例え今の異常事態においても、授業はちゃんと行う。
それは、学園世界を学園世界たらしめている基本ルールの1つである。
学園世界が成立して安定した今、世界中の学園では、今日も学生たちが勉学に励んでいる。
普通の授業、特殊な授業、両方が混在しつつも“学園の中”では今までと同じ日常が繰り返されているのだ。
それは、学園世界を学園世界たらしめている基本ルールの1つである。
学園世界が成立して安定した今、世界中の学園では、今日も学生たちが勉学に励んでいる。
普通の授業、特殊な授業、両方が混在しつつも“学園の中”では今までと同じ日常が繰り返されているのだ。
―――光綾学園 実習用ダンジョン
毎週土曜日、冒険者の養成学校、『光綾学園冒険科』の3年生は、ダンジョン実習を受ける。
学園側で準備した『実習用ダンジョン』、モンスターやトラップ、鍵のかかった扉が配置された実戦さながらのダンジョンで、
卒業と将来の冒険に向けて、実習を行っている。
学園側で準備した『実習用ダンジョン』、モンスターやトラップ、鍵のかかった扉が配置された実戦さながらのダンジョンで、
卒業と将来の冒険に向けて、実習を行っている。
「はぁ…」
実習日、竜胆リナは1人とぼとぼとダンジョンの出口に向って歩いていた。
「うかつだったわ…まさか2つ目の部屋の入り口に仕掛けてあるなんて」
ちょっぴり自己嫌悪する。自らの不注意でトラップに引っ掛かり、仲間とはぐれた自分に対して。
「…新しい階層に入ってすぐだったのはある意味ラッキーだったけど」
特殊な魔法のかかったこのダンジョンでは、前の階層に戻る階段を登ればすぐに外に出られる。
幸い今まで通ってきた1本道ならば迷うことも無いし、モンスターに襲われる心配だって無い。
「ユウキもナツミももう出てるだろうし、アタシも早く戻らないと」
幸い“下校時刻”まではまだ1時間以上残っている。戻ればまだまだ、探索を進められるだろう。
「それにしても…静かね」
どこまでも通路と部屋が続くダンジョンは静寂に満ちていた。
他の学生もこのダンジョンで実習を受けているのは確かだが、どこを攻略してるかはまちまちであり、パーティーを組んでいない限りははちあわせることも無い。
「なんか…変な感じがする」
リナの背筋にぞくぞくと悪寒が走る。
「…気のせい気のせい。さっさとでよっと」
それをブンブンと振り払い、再び歩き出したときだった。
…ってうれしいはないちもんめ…まけーてくやしいはないちもんめ…
「…え?何か…聞こえる」
その“歌”を聞きつけて、リナが立ち止まる。
…あのこがほしい…あのこじゃわからん…このこがほしい…このこじゃわからん…
透き通るような声で響く、聞きなれない歌。
「これ…何の歌?」
そうだんしましょ。そうしましょ…
「だんだん…近づいてきてる!?」
未知の恐怖に足がすくむ。だんだんと近づいてくる、女の子の歌声。
「…きーまった…」
そして、その子供がリナの前に現れる。
「こ、子供?…いや、モンスター!?」
狐のお面をつけ、毬を持ち、狐の尻尾が生えた女の子にリナは半ば反射的に杖を向ける。
「り~なちゃんがほしい…」
歌いながらゆっくりと手を伸ばしてくる女の子。それに対し…
「フレイムアロー!」
リナは半ば反射的に詠唱した火の基本魔法を女の子に叩き込む。
ボウッ!
火が少女の着物を少しだけ焦がす。だが、その程度では女の子は止まらない。
「くっ…だったら…熱く燃え猛る、炎のマナよ!」
一発反撃を受ける覚悟で詠唱の長い魔法を使用する。数時間前に習得したばかりの火属性最強の魔法、“爆炎”の魔法を。
「…だめだよ。プリンパ」
「きゃあ!?な、なにこれ!?」
だが、それは女の子がリナに向けてはなった魔法で止められてしまう。
頭の中をぐちゃぐちゃに掻きまわされたような感覚。考えがまとまらない。知っているはずの魔法が思い出せない。
「こ、こないで…」
混乱で杖を取り落とし後ずさるリナ。だが、そのリナの言葉に耳を貸さず、女の子は無情に距離を詰める。
そして…少女が氷のように冷たい手でリナに触れ。
「…も~らったぁ…」
嬉しそうに呟いたのを最後に、リナの意識は暗転した。
実習日、竜胆リナは1人とぼとぼとダンジョンの出口に向って歩いていた。
「うかつだったわ…まさか2つ目の部屋の入り口に仕掛けてあるなんて」
ちょっぴり自己嫌悪する。自らの不注意でトラップに引っ掛かり、仲間とはぐれた自分に対して。
「…新しい階層に入ってすぐだったのはある意味ラッキーだったけど」
特殊な魔法のかかったこのダンジョンでは、前の階層に戻る階段を登ればすぐに外に出られる。
幸い今まで通ってきた1本道ならば迷うことも無いし、モンスターに襲われる心配だって無い。
「ユウキもナツミももう出てるだろうし、アタシも早く戻らないと」
幸い“下校時刻”まではまだ1時間以上残っている。戻ればまだまだ、探索を進められるだろう。
「それにしても…静かね」
どこまでも通路と部屋が続くダンジョンは静寂に満ちていた。
他の学生もこのダンジョンで実習を受けているのは確かだが、どこを攻略してるかはまちまちであり、パーティーを組んでいない限りははちあわせることも無い。
「なんか…変な感じがする」
リナの背筋にぞくぞくと悪寒が走る。
「…気のせい気のせい。さっさとでよっと」
それをブンブンと振り払い、再び歩き出したときだった。
…ってうれしいはないちもんめ…まけーてくやしいはないちもんめ…
「…え?何か…聞こえる」
その“歌”を聞きつけて、リナが立ち止まる。
…あのこがほしい…あのこじゃわからん…このこがほしい…このこじゃわからん…
透き通るような声で響く、聞きなれない歌。
「これ…何の歌?」
そうだんしましょ。そうしましょ…
「だんだん…近づいてきてる!?」
未知の恐怖に足がすくむ。だんだんと近づいてくる、女の子の歌声。
「…きーまった…」
そして、その子供がリナの前に現れる。
「こ、子供?…いや、モンスター!?」
狐のお面をつけ、毬を持ち、狐の尻尾が生えた女の子にリナは半ば反射的に杖を向ける。
「り~なちゃんがほしい…」
歌いながらゆっくりと手を伸ばしてくる女の子。それに対し…
「フレイムアロー!」
リナは半ば反射的に詠唱した火の基本魔法を女の子に叩き込む。
ボウッ!
火が少女の着物を少しだけ焦がす。だが、その程度では女の子は止まらない。
「くっ…だったら…熱く燃え猛る、炎のマナよ!」
一発反撃を受ける覚悟で詠唱の長い魔法を使用する。数時間前に習得したばかりの火属性最強の魔法、“爆炎”の魔法を。
「…だめだよ。プリンパ」
「きゃあ!?な、なにこれ!?」
だが、それは女の子がリナに向けてはなった魔法で止められてしまう。
頭の中をぐちゃぐちゃに掻きまわされたような感覚。考えがまとまらない。知っているはずの魔法が思い出せない。
「こ、こないで…」
混乱で杖を取り落とし後ずさるリナ。だが、そのリナの言葉に耳を貸さず、女の子は無情に距離を詰める。
そして…少女が氷のように冷たい手でリナに触れ。
「…も~らったぁ…」
嬉しそうに呟いたのを最後に、リナの意識は暗転した。
―――光綾学園 実習ダンジョン入口
…い、おい!リナ!
「…え?」
目を覚ましたリナが辺りをきょろきょろと見る。そして目の前には…
「…きゃあ~!?」
見慣れた赤い髪の幼馴染に抱きかかえられているのを確認し、リナは半ば条件反射で、幼馴染をぶん殴った。
「へぶぅ!?」
しっかりと体重の乗ったパンチを受けて幼馴染…ユウキがのけぞる。
「…って、あ!ご、ごめん!」
その直後、状況を理解したリナがユウキに謝る。
「ってえ…いきなり殴るなよ…とにかく、大丈夫か?」
「うん。平気。怪我とかも無いみたいだし」
さっと身の回りを確認し、問題無いことを確認する。
「まったく、あの後、1時間も戻ってこないから、心配したぜ」
「1時間!?」
ユウキの言葉に、リナが驚いて声を張り上げる。
「ああそうだ。ずっと戻ってこないから、まさか1人で奥に行ったのかと心配になってナツミと一緒に探しに行ってさ。
んで戻ってきたら入口でぐ~すか寝てるんだもんなあ…まいったよ」
冗談めかしているが、明らかな安堵の表情を浮かべてユウキはリナに言う。
「ま、とにかく、無事ならいいや。帰ろうぜ」
「うん…そうだね。着替えてくる」
立ち上がり、服についた泥を落として、更衣室へ向かう途中、ふと考える。
「…じゃあ、あれは…夢だったのかな?」
「うん?なにがだ?」
「ううん。何でも無い」
誤魔化すように笑顔でユウキにそう伝え、リナは更衣室へ向かった。
…それは光綾学園では、比較的よくある光景。だが、既に“異変”は始まっていた。
その“異変”に彼女が気付くまでには…それから2日後、月曜日の朝まで待たねばならない。
「…え?」
目を覚ましたリナが辺りをきょろきょろと見る。そして目の前には…
「…きゃあ~!?」
見慣れた赤い髪の幼馴染に抱きかかえられているのを確認し、リナは半ば条件反射で、幼馴染をぶん殴った。
「へぶぅ!?」
しっかりと体重の乗ったパンチを受けて幼馴染…ユウキがのけぞる。
「…って、あ!ご、ごめん!」
その直後、状況を理解したリナがユウキに謝る。
「ってえ…いきなり殴るなよ…とにかく、大丈夫か?」
「うん。平気。怪我とかも無いみたいだし」
さっと身の回りを確認し、問題無いことを確認する。
「まったく、あの後、1時間も戻ってこないから、心配したぜ」
「1時間!?」
ユウキの言葉に、リナが驚いて声を張り上げる。
「ああそうだ。ずっと戻ってこないから、まさか1人で奥に行ったのかと心配になってナツミと一緒に探しに行ってさ。
んで戻ってきたら入口でぐ~すか寝てるんだもんなあ…まいったよ」
冗談めかしているが、明らかな安堵の表情を浮かべてユウキはリナに言う。
「ま、とにかく、無事ならいいや。帰ろうぜ」
「うん…そうだね。着替えてくる」
立ち上がり、服についた泥を落として、更衣室へ向かう途中、ふと考える。
「…じゃあ、あれは…夢だったのかな?」
「うん?なにがだ?」
「ううん。何でも無い」
誤魔化すように笑顔でユウキにそう伝え、リナは更衣室へ向かった。
…それは光綾学園では、比較的よくある光景。だが、既に“異変”は始まっていた。
その“異変”に彼女が気付くまでには…それから2日後、月曜日の朝まで待たねばならない。
―――ドルファン学園女子寮
きゅーん…きゅーん
「…ん、んん…あ!」
夕刻、ようやく目を覚ましたソフィアが跳ね起きる。
「が、学校!?」
ドルファン学園は土曜日も授業がある。当然今日も、普通に登校日だった。
「…もう完全にダメね…」
窓の外を見る限り、既に授業はとうの昔に終わっている。
明らかな“ずる休み”。いつものソフィアなら深く反省し、落ち込むところだ。だが。
「…ま、いっか」
はふぅと1つ息を吐き、ソフィアは伸びをして、今日の失敗を忘れることにする。
「…1日中寝てたから、疲れが全然ないなー」
身体が軽い。ついでに心も。明日も休みだと思うと、余計にだ。
「明日はバイト休んでどこかに遊びに行こうかな…」
色々やりたいことがある。学園世界ならではの楽しみ方。
「まあでもとりあえずは…」
きゅうっとお腹が鳴る。昨日の昼から何も食べていないから、お腹がペコペコだ。
それにちょっと照れて、ソフィアはチェフェイの方を見る。
「ご飯にしよっか?チェフェイ」
こーん!
ソフィアの提案に、チェフェイが元気に鳴き声を1つ挙げた。
「…ん、んん…あ!」
夕刻、ようやく目を覚ましたソフィアが跳ね起きる。
「が、学校!?」
ドルファン学園は土曜日も授業がある。当然今日も、普通に登校日だった。
「…もう完全にダメね…」
窓の外を見る限り、既に授業はとうの昔に終わっている。
明らかな“ずる休み”。いつものソフィアなら深く反省し、落ち込むところだ。だが。
「…ま、いっか」
はふぅと1つ息を吐き、ソフィアは伸びをして、今日の失敗を忘れることにする。
「…1日中寝てたから、疲れが全然ないなー」
身体が軽い。ついでに心も。明日も休みだと思うと、余計にだ。
「明日はバイト休んでどこかに遊びに行こうかな…」
色々やりたいことがある。学園世界ならではの楽しみ方。
「まあでもとりあえずは…」
きゅうっとお腹が鳴る。昨日の昼から何も食べていないから、お腹がペコペコだ。
それにちょっと照れて、ソフィアはチェフェイの方を見る。
「ご飯にしよっか?チェフェイ」
こーん!
ソフィアの提案に、チェフェイが元気に鳴き声を1つ挙げた。
―――学園世界特別居住区
「…おいしかったね。チェフェイ」
居住区にいくつもある“食堂”の1つ。ペット持ち込みOKの食堂で食事を終え、チェフェイを抱いたソフィアが軽い足取りで歩く。
「これからどうしよっかなー…」
幸せそうにうずくまるチェフェイを撫でながら、ソフィアはこれからのことを考える。
まだ夕刻、暗くなりきっていない時間。このまま帰るには、早すぎる。
「そうだなあ…せっかくだし、どこか遊びに…」
景色の良いところにでも、そう考えていた時だった。
きゅい!?
腕の中のチェフェイが一声鳴いて、ソフィアの腕から飛び出す。そして路地裏へと姿を消す。
「あ!?チェフェイ!?」
すぐに追わないと。そう考えていたときだった。
「…あら?貴方は確か…ソフィア?偶然ね」
後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
「あ、えっとあなたは…ライズさん?」
「そうよ。今日は学校に来ていなかったから、調子でも悪いのかと思っていたわ」
ドルファン学園の制服を着た、お下げの黒髪と、いつもつけている手袋がトレードマークの少女。
ドルファン学園のクラスメイトに出会い、ソフィアはしまったあーと言う顔をする。
「いえ…実はただの寝坊なんですよ。つい、うっかり」
「珍しいわね。貴方は寝坊なんてしない、真面目な子だと思っていたのだけれど」
恥ずかしそうに言うソフィアの答えに、ライズは意外そうな顔をする。
「はい。私も初めてです。寝坊で学校をさぼるのは…ライズさんは今からご飯ですか?」
「いいえ。それはもう少し後にするわ」
ソフィアの問いにライズはかぶりを振り、ソフィアを見つめ、言う。
「今は、少し探し物をしているの」
「探し物ですか?」
「そう…小さな、子犬くらいの大きさの“狐”をね」
狐。その言葉が出てきた瞬間、ソフィアがビクリと震える。
「狐…ですか?なんでまた?」
「…ちょっとね。ソフィアは、知らないかしら?」
全てを見通しているかのような、冷たい瞳。その視線に貫かれ、ソフィアはすくむ。
「さあ?ちょっと…分りませんね」
ダメだ。本当のことを言ってはいけない。心の中の何かがソフィアにそう命じる。
「…そう。分かったわ。ありがとう」
感情のあまり感じられないお礼を言って、ライズはソフィアへの興味を失う。
「もう行くわ。それじゃあね」
そして、ライズは何処かへ去って行った。
「な、なんだかちょっと怖かった…」
緊張の糸が切れ、ソフィアは息を吐く。ソフィアはライズに何故かこの前、海で出会った“アフロの男”に似た空気を感じていた。
まるで彼女が“社会の裏側の人間”であるとでも言うような。
「そんなわけ、ないよね」
ブンブンと自分の考えを振り払い、ソフィアは歩き出す。
「そうだ。チェフェイを探さないと…」
そして思い出す。ライズと出会う直前、何処かへ行ってしまった、チェフェイのことを。
居住区にいくつもある“食堂”の1つ。ペット持ち込みOKの食堂で食事を終え、チェフェイを抱いたソフィアが軽い足取りで歩く。
「これからどうしよっかなー…」
幸せそうにうずくまるチェフェイを撫でながら、ソフィアはこれからのことを考える。
まだ夕刻、暗くなりきっていない時間。このまま帰るには、早すぎる。
「そうだなあ…せっかくだし、どこか遊びに…」
景色の良いところにでも、そう考えていた時だった。
きゅい!?
腕の中のチェフェイが一声鳴いて、ソフィアの腕から飛び出す。そして路地裏へと姿を消す。
「あ!?チェフェイ!?」
すぐに追わないと。そう考えていたときだった。
「…あら?貴方は確か…ソフィア?偶然ね」
後ろから声をかけられる。聞き覚えのある声だ。
「あ、えっとあなたは…ライズさん?」
「そうよ。今日は学校に来ていなかったから、調子でも悪いのかと思っていたわ」
ドルファン学園の制服を着た、お下げの黒髪と、いつもつけている手袋がトレードマークの少女。
ドルファン学園のクラスメイトに出会い、ソフィアはしまったあーと言う顔をする。
「いえ…実はただの寝坊なんですよ。つい、うっかり」
「珍しいわね。貴方は寝坊なんてしない、真面目な子だと思っていたのだけれど」
恥ずかしそうに言うソフィアの答えに、ライズは意外そうな顔をする。
「はい。私も初めてです。寝坊で学校をさぼるのは…ライズさんは今からご飯ですか?」
「いいえ。それはもう少し後にするわ」
ソフィアの問いにライズはかぶりを振り、ソフィアを見つめ、言う。
「今は、少し探し物をしているの」
「探し物ですか?」
「そう…小さな、子犬くらいの大きさの“狐”をね」
狐。その言葉が出てきた瞬間、ソフィアがビクリと震える。
「狐…ですか?なんでまた?」
「…ちょっとね。ソフィアは、知らないかしら?」
全てを見通しているかのような、冷たい瞳。その視線に貫かれ、ソフィアはすくむ。
「さあ?ちょっと…分りませんね」
ダメだ。本当のことを言ってはいけない。心の中の何かがソフィアにそう命じる。
「…そう。分かったわ。ありがとう」
感情のあまり感じられないお礼を言って、ライズはソフィアへの興味を失う。
「もう行くわ。それじゃあね」
そして、ライズは何処かへ去って行った。
「な、なんだかちょっと怖かった…」
緊張の糸が切れ、ソフィアは息を吐く。ソフィアはライズに何故かこの前、海で出会った“アフロの男”に似た空気を感じていた。
まるで彼女が“社会の裏側の人間”であるとでも言うような。
「そんなわけ、ないよね」
ブンブンと自分の考えを振り払い、ソフィアは歩き出す。
「そうだ。チェフェイを探さないと…」
そして思い出す。ライズと出会う直前、何処かへ行ってしまった、チェフェイのことを。
―――学園世界特別居住区 路地裏
「あ、いたいた。チェフェーイ!」
人気のない路地裏で、チェフェイの姿を見つけ、ソフィアは駆け寄る。
「もう、一人でどこか行ったら危ないでしょ。また怪我でもしたら…」
子供をあやすようにチェフェイを叱る。やさしく撫でながら。
「さ、もう行こう。帰ったら、お風呂、一緒に入ろうね」
そして、再びチェフェイを抱き上げ、立ち上がった時だった。
「…え?」
唐突に、世界が変わる。まるでココが“現実”では無いかのような“違和感”
「え?え?」
その感覚のずれについていけず、辺りをキョロキョロと見渡す、ソフィアの眼にそれが写った。
オオオオォ…
怨嗟に満ちた声を上げ、地面から湧きだすように現れる、どろどろした何かの群れ。
チョンチョン!チョンチョン!
不快な鳴き声を上げて飛びまわる人の首そっくりな怪鳥の群れ。
クワセロ…クワセロ…
狂気に満ちた目で1人と1匹をじっと見つめる、子供くらいの大きさの子鬼の群れ。
「こ、これって…モンスター!?」
今や路地裏は、魔界と化していた。
「ど、どうしよう…逃げないと…」
今まで感じたことのなかった“死への恐怖”に怯えながら、ソフィアは必死に逃げ道を探す。
「だ、駄目…どうしよう?」
どの道を通るとしてもモンスターのそばを抜けなくてはならないことに気づいて絶望する。
「…チェフェイ!?」
思わずへたりこんだ、その時だった。
ガルルルル!
牙をむき出しにして、子鬼たちに飛びかかるチェフェイ。
グア!?
突然の攻撃に、驚きの声を上げる子鬼を見て、ソフィアは冷静さを取り戻し、立ち上がる。
「そうだ…チェフェイを…助けないと…」
混乱していた心が、静かになって行く。思考がクリアになり、生き残るための方策を冷静に計算し始める。
そして、ソフィアは気づいた。自らの“中”に宿った、生き残るための“手段”に。
「…熱く燃え猛る、炎のマナよ…」
朗々と、歌うように言葉を紡ぎ出す。
「…踊り狂いて、全てを焦がし…」
いつから使えるようになったのか、ソフィアにも分からない。だが、確信がある。これが…
「…そのうちに飲みこみて、全てを滅したまえ…」
今、ソフィアたちが生き残る手段だと。
「…フレイム…ブラスト!」
そして、叫ぶように“詠唱”を終えた瞬間。
辺りが“爆炎”で赤く染まり、ソフィアとチェフェイ以外のすべてを焼き滅ぼした。
人気のない路地裏で、チェフェイの姿を見つけ、ソフィアは駆け寄る。
「もう、一人でどこか行ったら危ないでしょ。また怪我でもしたら…」
子供をあやすようにチェフェイを叱る。やさしく撫でながら。
「さ、もう行こう。帰ったら、お風呂、一緒に入ろうね」
そして、再びチェフェイを抱き上げ、立ち上がった時だった。
「…え?」
唐突に、世界が変わる。まるでココが“現実”では無いかのような“違和感”
「え?え?」
その感覚のずれについていけず、辺りをキョロキョロと見渡す、ソフィアの眼にそれが写った。
オオオオォ…
怨嗟に満ちた声を上げ、地面から湧きだすように現れる、どろどろした何かの群れ。
チョンチョン!チョンチョン!
不快な鳴き声を上げて飛びまわる人の首そっくりな怪鳥の群れ。
クワセロ…クワセロ…
狂気に満ちた目で1人と1匹をじっと見つめる、子供くらいの大きさの子鬼の群れ。
「こ、これって…モンスター!?」
今や路地裏は、魔界と化していた。
「ど、どうしよう…逃げないと…」
今まで感じたことのなかった“死への恐怖”に怯えながら、ソフィアは必死に逃げ道を探す。
「だ、駄目…どうしよう?」
どの道を通るとしてもモンスターのそばを抜けなくてはならないことに気づいて絶望する。
「…チェフェイ!?」
思わずへたりこんだ、その時だった。
ガルルルル!
牙をむき出しにして、子鬼たちに飛びかかるチェフェイ。
グア!?
突然の攻撃に、驚きの声を上げる子鬼を見て、ソフィアは冷静さを取り戻し、立ち上がる。
「そうだ…チェフェイを…助けないと…」
混乱していた心が、静かになって行く。思考がクリアになり、生き残るための方策を冷静に計算し始める。
そして、ソフィアは気づいた。自らの“中”に宿った、生き残るための“手段”に。
「…熱く燃え猛る、炎のマナよ…」
朗々と、歌うように言葉を紡ぎ出す。
「…踊り狂いて、全てを焦がし…」
いつから使えるようになったのか、ソフィアにも分からない。だが、確信がある。これが…
「…そのうちに飲みこみて、全てを滅したまえ…」
今、ソフィアたちが生き残る手段だと。
「…フレイム…ブラスト!」
そして、叫ぶように“詠唱”を終えた瞬間。
辺りが“爆炎”で赤く染まり、ソフィアとチェフェイ以外のすべてを焼き滅ぼした。
「す、すごい…」
焦げ付いた地面の“黒”とモンスターの残骸の“緑”にソフィアは茫然と呟いた。
今でも信じられない。これを自分がやったのだなんて。
「…あ、チェフェイ!?」
路地裏の更に奥、よく見ないと気づかないような一角にチェフェイが駆けこむ。
「もう、どこに行くの?」
すぐに追いつき、抱き上げてソフィアはそれに気づく。
「…ここかな…ってなんだこりゃ!?」
路地裏の惨状に声を上げる、紫色の制服を着た、東洋人の少年の存在に。
その声に、思わず息を殺し、ソフィアはチェフェイを抱いて隠れる。
「…かなり強力な火属性の魔法で焼かれたのか?」
黒く焦げた地面の土を触り、少年は呟く。
「とにかく、連絡を…あ、ちょうどよかった。ライズさん」
(また、誰か来た…え!?)
少年に次いで現れた人間にソフィアは驚きの声を上げそうになり、それを必死に飲みこむ。なぜならそれは…
「気配を感じて来てみたのだけれど…凄いわね。まるで今ここで爆弾でも爆発したみたい」
ソフィアのクラスメイトであるライズが東洋人の少年と話をしている。
「ええ。ここで戦闘があったみたいですね。ここ一帯、かなり強力な魔法で焼きつくされています。やったのは魔術師だと思うんですが…」
「その魔術師はもうここにはいない。そう言うことかしら?」
「そうです。この緑の液体があるってことはまた例の奴らなんだろうけど…とにかく、タバサかエヴァさんに見てもらいましょう。
魔法ならば、あの2人の方が詳しいはずです」
「そうね」
そう言うと東洋人の少年が虚空から取り出した機械をあちこちに向けたあと、ライズを伴って足早に去っていく。
そして後には…
「ライズさん、あなたは一体…?」
クラスメイトの正体に疑問を覚えた、1人の少女だけが残された。
焦げ付いた地面の“黒”とモンスターの残骸の“緑”にソフィアは茫然と呟いた。
今でも信じられない。これを自分がやったのだなんて。
「…あ、チェフェイ!?」
路地裏の更に奥、よく見ないと気づかないような一角にチェフェイが駆けこむ。
「もう、どこに行くの?」
すぐに追いつき、抱き上げてソフィアはそれに気づく。
「…ここかな…ってなんだこりゃ!?」
路地裏の惨状に声を上げる、紫色の制服を着た、東洋人の少年の存在に。
その声に、思わず息を殺し、ソフィアはチェフェイを抱いて隠れる。
「…かなり強力な火属性の魔法で焼かれたのか?」
黒く焦げた地面の土を触り、少年は呟く。
「とにかく、連絡を…あ、ちょうどよかった。ライズさん」
(また、誰か来た…え!?)
少年に次いで現れた人間にソフィアは驚きの声を上げそうになり、それを必死に飲みこむ。なぜならそれは…
「気配を感じて来てみたのだけれど…凄いわね。まるで今ここで爆弾でも爆発したみたい」
ソフィアのクラスメイトであるライズが東洋人の少年と話をしている。
「ええ。ここで戦闘があったみたいですね。ここ一帯、かなり強力な魔法で焼きつくされています。やったのは魔術師だと思うんですが…」
「その魔術師はもうここにはいない。そう言うことかしら?」
「そうです。この緑の液体があるってことはまた例の奴らなんだろうけど…とにかく、タバサかエヴァさんに見てもらいましょう。
魔法ならば、あの2人の方が詳しいはずです」
「そうね」
そう言うと東洋人の少年が虚空から取り出した機械をあちこちに向けたあと、ライズを伴って足早に去っていく。
そして後には…
「ライズさん、あなたは一体…?」
クラスメイトの正体に疑問を覚えた、1人の少女だけが残された。