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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第07話04

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nwxss

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<Watermelone Clash!>


ミミズクに後を任せてきたテレーズはため息をつきながらてぽてぽと歩いていた。
まったく、肉体派チルドレンだのFHの改造人間だのと体を使って競い合うなんてちょっとありえないわー、となんだか俗世間に染まった発言をするが、聞く者はいない。
いつもなら独り言もミミズクが聞いてくれるのだが、ミミズクは今ビーチバレー中である。聞いてはいない。
と。

「あれ、テレーズさんじゃないですか」

そう声をかけたのは休憩をしていた結希だ。今は白いパーカーを羽織っている。
結希はテレーズと同じく若いながらもUGNで高い地位につく人間だ。彼女にとっても少し近しい立場の人間である。
テレーズは親しげに笑うと、答える。

「結希。あなたは遊ばないの?」
「午前中、はしゃぎすぎちゃいまして。今はちょっと疲れたし、ご飯の配達を頼んで休んでたところなんです」

ケイトさんもあの通り審判してますし、と結希。
あまり体力があるほうではない少女である。その上彼女自身は限界突破するまで走るタイプでもないため、無理なものは無理だとはっきり認めて休んでいた。
ふぅん、と笑ってテレーズはからかう。

「遊ばないのは疲れたから?それともご意中の彼が構ってくれないから?」
「て、テレーズさんっ!なんかキャラ違いませんかっ!?」
「朝から薫の相手して疲れてるのよ。雄吾の策略にもはまってる状態でちょっと鬱憤も溜まっててね、少しくらい鬱憤晴らしさせなさい」

きゃいきゃいと二人の少女がじゃれあっていると、そこに声がかかった。

「結希ー、結希ー……って、そちらの方はどなたでありますか?」

ノーチェだ。不思議そうな彼女に、結希が笑顔で答える。

「テレーズ・ブルムさんって言うんです。UGNで……そうですね、私と同じお友達って言えばいいですかね」

その彼女の言には、テレーズもまたオーヴァードである、という意味が込められている。
それを正確に理解したのかしないのか、そもそもそんなこと心底どうでもいいと思っているのか。ふぅん、の一言で終わらせると、いつもの能天気な笑みで自己紹介。

「はじめましてであります。わたくし、ノーチェでありますよっ」
「―――そう。はじめまして、ノーチェ」

これが雄吾の言ってた『協力者』か、と心の中で呟くテレーズ。
彼女は、霧谷から今回の事件には男女一名ずつの『協力者』が『違う場所』から来ており、彼らはこの夏が終わるともとの場所に戻る、という話を聞いていた。
ここ一年の間に特異点をめぐる戦いが日本で起きたりしたせいもあり、UGNでは『違う世界』が存在することも受け止められている。
だからこそ、『違う世界』に対する考えも若干緩めになっており、テレーズ自身は触らぬ神にたたりなし、といったように受け止めている。
彼女がここにいるのは、『違う世界』をFHに悪用されても困るため彼女自身までで情報を握り潰し、これ以上人の目に触れないようにするためでもある。

その、割と大事の中心にいるはずの『協力者』は、なんだか毒気を抜く笑顔でテレーズを見た。
霧谷から彼らの安全性自体は保障されていたが、確かにそこまで危機感を抱かなくてもいいか、と考えてよさそうにも思う。
そんなことはまったく気にせず結希が問い返す。

「それで、ノーチェさん。私に何かご用があったんじゃないんですか?」
「あ、そうそうでありますっ!えーと……」

と言ってノーチェは月衣に手を突っ込む。
その光景に研究者として少し興味を引かれるテレーズ。月衣自体の報告は聞いていないため、これが『協力者』の能力なのか、と興味津々だ。
よっと、と彼女が掛け声とともに引きずり出したのは、ビニールシートと、白い鉢巻のような細長い布、どこから調達してきたのか10フィートほどの木の棒と―――

「……スイカ?」
「はいでありますっ!」

彼女の水晶球ほどの大きさはあろうかという、巨大なスイカであった。
テレーズはこの組み合わせを見ても上手く結びつかないが、結希はあぁ、と手をつき答えた。

「なるほど、スイカ割りですね!」
「ざっつらーいでありますっ。日本では海に来たらみんなスイカ割りを楽しむものだという話を聞いてたものでありますからわたくしも景気よくすっぱりと割ろうかとっ!」
「いえ、さすがにみんながみんなやるわけではないんですが……」

違うのでありますか?と素で尋ねるノーチェ。つーか当たり前だ。そんなことしてたら日本中の砂浜が真っ赤に染まるわ。
結希は苦笑しつつ、再び尋ねた。

「それで、なんで私を呼んだんですか?」
「確かスイカ割りは一人でやるものではないでありましょう?誘導してくれる人がいないとただの修行になるでありますし。
 だから、結希も一緒にやらないかと誘いに来たでありますよ」

なるほど、と結希は頷くとパーカーをきちんと着直して笑顔でいいですよ、と答えた。

「私もヒマですし、実はスイカ割りするのも初めてなんです」
「ならちょうどいいでありますなっ!テレーズもヒマを持ち余してる口でありましょう?一緒にやるでありますよっ!」

え?と疑問を投げかけるよりも早く。ノーチェはテレーズの手を掴んで広いところへ向かって駆け出した。


「では。一番手ノーチェっ!いくでありますっ!」

どこかの丸いカエル軍曹が好きで仕方なさそうな台詞とともに、目隠しをしたノーチェが棒を手によたよた歩きだす。
参加に快く答えた結希も、なし崩し的ながらもやるからには真剣なテレーズも、一生懸命声をかける。

「あ、違いますよっ!右右、もーちょっと仰角ですっ!」
「そこは石があるわっ!……もう一歩大きめに、そう!」

ふらふら、ふらふらとよためきつつ、ノイマンの計算で完璧なポジションへと誘導されたノーチェ。
時々間違ってもみじの崩した岩山に突っ込みかけたりと危ない橋を踏みつつも、結希の今ですっ!という言葉を信じて彼女は棒を振り下ろ―――



「隼人、トス!」
「あいよっ!狛江、行けっ!」
「りょーかいっ!一番、辰巳狛江いっきまーす!くらえ、オーバーヘッド……回転蹴りぃっ!」



―――そうとした時、横合いからあらぬ方向からすっ飛んできた超高速回転するバレーボールが頭に直撃。ものの見事に吹っ飛ぶノーチェ。
あわてて駆け寄る椿。呆然としている結希とテレーズと対コートにいるチーム・エクソダスの面々。狛江を叱る隼人と、ごめんごめん、と謝る狛江。
そんな中、ケイトの冷静な声がむなしく響く。

「えー……これはセパタクローじゃなくてあくまでビーチバレーなんで、足アタックは禁止としまーす。危険だし。
 あと、結希に間違いでも当てたら僕と手加減ナシのガチ決闘してもらうんでよろしくー」

状況が混乱しております。今しばらくお待ちください。

  ***

「いやー、おばあ様が川の向こうから手を振ってて、グレートピレネーが名画の前で疲れたよってそりを引っぱってくるのが見えた時はどうしようかと思ったでありますよ」
「まったく、心配させないでよ。心臓が凍ったわ」

のーてんきに戻ってきたノーチェと、それを困ったようにため息をつきながらのテレーズ。
飛んできたバレーボールによって大きなたんこぶはできたものの、結構普通に復活していたりする。すごいぞノーチェ。
ともあれ。スイカが割れてないのでスイカ割り続行である。
今度の挑戦者は結希だ。いきますよー、と一声上げると、ふらふらしながらも着実にスイカのほうへと歩いていく。
ノイマンとしての能力をフル活用し、方向や歩数などを完璧に計算して歩いているようだ。

「いやぁ……すごいでありますな、結希」
「仮にもノイマンのピュアブリードだもの。あの程度のこと造作もないわ」

そう平然と言った後、テレーズは少し哀れむように結希を見た。

「……まぁ。結希の場合、計算を超えるものが出て失敗する、っていうのがいつものことなんだけど」

テレーズが言い終わると同時。
計算上の最後の一歩を踏み出そうとした結希の足元にはバナナの皮が!

滑った。
それはもうきれいにつるんっと。
はにゃぁっ!?と鳴き声が砂浜に響いた。
なお、浜辺にバナナの皮を投げ捨てた以蔵がケイトにマジでガチバトルさせられたのを追記しておく。
結希にケガはなかったので3割殺しくらいで済まされたようではあるが。
……合掌。


  ***

で。とテレーズはため息をついて告げた。

「結局、私もやることになるわけね」
「こういうのは参加することに意味があるんですって。結構楽しかったですよ?」
「はーい、それじゃ目隠しするでありますよー」

有無を言わせず巻きついていく白い布。
目を開けても、まったく先の光景は見えない。ふぅ、と一つため息。

「わかったわよ。やるからには割っちゃうけど、いいの?」
「おぉ、予告スイカ割りでありますなっ!カッコいいでありますよテレーズ!」
「というか、テレーズさんに割ってもらわないともう一週しなきゃいけなくなるんでむしろ割ってやるよくらいの勢いでお願いします」

はしゃぐノーチェ、苦笑の結希。
ともあれ、テレーズのチャレンジがはじまった。
さく、さく、と一歩ずつ歩みを進めるテレーズ。その歩みのたびに、ノーチェと結希から修正が入る。
それを正確に把握し、少しずつ角度を直し、ストップ!という言葉とともに足を止めた。
後は微妙に修正をかけて、一つため息。

「いくわよっ!」

大上段から、思い切りその手に握った木の棒を振り下ろす―――っ!


ぱこ。


……はい?という言葉が異口同音に三つ、吐き出された。
テレーズがあわてて目隠しを外す。
木の棒は確かにスイカに当たっていた。それを結希もノーチェもちゃんと見ている。のに。

「な、なんでっ!?なんで割れてないのっ?」
「実はあのスイカものすごく固いとか?」
「いやいやふっつーにスーパーで売ってたスイカでありますからな?」

ぱたぱた、と手を振るノーチェ。
ちなみにテレーズは耳まで真っ赤になっている。予告スイカ割りしといてできなかったのがそんなに恥ずかしかったんだろうか。
と、そこへ。

「なにやってんだお前ら」

声をかけた人間がいた。
そこにいたのは湯気のたつ深めの紙皿と割り箸を載せたトレイを持っている柊がいた。

「柊さん。なにやってるんですこんなところで」
「なにって……支部長さんがメシ運んで来いって言ったんだろうが。ほい、海鮮鍋とおにぎり三人分」
「あれ。テレーズさんとノーチェさんの分も持ってきてくれたんですか?」
「ちょうど三人でなんかしてるみたいだったからな。何度も往復すんのメンドいだろ」

ほい、とトレイを置くと、呆然としているテレーズとその状況を見て、一言呟いた。

「スイカ割りか」
「そうでありますっ!ただ、棒当たったのにスイカ割れなかったのでありましてな?」

ふぅん、と頷いてスイカに近寄り、ぺちぺちと叩く。

「スイカ自体は普通な。当たったとこへこんではいるし。単に力と当たり所の問題だろ」
「そうでありますか……あ」

何かに気づいたようにぽん、と手を叩いてノーチェは柊に何か期待するように目を輝かせている。
別に仲間になりたがっているわけではないだろうが、これまで一度も外れたことのない嫌な予感に従い、彼はたずねた。

「で?お前は何を期待込めてこっちを見てるんだ?」
「蓮司、ちょっと魔剣をお貸し願いたいのでありますよ」
「……一応。何のために使おうとしてるのか聞かせてもらおうか」
「魔剣でスイカをちょちょーいと」
「人の魔剣を包丁代わりに使おうとすんなっ!?」

柊、魂の叫び。
自分の半身をそんなことに使われればさすがに情けなくもなるだろう。
閑話休題。
ぶすっとした仏頂面で、彼はノーチェに告げる。

「あのな、もし貸したとしても魔剣だぞ?俺以外にまともに扱えるわけねぇだろうが」
「そーゆーものでありますか?」
「そっち側詳しいお前が知らないのは意外だな。
 魔剣ってのは持ち主を選ぶもんだ、基本的に選ばれてる担い手以外じゃ使うのは無理。
 気性の荒いじゃじゃ馬なら、担い手以外は触ることすらできねぇよ」

魔剣。
担い手を選び、それと共に夜闇を切り裂く成長する剣。
それらは自ら担うものを選ぶゆえか、それに値せぬ者に対してはその力の欠片すらも与えることはない。
柊の魔剣もまた例外ではない。魔を断つために存在するその意義を、スイカ如きに使われるのは心外だろう。
ノーチェは魔法的な知識はあれど、そういった近距離戦を得手とするウィザードの能力や詳しい事情などにはやや疎い。
逆に柊は特に魔器の専門だ。そちら側、武器知識などはそれなりにある。遠距離武器となるとちょっと厳しいが。
柊の説明にふぅん、と頷いてノーチェはたずねる。

「じゃあ、蓮司がスイカを魔剣で―――」
「ぜっっってーイヤだ。
 ……つーか、ともかくスイカが割れればいいんだろ」

ため息とともに彼は軽く拳を握る。
せいっ!と気合とともに拳でスイカを打ち抜く。ぱかん、と割れるスイカ。おぉぉぉー、と結希とノーチェ拍手。
ぶんぶん、とスイカの赤い果汁まみれになった右手をふりつつ、まだ呆然としたままのテレーズを見た。
スイカが割れなかったことが残念だったのかな、と脳内で補完すると、彼女の背中を左手でぽん、と軽く叩く。

「スイカ割りってのはスイカに棒当てたらそこで終わりなんだから、お前の勝ちだろ。あとは割れたスイカと鍋でも食べてな」
「なっ、な……別に落ち込んでなんかいないわよっ!」
「お。そんだけ元気ありゃ大丈夫だな」

んじゃ、俺はまだマーヤの手伝いがあるから、と結希に言うと、柊はトレイだけ持って戻っていった。
ノーチェがのーてんきに喜ぶ。

「やった、スイカ割れたでありますよ。あとは思う存分貪るだけでありますなっ!」
「割れたっていうか……確かにスイカ割りですけど、拳で割る人はじめて見ましたよ」

苦笑いしながら、結希がそう言うと―――テレーズが彼女の肩をがしっと掴んだ。

「……て、テレーズさん?どうしたんです」
「―――ちょっと結希?あの無礼な男は一体なに?」
「なにって……き、霧谷さんから聞いてません?柊蓮司さんっていうんですけど」
「ノーチェと同じ、『協力者』ってヤツね?この夏が終わったらどっかに帰るっていう」

こくこくこくこく、と首を縦に振るしかない結希。
柊、蓮司、と名前を呟いて、力なく結希の肩から手を下ろす。
ほっとため息をついた結希に、ノーチェの言葉がかかる。

「結希ー、結希ー。蓮司が持ってきたごはん、冷めないうちにいただくでありますよ」
「あ……はぁい。ほら、テレーズさんもいただきましょうごはん」
「……そうね。とりあえず、いただくわ」

てぽてぽてぽ、と力なく結希の後ろをついて歩くテレーズ。
うつむいていた彼女の顔を見れたものは、いない。


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