織『刀狩隊』予備役、カノッサ機関 |
概要
櫻の国の参河國にて人斬り、テロリズムが横行した際に結成された警察組織を源流とする組織、『刀狩隊』の予備役として所属していた少女。
また、彼女自身もまた「素晴らしいと思うほどに、尊いと思うほどに、立派だと思うほどに殺したくなる」と言う異常性を備えた生粋の人斬りである。
故に彼女は同組織内でも忌避される存在であり滅多に招集がかけられる事も無く、またその異常性により両親からも遠ざけられている為、小さなアパートで独り暮らしをしている。
十三歳の頃から学校には通っていない為、義務教育はほとんど受けておらず、頭はそこまでよくないが、「直感的な戦闘論理」については非常に冴え渡る。
人を余りにも易々と斬り殺す人斬りであり乍ら、その根底にあるのは誰かの温もり、誰かに受け入れて貰う事。この『斬殺者の衝動』を乗り越えて、誰かに寄り添う事。
そしてそれを成立させた
穢土宮 入間に耽溺し、彼女の剣と成る事を心より誓っている。また、彼女に従う形でカノッサ機関に加わった。
性格
表面だけを見れば、気取った年相応の少女。
だがその実態は誰かとまともに触れ合う事が出来ない事、他人の出来る事が出来ない事、出来なくて良い事が出来る事、味方がいない事、自分がまともな人間では無い事。
特に人殺ししか知らない事を主とする劣等感の塊であり、その劣等感を人を斬る事で埋め合わせる異常者。
それでありながら然し自身の異常性に殉ずることが出来ず、心の底で手を伸ばし誰かを求め続ける殊勝な正常すらも併せ持ってしまっていた。
『私の名前は宮藤帯刀千夏』
誰かに自分を理解してほしい。受け入れて欲しい。けれどそうすれば自分はその誰かを殺してしまう。故に本来ならばそれは抑圧されて表に出る事の無い筈の感情であった。
だが。何処か自分と似た
彼女へと邂逅した時に、それらの渇望が漏れ出して、あまつさえそれを受け入れられてしまう。
その結果誕生したのが彼女への強力な愛情と依存。彼女の為にならば自ら命を絶つ事だって厭わない、彼女の剣と成る異常性の確立。
宮藤帯刀千夏より、彼女へ渇望するは三つ。
自分の事を最後まで見てくれる事、この『斬殺者の衝動』を乗り越えてくれる事、自分の名前を呼んでくれる事。
嫌われたっていい、疎まれたっていい。殺してくれたっていい。ただ最期までそこにいてくれれば、それでいい。
容姿
肩口ほどまで無造作に伸ばされた髪、目元までかかる前髪の下、両目は左眼は正常な黒い瞳であるが、右眼が白く濁っている。
手足はスラリと長く、全体的に女性的なラインが失われない程度に鍛えられている。バストはC程で、服を僅かに押し返しているくらい。
上には白いワイシャツ、その上に男性物の詰襟学生服を纏い、インバネスコートを羽織る。インバネスコートには『刀狩隊』所属時に支給された物で、隅に金字で『刀狩隊 宮藤帯刀』と刺繍されている。
黒鞘の太刀二本を革バンドを用いてベルトに通し、帯びている。
能力
「失妄眼」
遥か昔、剣客である祖先が極限の命のやり取りの中でその身体を適応させた結果産まれた新たな『身体機能』であり、遺伝する『魔眼』。
戦闘とは刹那のやり取り、その刹那において自らの疑問を持った時。人は簡単に死に絶える―――――― これは、それを無理矢理『引き起こす』。
右眼の視界内に入る生命体一つを対象に発動し、その者に対して、漠然とした、ほんの僅かな、しかし確実な『違和感』を感じさせる。
効力としてはただそれだけで、相手が気にしないとすればそれまでと言うくらいの、非常に薄く、他愛も無い。
但し。仮に、その違和感を少しでも『意識』してしまった時、それは戦いの中でほんの僅かな"隙"を産み出す事になるかもしれない。
「斬殺者の衝動」
培われた人斬りの遺伝子、それが引き起こす斬殺の衝動。
『そうするに相応しい』相手を感じ取り、自分の意とは関係無く、右腕の痙攣という形を以ってして対象の『斬殺』を主張する。
またその副作用として、戦闘時において生き残る術に非常に長け、また生存と殺人への執念も人並外れた物となり、その作用により非常にしぶとく、また執念深い。
戦闘技能
「身体能力」
剣客として十分に渡り合える程度の戦闘経験、そして太刀二本を同時に意のままに操れるほどの類稀なる膂力と技術を持つ。
然し両の手に一本ずつ、それも片方は通常の二倍もの重量を持つ刀を振り回す程の膂力に体力がついていかず、非常に消耗が激しい。
身のこなしは特別、と言う訳では無い物の、身軽。
耐久性自体は取り立てて特筆すべき点は無いが、その異様なまでの精神力により、死に至るまで動きつづけようとするほどの諦めの悪さ、、しぶとさを持つ。
「宮藤流撃剣術」
対人斬用人斬としての剣術、『剣術を屠る為の剣術』として産み出された殺人剣術。
正道から遥かに離れた外道、対戦相手の予想外、範囲外からの一撃、その間隙を狙う事を主とする、正道から外れた剣。
彼女の宮藤流撃剣術は一刀流に比べ遥かに少ない二刀流、二本の剣の内包する意外性を主軸とし、多段撃を多用する戦術を取る。
余談だが彼女は才能だけで言うのならば一刀流の方が優れている。
但し一刀流の鍛錬自体は片手間程度である上彼女自身はそれに気付いていない為、その才は活かされていない。
武器
「宝剣『彼岸花』」
刃渡り二尺四寸、朱鞘の太刀。宮藤家の家宝の剣でありながら、出自は不明であり、その材質から何から当然不明とされている。
その刃は鈍刀と呼ぶに相応しい、竹をまともに斬る事すらも怪しい物でありながら、その正体は"戦いの熱"を吸ってより鋭さを増していく妖刀。
外見に変化が齎される訳では無い。ただ、戦場に"存在"するだけで、其処に充満する"熱"を喰らい、密かに、そして静かに研ぎ澄まされていく。
「剛剣『雲龍』」
刃渡り二尺三寸、黒鞘の太刀。四十年前、当時街を騒がせた人斬りを斬り殺した功績によって参河國より宮藤家へと送られた刀。
人体を容易に切断する程度の切れ味は備えた良業物であるが、その本質はその剣の異常までの『重量』に在る。
その外見は通常の太刀と何も変わらない。刃も、鍔も、柄も、特筆すべき部位は備えていないが、その重量だけは通常の太刀を遥かに上回り、3kgにまで達する。
そしてその重量に相応しく、剛健。折れる、曲がるとは無縁の強度を誇る。
太刀「無銘」
量産品の日本刀。紛失した「宝剣『彼岸花』」の代替品。
特に秀でた要素は無い。
カノッサ機関製義指
戦闘によって右手の指を三本切断され、それを補うために
カニバディールによって用意され、譲り渡された。
見た目は全く違和感の無い様に作られ、元の指と変わらず精密に扱えるカノッサ機関の技術を以って作られた義指。
また、右手で何かを掴むか握るかして望めば、手に持っている物が手に貼り付ける機能も持ち合わせている。
あまり大きな力が加われば外れてしまうが、上手く扱えば壁に張り付く、と言う芸当も可能。
そしてその吸着は使用者の意思の強さによって、強度が変動する。
素性
櫻の国参河國東嗚藩にて、初夏、剣客である父親と藩士の娘である母親の間に産まれ、名を帯刀、諱を千夏と与えられる。
宮藤の家系には最初に産まれる子供に「失妄眼」と、「斬殺者の衝動」が遺伝する。彼女もその例に違わず、右の眼が白濁した「魔眼」となって生まれてきた。
五歳になるまで、大した事も無く健康な子供だった。元気よく、時に危なっかしくそこら中を歩き回っているような、実にやんちゃなだったという。
その歳より父親からの剣術指導が行われる。始めは小太刀を持たされたが、それでも尚それに振り回されているようで、この時点ではまだ非力だった。
然し凡そ三か月で、彼女はそれを手足の様に操れるようになった。流石に父親には及ばなかったものの、既に其処で才の片鱗を見せ始めた。
七の齢で既に真剣を握る。これもまた最初の内は慣れていなかったものの、二、三度の練習を以って、竹を真っ二つに斬る事に成功した。
十の歳にて木剣を振るった時、誤って道場の壁にぶつけてしまう。その際道場の壁は破れ、木剣は中途よりぽきりとへし折れていた。
その怪力に目を付けた彼の父親は、彼女に木剣二刀を手渡して打ち合う。結果はやはり父親の勝利ではあった、が。
父親の想像通り、彼女の力は常軌を逸していた。木剣二本を両の手に握りながら、それを何の苦にする事も無く、振り回し、あまつさえ打ち合う事が出来ていたのだから。
それからという物、彼女の剣術は二刀流へと移って行った。
彼女の剣術は思春期に入る頃には、父親を超える剣の腕となっていた。転機はそこ、思春期を迎えてすぐの十三歳より。
この時父は自分を超える実力を認め、二本の剣を差し出した。両者とも歴代の宮藤の剣客が持つ名刀であった。
それを持った宮藤帯刀は、一人の少女を斬り殺した。剣術一辺倒で趣味の合う友人がいない中で、唯一同じく剣術を習っていた、話の合う、剣客を目指す少女だった。
二人は常に一緒にいる様な仲だった。彼女の剣は対剣客用剣術であり、剣術修行をともに行う事で、その技にはより磨きがかかって行った。
犯行が行われたのは初夏、彼女の誕生日。剣術修行の後、彼女は友人に、ささやかではあるが誕生日を祝われた。
彼女は感激した。そしてそんな素晴らしい友人を、その帰り道、「斬殺」した。死体には、激しい斬り合いの痕が残っていた。
帰宅した少女の姿を見た父親は、最初「仕方がない」と考えていた。宮藤の一子には、「斬殺者の衝動」が遺伝するからだ。
思春期にそれが開花する事も珍しくは無い。だが、斬り殺した相手を知って、父親は「困惑」と「驚愕」に包まれた。
過去、歴代の宮藤家の第一子が持つ「斬殺者の衝動」は其処まで強烈な物では無い、戦闘での精神面の後押しの様な物で、そんな無差別な物では無かった。
決して、親しい人間を衝動に耐え切れずに殺してしまう程では無かった。父親は、その理由を彼女に問うと。
私に優しくしてくれた、私の一番の友達だったから。だから斬りたくなった。
宮藤帯刀と言う人間の斬殺衝動が、その人間性を覆うほどになっていた事を、父親は其処で初めて知り、そして同時に、恐ろしくなった。
学校へ行くのはそこで止められた。それから彼女は、宮藤家が代々所属する対人斬用人斬組織『刀狩隊』の予備役として編入され、親元から遠ざけられた。
この時点で彼女の剣の腕前は他の現役隊員達とは勝るとも劣らず、一年で正式隊員へと抜擢。
然しその僅か三か月後の任務において、他隊員の制止も聞かず櫻の国の『維新派』の人間を文字通り撫で斬り。
理由を問われ、「そうしたかったから」と答えた為に、やはり危惧した同部隊の隊長らの協議の末に、彼女は予備役へと逆戻りとなる。
彼女が十七の歳までに斬り殺した人間は『刀狩隊』が確認している中では三十七人。非公認の犯行を含めれば、其の数は膨れ上がり、現在進行形で増えている。
両親からは遠ざけられ、刀狩隊では彼女は非常に疎まれる存在となっており、彼女に味方はいなかった。
人斬りは楽しいし、衝動に身を委ねるには気持ちが良い。だが、現在の生涯によって培われた劣等感は余りにも膨大であり、強大である。
彼女とて唯一人の人間である事もまた、一つの事実である。
最終更新:2015年01月04日 21:50