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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第05話01

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だれでも歓迎! 編集

執行委員の有閑

 東棟5階・執行部室。
 それは、『学園世界』におけるトラブルシューター『執行委員』の集まる場所。
 諍いの調停者にして、外敵の排除を行うこともある防衛機構の一つでもあるそこには、今日は数名の人間がいた。


 ***

「はい。それじゃ、賛成票が半数超えたんで麻帆良の長瀬 楓さんをスカウトに行くってことで決定しとくわね」

 活発そうな声に、はーい、とのんきないくつかの声が返る。
 他の執行委員全員に声をかけたのは、壁面のホワイトボードの前に立つ御坂美琴。
 彼女のかたわらには長門有希が立っており、長門はホワイトボードに書かれた『長瀬楓』という人名のところに、赤ペンで花丸を打つ。
 他にも『シエル』とか『ユーノ=スクライア』とか『衛宮士郎』とか『綾崎ハヤテ』とか、様々な人名が書かれているものの、花丸はついていない。

 今現在この部屋で行われているのは、新しい執行委員のスカウト案だ。
 争いごとを潰してまわる執行委員であるものの、ぶっちゃけたところ人手が足りない。
 そんなことは設立当初からもちろんわかっていたものの、それがなぜ今頃になって正式人員をを補充するための会議が行われているのかといえば
 あるひとりの執行委員が人に気づかれないところで過労死してそうな仕事量をこなしていたりした時期があったことが原因だったりする。
 そのことが同僚・他の機関の委員・医療機関・一般生徒らの密告によって極上生徒会に発覚。

 ……そいつが、3日後に南棟大会議場で極上生徒会全員の前に立ち、こってり絞られる羽目になったのは言うまでもない。
 そしてその場で一週間以内にこれまで自薦他薦のあった『執行委員候補』のお手伝いの中から、正式メンバーを補填する、という約束をさせられたのであった。
 そんな上からの要求に答えるべく、彼らはとりあえず半分以上の人間が集まったらその話をすることになり、それを行っているところだった。
 ×印の人名の下には、長門が書いた黒い字が踊っている。いわく。
 『ノーチェが襲われそうだから却下』『友だちとの兼ね合いが……』『持っていくと各方面から恨み買う』『本人が執事業に専念できないからと断られそう』
 などなど。執行委員になるのもなかなかに難しそうである。

 ともあれ。
 美琴がホワイトボード前の教卓をばん、と叩いて言った。

「っていうかさ。今さらだけどこういうこと決めるの私でいいわけ?
 普通トップがやらない? こういうの」
「その相手をジュース買いにパシらせた人の言う台詞じゃないッスよね、それ」

 言い返したのは眼鏡の地味娘、ベホイミ。
 う、と言葉に詰まる美琴に、ふよふよと浮いている謎のリング状羽つき飛行物体が声を発した。

『月衣が便利なのはわかりますが、便利屋にしちゃうのはどうかと思いますよー?』
「うっさいわねっ、アンタだって前にあいつの月衣に勝手に羽突っ込んで万国旗出してたでしょうが!?」
『誤解ですよー、あの万国旗と鳩入れたのわたしじゃないですもの』
「アンタ以外のどこの誰があんなもん入れるのよっ!?」

 どっかの世界のハーフウンディーネとか。
 閑話休題。
 冤罪を主張するのはアンアイデンティファイド・フライング・オブジェクト(未確認飛行物体)こと、カレイドステッキのルビー。
 彼女(?)は、よよよ、とわざとらしく羽で星をぬぐいながら主人に向けて言う。

『ちょっとイリヤさーん、このツンデレってばわたしを犯人扱いするんですよ! なんとか言ってやってくださいなー』
「あー、うん。日ごろの行いを改めればいいんじゃないかな」
『対象わたしっ!?』

 折りたたみのパイプ椅子に座っているルビーの主人ことイリヤスフィールが、隣に座っている美遊から差し出されたお茶をすすりながら答えた。
 実に仲のいいコンビである。むしろ近すぎじゃね? ってくらいの近づきっぷりだ。
 その2人の対面に座ったままぼーっとしてるように見えるのは緑頭の学生服。植木耕介である。




 今執行部室にはこれだけの人間がいるのに、美琴が前に立っているのにはわけがある。
 イリヤと美遊は小学生。まぁ、この2人に司会進行を任せるのは無理があるのだが……現状、部屋にいる美琴よりも年長者はベホイミ・長門・植木の3人。
 この3人よりは、まとめ役は美琴の方が適任だろうということで任されたのだった。それはどうなんだ高校生と中3。
 あーもう、と言いながら美琴が近くの椅子に座った時、戸を開けて入ってくるこの状況の元凶。

「言われた通り、買ってきたぞ」

 柊蓮司。
 今の会議もどきをさせるきっかけになった、ジュース買いにパシらされた執行委員の代表である。

 自分が買いに行かせたながらも、実際は彼のやるべきことを自分が変わりにやる羽目に(美琴視点で)なったわけで。
 今日の美琴はちょっとご機嫌斜め的に目が据わっていた。

「……つまり、全部アンタが悪いわけよね?」
「なんで帰ってくるなり胸倉つかまれた挙句目の前で軽く放電現象起こされなきゃならんのだ俺はっ!?」

 至極状況説明っぽい台詞でツッコミをいれる柊と、とりあえず重なったイライラを発散させようとする美琴の問答に割り込んだのは長門だった。
 彼女はばちばちと今にも電撃を出しそうな中学生のすぐ隣までやってくると、ホワイトボードを指して一言。

「結果」
「お。決まったのか、早いな」
「ア・ン・タ・は。年下に自分の仕事放っぽっておいてありがとうの一言もないのかしら……?」
「だから落ち着けっ! ほら、今俺に電撃撃つとジュースまで帯電するぞっ!?」
「……月衣内まで私の電撃が届くのか試すのも面白そうよね」
「すみませんでしたありがとうございます美琴様っ!!」

 言葉と同時に月衣から取り出した缶ジュース・バナナスカッシュを渡す。
 あまりに平身低頭状態の柊に毒気を抜かれたのか、溜め息をついて美琴は缶を受け取って席に戻る。
 痛い思いをせずに済んだことにちょっと安堵の溜め息をつく柊。
 月衣に手を突っ込んで別の缶を五つほど取り出すと、近くの机に置く。手に手に缶を奪っていく委員達。ちゃんと人数分買ってきたらしい。律儀なことである。

 閑話休題。
 ホワイトボードを見て席についてから缶コーヒーを開けると、柊が呟く。

「結局は長瀬ってことになったわけか」
『他の皆様は、やはり交友関係でトラブルが起きる可能性が高いと判断されました』

 そう答えたのはリボン付きの未確認飛行物体こと、カレイドステッキ・サファイア。
 姉のルビーと違って割と職務に忠実に発言してくれるのである。
 それもそうだよなぁ、と未確認飛行物体が話すことに何も疑問を挟まず―――やっぱり慣れって怖い―――頷いて、柊は言葉を続ける。

「で、誰が勧誘しに行くんだ?」

 執行委員に推薦されたとしても、本人が引き受けると言わなければ正式な執行委員として極上生徒会から0-Phoneを渡すことができない。
 長瀬の場合は『やってみるのも悪くなさそうでござるなー♪』というやけに軽いノリで言っていたため、きちんとOKをもらってこないといけない。
 ならばそれを通知しにいく人間が必要になるわけなのだが―――

「……とりあえず、男性陣は向かないと思われます」

 と、答えるのは美遊。
 もともとはイリヤ関連以外は本気でどうでもいい、といった様子の彼女であったものの、最近は他の執行委員と話すことも増えてきた。
 彼女は彼女なりに、この状況を楽しいと感じているのかもしれない。


 それに頷くのはベホイミだ。

「それもそうッスね。相良さんは逆にある程度向いてるかもしれないッスけど、真面目すぎるので変な方向にいきかねないッスし。他は―――」

 彼女は植木を指差し。

「天然」

 で、と呟いて今度は柊を指し、しばらく沈黙した後。

「……ダメ」
「ダメってなんだダメってコラっ!?」

 即座にツッコミを入れる柊。
 しかし、周囲は素直だった。

「あぁ、ダメだよねやっぱり」
「……その回答に同意」
『っていうか、向いてないにもほどがありますよねー』

 イリヤ、長門、ルビーにまで言われ、ちょっと部屋の隅っこで壁とお話したい気分に駆られる柊。
 というか、柊ははっきりと交渉ごとに向いていない。
 むしろほんの少しでも交渉ごとに向いている能力があるのなら、(本人は気づいていないものの)ここまで損な人生を送っていない。
 そんなことは百も承知の執行委員たちにより、結局あとで女の子だけであみだクジででも決めようか、という話にまとまる。

 美琴が一息つきながらバナナスカッシュを一口飲み、再びホワイトボードに目をやって、ちょっとイタズラっぽく笑う。

「……にしても。
 残念ね、イリヤ。愛しのおにいちゃんと同じ委員になれなくて、さ」

 美琴の言葉にばふぅ、とエレガントさに欠ける抹茶練乳サイダーのふきだし方をするイリヤ。
 噴出した先にいたサファイアが緑色の飛沫まみれになったのを、美遊があわててふき取るのを横目に、実にわかりやすくイリヤがどもる。

「なっ……なななななにを言ってるのっ!? べ、別におにいちゃんは―――」
「できるなら一緒のところにいたいなーとか、一緒のところにいる時間が増えたら嬉しいなーとかは思わなかったッスか?」

 それに嬉々として乗るベホイミ。
 美琴とベホイミは『意外と直情傾向』という性質もあいまってなのか、相性と仲がいい。

 イリヤスフィール=フォン=アインツベルンが兄である衛宮士郎が好きなことなど、士郎並の朴念仁でもない限りはイリヤを見ていればわかることだ。
 それがブラコンレベルに収まるのか、極度のブラコンレベルまでいってしまっているのかは少し判断が難しいところだが。
 最近、おにいちゃんにも『学園世界』内で知り合いがたくさんできていくことを、ちょっと寂しく思っていたイリヤ。
 そんな彼女が今回執行委員候補に士郎の名前を見たことで、嬉しく思わなかったはずもない。

 そんな内心の混乱をさらにベタ踏みするのは彼女の相棒だ。

『えぇもうこの会議が始まる直前のイリヤさんのWAKUWAKUったら、夢がどっさりな摩訶不思議っぽいアドベンチャークラスでしたとも』
「ルビーぃぃぃぃぃぃっ!?」
『何をあわてているんですイリヤさん。
 わたしは 恋する乙女(オモチャ)の味方です。えぇイリヤさんを裏切ることはないですからご安心を!』
「裏切ってる! 現在進行形でぶっちぎりつつ裏切ってるよ!
 ていうかそういうことは口に出さないでほしいな―――っ!」
『何を仰っておられますかこの子は。イリヤさんがラブな光線出してるのなんて、普通の人から見れば一目瞭然視界オールグリーン級クリアじゃないですか。
 イリヤさんのことをきちんとご存知の方は知らないはずもないと思いますよ?』

 ねぇ? と首(どこ?)を傾げながら他の委員を見ると。


「え、イリヤもしかして気づかれてないと思ってた、とか?」
「うわぁ……もうちょっと他人の目を気にした方がいいッスよ、イリヤさん」
「一目瞭然」
「長門さんまでっ!?」

 無表情宇宙人にまでバレバレらしい。
 さすがにちょっとショックらしいですよイリヤさん。

 ……ちなみに。

「うん。そう……イリヤがお兄さんを好きなことなんか、見てれば、わかる、よね、サファイア」
『いっ……痛い、痛いです美遊様……っ! もっとっ、もっと優しくぅぅぅ……っ!』

 となりでごしごしとサファイアを拭いている美遊の手に余計な力が大量に加わっている模様。
 ていうか声エロいよサファイア。

 閑話休題。
 渡る世間は鬼ばかりな状況に、イリヤはうぅぅ……と唸って、びしぃっ! と美琴を指して起死回生の一撃を放った。

「そ、そーゆー美琴さんはどうなのっ!? 上条さんって人を執行委員に、って話もあったらしいじゃないっ!」
「なっ……なんでそこであのヘンテコの話を出すのよアンタはっ!?」
「わたしだけおにいちゃんの話しなきゃいけないとかおかしいもんっ! 道連れだぁぁぁぁっ!」

 イリヤさん、半ばヤケの様子です。
 小学生と中学生が色恋話でわーわーやりながらルビーが茶々を入れつつ収拾のつかない状態になっている中、その様子を遠くから見ていたベホイミは近くの植木に尋ねた。

「はっはっは、青春ッスねぇ。
 ところで、植木さんは森さんとどうなんスか?」
「……?
 どうって、何が?」

 相も変わらずぼーっとした様子の植木に、隠さなくていいッスよぅ、と肘で小突きつつベホイミは続ける。

「森さんのこと嫌いってわけじゃないでしょう?」
「森は大事だぞ?」
「そ、そこまでストレートに言われるとちょっと逆に困るッスけど……。
 見てればわかるッスよ、さぁこのお姉さんに洗いざらいどこまでいったのか話すッス!」

 とん、と胸を叩いてそう主張するベホイミ。
 植木はやっぱり茫洋とした目をしながら少し悩んで答えた。

「お姉さん?」
「なんか文句あるッスか?」

 あるなら拳で語ろうか、という無言の脅しと拳を鳴らす音にさすがに命の危機を感じたのかぶんぶんと手を振りながら弁解。

「文句ない、です。
 で、えーと……どこまでって、何が?」
「手をつないだー、とか大事な約束をしたー、とか!」

 ……普通恋人同士って言ったらもっと他の段階がいくらでもあるはずなのだが、思いつかないのが彼女の恋愛経験値の薄さというべきか。
 ともかく、聞かれた植木としては自分の記憶を掘り返してみる。
 彼的にはベホイミが何を聞きたいのか意図がよくわからないものの、要は森に触ったり話したりしたことを答えろ、ということだと解釈。
 しばらく考えて、答えた。
「……こんな感じで抱えたこととか、抱きつかれたこととかはあったような気がする」
 こんな感じで、というのはいわゆるお姫様抱っこの状態で。
 ベホイミは軽くぴょーん、と眼鏡が飛ぶほどの超☆巨大な衝撃を受けた。


 植木と森がお姫様抱っことハグ、という強烈な刺激に、先ほどまで言い争っていた少女達までが集まってくる。

「お姫様抱っこ―――っ!?」
「な、なんでアンタが抱きつかれるとか、そんなとこまで行っちゃってるわけ―――っ!?」
『ひゃっほう♪ これは思いもよらないところからおいしそうな情報でルビーちゃん感激ぃっ!
 さぁさぁ植木さん、その時の状況をさくさくっと話してしまうがいいのですっ!!』

 静かだった周囲にいきなりやってくるイリヤや美琴やハァハァしたルビーにちょっと焦りつつも、植木はその状況について答えた。

「えーと……確か、やけに高いところから落ちた森を受け止めたのと、全部終わった時に森がよかったよかった言って泣きながら抱きついてきたんだったっけ?」
「いや、聞かれても困るわよ」

 美琴の冷静なツッコミが入る。
 しかし、恋する乙女はそんなところは気にしない。

「いいなぁ、お姫様だっこかぁ……」
『わーお、イリヤさんたら恋する乙女の妄想力全開ですねっ!
 あぁぁ持ち主(マスター)と魔力的なパスがあるわたしにとっても実にお肌がツヤツヤしてくるお話ですよ―――っ!!』

 ちょっと妄想状態に入ったイリヤの一言にテンションゲージ0→MAXのルビー。
 明確に口に出されたことで、自分も想像してしまい黙ってしまう美琴。ちょっと耳が赤いのは彼女の乙女力ゆえというべきか。
 美遊の手にさらに力が加えられえて『あーれー、ごーむーたーいーなー』なスプラッタになりかけているサファイア。止めろルビー。
 自分よりも年下に超先を行かれていることにヘコむベホイミ。……その、うん、頑張れ。

 真実としては、ある『空中庭園』から突き落とされた森を空中でかっさらった(際にお姫様抱っこ的な体勢になった)り、
 植木が生きていることで安心した森が飛びついてぶら下がった、と言った方が正しい表現なわけであるが。
 しかも両方とも割と極限状態のことだったため、森に冷やかしで聞くと彼女の能力を使って『忘れさせられる』ことになるから気をつけよう。

 もへー、と空想にふけっている少女たちを置いておいて、長門がロータスティーを飲みながら近くの柊に対してたずねる。

「……お姫様抱っこって、何?」
「眼鏡属性って何、みたいなノリで俺に聞くな。俺にもよくわからん」
「そう」

 意外とこの男お姫様抱っこ登板率は高かったりするのだが、自覚がないというのは本気で罪かもしれない。
 ともあれ、柊は缶コーヒーを口にしつつ長門に聞き返す。

「お前はあっちには参加しないのか?」
「先ほどの質問通り。彼女たちの会話には私では理解できない単語が多い」
「理解はしたいってことだよな? わからない言葉俺に聞くくらいだし」
 理解したい、という意図があることは先の長門の質問で確認済みだ。
 輪に入りたいのなら引く必要はないと伝えようかと思ってそう尋ねると、長門は柊の方に向き直り、一言。

「……あなたは、案外頭が悪いわけではないのかもしれない」
「案外言うな。ケンカ売ってんのか」
「誉め言葉」
「言葉は選べよっ!?」

 そんな柊を見て再び視線を膝の上の本に向けなおすと、長門は答えた
「気にかける必要はない。知識に対して興味が生まれた場合自力で調査する」
「それもそうか。お前、そんな引っ込み思案ってわけでもないし」
「……あなたはその考えなしに発言する性質を改善すれば、もう少し『頭が悪い』と言われずに済むはず」
「頭悪い言うなっ!
 ……ったくお前も簡単に言うけどよ、そんなもんか?」
「そう」

 長門にとっては、執行部室にいる人間はハルヒ関連とはまったく関係なく付き合う数少ない人間だ。
 もちろん、彼女にとっての最優先事項は『涼宮ハルヒの監視』であり、『涼宮ハルヒの周囲の現状を維持すること』である。
 長門が執行部室にいることは、ハルヒのみを守るという一点からすれば、実に非効率的であると言える。
 にも関わらず彼女がここに顔を出すのは、いくつかの理由がある。

 執行部室には長門の知る限り、世界最高クラスの情報収集能力を持つ少女と、情報整理技能を持つ少女がいるという点。
 その2人がいれば、この世界にいつ異変が起きても素早く状況を把握でき、また元の世界に帰るための手がかりを掴むためにも便利、と判断したため。

 そして。
 北高が転移した当初、状況把握とハルヒの護衛のために彼女に張り付いたりしていた長門・理生・古泉。
 そして彼らは元の世界の敵対組織がなくなったせいもあり、『涼宮ハルヒの周囲の現状の維持』を行うために大きく関与する人物2人への注意を怠ってしまった。
 気づいた時には『その2人』は『異界よりのもの』に襲われていて。
 もしかしたら永遠に失われるかも知れなかった2人を、目の前の気の利かせ方の下手な青年が敵を薙ぎ払って助けてくれたということ。
 ……もっとも、その光景を見た2人のうちの片割れには『この人の制服の学校は万国ビックリショーを地でいく人間だらけ』という妙な誤解を生じさせてしまい。
 輝明学園と聞くと少し敬遠気味な感情を抱くようになってしまっているようではあるが。
 けれど、それは能力そのものに恐怖を感じているというよりは、トラブルに巻き込まれるから積極的には近づきたくない、という方が正しいようである。

 彼らがいなくなった時の涼宮ハルヒへの精神的ダメージははかり知れない。それは長門の使命上あってはならないことだ。
 そして、それ以上に長門自身もそんな事態が起きることは望まない。
 だからこそ、その可能性があった事態を回避してくれたことに対して彼女は感謝している。
 そういった意味では、長門がここにいる理由は美琴とやや似ているかもしれない。

 ともあれ。
 そんな会話をしている2人のところに、ふらふらふよふよとやけにぼろぼろになったサファイアがやってくる。

『……御二人とも、楽しそうですね』
「これのどこが楽しそうな会話に見えるんだよ。
 ってか、お前大丈夫か? ぼろっぼろだぞ?」
『お気遣いありがとうございます……。
 ですが、この程度はカレイドステッキ48の不思議機能・自己修復力(リカバリー)でこれこの通り』

 サファイアの表面を青い光の粒子が覆い、やけにボロボロになっていたサファイアが元の形に戻っていく。
 長門がぼそりと呟く。

「……自己の機能が十全に働いている平行世界から自身へと情報を転写、世界からの修正を欺き認識を固定。
 自己修復、というよりは無限に存在するバックアップデータによるアップデート再構成に近い修復法」
『さすがは長門様。完璧なフォロー、痛み入ります』

 長門の説明台詞に一礼するサファイア。
 この規格外ステッキ、無駄に凄まじい技術で自己修復しているらしい。
 リアルチートな長門からしても、『デタラメ』の一言に尽きるようである。
 その実に無駄に高次元な会話を聞きながら、柊は何の気なしにサファイアに言った。

「よくわからんが……便利だよなぁ、お前ら」
『お前ら、というのはわたしや姉さんのことを指して仰っておられるのでしょうか柊様』
「様付けて呼ぶのは止めろって言ってるだろうが。
 便利な体してるよな、ってのは素直な感想だな。羨ましい」
『そちらの魔剣様にもある程度の自己修復機能があると伺っておりますが』

 魔剣にも様付けるんかい。


 ともかく、柊が不思議そうに尋ねる。

「そりゃあるけど……って、誰に聞いたんだそんなこと」
『ご本人から伺っております』
「お前ら話せるのかよっ!?」
『もちろん嘘ですが』

 サファイアちゃんもなかなかイイ性格をしている。
 柊がぎりぎりと歯軋りしているのをよそに、サファイアが補足した。

『先日、開発部にお邪魔をいたしまして。
 その際輝明学園の技術者の方に技術提供を行う代わり、そちらの世界にある魔導技術について少し伺ったのです』
「納得」
「あぁそうですかっ。
 ……まぁ確かに自己修復機能があるにはあるが、たまにバラして整備してやらないと調子悪くなったりするんだよ。
 俺の魔剣はもともと箒だったわけじゃねぇし、外から箒の機能つけることで再構成したようなもんだからな」
『もともと箒だったわけではない……?
 聖典を使い辛いからとパイルバンカーに改造するようなものですか?』
「聖典なんて大事そうなモンに改造処理とか、そんなバチ当たりがどこにいるんだよ……。
 使いづらいから改造したわけじゃねぇ。
 ……まぁ色々あったんだよ、色々」

 どっかのカレーがそうですが。

 ともかく、柊は少しだけそっぽを向いて、珍しく少し言いにくそうにそう答えた。
 内心地雷を踏んだかもしれませんね、とヒヤヒヤしているサファイア。
 と。彼女の主人である美遊が、今までのやりとりを聞いていたのか近くの椅子に座りながら柊に尋ねた。

「では、こっちに来てからは整備していないのですか?」
「してるぞ? 最低週に一度、無茶させたら一応その度に」
「え?
 で、でも柊さんが魔剣なしで出勤してきたところは見たことがありませんが」
「そりゃそうだ、魔剣なしでこんな仕事できるわけねぇだろ。お前らだってサファイアたちがいないのに魔法少女とかできるか?」
「不可能です。……でも柊さん、さっきこまめに整備してるって仰ってましたよね?」

 なんだかかみ合っていない柊と美遊の会話に、解決の糸口を見つけたのはサファイアだった。

『柊様、もしやご自分で?』
「自分の相棒くらい自分である程度バラして戻せなくてどうするんだよ」
「……できるんですか?」
「一応な。分解つっても拳銃使いみたいに完全に1部品まで分解しちまうわけじゃなくて、大体の塊ごとに分けるだけだが。
 ていうか、俺はバックアップない場所に叩き込まれることもよくあったから、ある程度自分でやれないと命に関わるんだよ」

 大きくため息。
 苦労の偲ばれる発言なのは、彼が本当に苦労しているからである。
 異世界や月匣内に飛ばされてバックアップがない状態がよくある彼には、自分の体調管理と主武装である魔剣の機能維持はできないと生死に直結するのだ。
 サファイアが言う。

『マニュアルのようなものがあるとしても……よくできますね』
「あぁ、姉貴のバイク改造とか付き合わされたりしてたからな」
「バイクと魔導技術の粋たる箒の構造を……同じようなもの扱いするのはどうかと思いますが」

 美遊が頭を抱える。

 非常識の世界での常識人な美遊は、小学5年生ながらフライパン一つでフルコースを作り上げ、図工でキュピズムを描き上げ、算数で公式を導き出す強者である。
 その代わり、彼女は論理的に説明のつかないことを受け入れることが苦手だ。
 魔法少女ならとりあえず飛べそうなものだが、彼女にとっては『人間が飛ぶ』ということを想像することが非常に困難であったため、飛行らしい飛行が行えない。
 魔力を空間に固定化し、身体能力の内脚力を強化して魔力塊を蹴る―――すなわち、連続跳躍とでもいうべき空中移動を行っているくらいである。
 そこ、魔法少女らしくないとか言うな。


 そのため、共通の理論認識をあっさりと無視した、ざっくり感覚的な言動・行動にはついていけないところがあるのである。
 美遊が人生の命題にでもぶち当たったような表情で深刻に悩んでいるのを見て、サファイアが励ます。

『美遊様、気になさる必要はございません。
 論理飛躍をして考えることを放棄していれば、論理の発展はありません。美遊様のような考え方があるからこそ、人類は発展してきたのです』
「……なんかよくわかんねぇが、あれはバカにされてるってことでいいんだよな、長門」
「あなたが日常的な場面で論理的な思考法を実行しないのは事実」

 そう言われると、柊にとっても言い返し辛い。
 ごまかすようにため息とともに黒く苦い液体を飲み下す。
 そんな柊に、長門がたずねた。

「結局。『羨ましい』という言動はメンテナンスの必要性がないことに対する発言?」
「あーいや、別に手入れそのものを嫌だと思ったことはねぇし、面倒だって思ったわけでもないな。
 そもそも魔剣に対して思ったわけじゃないしな」

 柊の発言を聞いてしばらく長門は黙りこみ、心なしか声に力を込めて告げた。

「私が言うのはおかしい。それを理解した上で発言する」
「? なんだよ」
「―――『人間』に自動修復の機能が欲しいという発言は、人類の倫理的に発想がおかしい」

 長門は柊の発言を『人間がサファイアみたいに自動的に傷治ったら楽だよな』というように受け取り、その考えは『人間』が持つべきものではない、と言った。
 柊は、しばらく長門の言葉と自分が言った言葉を複合して色々考えた後、ようやく理解。
 自分の言葉の足らなさと、長門の気遣いに苦笑しながら答えた。

「なるほど。悪かった、確かに俺そんな風にとれなくもないこと言ってるな」

 なにやら笑いをかみ殺している様子の柊を見て、長門は首を傾げ、なにか間違えた?と尋ねる。
 そういうことじゃなくてな、と柊は続けた。

「俺の世界には回復魔法ってもんがあることは知ってるよな?」
「理解している。ノーチェによる施術過程を見た」
「そうだっけか。
 まぁとにかくアレが使えれば自力で回復することができるんだが、どうもその手の才能がないのか俺が使うのは難しい。
 自力で回復する手段がないと、たまに歯がゆい思いしたりもするわけだ。
 だから、回復する手段がある奴は羨ましいなって言っただけだよ」

 ケガしたら自動的に直ればいいのに、と言ったわけではなく、回復手段のない自分の身が恨めしい、という意味での羨ましいという発言。
 柊は言葉を使うのが上手いわけではないので、こんな行き違いもある時はある。
 長門はそう言って苦笑する柊を見て、一言。

「わかった」
「ならいい。
 けどまぁ、確かに回復専門要員がいてくれると便利といや便利なんだよな。
 ノーチェは魔法使いとしても回復専門じゃないから、あんまり危険な状況だと頼りにくいし……」

 ぶつぶつ呟きながら考え出す柊。
 執行部室において回復というと、初春が『風紀委員』用の応急手当キットを持ち込んだものとノーチェの申し訳程度の回復魔法のみだ。
 それで対応できない場合は病院に搬送されることになる。
 今のところそれで問題は起きていない。たとえその病院に若干人間的信頼の置きづらい医師がいたとしても。
 問題は、対応できるかできないかがノーチェ一人しか判断がつけられない、という点だ。
 彼女だって休みを取ることがある。そういった事情でノーチェが執行部室にいない場合は判断が遅れる可能性があるのだ。
 ならば彼女がいない間だけでも、回復魔法を使用できて、その上回復魔法で回復しきれるのか容態を見ることのできる要員を確保しておきたい。

 そんな考えが、ここに人が集まりだした頃からあったといえばあった。
 柊も年下の仲間たちと共にいて、彼らと一緒に活動している以上は彼らへの危険や負担を減らしたいという考えがある。
 それが同じ仕事仲間への、彼なりの仲間意識―――本人は気づいていないが、それが部隊や組織に対する俯瞰的な意識である。


 長門は内心、部隊単位の統率者としての柊の適正を考えながら、そんな彼に対して声をかけた。

「必要性を感じるのならば探せばいい。委員全員に依頼した方がより効率的」
「それもそうだな。よし、んじゃ後で聞いて―――」

 みるか、と言いかけた柊の言葉を皆まで言わせず、ある声が割り込んだ。

「そういえば、柊の方はどうなのよ」

 今までまったく別の話をしていただろう美琴の声だった。
 あまりにも唐突な質問に、思わず聞き返す。

「どうって、何がだよ。話がまったく見えんのだが」
「だーかーらー。柊の方は、彼女とかどうなってんのって聞いてるのよ」

 美琴の方を見れば、なんだかぐったりと机に突っ伏している植木。美琴と同じく興味深そうなベホイミとイリヤ。ハァハァ言ってる不審人物っぽいルビー。
 推測するに、恋愛関連のことをもう根掘り葉掘り聞かれた植木と、加害者たちという構図だろう。
 勢いに圧される美遊と我関せず状態を貫くサファイア、長門。
 そして聞かれた柊は、美琴の質問そのものがまったくわからない様子でいぶかしげに尋ね返す。

「彼女がどうなってるって……どういう意味だよ?」
「ったく……アンタの周り、結構女の子いるでしょうが」
「っていうか、執行委員も結構女性ばっかりッスよねー。大抵別に好きな人いるっぽいッスけど」
「彼氏持ちじゃないアンタが言うな」

 ベホイミ撃沈。
 いや、彼女も同性からはかなり好かれてるんですけどね? 不毛とか言ったら負け。
 ちょっと言い過ぎたかなー、と美琴が彼女を励ましているのをよそに、イリヤがその言葉を継いだ。

「えーと、つまりね。柊さんは彼女さんとか、いるよね?」
「なんでいる前提で話してんだ。そういう意味で付き合ってる奴はいねぇよ。
 ていうかそんな青春的なイベントが俺にあるわけねぇだろ」

 その瞬間、部屋に重く重く沈黙が落ちる。
 こういう時、とりあえず空気をぶち壊すのはふよふよ浮く飛行物体だ。

『……え、なにそれギャグですか?』
「人の発言をとりあえずギャグ扱いすんなっ!?」

 ルビーの言葉にツッコミを入れる柊の様子からは、冗談や虚言のようなものは見あたらない。
 長門や美遊たちも巻き込んで、少女(+飛行物体)たちは円陣になって小声で会話を始める。

『どう考えてもあれギャグ発言にしか聞こえませんよねー』
「さすがにあれは冗談だと思いたいんスけど」
「脈拍呼吸ともに正常。個人的な見解を述べると、彼は表情筋一つ動かさない虚偽の発言が可能なほど器用でない」
「長門さんがそう仰るなら、やはりあの発言は本気ということだと」
『逆に正気を疑いますが』
「っていうかちょっとおかしいでしょさすがに。
 報われないにも程があるわよ、アイツの頭の中で寄ってくる女の子ってどういう変換されてんの?」
『ご本人に確認をとってみればよろしいのでは』
「それもそうッスね。一度きちんと確認とってみればあの意味不明なスルー力も理解できるかもしれないッス」
「では、とにかく確認をとってみるということで」

 円陣解散。


 美琴がえへん、と咳払いをし、とりあえず一番彼との関係を噂されている相手について、できる限り自然に尋ねた。

「えーと……あ、そうだ柊。赤羽理事長代理ってどんな人?」
「なんだよ改まって。一度会ったことあるだろうがお前ら」
「いいから答えなさい。アンタから見てどういう人なわけ?」

 美琴の真剣な表情に少しばかり気圧されながら、柊は答える。

「お、おう。
 くれはは……いつも能天気そうに笑ってるが、あれで結構頑固者で責任感は強い方だな。
 そのくせ貧乏くじよく引かされて、よく色んな連中に狙われて、それでも笑ってるような強いヤツだよ」
「どんなヒロイン属性よそれ。
 ……で? その赤羽理事長代理は、アンタにとってどんな人なわけ?」
「俺にとってって……幼馴染以外に何かあるのか?」

 彼女が泣きそうなことをさらっと言わないであげてください。
 美琴が絶句している間に、柊はさらに言葉を継ぐ。

「この間元気にしてるか顔見に行ったら『アポイントくらいとりなさいよこの馬鹿―――っ!』ってヴォーテックス乱射の的にされたからな。
 とりあえず差し入れだけ置いて帰ってきたけど、やっぱりストレス溜まる仕事なんだろうな、理事長の代理って。
 邪魔しちゃ悪いからそれからは仕事の用事がある時以外は行ってないぞ」

 くれはが動転したのは、仕事に没頭していたところに急に彼がやってきたからなわけで。
 準備がなくて(くれは視点で)酷い有様のところを見られて恥ずかしいという気持ちがあったからなわけで、別に会いたくないわけでも邪魔になるわけでもないのだが。
 ……この男がそこに気づくのはいつになるだろうか。

 美琴が痛くなってきた頭を押さえながら、他の少女たちについても尋ねていく。
 その度に「後輩」とか「近所の子ども」とか、まるで自覚のない発言を出してくれる目の前の馬鹿に電撃叩き込みたい気分になりながら、必死にそれを押さえる。
 ちなみにそんな彼女の後ろでは、

「あ、あれが釣った魚にエサをやらない類の人間の思考ッスか」
『ははははは、素敵に無敵に見事に殺意が湧いてきますねぇ。
 ああいう方がいるから世の乙女が泣くことになるんです。ここはちょっと殺っときましょうか、死なない程度に』
『駄目です姉さん、証拠が残ります』
「さ、サファイア。言ってることが物騒すぎ……」
「そうだね。こういうのを外から近くで見てると自分の身にも覚えがあるから、なんだかちょっと泣きたくなってくるよ……」
「殺ろうサファイア。証拠が残らなければいいんだよね」
「殺害予告と判断。状況証拠である発言はすでに私の記憶領域に保存した」

 こんな会話が繰り広げられている。
 おそろしい場所ですね、執行部室。
 しばらく思いつくだけの人間について柊の自覚を聞いていたが、それが全て恋愛関係でないものだと言われ、頭がくらくらしてくる美琴。
 ため息を大きくついて、美琴は近くの机に腰かける。

「なんていうか……アンタ、1回病院行っとく? いい医者紹介するわよ?」
「哀れんだ目で俺を見るなよっ!?」
「哀れっていうか、かわいそうっていうか……どう表現すればいいのかしらね、コレ。
 忠告しとくけど、いつか後ろから刺されるわよアンタ」

 美琴が何に対して呆れているのかわからないため、柊は頭に大量の疑問符を浮かべている。


 もう、この男に対して恋愛面での成長を促すのはやめよう、とさじを投げて、一つ伸び。

「あーもうムダムダ。ものすごく無駄なことに時間消費した気がするわー。
 アンタのせいだからね、なんか弁償しなさい私の貴重な時間」
「どうやってだよっ!?」
「そうねぇ……久しぶりにカラオケ行きたいかな。この面子で。弁償なんだから、アンタの奢りでね」

 にやり、と笑って美琴が他の面々に視線を送る。

「あぁ、いいッスねー。最近歌うようなことしてなかったッスし、おもいきり声張り上げるのは楽しそうッス」
「わたしも行きたーい! こっちに来てから歌ってなかったんだもん、穂群原のローレライの実力を見せてやるー!ってカンジっ!」

 一番はじめに反応したのはベホイミとイリヤだった。
 それにおずおずと尋ねるのは美遊。

「あの……カラオケって、なに? サファイア」
『伴奏機のことです、美遊様』
「電子音による既存音楽の自動演奏機。今回の場合、自動演奏機の設置してある個室を用意した店舗に赴き歌うことを指す」

 サファイアと長門が補足説明。
 ほとんどの人間が行く気になっているのを見て、場を味方につけた美琴がイタズラっぽく柊にたずねる。

「決まりっぽいけど、どうする?」
「発想から決定までが音速過ぎるだろっ。
 ……ったく、わかったよ。全員で行くんだったら、ノーチェと初春帰ってくるまで待った方がいいだろうからそれまでは待てよ。
 あと、曲の予約入れといても仕事入ったら直行してもらうからな」

 けってーい!と手を打ち合わせる少女たちを見て、ため息。
 今日はやけに仕事の少ない日だったし、たまにはみんなでこんな息抜きをするのも悪くないかもしれない、と思いながら。


 ちなみに。
 『ついでに勧誘も一緒にしちゃおうか』という意見が通り、楓も合流し。
 カラオケしながらたくさんの執行委員に熱烈に口説かれ。
 『拙者の時間の空いている時限定でよければ、そちらに伺ってお仕事させていただくでござる』という返事を受けて。
 カラオケ大会が新委員就任大宴会に発展したのは、また別のお話。

 fin.

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