完結編・その3
<なにいろバカンス>
UGNと書かれたビーチパラソル。
そこで、ロッキングチェアに横になってサングラスをかけてリラックスしているビキニの少年がいた。
パッションフルーツのジュースをなみなみと注いで、ハイビスカスを飾った大きなグラスを片手に、せわしなく動く同じ仕事場の従業員を見ていた。
ビーチバレー班は今第二試合に移行しており、戦力外かと思われていたミミズクの意外な好プレーにより、ミナリや紫帆が次々アタックを決め、それを以蔵が顔面レシーブ。
そんな光景が広がっている。
そんな光景を鼻で皮肉気に笑って、彼は―――
そこで、ロッキングチェアに横になってサングラスをかけてリラックスしているビキニの少年がいた。
パッションフルーツのジュースをなみなみと注いで、ハイビスカスを飾った大きなグラスを片手に、せわしなく動く同じ仕事場の従業員を見ていた。
ビーチバレー班は今第二試合に移行しており、戦力外かと思われていたミミズクの意外な好プレーにより、ミナリや紫帆が次々アタックを決め、それを以蔵が顔面レシーブ。
そんな光景が広がっている。
そんな光景を鼻で皮肉気に笑って、彼は―――
「『ふっ、くだらん』とでもいうつもり?」
からかいの混じった声で、機先を制された。
その声自体は聞いたことがあるもので、いぶかしく思うことはなかったものの、逆にその声に精神を逆なでられて不機嫌になる少年こと左京。
彼の眉間のしわを見て、くすりと笑って左京の台詞をとったのは鈴木和美(すずき・かずみ)。「謎の女(パープルレイン)」の二つ名を持つUGNのエージェントだ。
黒地の胸元に白い小さな蓮の刺繍のワンポイント、布地が最低限しかない紐で結ぶ形の水着に黒いパレオ。そんな蟲惑的な格好で、いつもどおりのサングラス。
左京の機嫌が傾いたのがおかしかったのか、彼女は笑みをたたえたまま答える。
その声自体は聞いたことがあるもので、いぶかしく思うことはなかったものの、逆にその声に精神を逆なでられて不機嫌になる少年こと左京。
彼の眉間のしわを見て、くすりと笑って左京の台詞をとったのは鈴木和美(すずき・かずみ)。「謎の女(パープルレイン)」の二つ名を持つUGNのエージェントだ。
黒地の胸元に白い小さな蓮の刺繍のワンポイント、布地が最低限しかない紐で結ぶ形の水着に黒いパレオ。そんな蟲惑的な格好で、いつもどおりのサングラス。
左京の機嫌が傾いたのがおかしかったのか、彼女は笑みをたたえたまま答える。
「ごめんなさい。悪いことをしてしまったかしら?」
「……わかっているのなら最初からやるな」
「ふふっ、私もバカンスで少し気が大きくなっているみたいね。
今回は私が来たからといって何が起きるというわけでもないのだから、もう少し態度を柔らかくしてくれてもいいんじゃないかしら?」
「……わかっているのなら最初からやるな」
「ふふっ、私もバカンスで少し気が大きくなっているみたいね。
今回は私が来たからといって何が起きるというわけでもないのだから、もう少し態度を柔らかくしてくれてもいいんじゃないかしら?」
その言葉に左京はふん、と鼻を鳴らすのみ。
無言のその間を埋めるのは、潮騒と喧騒だけ。
沈黙を打ち破ったのは、珍しいことに左京の方だった。
無言のその間を埋めるのは、潮騒と喧騒だけ。
沈黙を打ち破ったのは、珍しいことに左京の方だった。
「―――お前でも、心躍らせることなどあるんだな」
「あら。私を機械かなにかだとでも思っていた?」
「ワーカーホリックのようなものだとは思っていたな。お前が俺に会うこと自体がお前にとっては仕事の時間だ、そう感じるのも仕方がないのかもしれんが」
「あら。私を機械かなにかだとでも思っていた?」
「ワーカーホリックのようなものだとは思っていたな。お前が俺に会うこと自体がお前にとっては仕事の時間だ、そう感じるのも仕方がないのかもしれんが」
そうね、と頷いて―――和美は、まぶしそうに子供達を見て、独り言のように呟く。
「―――こうして見ていると、あの子たちもまるで普通の子に見えてくるから不思議ね」
和美はUGNのエージェントだ。
オーヴァードと呼ばれる存在が、普通の世界にはまだあっていいものでないことを知っている。
それでも。
それでも彼女は、この陽の当たる世界の光景が続いていってほしいと思うのだ。
彼女の言葉に、左京はふっ、といつもの通りシニカルな笑みを浮かべる。
オーヴァードと呼ばれる存在が、普通の世界にはまだあっていいものでないことを知っている。
それでも。
それでも彼女は、この陽の当たる世界の光景が続いていってほしいと思うのだ。
彼女の言葉に、左京はふっ、といつもの通りシニカルな笑みを浮かべる。
「くだらんな」
「そう、ね。一度変わってしまったものが普通に戻れるはずが―――」
「その考えそのものがくだらない、と言っている」
「そう、ね。一度変わってしまったものが普通に戻れるはずが―――」
「その考えそのものがくだらない、と言っている」
つまらなそうに切って捨てられた和美が、え?と不思議そうな顔で左京を向く。
左京は目を閉じたまま答えた。
左京は目を閉じたまま答えた。
「確かに、俺たちは『普通の』連中から見れば化け物なんだろう。当たり前だ。まっとうな連中は殺し合いをしては生き返る、なんてバカな真似できるはずもない。
だがな―――では、化け物のような力を持ってしまった俺たちには普通なんてものは存在しないのか?」
だがな―――では、化け物のような力を持ってしまった俺たちには普通なんてものは存在しないのか?」
淡々と、彼は告げ続ける。それが唯一の真実であるとでもいうように。
「普通、というのは並であるということ。どこにでもある、ということだ。つまりこれは日常と言い換えられなくもない。
では普通でないと言われる俺たちには日常は存在しないのか?それは違う。真っ当な連中とは違うかもしれん。形が歪かもしれん。だが―――確実に続く毎日は、ある。
友人がいる。戦友がいる。戦うべき敵がいて、守りたいものがある。それは、全て俺たちの日常の一部だ。俺たちにもどこにでもある日常が存在するということだ。
つまりは―――俺たちはその日常に絶望しない限りにおいて、『普通の人間』だということだ」
では普通でないと言われる俺たちには日常は存在しないのか?それは違う。真っ当な連中とは違うかもしれん。形が歪かもしれん。だが―――確実に続く毎日は、ある。
友人がいる。戦友がいる。戦うべき敵がいて、守りたいものがある。それは、全て俺たちの日常の一部だ。俺たちにもどこにでもある日常が存在するということだ。
つまりは―――俺たちはその日常に絶望しない限りにおいて、『普通の人間』だということだ」
淡白で、その上配慮のあるようには見えない言葉。
その言葉が左京から出たことに、本気で目を丸くしてしばらく言葉を失った和美。
彼女の知っている左京は、もっと他人に興味がなく、もっと自分の殻に閉じこもっていて、もっと自分以外に無頓着だったはずだ。
そんな彼が、和美を気遣ったような言葉を吐いた。それも、彼らしく理路整然としていながら彼らしくない希望に満ちた屁理屈をこねて。
そのきっかけがなんだったのかはわからない。外から見ただけではそうわからない変化だろう。よりアクが強くなったとも言える。
この夏の間に、それでも左京は何かしらの心境の変化があったのだろう。
それはきっと人間との絆を得たがための成長。あの街にいて、たくさんの人間にあったからこその変化だ。
その言葉が左京から出たことに、本気で目を丸くしてしばらく言葉を失った和美。
彼女の知っている左京は、もっと他人に興味がなく、もっと自分の殻に閉じこもっていて、もっと自分以外に無頓着だったはずだ。
そんな彼が、和美を気遣ったような言葉を吐いた。それも、彼らしく理路整然としていながら彼らしくない希望に満ちた屁理屈をこねて。
そのきっかけがなんだったのかはわからない。外から見ただけではそうわからない変化だろう。よりアクが強くなったとも言える。
この夏の間に、それでも左京は何かしらの心境の変化があったのだろう。
それはきっと人間との絆を得たがための成長。あの街にいて、たくさんの人間にあったからこその変化だ。
くすり、と笑って和美は言った。
「あなたにそんなことを言われるとは思ってもみなかったわ」
「フッ。単に率直に思ったことを言っただけだ」
「フッ。単に率直に思ったことを言っただけだ」
じゅー、とジュースをすする左京。
それで?と和美はたずねる。
それで?と和美はたずねる。
「あなたは、あの日常の中に入っていかないのかしら?」
「生憎と体を動かすのは苦手でな。あいつらのバカな行動を見ているのも俺の日常の一部だということだ」
「生憎と体を動かすのは苦手でな。あいつらのバカな行動を見ているのも俺の日常の一部だということだ」
そんな左京にふふ、と笑って。じゃあ、と彼女は続けた。
「6時半には、ちゃんと戻ってきなさいね。あなたも楽しいと思うものがあると思うから」
ふん、とそれを鼻で笑う左京。和美はそれを楽しげに眺めて、ご飯を食べ終わりスイカをもしゃもしゃかじっている娘達の区画へと歩き出した。
<真夏の浜辺熱血出店勝負!完結編>
日もだいぶ傾いた砂浜。そこには、やり遂げた顔の男が二人、座り込んでいた。
彼らの所持する屋台にはそれぞれ『材料終了のため店じまい』と書かれた掛札がかけられていた。
司が、満足そうな笑顔で言った。
彼らの所持する屋台にはそれぞれ『材料終了のため店じまい』と書かれた掛札がかけられていた。
司が、満足そうな笑顔で言った。
「あー……つっかれた」
「はっはっは。こちらもいささか疲れましたがね。まさか、最後まで張り合ってくださるとは思っていませんでした。失礼しました」
「安心しろ。こっちも最後まで張り合うと思ってなかったから」
「私も露店には多少自信があったんですがねぇ。それも一番得意のヤキソバ屋台で勝てなかったのは、あなたが始めてです」
「勝つも負けるもねぇだろ。同時に材料がなくなっただけで」
「はっはっは。こちらもいささか疲れましたがね。まさか、最後まで張り合ってくださるとは思っていませんでした。失礼しました」
「安心しろ。こっちも最後まで張り合うと思ってなかったから」
「私も露店には多少自信があったんですがねぇ。それも一番得意のヤキソバ屋台で勝てなかったのは、あなたが始めてです」
「勝つも負けるもねぇだろ。同時に材料がなくなっただけで」
先ほどまでデッドヒートを繰り広げていた司と謎のローブ男。
が、しかし彼らがどれだけ無限に戦えるとしても先に材料がへたってしまえばどうしようもなかったりする。
そんなこんなでシロップとミネラルウォーターのなくなった司と、麺と野菜のなくなったローブ男は同時に店じまい、という形になってしまったのだった。
私もこのお金をちょっと振り込む先があるんでそろそろおいとましますよ、と言い、ローブ男は笑顔で司に手を差し出す。
が、しかし彼らがどれだけ無限に戦えるとしても先に材料がへたってしまえばどうしようもなかったりする。
そんなこんなでシロップとミネラルウォーターのなくなった司と、麺と野菜のなくなったローブ男は同時に店じまい、という形になってしまったのだった。
私もこのお金をちょっと振り込む先があるんでそろそろおいとましますよ、と言い、ローブ男は笑顔で司に手を差し出す。
「いつか、またあなたと再戦したいものです」
「俺は別に屋台専門ってわけじゃないが……まあ、アンタとまた勝負ってのなら悪くないかな」
「では、いずれということで」
「俺は別に屋台専門ってわけじゃないが……まあ、アンタとまた勝負ってのなら悪くないかな」
「では、いずれということで」
がしっ、と男らしく握手。その向こうには沈む夕日がある。二人には満足そうな笑顔がはかれていた。
ぽん、とお互いの肩を叩くとすれ違いながら―――ローブ男がささやいた。
ぽん、とお互いの肩を叩くとすれ違いながら―――ローブ男がささやいた。
「じゃあ、また会いましょう。ツカサくん」
おそらくは紫帆に呼ばれていたのでも聞いていたのだろう名前で呼ばれ、そういえば、と司は思い至る。
「待て。そういえばアンタはなんて―――」
振り返ってそうたずねようとし―――そこにはもうローブ男の姿はなかった。
海風が吹き抜けるだけの、なにもない空間。あまりに唐突にいなくなった男にちょっとだけ目を見開いて、一拍置いてにっと笑う。
海風が吹き抜けるだけの、なにもない空間。あまりに唐突にいなくなった男にちょっとだけ目を見開いて、一拍置いてにっと笑う。
「どこまでわけがわかんねぇんだか。まぁいいや。名前は次に会った時に聞いてやるよ」
また会おう、という気持ちをその言葉にこめ、手をひらひら振って、司はパーカーのポケットに手をつっこむと、その場を去った。
……素直じゃねぇ連中である。
……素直じゃねぇ連中である。
<UGNの財政力>
日の暮れかけた頃。男性陣は海から戻り、私服に着替えて旅館の前で女性陣を待っていた。
相手がいる男性陣はそわそわそわそわしているが、特に気にしない連中は超高速あっち向いてホイしたり叩いてかぶってじゃんけんポン大会したりしている。
と、そこへ。山吹色に朱色の紅葉が腰から裾にかけてあしらわれた浴衣を着た、笑顔が魅力的な少女が現れて隼人に声をかけた。
相手がいる男性陣はそわそわそわそわしているが、特に気にしない連中は超高速あっち向いてホイしたり叩いてかぶってじゃんけんポン大会したりしている。
と、そこへ。山吹色に朱色の紅葉が腰から裾にかけてあしらわれた浴衣を着た、笑顔が魅力的な少女が現れて隼人に声をかけた。
「やっほ。久しぶり、隼人」
「え―――おまっ、伊織かっ!?」
「え―――おまっ、伊織かっ!?」
柏木伊織(かしわぎ・いおり)。隼人や椿と同期のチルドレンで、色々とごたごたがあった後今もUGNに監視付きとはいえ所属する少女である。
彼女は久しぶりに会う仲間に笑顔で来ちゃった、というものの、先も言ったとおり彼女は監視付きで動かなければならない立場の人間である。
彼女は久しぶりに会う仲間に笑顔で来ちゃった、というものの、先も言ったとおり彼女は監視付きで動かなければならない立場の人間である。
「なんでこんなとこにいるんだよ、お前自由に外出られないはずだろ?」
「うん。だから、お仕事お仕事。
あのバカ兄さんがね、薬王寺支部長に頼まれた物を運ぶのに、私を指定したってだけの話」
「うん。だから、お仕事お仕事。
あのバカ兄さんがね、薬王寺支部長に頼まれた物を運ぶのに、私を指定したってだけの話」
呆れたように肩をすくめる伊織。
なお。伊織の兄は苗字が違うものの、UGNの日本支部長こと霧谷雄吾であることを追記しておく。
彼女の言葉に隼人が頼まれ物?と不思議そうに問うと―――
なお。伊織の兄は苗字が違うものの、UGNの日本支部長こと霧谷雄吾であることを追記しておく。
彼女の言葉に隼人が頼まれ物?と不思議そうに問うと―――
「お待たせしましたっ」
そこにいたのは、色とりどりの花々だった。
「委員長、おかしくないかな」
「よく似合ってるわよ、紫帆」
「よく似合ってるわよ、紫帆」
淡い桃色の地に小さな白いピンドット柄。バレッタ上げの髪。
黒地に露草が月光を受けたように浮き上がった浴衣。ポニーテールにした黒髪がつややかに踊る。
黒地に露草が月光を受けたように浮き上がった浴衣。ポニーテールにした黒髪がつややかに踊る。
「えぇと、どうでしょうかケイトさん」
「史朗。どうかな、選んだの着てみたんだけど」
「史朗。どうかな、選んだの着てみたんだけど」
白地を赤から薄桃までのさまざまな花が飾る。海色の髪留めで前髪を留める。
鮮やかな赤に白薄紅の桜の花が風に踊り舞う。いつもとは違う桜色のリボンが風に揺れる。
鮮やかな赤に白薄紅の桜の花が風に踊り舞う。いつもとは違う桜色のリボンが風に揺れる。
「狛江、上に空手着着るのはどうかと思う……」
「え?だってこれははずせないもん」
「え?だってこれははずせないもん」
深く暗めの青に映える白と紅の椿。短めではあるものの髪をアップに上げる。
青に白の踊る夏らしい白波模様になぜか羽織った空手道着。その着こなしはいかがなものかと。
青に白の踊る夏らしい白波模様になぜか羽織った空手道着。その着こなしはいかがなものかと。
「マーヤさんもモルガンちゃんもよく似合ってるよ」
「というか。浴衣を着たいがためにアキハバラから飛んでくるというのはどうなんです、モルガン」
「いいんじゃー!わらわだってたまには外に出ないとダメなんじゃー!海辺は日に焼けるから嫌だけど」
「というか。浴衣を着たいがためにアキハバラから飛んでくるというのはどうなんです、モルガン」
「いいんじゃー!わらわだってたまには外に出ないとダメなんじゃー!海辺は日に焼けるから嫌だけど」
藍色に、紅葉と同じ秋の花である撫子。ぽん、と二人の背中を叩く笑顔がとてもまぶしい。
薄い浅葱色に大きな白百合のあしらわれている浴衣。飾り耳にはおしゃれなのか真っ白なリボン。
紺地に華やかなたくさんの色のコスモス。薄桃色のリボンでくくったツインテール。
薄い浅葱色に大きな白百合のあしらわれている浴衣。飾り耳にはおしゃれなのか真っ白なリボン。
紺地に華やかなたくさんの色のコスモス。薄桃色のリボンでくくったツインテール。
「ほら綾、隠れないの」
「……恥ずかしい」
「……恥ずかしい」
落ち着いた臙脂色にいくつもひらひら蝶が舞う。髪は職場と同じく一まとめにされている。
濃い目のピンクに白くふわふわした小さな花がいくつも咲く。小さな三つ編みをいくつも下げている。
濃い目のピンクに白くふわふわした小さな花がいくつも咲く。小さな三つ編みをいくつも下げている。
「可愛いの着れてよかったねーアイヴィ!」
「……ちょっと可愛すぎません?」
「……ちょっと可愛すぎません?」
黒地に赤バラ、フリル付きの浴衣。いつもは飾り気のない金髪は、バラの髪留めで留められている。
白地に黒猫が何匹も歩く。三つ編みをぴこぴこと揺らしながら歩く姿は猫の尻尾のようで愛らしい。
白地に黒猫が何匹も歩く。三つ編みをぴこぴこと揺らしながら歩く姿は猫の尻尾のようで愛らしい。
「ほらほらテレーズも逃げてないのでありますよっ!」
「え、ちょっとま、待ってってばノーチェ!髪!髪の毛が崩れるってばっ!」
「え、ちょっとま、待ってってばノーチェ!髪!髪の毛が崩れるってばっ!」
白地に赤い金魚と波模様。ツインテールの銀髪は今はお団子に巻かれている。
薄めの黒地に紅の彼岸花。金髪は一回シャワーを浴びてくるくるしっかりと巻きなおし。
薄めの黒地に紅の彼岸花。金髪は一回シャワーを浴びてくるくるしっかりと巻きなおし。
おぉ。と感嘆の声が上がる。
伊織が得意げにお届けモノでーす♪と言う。
カップルはそれでなんか微妙な空気を作り出し、どうかな?と聞かれて馬子にも衣装と答えたヤツが2、3箇所でフルぼっこにされている。
具体的に言うと柊だったり隼人だったり。
そんな光景を見ながら、一つため息とともにぱんぱん、と手を叩く和美。
伊織が得意げにお届けモノでーす♪と言う。
カップルはそれでなんか微妙な空気を作り出し、どうかな?と聞かれて馬子にも衣装と答えたヤツが2、3箇所でフルぼっこにされている。
具体的に言うと柊だったり隼人だったり。
そんな光景を見ながら、一つため息とともにぱんぱん、と手を叩く和美。
「ほら、縁日に行くわよ。店仕舞っちゃったら寂しいでしょ」
そういうことになった。
<夜店めぐり-射的>
縁日と言えば夜店、夜店といえば―――
「射的だろうやっぱり!」
「スーパーボールとか金魚とかすくってこーよー」
「なにあれなにっ!?」
「スーパーボールとか金魚とかすくってこーよー」
「なにあれなにっ!?」
店がいっぱいあるわけで。これだけの人数で来ればさすがにばらけるのも当然といえば当然だった。
ともあれ、ここは射的の屋台。
ともあれ、ここは射的の屋台。
せいやぁっ!と正拳突きとかしそうな掛け声とともに引き金を引くのだが、銃口があらぬ方向を向いていればとれるはずもなく。
ダメだった!と笑顔で言う狛江。残念だったね、というのは自分も取れなかった椿。
そんな二人にふふん、と笑いかけ、伊織は肩に担いだコルク式のおもちゃの狙撃銃を2、3度回して構えた。
その銃口はブレることなくぴたりと止まり、狙い違わずぱこんっと重そうな金属製のライターを打ち抜き、台から転げ落ちさせる。
硝煙の匂いのするはずのない銃口に、ふっと息をかけて半分笑いながらざっとこんなもんだよ、と芝居がかった様子で告げる。
店の親父から残念そうな様子でライターを渡され、伊織はそれを暖かい目で見る。
椿がそれに気づき、たずねた。
ダメだった!と笑顔で言う狛江。残念だったね、というのは自分も取れなかった椿。
そんな二人にふふん、と笑いかけ、伊織は肩に担いだコルク式のおもちゃの狙撃銃を2、3度回して構えた。
その銃口はブレることなくぴたりと止まり、狙い違わずぱこんっと重そうな金属製のライターを打ち抜き、台から転げ落ちさせる。
硝煙の匂いのするはずのない銃口に、ふっと息をかけて半分笑いながらざっとこんなもんだよ、と芝居がかった様子で告げる。
店の親父から残念そうな様子でライターを渡され、伊織はそれを暖かい目で見る。
椿がそれに気づき、たずねた。
「そのライター、どうするの?」
「ん?あぁ―――ま。人にこんな仕事押し付けた迷惑な兄貴にお土産ってこんなもんでいいかなーって」
「ん?あぁ―――ま。人にこんな仕事押し付けた迷惑な兄貴にお土産ってこんなもんでいいかなーって」
照れたようにそう言う伊織に、椿も笑ってそれがいいよ、と答えた。
そんなことをしている横で、ノーチェは一人じっとお財布と相談していた。
すでに3回ほどチャレンジし、お金だけがいなくなった。具体的には一番大きな硬貨三つ分くらい。もともと野口さん数人程度の戦力だ、これ以上の出費はしたくない。
だがしかし、せっかくのお祭りをこんなところで諦めていいものだろうか。むしろくすくす笑ってごーごー、なんてよく分からない電波すら届いてくる。
こうなれば全部の力をここで使いきったとしても―――
すでに3回ほどチャレンジし、お金だけがいなくなった。具体的には一番大きな硬貨三つ分くらい。もともと野口さん数人程度の戦力だ、これ以上の出費はしたくない。
だがしかし、せっかくのお祭りをこんなところで諦めていいものだろうか。むしろくすくす笑ってごーごー、なんてよく分からない電波すら届いてくる。
こうなれば全部の力をここで使いきったとしても―――
「おじさんっ!もう一回おねが――へぶっ!?」
意気込んでノーチェが一番大きな硬貨を突き出そうとした時、彼女の顔にぼふっ!となにかがつきつけられて発声を邪魔された。
「……なにやってるんだキミは」
呆れたようにそう言ったのは、なぜか甚平姿の応理。
ノーチェは応理の姿を見て笑顔で答えた。
ノーチェは応理の姿を見て笑顔で答えた。
「応理。なかなかお祭りエンジョイしてるでありますな。そのめっちゃ腕輪にしてるサイリウムとか」
「サイリウムはアメリカ製品の商標。正確にはケミカルライトと言うのが正しいし、日本製品で商標でいうならこれはルミカライト、だよ」
「意外と細かいでありますな」
「いいの。ボクはボクの思うように生きてく、それがボクのピーターパンライフなんだよ。わかるかいティンク?」
「ですからわたくしはー……」
「サイリウムはアメリカ製品の商標。正確にはケミカルライトと言うのが正しいし、日本製品で商標でいうならこれはルミカライト、だよ」
「意外と細かいでありますな」
「いいの。ボクはボクの思うように生きてく、それがボクのピーターパンライフなんだよ。わかるかいティンク?」
「ですからわたくしはー……」
何度目かになる名前への訂正をしようとするノーチェの鼻面に、応理は先ほど彼女にぶつけた物体を突き出す。
わ、と一歩退り、ノーチェはそれを見た。
それは、どこか間の抜けた表情をした薄い灰色のうさぎのぬいぐるみだった。
垂れ耳を横に垂らしている、うさぎを擬人化させたような形の10センチくらいのぬいぐるみで、目は真っ赤。
真っ黒なリボンが首元についていて、なにかに引っ掛けるため用なのか紐が首の後ろから出ていた。
それを見て硬直しているノーチェを目にし、ぷい、とそっぽを向くとそのぬいぐるみをノーチェに向けて放り投げた。
わわっ、と慌ててそれを空中で引っつかむノーチェ。
わ、と一歩退り、ノーチェはそれを見た。
それは、どこか間の抜けた表情をした薄い灰色のうさぎのぬいぐるみだった。
垂れ耳を横に垂らしている、うさぎを擬人化させたような形の10センチくらいのぬいぐるみで、目は真っ赤。
真っ黒なリボンが首元についていて、なにかに引っ掛けるため用なのか紐が首の後ろから出ていた。
それを見て硬直しているノーチェを目にし、ぷい、とそっぽを向くとそのぬいぐるみをノーチェに向けて放り投げた。
わわっ、と慌ててそれを空中で引っつかむノーチェ。
「あげるよ。ボクは取るまでは興味あるけど、それから先は必要ないし―――こんなものもらったままで、何もしないのはボクのプライドに関わる」
すたすたと背を向けて歩き出しながらそう言って、甚平から彼が出した腕には、銀の鎖と水晶の腕輪があった。
それににわかに笑顔になって、ノーチェは両手でメガホンをつくると、この気持ちよ届けとばかりに叫ぶ。
それににわかに笑顔になって、ノーチェは両手でメガホンをつくると、この気持ちよ届けとばかりに叫ぶ。
「ありがとうでありますよ応理っ!箒につけてずっと大事にするでありますっ!」
「叫ぶなよ恥ずかしい奴だなキミはっ!?」
「叫ぶなよ恥ずかしい奴だなキミはっ!?」
叫び返せばその分だけ注目されるわけだが、そんなことにも気を割けない応理だった。
放たれるコルク栓。あらぬ所に当たると、ぱかん、とマヌケな音を立ててあらぬ方向に飛んでいく。
青筋が一つ増えて、彼女は口元をひくつかせると店の親父にたずねた。
青筋が一つ増えて、彼女は口元をひくつかせると店の親父にたずねた。
「―――ねぇ、おじさん」
「なんだい金髪のお嬢ちゃん?日本語上手いな」
「そんなことはどうでもいいわよ。この銃ちゃんと手入れしてるの?」
「はっはっは、当たらないからっておじさんに八つ当たりはいかんぜ嬢ちゃん」
「なんだい金髪のお嬢ちゃん?日本語上手いな」
「そんなことはどうでもいいわよ。この銃ちゃんと手入れしてるの?」
「はっはっは、当たらないからっておじさんに八つ当たりはいかんぜ嬢ちゃん」
わかってるわよ、と心の中で呟く。
落ち着いて?と言うように逆の肩に乗ったミミズクがほぅ、と鳴く。
わかっているのだ。そもそも自身が射撃が得意でないことくらいは。けれど、このレクリエーションですでに紙幣が三つも飲み込まれていることを考えれば意地にもなる。
普通ならばそこまでになれば諦めもつくのだが、どうしても彼女は諦めたくないものがあったのだ。
それは、20センチくらいのシンプルな黒い起毛したテディベア。
硬貨一枚で取れるならラッキーすぎるほどに出来がよかった。よくある客寄せパンダの類ではあるのだが。
そのテディベアに目を奪われたテレーズは、財布のことを考えずに連コイン。今に至る。
最後のコルク弾を見て彼女はため息をつく。
正直、まだ諦める気にはならないのだ。まだ欲しい。どうしても欲しい。金を積んで買えるものならすぐ買っているが、そうもいかない。
変なところで律儀な彼女は、それをよしとしないのだ。
当たらないだろうな、と思いながら、それでも最後の一個を銃口に詰め、狙おうと照星もどきを覗いたその瞬間だった。
落ち着いて?と言うように逆の肩に乗ったミミズクがほぅ、と鳴く。
わかっているのだ。そもそも自身が射撃が得意でないことくらいは。けれど、このレクリエーションですでに紙幣が三つも飲み込まれていることを考えれば意地にもなる。
普通ならばそこまでになれば諦めもつくのだが、どうしても彼女は諦めたくないものがあったのだ。
それは、20センチくらいのシンプルな黒い起毛したテディベア。
硬貨一枚で取れるならラッキーすぎるほどに出来がよかった。よくある客寄せパンダの類ではあるのだが。
そのテディベアに目を奪われたテレーズは、財布のことを考えずに連コイン。今に至る。
最後のコルク弾を見て彼女はため息をつく。
正直、まだ諦める気にはならないのだ。まだ欲しい。どうしても欲しい。金を積んで買えるものならすぐ買っているが、そうもいかない。
変なところで律儀な彼女は、それをよしとしないのだ。
当たらないだろうな、と思いながら、それでも最後の一個を銃口に詰め、狙おうと照星もどきを覗いたその瞬間だった。
「待った」
ひょい、と上から取り上げられるおもちゃの銃。
聞き覚えのある声に一度びくんっ!と反応して、テレーズはゆっくりと視線を上げる。そこには果たして柊がいた。
返しなさい、と叫ぼうとするテレーズに、彼女にしか聞こえないように彼は耳打ちした。
聞き覚えのある声に一度びくんっ!と反応して、テレーズはゆっくりと視線を上げる。そこには果たして柊がいた。
返しなさい、と叫ぼうとするテレーズに、彼女にしか聞こえないように彼は耳打ちした。
「―――お前の狙ってるあのクマ、おもりがついてる」
あ。と呟くテレーズ。そもそも、まったく当たらないわけではない。4度に1度くらいは当たるのだ。
なのにほんの少しも動かないことを、彼女はそういうものなのだろうと思っていた。
経験が足りないからということもあるが、違和感を全て銃のせいにして置かれているものへの注意を怠ったともいう。
それを指摘された気がしてうつむく彼女を見て、クマが手に入らないことに落ち込んだんだろう、と感じ取った柊は困ったように苦笑すると、彼女の肩にぽんと手を置いた。
なのにほんの少しも動かないことを、彼女はそういうものなのだろうと思っていた。
経験が足りないからということもあるが、違和感を全て銃のせいにして置かれているものへの注意を怠ったともいう。
それを指摘された気がしてうつむく彼女を見て、クマが手に入らないことに落ち込んだんだろう、と感じ取った柊は困ったように苦笑すると、彼女の肩にぽんと手を置いた。
「ま、それがわかってんならやりようはあるさ。あの黒いのでいいんだよな?」
そう確認する彼にえ?と上を向くテレーズ。そこには、照星を射抜く真剣な瞳があった。
それを見て、彼女には珍しく頭の中から全てのことが消え、真っ白になる。
同時、なんだか顔が熱くなる気がする。しかしそんなことよりもなによりまず、その目に魅入られた。
それを見て、彼女には珍しく頭の中から全てのことが消え、真っ白になる。
同時、なんだか顔が熱くなる気がする。しかしそんなことよりもなによりまず、その目に魅入られた。
呼気を吐き出す。
たったそれだけの動作が、彼の可能性の力―――プラーナを外に出すトリガーになる。
それは、柔らかな風のように顕現して彼の周囲をくるりとまわり、なめらかにコルク弾に纏われた。その動作に一切の途切れはない。
常人には見て分かるものではないが、もしもウィザードならばその力の輝きに目を細めたことだろう。
テレーズはウィザードではないので光を見ることは叶わないが、力の流れになんの抵抗もなく従い起こる風の流れを感じ、それを引き起こしているのが柊と知り―――
たったそれだけの動作が、彼の可能性の力―――プラーナを外に出すトリガーになる。
それは、柔らかな風のように顕現して彼の周囲をくるりとまわり、なめらかにコルク弾に纏われた。その動作に一切の途切れはない。
常人には見て分かるものではないが、もしもウィザードならばその力の輝きに目を細めたことだろう。
テレーズはウィザードではないので光を見ることは叶わないが、力の流れになんの抵抗もなく従い起こる風の流れを感じ、それを引き起こしているのが柊と知り―――
―――それを、彼女は純粋に綺麗だと思った。
店の親父に異変を悟られるよりも先に、柊は自らのプラーナを乗せた弾を込めた銃の引き金を引く。
プラーナを纏ったコルク弾は、狙い違わず黒いテディベアを打ち抜き―――
―――同時、纏っていた風の属性を隷属させるプラーナにより爆発的に巻き起こった突風により縦回転しながら吹き飛んだ。
……お前はどこの真っ赤な勇者ですか。
親父は何が起きたのか分かっていない様子で腰を抜かしている。
柊は落ちたテディベアと一緒に落ちた隣の猫を銃口で引っ掛けて掴むと、傷やほつれがないかを確認して、猫を月衣に突っ込んでクマをテレーズに手渡した。
プラーナを纏ったコルク弾は、狙い違わず黒いテディベアを打ち抜き―――
―――同時、纏っていた風の属性を隷属させるプラーナにより爆発的に巻き起こった突風により縦回転しながら吹き飛んだ。
……お前はどこの真っ赤な勇者ですか。
親父は何が起きたのか分かっていない様子で腰を抜かしている。
柊は落ちたテディベアと一緒に落ちた隣の猫を銃口で引っ掛けて掴むと、傷やほつれがないかを確認して、猫を月衣に突っ込んでクマをテレーズに手渡した。
「ほらよ。欲しかったんだろ」
イタズラを成功させて満足げな子どものような笑顔を見て、空気を裂く音が聞こえるほどのスピードで下を向くテレーズ。
テレーズとしては顔を見られたくないのと心臓の鼓動を悟られるのが嫌でそんな行動をとっただけなのだが、柊としてはそんなにテディベアが欲しかったのか、と脳内補完。
大事にしろよ、とだけ言って隼人の方へ歩いていこうとする。
少女は、とんでもなく早く脈打つ鼓動を抑えるように左手で心臓の位置を押えて、それでも届いてくれることを祈って、呼び止めた。
テレーズとしては顔を見られたくないのと心臓の鼓動を悟られるのが嫌でそんな行動をとっただけなのだが、柊としてはそんなにテディベアが欲しかったのか、と脳内補完。
大事にしろよ、とだけ言って隼人の方へ歩いていこうとする。
少女は、とんでもなく早く脈打つ鼓動を抑えるように左手で心臓の位置を押えて、それでも届いてくれることを祈って、呼び止めた。
「ひ―――柊蓮司っ!」
呼ばれ、振り向く柊。ちびっ子にフルネームで呼ばれることを訂正しないのはどうなんだ、柊よ。
振り向いた柊に視線を合わせることができずやはり下を向くが、それでも彼女は声を絞り出すようにして、告げた。
振り向いた柊に視線を合わせることができずやはり下を向くが、それでも彼女は声を絞り出すようにして、告げた。
「あ、その、あの……ありがと」
「……そんなかしこまって礼言われるようなことでもない気がするけどな、気にすんな」
「……そんなかしこまって礼言われるようなことでもない気がするけどな、気にすんな」
今度こそ去っていく背中を見つめることができなくて、彼女はぎゅっとテディベアを抱きしめるしかできなかった。
肩のミミズクが毛づくろいした。くるっくー。
肩のミミズクが毛づくろいした。くるっくー。
<夜店めぐり-お面>
「あ、委員長委員長。お面屋さんだよー!」
「……紫帆。なんで私にそれを言うのかしら?」
「ほら、ミナリ君UGN仮面とか言ってたじゃないか。思う存分できるよ?」
「やりませんっ!」
「……紫帆。なんで私にそれを言うのかしら?」
「ほら、ミナリ君UGN仮面とか言ってたじゃないか。思う存分できるよ?」
「やりませんっ!」
そんな鳴島市の面々。そんな面々を横目に、狛江が近くにいた真也を呼ぶ。
「真也真也ー」
「なんだっけ……えっと、狛江?」
「なんだっけ……えっと、狛江?」
うんっ!と元気に答え、彼女は真也を手招きする。
「なんだよ、なにか用?」
「あたし思うんだけどさ、真也にははっちゃけっぷりが足りないよ」
「くっ!?バカのクセにまともなことをっ!」
「あたし思うんだけどさ、真也にははっちゃけっぷりが足りないよ」
「くっ!?バカのクセにまともなことをっ!」
中の人出てる中の人。
閑話休題。
ともかく、はっちゃけが足りないと言われたやさぐれモードに戻った真也はたずねた。
閑話休題。
ともかく、はっちゃけが足りないと言われたやさぐれモードに戻った真也はたずねた。
「だからなんだっていうんだ。僕にどうしろと?」
「いやさ、ここらでお面でもつけてみたらちょっとはっちゃけるんじゃないかなー、と思って」
「どういう理屈だ」
「いやさ、ここらでお面でもつけてみたらちょっとはっちゃけるんじゃないかなー、と思って」
「どういう理屈だ」
割り合いとこの中ではまともな子どもの幼少期を送った真也はお面の屋台といえば子どもの行くものだと思っている。
お面ではしゃぐ趣味はない、という彼に、えー?と首をかしげながら狛江が言う。
お面ではしゃぐ趣味はない、という彼に、えー?と首をかしげながら狛江が言う。
「そうかなぁ、これとか真也すごい似合いそうな気がするんだけど」
そう言って彼女が指すのは―――奥歯に加速装置とか仕込んでる黄色いマフラーの最新型の平成アニメ版のお面。
半分涙目になりつつツッコミをいれる真也。
半分涙目になりつつツッコミをいれる真也。
「確信犯かっ!?」
さらにその横では、ノーチェが興味津々でお面を手にとっている。
これとかいいでありますなー、と言って彼女がとったのは……丸くて黄色い帽子をかぶった緑色の某小隊軍曹。
やめてください、と結希から5分ほどお説教されるノーチェであった。
これとかいいでありますなー、と言って彼女がとったのは……丸くて黄色い帽子をかぶった緑色の某小隊軍曹。
やめてください、と結希から5分ほどお説教されるノーチェであった。
<夜店めぐり-食べ物>
金魚すくいをしているグループも、カルメ焼きを見ているグループも、銀細工を見ているグループもいる中、色気などまるでないグループがあった。
たこやきをぱくつき、ヤキソバをすすり、あんずあめが溶けないように一口で口に入れ、醤油みりん味の焼きイカをかじり、お好み焼きをつつく。
たこやきをぱくつき、ヤキソバをすすり、あんずあめが溶けないように一口で口に入れ、醤油みりん味の焼きイカをかじり、お好み焼きをつつく。
「日本の食文化ってすごいねぇ。こんなにいっぱいお菓子が出てるなんて思ってもみなかったよ」
「あ。エミリアそれわたくしのイカ焼きでありますよっ!とるのズルいでありますっ!」
「うわごめーんノーチェ。……ところで、イカ焼きと焼きイカってどう違うの?」
「―――検索完了。焼きイカというのはイカのツボ、胴体を串刺しにしてみりん醤油をつけて焼き上げたもの。
イカ焼きは関西圏で行われている縁日によくある軽食で、小麦粉主体の生地にイカを混ぜたものを押し潰して焼いた簡易お好み焼きのようなもの、とのことです」
「あ。エミリアそれわたくしのイカ焼きでありますよっ!とるのズルいでありますっ!」
「うわごめーんノーチェ。……ところで、イカ焼きと焼きイカってどう違うの?」
「―――検索完了。焼きイカというのはイカのツボ、胴体を串刺しにしてみりん醤油をつけて焼き上げたもの。
イカ焼きは関西圏で行われている縁日によくある軽食で、小麦粉主体の生地にイカを混ぜたものを押し潰して焼いた簡易お好み焼きのようなもの、とのことです」
エミリア・ノーチェ・マーヤのグループだ。
エミリア&ノーチェのイタリア娘コンビは初めて会った時から仲がよく、お菓子を食べながら話し出すとまったく止まらない。
……こんな妙な生き物を複数生み出すようなイタリアの風土はいったいどうなっているのか。不思議でしょうがない。
エミリア&ノーチェのイタリア娘コンビは初めて会った時から仲がよく、お菓子を食べながら話し出すとまったく止まらない。
……こんな妙な生き物を複数生み出すようなイタリアの風土はいったいどうなっているのか。不思議でしょうがない。
マーヤはといえば、以蔵のためのレシピ研究である。
……その以蔵はといえば、勇と一緒に女の子をナンパしては吹っ飛ばされているわけなのだが。
……その以蔵はといえば、勇と一緒に女の子をナンパしては吹っ飛ばされているわけなのだが。
300円で詰め放題のから揚げを一つ口に入れ、エミリアはノーチェにたずねた。
「ところでさ、ノーチェはたこ焼きの中身知ってる?」
「知ってるでありますよ。これでも旅暮らし長いでありますから、デビルフィッシュの一匹くらいではもう驚きもしないでありますけどな」
「そっか。私はさすがにちょっと蛸はダメかな……」
「西洋圏ではタコを食べない地域もあるようですね。日本は割と雑多ですが」
「知ってるでありますよ。これでも旅暮らし長いでありますから、デビルフィッシュの一匹くらいではもう驚きもしないでありますけどな」
「そっか。私はさすがにちょっと蛸はダメかな……」
「西洋圏ではタコを食べない地域もあるようですね。日本は割と雑多ですが」
そんなどうでもいい話をしながら、エミリアは笑顔で言った。
「ねぇノーチェ」
「なんでありますか?」
「こうやって皆がいて、みんなで騒ぐのって楽しいよねっ!」
「なんでありますか?」
「こうやって皆がいて、みんなで騒ぐのって楽しいよねっ!」
エミリアからすれば、最近まで、もっと具体的に言うのなら監獄の島を抜け出すその時まで、こんなにもたくさんの仲間がいることはなかった。
その上みんなで騒ぐなんてことはそれ以上にあるはずのない出来事だった。
実感に万感を込めた思いが、明るいその言葉には込められていた。まるで、今現在が希望であるというように。
ノーチェはそれに気づいたのか気づかなかったのか。一瞬だけうつむくが、綺麗な笑みでエミリアを見た。
その上みんなで騒ぐなんてことはそれ以上にあるはずのない出来事だった。
実感に万感を込めた思いが、明るいその言葉には込められていた。まるで、今現在が希望であるというように。
ノーチェはそれに気づいたのか気づかなかったのか。一瞬だけうつむくが、綺麗な笑みでエミリアを見た。
「―――そうで、ありますな。
みんながいる、というのはとても嬉しいことでありますよ」
みんながいる、というのはとても嬉しいことでありますよ」
かつて、未来の悲劇を恐れて戦う相手に未来なんか誰にもわからない、と言ってのけた少女がいた。
かつて、過去から未来まで全てを視通すと言われた神に与えられる滅びの運命を、跳ね除けた少年がいた。
かつて、過去から未来まで全てを視通すと言われた神に与えられる滅びの運命を、跳ね除けた少年がいた。
その通りだ。未来は誰にもわからない。それこそ神様にもわからないことが証明されてしまっている。
だからこそ、人間は今を一生懸命生きて、少しでもマシな未来を手に入れようとするのだ。悲しい過去を繰り返さぬように。
だからこそ、人間は今を一生懸命生きて、少しでもマシな未来を手に入れようとするのだ。悲しい過去を繰り返さぬように。
けれど、いつかは訪れる確定した未来、というものは確実に存在する。
それは終わりであり別れ。始まり(げんかい)のあるものであるからこそ、終わりがある。
この、エミリアが楽しいと言った日常の幕引きの一端を担うことになるからこそ、ノーチェは微笑んだ。
それは終わりであり別れ。始まり(げんかい)のあるものであるからこそ、終わりがある。
この、エミリアが楽しいと言った日常の幕引きの一端を担うことになるからこそ、ノーチェは微笑んだ。
「けれどエミリア。エミリアにも、やるべきことが―――いえ、やりたいことがあるのでありましょう?」
ノーチェのはじめて見る笑顔に呆然としていたエミリアは、その声に意識を引き戻された。
「へっ!?え、あ……うん、そうだね。
UGNのお仕事して、みんなの故郷を見て回って、ファントムセルぶっ潰して、いつか絶対に―――ママのいるイタリアに帰るんだ」
「ここもUGNのお仕事らしいではありますがな。
でも、それならそろそろ本当にしたいことのために走ろうとするべきであります。
ちゃんと走り抜けた後。エミリアの望む未来を掴んだあとに、また。みんなに会いにくればいいのでありますよ」
UGNのお仕事して、みんなの故郷を見て回って、ファントムセルぶっ潰して、いつか絶対に―――ママのいるイタリアに帰るんだ」
「ここもUGNのお仕事らしいではありますがな。
でも、それならそろそろ本当にしたいことのために走ろうとするべきであります。
ちゃんと走り抜けた後。エミリアの望む未来を掴んだあとに、また。みんなに会いにくればいいのでありますよ」
夢は終わる。けれどまた、いつでも始められる。それを告げるように言ったノーチェに、エミリアも笑った。
「そうだね。また、会いにくるよ。私たちはバイバイするんじゃなくて、皆がやりたいことやりに行くだけなんだから」
そう。毎日がお祭り騒ぎのあの町に行けば、きっとまた、こんな騒々しいお祭りに会うことができるだろうと信じるように、彼女は笑顔で夜の空を見つめた。
それまで静かにしていたマーヤが、ぽつりと言った。
それまで静かにしていたマーヤが、ぽつりと言った。
「―――そういえば。そろそろ集合時刻のようですね、花火が始まるまであと5分32秒ほどです」
「えっ?ちょ、ちょっと待ってよマーヤさんっ!それヤバいじゃんっ!」
「うわっジャパニーズ花火でありますよっ!見逃したらもったいないでありますっ!それではマーヤ、先導をお願いするでありますよっ!」
「えっ?ちょ、ちょっと待ってよマーヤさんっ!それヤバいじゃんっ!」
「うわっジャパニーズ花火でありますよっ!見逃したらもったいないでありますっ!それではマーヤ、先導をお願いするでありますよっ!」
了解しました、と言ったマーヤは、エミリアにはどこか苦笑したように見えた。
もっとも、それは一瞬のことな上マーヤは基本無表情なので、彼女には見えた、としか言いようがなかったのだが。
ともあれ、三人は集合場所に向かって駆けていく。
もっとも、それは一瞬のことな上マーヤは基本無表情なので、彼女には見えた、としか言いようがなかったのだが。
ともあれ、三人は集合場所に向かって駆けていく。
―――夏の終わりを告げる大輪の八重芯が、夜空に菊のように開いて、散った。
<金色の別れ>
大花火を見てテンションが上がったせいなのか、子供達は旅館でごはんを元気よく食べた後、コーラファイトしたり、大枕投げ大会したり、智世にドSいお説教受けたり。
王様ゲームして残念なことになったり、麻雀して薫のサイコメトリーVS応理の戦術な展開になったり、紫帆が第三の目使ったりモルガンが卓ひっくり返したり。
叩いてかぶってじゃんけんポン大会で結希対ケイトでケイトがなかなか叩けなくて超時間かかったり決勝が隼人対勇のハヌマーン同士の超高速戦になったり。
ビンゴ大会で幸薄そうな真也が一抜けして皆に祝福されたり、一位の商品が米一升で、必要ないからと司にあげたら泣いて喜ばれたり。
大人は酒盛り大会に移行したり、間違って一ビン子ども部屋にまぎれこんで、えらいことになりかけたりとかしたらしい。
……オーヴァードがこれだけ集まって旅館が崩壊しなかったことの方をよかったと思うべきかもしれないが。
王様ゲームして残念なことになったり、麻雀して薫のサイコメトリーVS応理の戦術な展開になったり、紫帆が第三の目使ったりモルガンが卓ひっくり返したり。
叩いてかぶってじゃんけんポン大会で結希対ケイトでケイトがなかなか叩けなくて超時間かかったり決勝が隼人対勇のハヌマーン同士の超高速戦になったり。
ビンゴ大会で幸薄そうな真也が一抜けして皆に祝福されたり、一位の商品が米一升で、必要ないからと司にあげたら泣いて喜ばれたり。
大人は酒盛り大会に移行したり、間違って一ビン子ども部屋にまぎれこんで、えらいことになりかけたりとかしたらしい。
……オーヴァードがこれだけ集まって旅館が崩壊しなかったことの方をよかったと思うべきかもしれないが。
ともあれ、リミッターなしの加速装置のようにはしゃぎにはしゃぎまくり―――電池が切れたように眠り込んでいる子供達の中、のっそりと起き上がる影が二つ。
影は他の人間を起こさないようにひっそりと動き、音を立てぬよう外に出て行った。
影は他の人間を起こさないようにひっそりと動き、音を立てぬよう外に出て行った。
夜の浜辺。
海風に銀髪が大きく流されながら、ノーチェは浜辺に木の棒で何かを描いている。
だいぶ傾いた白い月。海には、道のように月光が白い光を落とす。
それを両手を組んで柊はじっと見ている。
やがて書き終えたのか、ノーチェは月衣から赤い石―――魔石を取り出し、所定の場所においてぱん、と拍手を打つ。
同時、魔石の中に蓄積されていたプラーナが魔力に存在を変換されて、ノーチェの砂浜に描いた図形―――魔法陣に満ちる。
それを確認してずるり、と月衣から引きずり出すのは魔導具「水銀鏡」。人外のみ世界間移動を可能にする、異世界を覗く鏡。それと彼女と彼女の水晶球を魔力的にリンク。
彼女の目に、帰るべき場所が映る。
ノーチェは、柊に告げた。
海風に銀髪が大きく流されながら、ノーチェは浜辺に木の棒で何かを描いている。
だいぶ傾いた白い月。海には、道のように月光が白い光を落とす。
それを両手を組んで柊はじっと見ている。
やがて書き終えたのか、ノーチェは月衣から赤い石―――魔石を取り出し、所定の場所においてぱん、と拍手を打つ。
同時、魔石の中に蓄積されていたプラーナが魔力に存在を変換されて、ノーチェの砂浜に描いた図形―――魔法陣に満ちる。
それを確認してずるり、と月衣から引きずり出すのは魔導具「水銀鏡」。人外のみ世界間移動を可能にする、異世界を覗く鏡。それと彼女と彼女の水晶球を魔力的にリンク。
彼女の目に、帰るべき場所が映る。
ノーチェは、柊に告げた。
「蓮司、月匣をお願いするでありますよ」
その言葉にあぁ、と頷いて己の世界を広げて周囲を囲う月匣を展開する。
夜の浜辺が青い空間に区切られる。魔石の力を使って行う空間転移は、割と派手なことになるのでその配慮のためだ。
それを確認し、ぺちんとノーチェは魔石を叩く。すると存在を変換された魔力はさらに存在を変換されて魔法陣を循環し、ぼうっ、と滲み出すように金色の光の粒子を放つ。
ひらひらと、金色の雪のように一粒、また一粒と区切られた青い天井に向けてさまざまな軌跡を描き立ち上っていく。
夜の浜辺が青い空間に区切られる。魔石の力を使って行う空間転移は、割と派手なことになるのでその配慮のためだ。
それを確認し、ぺちんとノーチェは魔石を叩く。すると存在を変換された魔力はさらに存在を変換されて魔法陣を循環し、ぼうっ、と滲み出すように金色の光の粒子を放つ。
ひらひらと、金色の雪のように一粒、また一粒と区切られた青い天井に向けてさまざまな軌跡を描き立ち上っていく。
幻想的な光景が青い世界を満たす。
と。その時だ。
世界の持ち主である柊は目を見開いた。彼の世界の境界に異変があった。まるで一部分だけ一瞬でごっそりと穴をあけられたような異様な感覚。
彼は、思わずそちらを向く。
そこには、あの町で出会った仲間が立っていた。
と。その時だ。
世界の持ち主である柊は目を見開いた。彼の世界の境界に異変があった。まるで一部分だけ一瞬でごっそりと穴をあけられたような異様な感覚。
彼は、思わずそちらを向く。
そこには、あの町で出会った仲間が立っていた。
「―――随分と薄情だな。挨拶もナシにいなくなるなんてよ」
「ノーチェ、ダメだよそういうの」
「ノーチェ、ダメだよそういうの」
そう告げたのは、隼人と椿だった。二人とも、どこか楽しげに笑っている。
「お前ら、どうして―――」
「お前の考えることなんかお見通しだっての」
「薬王寺支部長と話してるのを聞いたの。満月の夜が一番帰るために必要なものがそろうって―――今日が、夏の終わりの満月の日でしょう?」
「お前の考えることなんかお見通しだっての」
「薬王寺支部長と話してるのを聞いたの。満月の夜が一番帰るために必要なものがそろうって―――今日が、夏の終わりの満月の日でしょう?」
ノーチェは吸血鬼だ、月の満干により多少能力が変動する。
ゆえに、万全な用意をするには魔力の一番増大する満月を選ぶという話を結希にしたのを椿に聞かれたのだった。
いやそうじゃなくて、と柊は続ける。
ゆえに、万全な用意をするには魔力の一番増大する満月を選ぶという話を結希にしたのを椿に聞かれたのだった。
いやそうじゃなくて、と柊は続ける。
「オーヴァードは月匣の中に入ってこれないはずだろうがっ?なんでその前提無視してんだよ」
「無視してない。一度でも操った領域を、俺が操れなくなるはずもないだろうが」
「無視してない。一度でも操った領域を、俺が操れなくなるはずもないだろうが」
そう言ったのは、月匣の壁に背を預けてたたずむ司だった。
彼はあの戦いの中で短いながらも月匣内で一人で月匣を維持していた。つまりは月匣の中でオーヴァードを動かす程度なら彼にはいつでも可能であるということである。
柊は、呆気に取られた後、笑った。
彼はあの戦いの中で短いながらも月匣内で一人で月匣を維持していた。つまりは月匣の中でオーヴァードを動かす程度なら彼にはいつでも可能であるということである。
柊は、呆気に取られた後、笑った。
「ったく、人が後を濁さないように出てこうとしてるってのによ」
「後濁さないのと挨拶もナシに出てくのは別もんだろ、最低限礼くらい言って出てくのが普通じゃないのか?」
「後濁さないのと挨拶もナシに出てくのは別もんだろ、最低限礼くらい言って出てくのが普通じゃないのか?」
そう二人が言うのを横目に、椿がノーチェに駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。
「最後に、お別れくらいは言わせてよノーチェ。勝手にいなくなられるのは―――さみしいから」
「椿ー、ちょっと苦しいで、ありま、す」
「椿ー、ちょっと苦しいで、ありま、す」
半分以上鯖折り上体のノーチェ。ストップスプラッタ。
あわてて離れる椿。ノーチェは思う存分空気を肺の中に入れると、笑顔で言った。
あわてて離れる椿。ノーチェは思う存分空気を肺の中に入れると、笑顔で言った。
「椿。あの水晶球、大事にしてほしいでありますよ。あれがあれば、わたくしいつでも椿とお話できるでありますし、会おうと思えば会いに来れるでありますから。
狛江にもよろしく言っておいてほしいであります」
狛江にもよろしく言っておいてほしいであります」
椿は、うん、うん、と何度も言って何度も頷く。
だから、とノーチェは続けた。
だから、とノーチェは続けた。
「これが終わりではないであります。また、いつでも会えるでありますよ」
「―――絶対だからね」
「約束するであります。また、いつか」
「―――絶対だからね」
「約束するであります。また、いつか」
そうやって指きりする二人。
柊は隼人に告げる。
「まぁ、俺のほうはノーチェと違ってほいほいこっちに来ることはできないだろうけど。でもま、話はできるからな。
こっちの携帯は特別製だから、世界超えてても声は届くんだし」
「あぁ。無事についたら連絡しろよ、仕事のグチくらいは聞いてやるからさ」
こっちの携帯は特別製だから、世界超えてても声は届くんだし」
「あぁ。無事についたら連絡しろよ、仕事のグチくらいは聞いてやるからさ」
それに頷き、柊は言うべきだと思ったことを言った。
これを逃せば、おそらくはいう機会はないだろう、と。
これを逃せば、おそらくはいう機会はないだろう、と。
「ありがとうな、隼人。お前に拾われて本当に助かった。拾ったのがお前でなきゃ、たぶん仕事も完遂できなかったし、帰ることもできなかった」
「単に偶然が重なっただけだろ。俺がやったことっつったら、お前を拾ったこととあのバケモンぶった斬ったことくらいだぞ?」
「それでもだ。運命なんて言葉は嫌いだが、お前と会ったことは本当にラッキーだったと思ってる。だから、お前にも、司にも、他の連中にも―――」
「蓮司ー、わたくしはどうなんでありますか?」
「単に偶然が重なっただけだろ。俺がやったことっつったら、お前を拾ったこととあのバケモンぶった斬ったことくらいだぞ?」
「それでもだ。運命なんて言葉は嫌いだが、お前と会ったことは本当にラッキーだったと思ってる。だから、お前にも、司にも、他の連中にも―――」
「蓮司ー、わたくしはどうなんでありますか?」
手を上げて言うノーチェ。空気をぶち壊さないでいただきたい。
余計なちゃちゃ入れんなっ!?と言ってから、柊はこの場にいるみんなに向けて、言った。
余計なちゃちゃ入れんなっ!?と言ってから、柊はこの場にいるみんなに向けて、言った。
「―――まぁ、ともかく。感謝してる。助かった、ありがとうな」
「安心しろ。お前にんなこと言われるまでもないから」
「だな。商売やってるところであんなことされたら腹立つどころの話じゃなく営業妨害だし」
「そうです。私たちもあの町を守りたいから戦ったんですから、感謝されるようなことじゃありません」
「安心しろ。お前にんなこと言われるまでもないから」
「だな。商売やってるところであんなことされたら腹立つどころの話じゃなく営業妨害だし」
「そうです。私たちもあの町を守りたいから戦ったんですから、感謝されるようなことじゃありません」
どいつもこいつも強い笑みで返す。
そうかよ、と笑って呟く。もう、言うべきことなんかない。まったくもって未練を残させてくれない連中だ。
ノーチェがそんな柊に声をかけた。
そうかよ、と笑って呟く。もう、言うべきことなんかない。まったくもって未練を残させてくれない連中だ。
ノーチェがそんな柊に声をかけた。
「蓮司、準備オーケーでありますよ」
それにあぁ、と頷いて。彼は金色の燐光を巻き上げる魔法陣の中に入る。
燐光は徐々に強さを増し、ノーチェは最後のしかけを起動させる。光が強さを増す中、隼人が叫んだ。
燐光は徐々に強さを増し、ノーチェは最後のしかけを起動させる。光が強さを増す中、隼人が叫んだ。
「柊、ノーチェ―――またなっ!」
同時。燐光は巨大な金色の光の渦となり二人の姿を覆い隠して―――光が、上から解けるように降ってくるのと同時に、青い世界は消え去った。
それが、異邦人達がもとの世界に戻ったその瞬間の出来事だった。
それが、異邦人達がもとの世界に戻ったその瞬間の出来事だった。