少女は走っていた。
もうどれだけ走っただろうか…
思い出せない。
もうどれだけ走っただろうか…
思い出せない。
目に飛び込んでくる風景が目まぐるしく変わる。
かつて、子供だった頃に見た、平和だった頃の王国。
荒れ果てたけれど、みんなの力でかつての姿を取り戻そうとしている王国。
そして、今少女が暮らす、人間の世界、大切な人たちが住む街の姿。
だが、今その風景は少女にとって一種異様なものに映っていた。なぜならば。
かつて、子供だった頃に見た、平和だった頃の王国。
荒れ果てたけれど、みんなの力でかつての姿を取り戻そうとしている王国。
そして、今少女が暮らす、人間の世界、大切な人たちが住む街の姿。
だが、今その風景は少女にとって一種異様なものに映っていた。なぜならば。
はぁ、はぁ、はぁ…
走り続け、荒くなった呼吸と足音だけが辺りに響く…他の音は聞こえてこない。何一つ。
誰もいない。
動くものは少女以外何一つ無い、道だけが延々と続く、街。
誰もいない。
動くものは少女以外何一つ無い、道だけが延々と続く、街。
「ココさま~!ナッツさま~!」
耐えきれなくなって少女は叫んだ。自分が仕える、パルミエ王国の2人の王子の名を。
「かれん、こまち、うらら、りん、シロップ~!」
それがきっかけとなって流れるように脳裏をよぎるものたちの名を叫ぶ。
ひしひしと心を侵食していく何かを振り払うように。
だが、返事は無い。少女の叫びだけがゆっくりと辺りに広がり、消えていく。
とうとう少女は立ち止まった。
「のぞみ…」
とうとう最後に浮かんだ、その名前を呼んだ瞬間だった。
辺りが黒く染まる。地面から湧きあがった闇が這い上がるように町並みを包んでいく。
闇に飲まれたものが溶けるように闇と同化して消滅していく。
まるで黒い絵の具で塗りつぶした絵のように辺りは黒一色に、染まった。
そして、闇に閉ざされた空間で。
「みんな…どこなのよ…」
少女の言葉は誰にも届かず、消えていった…
「かれん、こまち、うらら、りん、シロップ~!」
それがきっかけとなって流れるように脳裏をよぎるものたちの名を叫ぶ。
ひしひしと心を侵食していく何かを振り払うように。
だが、返事は無い。少女の叫びだけがゆっくりと辺りに広がり、消えていく。
とうとう少女は立ち止まった。
「のぞみ…」
とうとう最後に浮かんだ、その名前を呼んだ瞬間だった。
辺りが黒く染まる。地面から湧きあがった闇が這い上がるように町並みを包んでいく。
闇に飲まれたものが溶けるように闇と同化して消滅していく。
まるで黒い絵の具で塗りつぶした絵のように辺りは黒一色に、染まった。
そして、闇に閉ざされた空間で。
「みんな…どこなのよ…」
少女の言葉は誰にも届かず、消えていった…
「…ミル!?」
朝、と言ってもいまだ太陽の昇らぬ暗い時間。
ミルクは跳ね起きた。
心臓がどきどき痛いほどに跳ねている。全身、ひどい汗だ。
思わず辺りを見渡す。間違いない。ここはナッツハウスの自分の部屋だ。
「…嫌な夢を見たミル」
それが夢だったことを確認するようにミルクは1人呟く。
そして深呼吸。ようやく少し落ち着いた。
「ちょっと早いけど、今日はもう起きるミル」
正直、寝なおす気にはなれない。ミルクは寝床から這い出すと。
朝、と言ってもいまだ太陽の昇らぬ暗い時間。
ミルクは跳ね起きた。
心臓がどきどき痛いほどに跳ねている。全身、ひどい汗だ。
思わず辺りを見渡す。間違いない。ここはナッツハウスの自分の部屋だ。
「…嫌な夢を見たミル」
それが夢だったことを確認するようにミルクは1人呟く。
そして深呼吸。ようやく少し落ち着いた。
「ちょっと早いけど、今日はもう起きるミル」
正直、寝なおす気にはなれない。ミルクは寝床から這い出すと。
PON!
人間、美々野くるみの姿へと変身する。
「さてと…」
まだ寝ているであろう2人を起こさないように静かに部屋を出る。
「せっかく早起きしたんだし、外の掃除でもしておくとしますか」
爽やかな朝の空気でも吸えばこの嫌な感じもきっと消える。
くるみはそう結論し、箒を持って外へと出た。
「さてと…」
まだ寝ているであろう2人を起こさないように静かに部屋を出る。
「せっかく早起きしたんだし、外の掃除でもしておくとしますか」
爽やかな朝の空気でも吸えばこの嫌な感じもきっと消える。
くるみはそう結論し、箒を持って外へと出た。
*
(…ちょっと寒いけど、逆にそれが有難いわね)
箒で店の前のゴミを集めながら、くるみは内心思う。
秋の早朝の澄み切った空気がくるみの眠気を完全に振り払う。
太陽の昇り切っていない薄紫の空には雲ひとつ浮いていない。今日は晴れるだろう。
(掃除が終わったら、ちょっとこの辺を散歩でもしようかしら)
最悪まで落ち込んでいた気分がちょっとだけ上向いて来た。
良い感じだ。この調子でいけば2人が起き出す頃にはいつもの調子を取り戻せる。
そんなことを考えていたくるみの顔が緊張に包まれる。
「何か出た!?」
くるみとナッツハウスの周辺一帯が赤く染まる。
「流石は慣れてるわね」
その異常な状況でも慌てず騒がず、ただ静かに辺りを観察するくるみに、声が掛けられる。
「エターナル!…なの?」
その声がした方に向きなおり、そこにいるであろう敵の名を呼んだくるみが眉をひそめる。なぜならば。
「違うわ」
その声の持ち主…それはくるみたちと同じくらい年齢の、銀髪の少女だったのだから。
「あたしの名は、ベール=ゼファー。蠅の女王と人は呼ぶわ」
殺気すら放っているくるみすら何でも無いことのように、紅い月を背負って少女…ベルはその名を告げる。
「そう…それで、その蠅の女王様が私になんの用なの?」
冷汗が背中を流れるのを感じながら、くるみは努めて冷静にベルに問い返す。
油断はできない。コイツの前では一瞬でも気を抜いてはいけない。そう、くるみは感じ取っていた。
「ああ、ちょっとあたしと一緒に来てほしいのよ」
くるみの方を見て、わずかに微笑みながら、ベルは単刀直入に言う。
「…嫌だと言ったら?」
「そうね。その場合は…力の差って奴を思い知ってもらうことになるわね」
くるみの問いに答えた瞬間。ベルから放たれる威圧感が爆発的に高まる。
「…っ!?」
それを感じ取ったくるみが懐からパレットを取り出す。
「はやくしてね。あたし、待つのって嫌いだから」
「言われなくても!」
箒で店の前のゴミを集めながら、くるみは内心思う。
秋の早朝の澄み切った空気がくるみの眠気を完全に振り払う。
太陽の昇り切っていない薄紫の空には雲ひとつ浮いていない。今日は晴れるだろう。
(掃除が終わったら、ちょっとこの辺を散歩でもしようかしら)
最悪まで落ち込んでいた気分がちょっとだけ上向いて来た。
良い感じだ。この調子でいけば2人が起き出す頃にはいつもの調子を取り戻せる。
そんなことを考えていたくるみの顔が緊張に包まれる。
「何か出た!?」
くるみとナッツハウスの周辺一帯が赤く染まる。
「流石は慣れてるわね」
その異常な状況でも慌てず騒がず、ただ静かに辺りを観察するくるみに、声が掛けられる。
「エターナル!…なの?」
その声がした方に向きなおり、そこにいるであろう敵の名を呼んだくるみが眉をひそめる。なぜならば。
「違うわ」
その声の持ち主…それはくるみたちと同じくらい年齢の、銀髪の少女だったのだから。
「あたしの名は、ベール=ゼファー。蠅の女王と人は呼ぶわ」
殺気すら放っているくるみすら何でも無いことのように、紅い月を背負って少女…ベルはその名を告げる。
「そう…それで、その蠅の女王様が私になんの用なの?」
冷汗が背中を流れるのを感じながら、くるみは努めて冷静にベルに問い返す。
油断はできない。コイツの前では一瞬でも気を抜いてはいけない。そう、くるみは感じ取っていた。
「ああ、ちょっとあたしと一緒に来てほしいのよ」
くるみの方を見て、わずかに微笑みながら、ベルは単刀直入に言う。
「…嫌だと言ったら?」
「そうね。その場合は…力の差って奴を思い知ってもらうことになるわね」
くるみの問いに答えた瞬間。ベルから放たれる威圧感が爆発的に高まる。
「…っ!?」
それを感じ取ったくるみが懐からパレットを取り出す。
「はやくしてね。あたし、待つのって嫌いだから」
「言われなくても!」
そう言うと同時にくるみはパレットに薔薇の紋章のボタンを押し高らかに叫ぶ!
「スカイローズ…トランスレイト!」
少女がそう叫んだ瞬間、パレットから青いバラの花びらが舞う。その花びらはくるみを包み、彼女の衣装へと変わっていく。
白と紫を基調としたドレス。所々に刻まれた青いバラを模したアクセサリー。そして青いバラをあしらったティアラ。
一見するとどこぞの姫のようなドレス姿。だがこれこそが彼女の、伝説の戦士の戦闘装束。
「青いバラは秘密の印…」
変身を終え、ゆっくりと名乗りを上げる。目の前の少女に見せつけるように。
「ミルキィローズ!」
白と紫を基調としたドレス。所々に刻まれた青いバラを模したアクセサリー。そして青いバラをあしらったティアラ。
一見するとどこぞの姫のようなドレス姿。だがこれこそが彼女の、伝説の戦士の戦闘装束。
「青いバラは秘密の印…」
変身を終え、ゆっくりと名乗りを上げる。目の前の少女に見せつけるように。
「ミルキィローズ!」
「ふふん。ようやく準備完了ってこと…ね!」
最後まで変身したのを確認した瞬間、ベルの姿が掻き消える。
「くっ!?」
対するくるみ…ローズはとっさに腕をクロスさせ、一瞬で間合いをつめたベルの一撃を受け止める。
最後まで変身したのを確認した瞬間、ベルの姿が掻き消える。
「くっ!?」
対するくるみ…ローズはとっさに腕をクロスさせ、一瞬で間合いをつめたベルの一撃を受け止める。
ズザザザザッ!
無造作な、だが少女とは思えぬ速度と怪力で繰り出された一撃にローズは後退する。
「やるわねっ!」
だがローズの方も負けてはいない。下がった分の間合いを一蹴りで詰めてベルに迫る。
「馬鹿ね!そっちから飛び込んでくるなんて!」
不用意に飛び込んできたくるみにベルが腕を突き出す。
「甘い!」
それを少女とは思えぬ卓越した体術でもって見切り、そのままベルの懐へ飛び込む。
「はぁ!」
そのまま密着し、ゼロ距離からベルの鳩尾へと体重を乗せた体当たりを叩きこむ!
「くぅ!?」
ダッシュの勢いを加えたカウンター。ベルの軽い体重では耐えきることができない。
ベルは吹っ飛ばされた。
「…痛った~」
空中で強引に体勢を立て直し、ベルはローズから少し離れた所に着地する。
「ちょっとびっくりしたわ。そんな格好してるからてっきり魔法系かと思ってたら、龍使い並みの体術じゃない」
ローズの会心の攻撃を受けてなお、ベルはちょっと驚いただけで余裕を崩さない。
(やっぱりこの子…強い!)
対するローズには余裕はまったくない。むしろ危機感は先ほどより更に強まった。
少し戦いあっただけで分かった。目の前の少女は…恐らく自分が今まで戦ってきた誰よりも、強い。
「でも、あたしもそんなに暇じゃないし、遊びはもう終わりね」
そう宣言すると同時にベルは魔法を起動させる。
「《ディバイン・コロナ》!」
ベルの魔力で生み出された強力無比な破壊の光がローズの方へと飛んでくる。
「きゃああああああああああああ!」
文字通りの意味で光速で迫るそれを、ローズはかわすことが出来ない。
ガード体勢だけは取ったが、それでもダメージは免れない。
「やるわねっ!」
だがローズの方も負けてはいない。下がった分の間合いを一蹴りで詰めてベルに迫る。
「馬鹿ね!そっちから飛び込んでくるなんて!」
不用意に飛び込んできたくるみにベルが腕を突き出す。
「甘い!」
それを少女とは思えぬ卓越した体術でもって見切り、そのままベルの懐へ飛び込む。
「はぁ!」
そのまま密着し、ゼロ距離からベルの鳩尾へと体重を乗せた体当たりを叩きこむ!
「くぅ!?」
ダッシュの勢いを加えたカウンター。ベルの軽い体重では耐えきることができない。
ベルは吹っ飛ばされた。
「…痛った~」
空中で強引に体勢を立て直し、ベルはローズから少し離れた所に着地する。
「ちょっとびっくりしたわ。そんな格好してるからてっきり魔法系かと思ってたら、龍使い並みの体術じゃない」
ローズの会心の攻撃を受けてなお、ベルはちょっと驚いただけで余裕を崩さない。
(やっぱりこの子…強い!)
対するローズには余裕はまったくない。むしろ危機感は先ほどより更に強まった。
少し戦いあっただけで分かった。目の前の少女は…恐らく自分が今まで戦ってきた誰よりも、強い。
「でも、あたしもそんなに暇じゃないし、遊びはもう終わりね」
そう宣言すると同時にベルは魔法を起動させる。
「《ディバイン・コロナ》!」
ベルの魔力で生み出された強力無比な破壊の光がローズの方へと飛んでくる。
「きゃああああああああああああ!」
文字通りの意味で光速で迫るそれを、ローズはかわすことが出来ない。
ガード体勢だけは取ったが、それでもダメージは免れない。
ガン!ガン!ゴン!グシャア!
道路で数回バウンドし、とどめとばかりに街路樹にぶち当たってようやく止まる。
「はぁはぁはぁ…」
(駄目、強すぎる…あたし1人じゃあ…)
せめて仲間が一緒ならば少しは違っていたかも知れない。だが、あいにく今は1人。
目の前の少女は1人で戦うには明らかに荷が重い相手だった。
「へえ。流石に丈夫ね。あたしの魔法で倒れないなんて」
ボロボロになったローズを見て、ベルが面白そうに言う。
「でももういいわ。実力の差は分かったでしょ?大人しくついてきなさい。そうすれば、これ以上は痛くしないどいてあげるわよ?」
「誰があんたなんかに!」
ベルの提案をローズは即座に却下し、そして、彼女の武器を取り出す。
彼女が選んだ手は、自らの最大必殺での全力攻撃。
他の手は思いつかなかった。
「邪悪な闇を包み込む…バラの吹雪を咲かせましょう」
目の前の少女へと向けて、構えを取る。
「へえ…まだやるの?」
それをベルはあえて見逃す。どうせなら、ローズの実力を全て見極めるつもりなのだろう。
「ミルキィローズ…ブリザード!」
そして、ローズの最大の必殺技が発動する!
青いバラの花びらがベルを取り囲み、そこへ閉じ込めるように覆っていく。
ベルを中心として生まれたそれは…大輪の青いバラ。
青いバラが咲いた次の瞬間、それは砕け散る。中心に、すさまじい力の渦を巻き起こしながら!
「はぁはぁ…やった…の?」
「はぁはぁはぁ…」
(駄目、強すぎる…あたし1人じゃあ…)
せめて仲間が一緒ならば少しは違っていたかも知れない。だが、あいにく今は1人。
目の前の少女は1人で戦うには明らかに荷が重い相手だった。
「へえ。流石に丈夫ね。あたしの魔法で倒れないなんて」
ボロボロになったローズを見て、ベルが面白そうに言う。
「でももういいわ。実力の差は分かったでしょ?大人しくついてきなさい。そうすれば、これ以上は痛くしないどいてあげるわよ?」
「誰があんたなんかに!」
ベルの提案をローズは即座に却下し、そして、彼女の武器を取り出す。
彼女が選んだ手は、自らの最大必殺での全力攻撃。
他の手は思いつかなかった。
「邪悪な闇を包み込む…バラの吹雪を咲かせましょう」
目の前の少女へと向けて、構えを取る。
「へえ…まだやるの?」
それをベルはあえて見逃す。どうせなら、ローズの実力を全て見極めるつもりなのだろう。
「ミルキィローズ…ブリザード!」
そして、ローズの最大の必殺技が発動する!
青いバラの花びらがベルを取り囲み、そこへ閉じ込めるように覆っていく。
ベルを中心として生まれたそれは…大輪の青いバラ。
青いバラが咲いた次の瞬間、それは砕け散る。中心に、すさまじい力の渦を巻き起こしながら!
「はぁはぁ…やった…の?」
ミルキィローズブリザード。それはローズの最大の必殺技。これでダメなら、もう打つ手は無い。
「1ついいことを教えてあげる」
だが、無情にもその声はローズの真後ろから聞こえた。
「!?」
その声に振り向いたローズが、最後に見たもの。
「1ついいことを教えてあげる」
だが、無情にもその声はローズの真後ろから聞こえた。
「!?」
その声に振り向いたローズが、最後に見たもの。
「大技を撃つときは、相手を足止めして、逃げられないようにしてから。覚えておきなさい」
それは笑顔で。
「じゃあ、またね。精々頑張るといいわ」
強大な魔力を溜める。
「…あの夢を現実にしたくないのなら、ね」
銀色の髪の少女の姿だった。
それは笑顔で。
「じゃあ、またね。精々頑張るといいわ」
強大な魔力を溜める。
「…あの夢を現実にしたくないのなら、ね」
銀色の髪の少女の姿だった。
その直後、背中に強烈な熱を感じてローズの意識は暗転した。
*
裏界の大公の居城。
「ただいま、リオン」
自らの城の応接間に、虚空から溶け出すようにベルが現れ、部屋にいる少女に声をかける。
「お帰りなさい。早かったですね。大魔王ベル」
その豪華ながらも調和のとれた部屋で1人黙々と本を読んでいた少女…リオン=グンタが顔を上げ、いつもの微笑みを浮かべてベルに返事をかえした。
「ええ、思ったよりも歯ごたえが無い相手でね。楽勝だったわ。力はベテランウィザード並の癖に経験が伴ってなくて力が使いこなせてないんだもの。
正直がっかり。もうちょっと楽しませてくれるかと思ったんだけど」
やれやれとばかりに肩をすくめ先ほど戦った少女を酷評する。
「ま、とにかく、あんたの言う通り、あの子はもう1人のところに捨てて来たわよ。あっちもすぐに気づいたみたいだし、大丈夫でしょ…ところで」
一通り報告を終え、ベルはずずいっとリオンに寄る。
「こんどこそその予言に間違いは無いでしょうね?」
前に一度預言書の記述ミスのせいで色々と苦い思いをしたベルが念を押す。
「大丈夫です。間違いありません」
リオンはそれに答えるように大きく頷き、その手に握られた書物…ありとあらゆる秘密の記された秘密の本をめくる。
「修復が完全ではないので読めないところも多いのは確かですが」
元よりこの本のことは完璧に理解している。リオンはすぐに目的の記述を見つける。
「間違いありません。冥魔“たゆたう闇”を倒しうるのはファー・ジ・アースと異世界、2つの世界の青いバラの加護を持つ2人の“青き薔薇の巫女”のみ。
そのことは、この書物に書いてある通り」
「ま、一応あんたの言うことだから信じては上げるわ。それにマジだったら…」
「はい。青き薔薇の巫女が倒さなければ、たゆたう闇はファー・ジ・アースを飲み込む、そう、書物には記されています」
「…それはやっぱり許せないわ。だってあそこは」
リオンの話を聞きながら、ベルはほほ笑み。
「…あたしが滅ぼすって大昔から決まっているんだから」
傲慢に宣言した。
「ただいま、リオン」
自らの城の応接間に、虚空から溶け出すようにベルが現れ、部屋にいる少女に声をかける。
「お帰りなさい。早かったですね。大魔王ベル」
その豪華ながらも調和のとれた部屋で1人黙々と本を読んでいた少女…リオン=グンタが顔を上げ、いつもの微笑みを浮かべてベルに返事をかえした。
「ええ、思ったよりも歯ごたえが無い相手でね。楽勝だったわ。力はベテランウィザード並の癖に経験が伴ってなくて力が使いこなせてないんだもの。
正直がっかり。もうちょっと楽しませてくれるかと思ったんだけど」
やれやれとばかりに肩をすくめ先ほど戦った少女を酷評する。
「ま、とにかく、あんたの言う通り、あの子はもう1人のところに捨てて来たわよ。あっちもすぐに気づいたみたいだし、大丈夫でしょ…ところで」
一通り報告を終え、ベルはずずいっとリオンに寄る。
「こんどこそその予言に間違いは無いでしょうね?」
前に一度預言書の記述ミスのせいで色々と苦い思いをしたベルが念を押す。
「大丈夫です。間違いありません」
リオンはそれに答えるように大きく頷き、その手に握られた書物…ありとあらゆる秘密の記された秘密の本をめくる。
「修復が完全ではないので読めないところも多いのは確かですが」
元よりこの本のことは完璧に理解している。リオンはすぐに目的の記述を見つける。
「間違いありません。冥魔“たゆたう闇”を倒しうるのはファー・ジ・アースと異世界、2つの世界の青いバラの加護を持つ2人の“青き薔薇の巫女”のみ。
そのことは、この書物に書いてある通り」
「ま、一応あんたの言うことだから信じては上げるわ。それにマジだったら…」
「はい。青き薔薇の巫女が倒さなければ、たゆたう闇はファー・ジ・アースを飲み込む、そう、書物には記されています」
「…それはやっぱり許せないわ。だってあそこは」
リオンの話を聞きながら、ベルはほほ笑み。
「…あたしが滅ぼすって大昔から決まっているんだから」
傲慢に宣言した。
「…ところでベル?」
「何よ?」
格好よくベルが決めたところでリオンがベルに問いかける。
「監視はつけなくて良かったのですか?」
「ふふん。その辺も抜かりは無いわ」
リオンの指摘にベルはちょっぴり得意げに薄い胸を張る。
「ちゃあんと悪魔の蠅を…あれ?」
そこまで言ったところでベルは気づいた。気絶させた直後、少女の懐に隠した、自らの分身の反応が、無い。
「変ね?このあたしが魔法で偽装した特別製だから、たとえアンゼロットでも見つけるのに手間取るはずなのに?」
「…ベル」
首をかしげるベルに、リオンは教え諭すように言う。
「何よ?」
「世界結界の無いあの世界において、ベルの力は制限されず、ベルはその力を存分に震えます」
「そうね、魔法の切れもファー・ジ・アースとは比べ物にならなかったわね」
「裏界でも屈指の実力者であるベルの魔法、となればその威力はとてつもないもの。並みのウィザードなら1度だって耐えることは出来ないでしょう」
「そうね。当然だわ。あたしの魔法だもの」
「…それで、その魔法を昏倒寸前の状態で受けて、生死判定に成功する確率は?」
「…」
「…」
「…あ''」
リオンの言いたいことに気づいたベルが、間の抜けた声を上げた。
「何よ?」
格好よくベルが決めたところでリオンがベルに問いかける。
「監視はつけなくて良かったのですか?」
「ふふん。その辺も抜かりは無いわ」
リオンの指摘にベルはちょっぴり得意げに薄い胸を張る。
「ちゃあんと悪魔の蠅を…あれ?」
そこまで言ったところでベルは気づいた。気絶させた直後、少女の懐に隠した、自らの分身の反応が、無い。
「変ね?このあたしが魔法で偽装した特別製だから、たとえアンゼロットでも見つけるのに手間取るはずなのに?」
「…ベル」
首をかしげるベルに、リオンは教え諭すように言う。
「何よ?」
「世界結界の無いあの世界において、ベルの力は制限されず、ベルはその力を存分に震えます」
「そうね、魔法の切れもファー・ジ・アースとは比べ物にならなかったわね」
「裏界でも屈指の実力者であるベルの魔法、となればその威力はとてつもないもの。並みのウィザードなら1度だって耐えることは出来ないでしょう」
「そうね。当然だわ。あたしの魔法だもの」
「…それで、その魔法を昏倒寸前の状態で受けて、生死判定に成功する確率は?」
「…」
「…」
「…あ''」
リオンの言いたいことに気づいたベルが、間の抜けた声を上げた。
…後にベルは裏界の数少ない友人であるアゼルに語ったと言う。
「…ベル、私はあの娘をもう1人のところへ連れて行くようにと言ったのです。誰が生死判定に失敗するほどボコれと言いましたか?」
そう、微笑みながら言うリオンの、目が全然笑ってない笑顔は、とてつもなく怖かった、と。
「…ベル、私はあの娘をもう1人のところへ連れて行くようにと言ったのです。誰が生死判定に失敗するほどボコれと言いましたか?」
そう、微笑みながら言うリオンの、目が全然笑ってない笑顔は、とてつもなく怖かった、と。