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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第02話03

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―――光綾学園 魔法教室

放課後。
「…確かにかなり荒削りではあるが“爆炎”の使用痕で間違いないだろう」
光綾学園冒険科で“魔法使い”の指導を担当している倉沢篤胤は一狼たちの持ってきた写真を見て頷いた。
「そうですか…ありがとうございます」
タバサとエヴァの見立てが正しかったことを確認し、一狼はちょっとだけほっとする。

あの後、結局狐は見つからず、仕方が無いので例のモンスターを倒したらしい魔術師を探すことになり、
一狼はエヴァとタバサに鑑定を依頼した。
(正直、残留魔力の流れがどうとか言われてもさっぱりだったからな~)
写真、実地検分、記録の確認、果てはいくつかの学園で使われている火属性魔法の動画鑑賞…
意外と凝り性な2人の魔法のプロの議論に付き合わされた一狼が遠い目をする。
これで間違いでしたとなったら…正直考えたくなかった。
「それで、その“爆炎”とやらを使用できる魔術師に心当たりはないかしら」
一狼と一緒に輝明学園のウィザードとして光綾学園を訪れているライズが単刀直入に尋ねる。
それに気を悪くした様子もなく、倉沢が自らの見解を述べる。
「…爆炎はかなり高度な魔法だ。冒険者学校の教師であっても、魔法専任でなければ扱えないだろう。
 事実光綾でも教師で爆炎を扱えるのは私と園長の2人だけだ。もちろん他の冒険者学校の魔法専任も扱えるだろうが、
 現時点では他の学校が転移したと言う話は聞いていない。あとは冒険者学校の魔法使いの卒業生ならば使えると思うが…」
「“学生”では?」
「今の時期に習得しているのはよほどの“天才”か“努力家”だろうな」
そう言うと何かに思い至った倉沢が傍らにあったメモと筆記用具を取り、さらさらと何かを書き始める。
「…ちょうどいい。1つ、私から“依頼”をしたいのだが」
書きながら、倉沢は2人に言う。
「依頼ですか?」
一狼が不思議そうに聞き返す。
「そんな暇は…」
「君たちのしている調査にも、関係している可能性がある」
にべもなく断ろうとするライズを制するように、倉沢が言葉を重ねる。
「まぁまぁ。とりあえず、話だけでも聞いてみましょう。それで、どんな依頼なんですか?」
一狼の再度の問いに、倉沢は頷いて依頼の内容を話す。
「…本日未明、爆炎を習得した私の生徒が魔力を喪失しているのが確認された。彼女の魔力を、取り戻して欲しい」
そう言いつつ渡されたメモに書かれた名は…


―――光綾学園 女子寮

「まいったな…なんて言えばいいんだ?」
幼馴染、竜胆リナの部屋の前で、薙原ユウキは思い悩んでいた。
冒険者学校同士の競技会で魔法使い詠唱部門1位を取ったこともあると言うリナ。
そのリナが基本魔法の“火炎”すら使えなくなったと聞いたときには、流石に耳を疑った。
原因不明の魔力喪失。その事実を知ったあと、リナは早退し、部屋に引きこもっていた。
これまでにも何人か友人が訪れてはいるが、全員が会うことすらできず、追い返されている。
「…ダメだ。全然思いつかない」
魔法一筋で鍛えてきたリナにとって、魔法は自らの半身…否“冒険者としての自分”そのものだ。
もし戻らなければ…卒業どころか、普通科に再度編入もありえる。
冒険者になる道を断たれた自分…それを自らの身に当てはめて想像した後ではどんな慰めも空々しい。
ユウキはそう、感じていた。
「出直すべきなのか?だけど…」
答えが出ない問いに思い悩み続けていた、その時だった。
「…この部屋ね」
「ええ。そうです…あ」
聞きなれない少女の声と一度だけ聞いたことのある少年の声。ユウキはそちらを向く。
「…斎堂?それに…アンタは!?」
見覚えのある2人に驚きの声を上げる。
「薙原。何でお前が女子寮に…もしかして竜胆さんの知り合いなのか?」
「…ああ、あのときの執行委員…今は選抜委員と言うのだったかしら」
少し考えてそれぞれに納得する2人。
「光綾の薙原ユウキだ。あんときはありがとな」
ユウキはそのうちの、“あの時の剣士”にユウキは手を差し出す。
「…輝明の播磨ライズよ。ライズでいいわ」
ライズはユウキからわずかに目をそらし、“ウィザード生徒”としての偽名を伝えて手を軽く握り返す。
「OK。ライズか。よろしくな…んで、今日はどうして光綾に?何かリナに用事があるみたいな口ぶりだったけど」
「ああ、僕たちは、依頼を受けて来たんだ」
「依頼?」
「ああ、この学校の教師の倉沢様から依頼を受けたんだ。竜胆リナさんの魔力喪失の原因を調べて解決してくれってね」
「マジか!?助かる!」
一狼の言葉を聞き、ユウキが喜びの声を上げる。
「おい!リナ!開けてくれ!倉沢先生がお前の魔力取り戻してくれって依頼したって!それで、依頼受けたって奴が来てる!」
ユウキがドアに向かって声をかける。それからしばしして…

カチャ…ギィ…

ドアがゆっくりと開いた。


―――5分後

(…かなり消耗しているわね)
リナの部屋のテーブルを囲み座りながら、ライズは冷静に観察していた。
「……」
「……」
「……」
お互い喋り出すタイミングがつかめず、嫌な沈黙が辺りを包んでいる。
「…なあ、リナ」
最初に口火を切ったのはユウキだった。
「思うんだが、何かあったんだとしたら、土曜日だと思うんだ」
何かを思い出すようにしながら、ユウキはリナに問いかける。
「土曜日?」
「ほら、あの日、お前1時間くらいダンジョンから戻って来なかっただろ?その前までは普通に魔法使ってたから、ありえるとしたらそんときだと思う」
噛んで含めるようにリナに伝え、ユウキはリナの返答を待つ。だが。
「…よく、覚えてないのよ」
その返答は要領を得ないものだった。
「あのとき、何か“怖いもの”に出会ったような気がするわ。だけど…それが何だったか…」
どんどん声が小さくなっていく。夢か現実か曖昧な出来事。だが、その痕跡は確かに異変として現れていた。
「何とか思い出せないか?何でもいい、手がかりがいる」
ユウキが熱心に畳みかける。だが、それが却ってリナを追いつめる。
「駄目…分からない…どうしよう…思い出せない!」
頭を抱え、取り乱すリナ。
(…時間の無駄ね)
それを見ながら、ライズはひたすらに冷めていた。
元々ライズはこの依頼には乗り気では無かった。今の自分たちは任務がある。
関係あるのかどうかも分からない“頼みごと”になど、構っている暇は無い。
「…ねえ。リナと言ったかしら?」
「…何ですか?」
そう考え、ライズは早々に“依頼”を諦めて“任務”へと頭を切り替える。
「貴方、小さい“狐”を見なかった?」
正直知っているとも思えなかったが、依頼で動いているよりはマシ。そう判断し、ライズはリナにいつもの質問する。
「…な!?」
いきなりの質問に一狼が驚いて息をのんだ。
(…まずいですよライズさん。今は依頼の方に集中してください)
他の2人に聞こえぬよう小声で注意する。だが。
「狐…?狐…ああ!?」
「おい!?リナどうした!?」
ライズの質問がトリガーとなり、弾かれるように状況が動き出す。
リナが突拍子も無い声を上げる。
「狐!そう、狐のお面をつけた女の子だったわ!土曜日に私が会ったのって!」
「なんだって!?マジか!?」
「そう…確かこんな感じの…」
「よっしちょっと待ってろ!今、鈴木を呼んでくる!似顔絵にして探すんだ!」
ドタドタドタ…
一気に動き出した状況についていけず、ライズと一狼がぽつりと蚊帳の外に取り残される。
「…もしかして、知ってたりしました?」
「…偶然よ」
偶然って怖い。


―――10分後

「こんな感じかしら?」
ユウキが連れてきた猫耳をつけた少女が描き上げた絵をリナに見せる。
「そう!まさにそんな感じ!流石はぼたん!」
どんぴしゃ。あの日見たままの姿に、リナが嬉しそうに叫ぶ。
「よかったですね。手がかりが見つかって」
「ああ、斎堂たちのお陰だ!ありがとう!」
「ありがとう、ライズ!あなたのお陰だわ!」
ぶんぶんと2人の手をとって振り回すユウキ&リナ。
微妙に似たもの同士の2人。それに…
「…別に、貴方のためを思って言ったわけじゃないわ」
真実なのだが、この状況ではツンデレ台詞にしか聞こえない発言をする、我らがライズ。
思いっきりリナから目をそらしている。ついでにちょっぴり顔が赤い。
こうもストレートに感謝されることに、ライズは慣れていなかった。

―――更に10分後

2人から絵の写しを貰い、一狼とライズは帰路についていた。
「とにかく、これで僕らも手がかりがつかめましたね」
思わぬ収穫に、一狼の声も弾む。
「そうね…恐らくは…ね。けれど」
一方のライズは何かに引っ掛かるように考え込んでいた。
リナのところに現れた狐の面をつけた少女。確証は無いが、狐が姿を変えている可能性は十分にある。
それならば、見つからないのも道理だ。道理なのだが…
「…ならば、あの狐は何を考えているのかしら?」
ライズが首をかしげる。
「どういうことですか?ライズさん」
「竜胆リナの魔力を奪い、自分のものにする。それはいいわ。けれどなぜそれを使って“味方”を焼き滅ぼしたの?」
そう、あの狐にとって、緑の液体を残すモンスターたちは味方のはず。それが何故?
「そういえば…何故なんでしょう?」
「分からないわ。けれど…何か、まだありそうね」
ライズが空を見上げる。そこには、既に日が落ちて、月が昇っていた。
夜の闇に紛れ、動く狐。その思惑は…まだ読めない。

…そして彼らはまだ知らない。
“狐”は今日も、月の下、闇を駆けていたことを。


―――学園世界特別居住区

「うふふふふ…」
煌々と輝く月の下、狐の面をつけ、和服をきた少女…チェフェイが嗤う。
「満ちる。満ちるわ。力が…満ちる」
体内を先ほど奪い取った“力”が満たし、チェフェイを高揚させる。
何度やっても快感だった。他人の力を“奪い去る”のは。
それが、本人にとって大切なものであるならば、なおさらだ。
このまま、力を奪い続けたい。そして、それを糧に“成長”を続けたい。
チェフェイは本能ではそう感じていた。だが。
「…残念だけど、そろそろおしまいにしなくちゃね」
チェフェイが仮面の下の笑みを消し、呟く。それではダメなのだ。“主”の命令には従わなければならない。
「奪うのは、おしまい。そろそろ次に行かないと」
自らに生えた“尾”の数を確認し、チェフェイは次の段階に移ることを決意する。
「…ねえ?ソフィア」
チェフェイは、愛おしげに少女の名を呼ぶ。
「あたし、あなたに“力”をあげたわ。だから、今度は、あなたの番」
ゆっくりと面へと手をやる。
「代わりにあなたの“心”をちょうだい。ソフィア・ロベリンゲ」
そして、面を外したチェフェイは、再び笑みを浮かべた。
…自らとの“契約者”であり“この身体の持ち主”である、少女の顔で。

その翌日。

「あれーカナちゃんどうしたの真っ白になって…ええ!?カナちゃんが“物理の小テスト”で8点!?」
「そ、そんな…このワタクシ様が…ワタクシ様の歌が“デスボイス”になるなんて…」

2つの学園で、同時に起こった“能力の喪失”
それが事件を終幕へと向かわせる、終わりの始まりだった。


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