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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第02話04

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―――ドルファン学園 中庭

唐突に発生する、強烈な違和感と、消滅する人の気配…“異界化”の感覚に少女は溜息をついた。
また、だ。ここ数日で、何度も繰り返されたできごとなのだ。
(さあ、行きましょう。悪魔を倒さないと)
そうだ。悪魔を倒さないと学園にいる“普通の友達”にまで被害が及ぶ。
戦える力を持っている自分が、全部倒さなければならない。
そう考え、少女は悪魔が現れる兆候を待つ。焦らず、余裕を持って。
(大丈夫。あなたは、強いわ。決して負けない)
恐れはない。もう、慣れた。少女はゆっくりと準備を開始する。
そして。
「ヒャッハー!人間だあ~!死ねえ~!」
魔法陣と共に悪魔の群れが現れたのとほぼ同時に。
「…フレイムブラスト」
少女…“ソフィア=ロベリンゲ”の放った爆炎が辺りを焼き払った。

「な、なんだよ…話がちげえじゃねえか!?」
瞬時に焼き払われ、命を落とした“仲魔”たちを見て、小さな悪魔が狼狽して叫ぶ。
「女のガキ一匹殺してこいって…たかが人間が何でんな馬鹿みたいな威力の魔法を扱えるんだよ!?」
楽な仕事のはずだった。“主”より命じられた、簡単な仕事。
これだけの数で一気に挑んで負けるはずが無い。
そう、考えての襲撃だった。
だが、それはもろくも崩れ去った。会戦直後、不意打ちで放たれた、たった1発の魔法で。
「そんなはずがねえ。“あの方”でもねえ人間が…こんなにつええなんて…まさか!?」
悪魔の脳裏に、かつて“塔”にいた仲魔の言葉が思い出される。
「悪魔よりも、強い人間…てめえ、まさか“ガーディアン憑き”か!?」
かつて、“塔”において、幾多の悪魔を倒し、最上階にまでたどり着いたと言う“悪魔の加護”を受けた人間。
まさか、目の前の女がそれだと言うのだろうか?
「あれ?なんで生きてるんですか?」
そんな、悪魔の声を無視して、生き残った悪魔を見て、ソフィアはキョトンとする。
爆炎を受けて生きていられるような強い悪魔には見えない。と言うよりも“無傷”だ。
(―――堕天使ウコバク。相性、火炎吸収)
少しだけ考えて何かに“囁かれる”ように答えを見出したソフィアがにっこりとほほ笑む。
「ああ、炎が効かないタイプの悪魔だったんですか。道理で」
「ひぃ!?」
その表情に恐怖を感じ、悪魔が慌てて逃げ出そうとする。だが。
「だったら、こっちで行きますね」
すぅと息を吸い込み、そして…
キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
盛大に悲鳴を上げる。その瞬間。
「げぼば!?」
その“叫び声”を受けた悪魔が身体中から血を吹き出して、倒れる。
「―――超音波崩壊励起(ハウリングボイス)って言うらしいんですよ。これ」
“叫び声”を止め、動かなくなった悪魔に、ソフィアが声をかける。
「使ったのは、今が初めてだったけど結構強いですね」
急速に消滅していく“異界”の気配を感じながら、ソフィアは呟く。
口元にかすかな、歪んだ笑みを浮かべて。

「…ふぅ」
終わった。そのことを確認し、ソフィアは緊張を解く。
「あ、大変!急がなくっちゃ」
次の授業は運動だったことを思い出し、ソフィアは焦る。
着替える時間を考えるとゆっくりもしてられない。
ソフィアは足早に更衣室に向けて歩きだす。
(まったく、悪魔も襲ってくるタイミングは考えて欲しいわ)
暇な時なら構わないが、こうして忙しいときに来られても、迷惑だ。
そんな“戦うこと事態への戸惑い”を完全に失った思考をしていた、その時だった。
(―――8時の方向)
思考に割り込み、囁くように思い浮かんだ考えにソフィアは反射的に振り向く。そこには。
「…ライズ、さん?」
氷のように冷たい目をした、クラスメイトが立っていた。
「…あら。ソフィア」
今気づいたとでも言うように、ライズはソフィアをまっすぐ見つめ、言う。
「こんなところで、どうしたの?もうすぐ、授業が始まるわよ」
それだけ言うとライズはソフィアを置いて、さっさと歩いて行ってしまう。
そして、1人残されたソフィアは…
「あの人…なんだか、怖い…」
ライズの氷のように冷え切った目を思い出し、震えた。


―――ドルファン学園運動場

その日の運動はマラソンだった。
(…ライズ。あの人は一体…?)
走りながら、ソフィアは無意識のうちに運動場の外で座っているライズを目で追っていた。
今日もライズは見学だ。制服のまま、運動場の外れに腰かけている。
(あの時、ライズは東洋人の男の子と一緒にいた…)
ライズを目で追いながら、頭の中でソフィアはライズについて考える。
(あの人の着ていた服って、輝明学園の制服よね…?)
学園世界でも屈指の有名校。特殊な力を持つ“ウィザード”がいる学園の制服を着た少年。
(…彼もウィザード?だったら、何でライズが一緒に?)
疑問が次々と思い浮かぶ。
(…そもそも、ライズは一体何者なの?)
そして、ソフィアはその疑問にたどり着いた。

昨年、外国からドルファンに入国し、ドルファン学園に入った、転校生。
誰ともロクに喋ろうとせず、学園内でも浮いた存在。
成績は全体的に優秀だが運動の授業は必ず“見学”で参加しないため、最低の成績。
真夏でも決して手袋を外さない。
それがソフィアの知るライズ・ハイマーのすべてだった。

(私、ライズのこと、ほとんど知らない)
彼女の素性は、謎に包まれていた。
“東洋人の傭兵”なら他にも何か知っていたかも知れないが、少なくとも学園内の生徒では、これ以上のことを知っている人間はいないだろう。
その事が、余計にソフィアを恐れさせる。
(やっぱり、怖い)
あの日、ソフィアの魔法で焼き払われた現場を見ても、ライズは驚きもせず、普通に少年と話をしていた。
まるでそれが“当たり前”であるかのように。
(一体、何を考えて…!?)
ライズの近くを通りかかり、ソフィアは思わず息を飲む。
視線が、重なった。
(私を見ている!?)
“観察”されている。あの、氷のように冷え切った目で。そのことを実感したソフィアが取り乱す。
(一体…どうして…あ)
慌てて周りを見て、ソフィアは気づいた。
いつの間にか、周りに人がいない。
先頭集団を大きく引き離し、ソフィアはトップを独走していた。
(嘘…いつの間に!?)
ソフィアは普段、肉体労働系のアルバイトばかりしている分、同世代の少女の中では体力がある方である。
しかし、それでも周りをたやすく引き離せるほどには肉体派ではなかった…つい最近までは。
(と、とにかく…今は“目立たない”でいないと)
そんな考えが思い浮かび、ソフィアは急速に減速する。
吐く息を荒くし、いかにも『途中でばてた』と言う“演技”をしながら。
(…うまく行った)
先頭集団の後ろの方まで下がったのを確認し、ソフィアは再び走り出す。
追い抜かないように、気をつけて。
そして、授業は過ぎて行った。いつもと同じように。
「…やはり、可能性は高いわね」
溜息と共に、呟いたライズの言葉は、誰の耳にも入らず、消えて行った。


―――特別居住区 通学路

「おーい、そこの子。ちょっといいか?」
帰り道。いつもの様に1人で帰っていたソフィアは赤毛の少年に声をかけられた。
「はい?どちら様ですか?」
見覚えのない少年に、ソフィアは怪訝そうな顔をして、尋ねる。
「っと、そうだな。まずは名乗らなきゃな。俺はA地区にある、光綾学園の選抜やってる薙原ユウキだ。よろしくな」
そんな言葉と共に、薙原と名乗った少年は手にしていたビラをソフィアに渡す。
「今、ちょっと探してるやつがいるんだ。そのビラに書かれたやつなんだが、知らないか?」
「えっと…ちょっと分かりませんね。これはなんなんですか?」
そのビラには狐の面をつけた少女が描かれていた。ソフィアには見覚えが無い。
「ああ、こいつはなモンスターだ」
ソフィアの問いにユウキは苦々しい表情で答える。
「モンスター…ですか?」
目の前の絵の少女とモンスターと言う言葉が結びつかず、ソフィアは困惑して問い返す。
「ああ、そうだ。結構やばい奴みたいでな、リナ…うちの学校の生徒がそいつに襲われたんだ。そんで、俺らで探してる」
「そうなんですか…あれ?」
ユウキの説明を聞き、ソフィアはその事に気づく。この子…何かに、似てる。
「ん?どうした?」
「いえ…なんでもないです」
思い浮かんだ考えを打ち消し、否定する。
「…?そっか。もし何か見かけたら教えてくれ。光綾か、極上生徒会に連絡してくれればいいから」
「はい。それじゃ、頑張ってくださいね」
悟られぬよう、笑顔でその場を立ち去る。
…少し離れ、ユウキが見えなくなったのを確認し、ソフィアは再びビラを取り出す。
「変だな。どう見ても、違うのに」
改めてビラに描かれた少女を見て、先ほど思ったことを再び思い出す。
「…チェフェイに似てるなんて、ありえないのに」


…一方その頃

「そっか。そっちも終わったか。あんがとな…いや、そっか。そうだよな。ごめん」
ビラの配布が終わったと言う友人の連絡を受け、ユウキは溜息をつく。
『ありがとうは変だろ?俺らもリナの為にやってんだ。お前に頼まれたから、ってわけじゃねー』
悪友の忍者志望の少年から言われた言葉に、ユウキは反省する。
「ついこの前1人で暴走して酷い目にあったばかりだろ?薙原ユウキ」
自分を戒めるように、言葉に出す。
必ず仲間と一緒に行動する。無茶をするのは、それが無理なときだけでいい。
それが、あの一件以降、ユウキが自らに課した、戒めだった。
「さてと。一旦戻るか。ビラも補充しないといけないし」
そして、自らの母校に戻ろうとした、その時だった。
「…光綾学園冒険科3年B組所属、極上生徒会光綾学園代表兼光綾学園選抜委員、薙原ユウキだな」
えらく長い正式名称で呼ばれ、ユウキは振り向く。
「うん?あんたは確か…えっと、誰だっけ?」
そこに立っていた1人の少年。彼にユウキは見覚えがあった。あるけれど、思い出せない。
「…相良宗助だ」
ユウキの疑問に答えるように頬に十字傷が走った少年がむっつりとしたまま言う。
「相良…ってあんた…」
その名前に、目の前の少年が誰なのか思いだしたユウキが少し驚いて言う。
「都立陣代高校生徒会安全保障問題担当・生徒会長補佐官兼2年4組ゴミ係兼傘係、そして極上生徒会執行部付執行委員。
 相良宗助だ。相良でも宗助でも好きなように呼ぶといい」
ユウキ以上に長い正式名称を執行部の“戦争ボケ”の異名を持つ男がユウキへと名乗る。そして、もう1人。
「あ、おった。あんたじゃろ?薙原さんて」
ユウキたちより幾分表情の幼い少女が、ユウキへと声をかける。
「うちは磯野三中の瀬戸燦言うもんじゃ。よろしゅうな」
ご近所でも評判の“極道バカ”な少女が方言丸出しでユウキへと名乗る。
「えっと宗助に…サンちゃん?俺に何か用か?」
突然の登場に首をかしげながら、ユウキは2人に問う。
それに2人は。
「俺は、千鳥を襲った狐の面をつけた女を追っている。お前も同じ対象を捜査していると聞いた。捜査への協力を依頼したい」
「うちは大事な友達のルナちゃん泣かせた、狐面のごんたくれを探しとうきん。
 そいでな、薙原さんも同じの探しとる聞いて、来たんじゃ。頼む。捜すの手伝ってもらえんじゃろか?」
ほぼ同時に、同じ内容の頼みを口にした。



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