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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

外伝第03話

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だれでも歓迎! 編集

いけいけ僕らの159番隊支部! 活動日誌

 休日の昼下がり、学生達が街にあふれ出す時間帯。
 学校が休みということもあり、街には華やかな雰囲気とどこか浮き足立った空気が流れている。
 にも関わらず、『そこ』には別の空気が流れていた。
 シャッターは固く閉ざされ、携帯で険しい顔をしながらたくさんの少年少女がやり取りをし、KEEP OUTとかかれたテープがぐるぐると周囲を覆っている。

『指揮車より全隊員へ。 現場配置はどうなってる?』
『こちらるーじゅ1ナリ~。るーじゅ1計5名、裏口にきちんと配備完了ナリよ』
『同じくコバルト2。表シャッター前に12名、その他出入り口になる可能性のある窓、通気口に各2名ずつ配備完了済み……』
『はいはーいそんないい子ちゃんなお前さんたちに追加情報だっ。
 立てこもり犯は1人、大振りなナイフを持って小学校高学年くらいの女の子を人質にしている。他に、一緒のフロアに閉じ込められた一般生徒が男女合わせて10名。
 あのふくらみのサイズだと小口径だろうけど、おそらくはポケットに拳銃もあるな。人が殺せる武器だ』
『指揮車より情報員へ。 犯人の特徴は?』
『若い男。私服。趣味悪い。
 それ以上は今データベースにアクセスしてるけど、正確な照合にはもうちょっと時間がいるな』
『微妙な役立たず』
『……それ酷くないッスか、たいちょー』

 シャッターの前に立っている者たちの手には、それぞれ透明な盾だの閃光手榴弾だの催涙弾入り投擲機だの洞爺湖の木刀だの魔法のこもった札だのが握られている。
 物騒な装備で身を固め、相互にやりとりを繰り返す彼らは『各校選抜執行委員』。
 最近では『選抜委員』と呼ばれる、この学園世界の治安維持を趣旨とする委員たちである。

 彼らが今いる場所はC区画のとある銀行前。
 十数分前に銀行強盗が発生。銀行の職員は即座に非常ボタンを押し、シャッターを閉じた。
 犯人が出られなくなったのはいいものの、中にいた者たちも全員閉じ込められてしまったわけで。
 最寄の選抜委員『第158・159番隊支部』が解決に乗り出し、今に至る。
 現在はとりあえず包囲を完成し、まだ機能している監視カメラの映像で中を探っている状態だ。

 配備完了後、相手の能力・戦力を把握後突入経路を確保。
 人質の安全を優先で作戦行動を行うのが大原則。
 緊張感で痛くなりそうな頭を押さえながら、作戦の指揮を取る隊長は一つ重々しいため息をつく。

『指揮車より情報員へ。 何かしら有用な情報を掴むまでは話しかけてくるな』
『うわ酷っ!? ちょ、ちょっと隊長―――』
『命令だ。黙れ』
『……へいへい、わかったよわかりましたよ』

 ため息が通信機越しに聞こえて通信が切られそうな雰囲気になった時、通信機の向こうから不思議そうな声がした。

『ん……? あれ、おかしいな』
『どうした、状況が変化したか?』
『……なんか、監視カメラの調子が急に悪くなった、みたいな?』

 通信機の向こうの声が一気に緊迫感を増す。
 どういう意味だ、と問えば、キーボードを叩きまわす音が続き、少し焦りをにじませた声が続く。

『なんだこりゃ、砂嵐……っ!? いやでもちらちら映るってことは妨害電波かっ!?』
『―――そちらが尋常でない状況だということは判断した。さっさと正確な報告をしろ』

 ち、と舌打ちする音。
 そして通信機の相手は語りだした。

『なんだか知りませんが、電気信号的な妨害が行われている模様です』
『相手は単独犯ではないということか?』
『……調査してないんではっきりしたことは言えませんが、自分の考えを信じるなら答えはNoです』
『理由は』
『監視カメラを電気的にイカレさせることができる協力者がいるなら最初からやってるはずです。
 ついでにカメラだけじゃなくてこっちの通信機器にも被害が出せるはずですしね。
 そもそも、そんな力があるなら銀行強盗じゃなくてもっと効率のいい金の稼ぎかたがいくらでもあるでしょう』

 少し冷静さを取り戻したようだと判断。
 安堵のため息をつきながら、指揮のトップは一人呟く。

『外部からの干渉ならば通信にも支障がでるはずだ。
 ならば監視カメラの電子的妨害は店の内部でだけ起きているはず……』

 いったい何が起きているんだ、というこの場の誰もが持つ疑問を口に出すことはせず、次の指示を出す。

『考えていてもわからんもんはわからんっ。
 人質の安全確保が最優先だ、なんとしてでも中の状況を把握しろ!』

 了解!と返る声を聞いて、先は長そうだ、とため息をついた。

 ***

 ある晴れた昼下がり。
 こっちでできた友人と、前から話していた『バザール』でショッピングをする計画を実行に移すことにした彼女。
 待ち合わせ場所で会ってから、お金をおろそうと(『バザール』では現金・物々交換などはできるがカード払いがほとんどできない)銀行に行ったところ。

「……なーんでアンタと一緒にいるとトラブルに巻き込まれるのかしらねー」
「その言葉バットで打ち返すッスよ」
「なによ、私のせいだって言いたいわけ?」
「美琴さんがわたしに全部責任あるみたいに言うからッスよ」
「うっ……わ、わかったわよ。じゃあ責任は半々ってことで」

 銀行強盗に巻き込まれたのだった。
 にも関わらず、微妙に緊張感のない話をしている彼女こと御坂美琴と友人ことベホイミに、強盗がテンパった声を上げる。

「そこの地味とガキ! 何くっちゃべってやがる、黙れって言ってんだろうが!」
「……どう思う?」
「しゃべりがすごく三下ッスねぇ……警報装置のこと考えてないあたりすごくマヌケッスし。
 ストレスから万引きするような精神構造の奴の規模がでかい版みたいな感じじゃないッスか?」
「ストレスから銀行強盗ってのはすごく迷惑なんだけど……」
「学生には最低限の保障があるッスけどあくまで最低限ッスし、学生外は仕事しないとお金支払われないでしょ?
 お金ないし働きたくない、でもお金は降ってこない。だから強盗、と。学園都市にもそんな人いるらしいじゃないッスか」
「人の街を無法地帯扱いしないでくれる?」
「何言ってんスか、無法地帯ってのはバギーに乗ったモヒカンがヒャッハーしてる場所のことッスよ」
「あ、そうか」
「人の話を聞いてんのかテメェらっ!?」

 強盗、再びのツッコミ。
 美琴とベホイミを除く8人はおびえたように縮こまって、目に涙すら浮かべている。人質にとられている少女に至っては今にも泣き出しそうな顔をしている。
 まったく面倒だ、と思いながら美琴はため息。
 早いところ終わらせてバザールに向かいたいものの、ベホイミが動くには少し距離がありすぎる。人質がいる以上、彼女が怪しい動きをすることはできない。
 美琴にしたところで、電撃を撃てば間違いなく当たるだろうが犯人と人質が接触している以上は下手に撃てない。
 人質に電流が流れる可能性もあるし、最悪電流による筋肉硬直でナイフの刃が人質の少女に食い込むかもしれない。

 さてどうしたものか、と美琴が考えていると、不意にベホイミが立ち上がった。

「犯人さん、人質取り替えてあげてくれないッスか。
 そんなちっちゃな女の子が泣きそうなとこなんて、あんまり見てたくないんスよ」

 彼女は美琴と犯人の視界から隠すように立ち、犯人から見えないように黒い粉の入った小さな袋を投げ渡すと、両手を上げた。

「ほら、武器なんてどこにもないッス。
 それに自分よりも小さなその子を支えながら歩くよりは、ある程度自力で立てるわたしの方が逃げやすいッスよ」
「う、うるせぇ黙れっ! 近づいてくんな!」

 許可なく数歩の距離を詰めたベホイミに、強盗は一歩退りながらナイフを彼女に向け、再び人質の少女に向けなおす。
 それにはぁ、とため息をついて気づかれないように美琴の視界を確保するために一歩横に移動、立ち止まる。

「なーにを警戒してるんスか、こんな丸腰の女子高生相手に。
 なんなら脱いでみせましょうか? 武装解除してるか確認のために」
「うるせぇってんだよ! 近づくなっつってんだろっ!?」
「だからほら、ちゃんと止まってるじゃないスか。ほらそっちの要求は飲んでるッスよ、ちょっとくらいこっちの話を聞いてくれてもいいと思うッスけど」
「なんなんだよっ! お前人質だろっ!? だったらそれらしくそのへんの隅にがたがた震えてろっ!」

 その言葉にちょっと内心で青筋を立てるベホイミ。
 だがしかし、ひとつ咳ばらいをして耐える。

「だーかーら、さっきも言ったじゃないッスか。
 目の前で小さな女の子が泣き叫んでるの見てるのは気に食わないんですって」
「黙れよ! ちょっとは怖がれ、こっちは凶器持ってるんだぞっ!?」
「そうッスね。そしてこっちは丸腰ッス。何度も言ってるように、その子を連れて逃げるよりはちゃんと立って走れるわたしの方が楽ッスよ?」

 犯人はしばらくベホイミと少女を見比べて―――言った。

「断る! いざとなりゃ、このガキ殺して逃げりゃ済む話だ!」

 捕まっている少女がひ、と喉を鳴らした。
 無理もない。先ほどから命の危機がごく近くに迫っている上、殺害宣言が出たのだ。おそろしくないはずがない。
 それを聞いて、ベホイミはなるほど、と呟いた。

「―――じゃあ、遠慮はいらないッスね?」

 彼女の言葉には? と犯人が尋ね返そうとしたその時。
 右手に握った凶器の重みが、不意に半分以上なくなった。
 急に軽くなった手を不思議に思い、少女の頭越しに右手を見ると、そこには。

 柄からすっぱりと刃ごと無くなっている、黒いグリップだけになったナイフの残骸が握られていた。

 彼は気づかなかった。
 ベホイミの後ろから何かに導かれるようじわじわと黒い何かが線となって自分の足元に伸びていたことを。
 彼女が立ち上がる際に後ろにいた美琴に渡したものが何であったかを。
 そして何より、後ろにいる少女の異名と能力を。

 黒い線は、美琴の能力の一部である磁力操作の影響を受けた砂鉄。
 ベホイミの渡したそれを犯人の足元まで伸ばし、合図とともに流れるように動かしチェーンソーのように砂鉄を高速運動させて、グリップからナイフを2つに両断した。
 この程度のこと、学園都市の第3位、発電能力者(エレクトロマスター)の頂点『超電磁砲』にとってはたやすいことだ。
 黒いチェーンソーで両断された刃先は、直後に刃の状態から掴むように変化させられた砂鉄の群れによって美琴の足元に運ばれ、踏みつけられている。

 そして。
 驚いた彼がグリップを投げ捨て、人質の少女のことなど忘れて少し拘束が緩み、それでも右手で左胸の隠しポケットから隠してあった小口径の拳銃を引き抜こうと―――

「遅いん」

 したその時にはすでに人質の少女を自分の後ろにかばって男の右手を捻り上げた、眼鏡を外して桃色の髪の少女が―――

「―――ッスよぉぉっっ!!!」

 重い重い、肉を叩く音とともに、彼を全力で殴り飛ばし。
 彼はその一撃でなす術も無く強烈過ぎる衝撃に意識を飛ばした。

 ……壁まで吹き飛ばされて頭をぶつけた上、その後2、3度ボディブローを受けた彼にとっては、その一撃だけで意識を失ったことはある意味僥倖だったかもしれない。

 ***

 選抜委員第159番隊支部。
 その応接間にて、銀行強盗に先ほどまで巻き込まれて(解決して)いた二人の少女にお茶を出していた少女が、がちがちに緊張しながら応接間の扉を開け、外に出た。
 同時。

「おつかれー。どうだった? 大丈夫だった? 変なことされなかった?」
「へ、へへへへ変なことって何ですかっ!? ジャンケンに負けてお茶出しする程度であたしは何をされるかもしれなかったんですかっ!?」
「そーいえば超電磁砲って『学園都市』内のかわいい子は根こそぎ食べちゃうって噂を聞いたことがあった」
「ふむ。その情報は例の風紀委員のテレポーター経由のまったくのデマだと聞いているが」
「ていうか、なんで『暴れ牛』と『女雷帝』なんだよ。執行部が中にいるならイリヤちゃんと美遊ちゃんにいてほしかったっつーの」
「わ、わたしは……相良軍曹がよかったのです、じゃなくて、であります」
 外に待機していた10人ほどの選抜委員が彼女を取り囲み、話し出す。
「ていうか、あんな人間兵器ども連れてきたの誰だよいったい。いつこの支部吹っ飛ばされるかわかったもんじゃねぇよ」
「滝野 智と朱野 ユリでーす」
「特攻型馬鹿と、異様に順応力の高いイノセントか。で、そいつらは今?」
「なんでも重要参考人として支部まで『連行』って形でつれてきたらしくて、今隣で隊長に超しぼられてるよ」
「あわわわ、こ、この支部吹っ飛んじゃうんですかっ!? ぼーん! なんですかっ!?」
「お、落ち着くです、じゃなくて、であります。
 色々と噂は流れていますが、執行部は結局いい人たち、であります。機嫌を損ねなければ、おびえる必要はない、であります」
「いやいや、でも『暴れ牛』と『女雷帝』れすよ? 執行部の中で一番強引な類の人たちれすよ?
 こう、うっかりお茶を零したらそのまま地獄を見せられそうな感じの」

 全員硬直。
 そろーり、と応接間の窓を全員で伺い見る。
 20近い目が中の二人の少女を捕捉。それに気づいたらしい髪色の明るい少女―――御坂美琴がぎこちなさげに手を振る。
 彼らはそれになんとか愛想笑いを返し、手を振り。

 全員で円陣。

「ちょ、ちょっとどうするよ目ぇ合っちまったよドキドキしてんよコレが恋か!」
「……単に危機を感じて心拍数が上がっているだけだと思うがな、生命的な意味で」
「あ、ダメかも。わたしあの方ならスカーフを直していただきたい……」
「アンタんとこの制服スカーフないじゃん」
「は、しまった! ……わかりました。今から中央に行ってスカーフのある学校との交換留学届けを出してきます!」
「いっそ常盤台行って来るといいんでないかね?」
「それもそうで」
「無理だよこいつ高校生な上常盤台は女子中学だって」
「愛があれば性別の差なんて!」
「女子校にいく同僚は見たくない、安らかに眠るといいです、じゃなくて、であります」


 ***

 その頃の応接室。

「……アレ、聞こえてないと思ってると思う?」
「静かに。ここで暴れると奴らの思うツボッスよ」
「そういう割には、マグカップが悲鳴上げてるみたいだけど」
「気のせいッス。少なくとも私は冷静ッスよ、そう、例えタンクローリーとロードローラーから鬼焼き→ちょーしんちゅー→ガントレッドハーデスを決めたくても冷静冷静」
「自分に言い聞かせ始めたら負けだと思うわよ」

 呆れたようにコーヒーを一口すする美琴であった。

 ***

 応接室の外。

「しかし、執行部付きの連中がウチの支部でお茶飲んでるとはなぁ……感慨深いモンがあるな」
「写メってうpしときます? ます?」
「やめとけ、勝手に触ると支部が吹っ飛ぶ」
「あ、じゃあわたし後で御坂お姉さまに一緒に写真をとってもらって」
「ちょ、ちょちょちょやめてくださいよ絶対御坂さんに支部が吹っ飛ばされちゃいますよっ!?
 『蒼雷の女帝』ですよっ? 『女雷帝』なんですよっ!? あまつさえ『超電磁砲』さんなんですよぅっ!?」
「それは全部同一人物を指す言葉だろう。
 それに『超電磁砲』と仲良くなれば例の朴念仁とも知り合えるかもしれんぞ」
「へぅあぁぁぁっ!? な、なんですか朴念仁ってなんですかっ!?」
「気づかれてないとでも思ってたのか?
 お前が一度助けられてから定期入れに『バザール』で買ったブロマイドとファンクラブ会員証を後生大事に持っている例の―――」
「いやぁぁぁぁああっ!? や、やめてくださいやめてくださいやめてくださいぃぃぃっ!!」
「ストップ! ちょ、ノーパソの角とかはどう考えても凶器だろ! ほら白目むいてるじゃない!」
「衛生兵、衛生兵ー!」
「だめだ血じゃなくて虹色の液体が噴出してやがる……っ!」

 どこからかやってきた担架で眼鏡な選抜委員が運び出され、あわてて惨劇のあとを掃除する選抜委員たち。
 この支部ではよくあることなのか、大きな騒ぎにはならない。

「ていうか、やめてくれよもうこういうの。俺はバイオレンスの世界には生きてないんだよ、小さな女の子に囲まれて笑って暮らすのが俺の夢だ」
「氏ね炉利コン」
「コンクリ漬けで学園海沈めちまえ」
「いや武偵高の狙撃科(スナイプ)の的に提供だな」
「牙の塔の魔術訓練の的だろ」
「輝明学園スクールメイズの最下層行きトンネルに落としちまえ」
「くくくくく……その程度で炉の志を止められるとでも思っているのか!
 俺の背中にこの胸に、一つになって生き続ける! 見ているがいい、第二第三の炉の心を持つ者が必ずやお前たちの前に現れ」
「変質者なの。黙れなの」

 再びの担架出動。
『何してるんスかねこの支部』『本部に報告した方がいいんじゃね?』と担架を担いだ隊員達が動かなくなった委員を病院に連れて行く。
 血文字で『実は超電磁砲も胸平らでいいとおも……かゆ……うま……』とか書かれているが、その文字もごしごしとモップでこすって消される。

 ***

「お、落ち着くッスよ。なんでいきなりオモチャのコイン取り出してるんスか!?」
「……なんとなーく、今とてつもなくコイツを撃ちたい気分になったのよね」
「何となくで破壊兵器級の一撃を屋内でぶっ放すのはやめてほしいんスけど!」
「そうね。携帯から相手の携帯データが復旧できないようにしてからボンくらいで許しておいてあげることにするわ」
「それはそれでヒドい話だと思うんスけど……まぁ、怪我人が出ないならいいんじゃないスか」

 おっけ、と返して美琴は自分の携帯を取り出し運ばれた相手の携帯の捜索を開始した。

 ***

 病院にて一人の青年の携帯がただの箱になっている頃。

「あーもう、なんだって今日はこんなに掃除必要なんだよ。めんどくせー」
「す、すすすすみません、わたしがうっかりノートパソコンで人を殴り倒したばっかりに……」
「とりあえず犯人さんの護送は終わっちゃってるから、隊長がバカコンビにお説教終えてむこうの二人になんか言うまではあたしらここで待機なんだよね」
「まぁ、ここは生執行委員とお話できるチャンスだと思ってさー」
「つまりお姉さまとわたしに語らいの時間が生まれたってことなんですねっ!?」
「黙れ高校生オス」
「そうなの。どうせ執行委員ならウチは最近入ったニンジャさんが見たかったの。本物のシノビを見たかったの」
「麻帆良の長瀬だったっけ?」
「むしろニンジャなのに堂々と正体バラシてんのとかいいのか?」
「大丈夫だよ。世界忍者とか紙忍者とかいるじゃん」
「世界はSTGで紙は格ゲーキャラだろーが」
「待ちな、そもそも紙忍者は自称じゃないだろ」

 と、忍者の定義について話していると、一人が言った。

「ボク、執行委員ならエルフィールさんが……」
「そういやおまえエリーFCの会員だっけ」
「何言ってんの、あたしなんか『バザール』の『執行委員非公式FC』に入会して『バッチセット』と『携帯用メタルストラップ』と『ちびキャラ湯のみ』持ってるもんね」
「バカ」
「馬鹿」
「アホなの。欲しくないキャラも入ってるかもしれないのに、抱き合わせで買わされてるの」
「ふ、いいのさ。公式に踊り狂わされてやるのさ」
「非公式って自分で言ってなかったっけ?」
「うっさいっ! つーかぁ、今度やるっつってたじゃん『学園世界認可ファンクラブ決定戦』!
 あれに出て認可取ってくれればいいんだよ、別に!」

『学園世界認可ファンクラブ決定戦』とは。
 学園世界の有名人には必ずと存在すると言っても差し支えないファンクラブ(以下FC)。
 そのFCがあまりに多くなり価値がインフレしまくり、ジンバブエドル並に価値のないものとなってしまった。
 一人を対象としたファンクラブがいくつも乱立し、また同好会活動というほどに何かをしているというわけでもないFCの数は増加の一途をたどっている。
 しかし、一山いくら程度に思われたくはないのが人の性。
 極上生徒会で認可してほしいという意見が通り、極上生徒会主催の『学園世界認可ファンクラブ決定戦』で上位3チームになれば極生の認可を勝ち取れる、という事に。
 ……恐ろしいことに、一週間後の大会に向けエントリー数はすでに3万7千件を超えているという。

「そういえばそんなんあったなぁ。オレら駆りだされるじゃん、めんどくせー」
「いいじゃないですか。ケンカと祭りは学園世界の華ですよ」
「ファンクラブ決定戦って何やるんだっけ。10キロ障害物マラソンがあるのは知ってる」
「プレゼン対決とかじゃなかったっけ」
「爆砕点穴覚えるの」
「愛を物体に変えるんだよね、たしか」
「……よくわからんが大惨事になりそうなことだけはわかる。清掃委員も大変だな……」
「あら、清掃委員に彼女さんがいる人は大変ですねぇ」
「ばっ……彼女じゃねーよ! ただの幼馴染だよバッカじゃねーのバーカバーカ!」
「図星ー」
「図星ー」
「馬鹿はそっちなの」

 一人壁とお話する寂しい少年を放っておき、話は続く。

「そういえばさ、お前武器ほんとにそれでいいのか? バズーカとかお勧めだけどさ」
「いや、アンタのみたいにマイナスイオンが出るだけで開発者が『人に優しい武器』とか言っちゃうバズーカはどうかと思う」
「そうそう。日本刀は淑女の嗜み、重火器は乙女の作法なんて言葉があるくらいだしね」
「いや、アンタの格言はアンタしか言ってないから。そもそもわたしの両方とも違うし」
「そ、そそそそうですよね! やっぱり女の子なら暗器使うべきですよね!」
「いや、アンタみたいに顔に似合わず体中に暗器仕込んでるのは女の子って言わないっしょ」
「なんなら魔法覚えてみる? ボクも今勉強中だし、一緒にがんばろうよ」
「いや、わたし普通の女の子でいたいから」
「普通の女の子の武装が木刀ってどーよ」
「大丈夫! 竹箒振り回して教頭吹っ飛ばしたちっちゃい女の子知ってるし」
「あぁ、例の209にいる川添さんだっけ?」
「そうそ、部活終わってから活動に参加してくれてんだけどあの子はすごいねー。
 純粋に剣道技だけでレベルが低いとはいえ学園都市の能力者とかウィザードとかねじ伏せる規格外は怖いわ。
 あそこまでにはなれなくても、この木刀があればなんとかやれそうな気がしない?」
「でもそれどっかの生徒会長が持ってるのとは違って、ただ頑丈なだけの木刀らしいじゃん」
「頑丈だからちょっと力込めると大砲の砲身もぶち抜けるよ?」
「……それは、ちょっとどころの話じゃないと思うの」

 そうかなー、と手元に3文字の漢字が彫られた木刀をぶんぶんと振ってみる少女。
 そんな彼女を横目に、話は続く。

「あ、そういえばさ。この間いい豚鍋屋みつけたんだけど」
「豚鍋ってなんだよ」
「豚の薄切りを煮立った湯につけてソースにつけて食べる食べ物」
「日本ではそれ一般的に豚しゃぶしゃぶって言うんだぞファンタジー世界の住人め」
「あーじゃあそのしゃぶしゃぶ屋。食べ放題1時間半で980円の店」
「乗った」
「待って、今月お小遣い厳しいんだよぅ……」
「+300円でデザートも食い放題」
「ウチも行くの」
「デザート! あんみつ! わんこソフトクリーム!」
「どうなんだそれ」
「うし、隊長帰ってきたら提案してみるか今日の打ち上げそこでって」

 さんせーい、と支部中に声が響いた。
 と、その時。一人の小学生くらいの少年が支部の戸を叩く。

「すみませんっ! うちの妹見ませんでしたかっ!?」
「ん? なにかなボーヤ、妹ちゃん迷子ー?」
「は、はい……一緒にこのへんまで遊びに来てたんですけど、さっきの銀行強盗騒ぎではぐれちゃったみたいで……」
「ありゃりゃ。じゃあ行くかー」
「実際ボクたちあぁいうドンパチ向けじゃないですしねー。こういうのの方が性に合ってます」
「あ、あのあのあのボク。妹ちゃんの名前教えてくれる? 近くの監視カメラから探してみるから」
「君はここにいるといいです、じゃなくて、であります。ちょっとしたジュースくらいなら、出すであります」
「奥の応接間……は子ども向けじゃないし、ここで飲むかい?」

 ばたばた、と動き出す選抜委員たち。
 それでも心配そうな少年に、それまで壁と話していた高校生くらいの少年がぽん、と背中を軽く叩いてやる。

「任せろよ。ちゃんと妹ちゃんは無事に連れてくるからさ、大人しくここで待ってな」
「そうそう、ボクら対して力はないけど、迷子探しとかなら専門家に近いんだよ?」
「一人の女の子を兄ところに戻すことくらいなら、朝飯前なの」
「心配なのはお兄ちゃんとしてものすごく正しいことだけどね」

 言いながら数人が外に出て、彼らは気合を入れる。

「うっしゃ、じゃあ行きますか!」
「じゃあ、ウチは例の銀行の周囲まで行ってくるの」
「わたしは人通りの多いあたりかな。後方支援よろしくね」
「うーん、人に流された可能性もあるし、人ごみの流れたどってみるかなー」
「探査魔術、上手く発動するといいんだけど」

 そして彼らは街に散る。
 それぞれ違う自分の学校の制服を着ながら、一つの笑顔を取り戻すために。
 そうやって、彼らは今日も街角の笑顔を守っている。


 fin.

 ***

 その頃の応接間。

「ねー」
「なんッスか?」
「私たち忘れられてない?」
「どうでもいいから早く開放してほしいッスねー」
「帰っていいかしらねー」

 空になったマグカップを机に置いた二人の少女が、黄昏ていた。


 今度こそ終わる。


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