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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第14話01

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月と星と柊と


 忘却世界・ラグシア城跡百階ダンジョン最下層の封印の間は今、床一面に描かれた魔法陣と壁の魔術文字が放つ浄化の光によって隅々
までもが照らし出され。
 アンゼロットは首に刃を突きつけられたままの体勢を意に介した風も見せず、清らかなる天界の光に刺し貫かれて痛む右目――冥界
の魔力を導く金色の邪眼――をきつく閉ざしつつも、冥界との繋がりを阻まれて床に膝を付き、荒い息をつく黒翼の戦姫を“してやっ
たり”と言わんばかりの表情で見下ろしていた。

「これは・・・・・・そうか・・・・・・エルンシャが・・・・・・」
「ええ、そのとおりですわ。此処は元々、冥界最強の魔王エンディヴィエの一部を封じていた場所。わたくしを封じるつもりで連れ込
んでおいて、欲を出して自分まで脚を運んだのは致命的な誤りでしたわね」
「ぐ・・・・・・・・・身体に・・・・・・・・・力が・・・・・・・入らん・・・・・・・・」
“このあたしを・・・・・・・・なめんじゃ・・ないわよ!”
「がっ、はっっ! ごほぉっ・・・・・・げふっ・・・・・・!」

 突如、もう一柱の古代神の思念が響くや、急激な脱力感に苦しむ戦姫の脇腹を内側から突き破り、か細く白い右腕が現れて。
 黒髪の戦姫は激しく噎せ返り、大量の蝿の死骸を吐いた。

「ぐぉ・・・が・・・ごほぉっ・・・・・・何故、邪魔をする、蝿? もう少しで、もう少しでアンゼロットが手に入るというのに・・・・・・」
“あたしは裏界第二位の実力を持つ魔王! あたしの獲物は誰にも渡さない!”
「裏界に封じられた事自体が無能の証だと言うのに、其処で二番だと言うのが自慢になるか。何処まで頭が悪いのだ、貴様はッ!」

 戦姫が一喝するや鎌鼬が渦巻き、切断された魔王の腕が床に触れるや蝿の死骸と成り果て、崩れ散る。

「うふふっ。その寄り代の支配率、随分と下ったようですわね」
「この・・・・・・・・」

 勝ち誇る月女王と、悔しげに歯噛みする古女王。形勢は、完全に逆転していた。

 無論、この老獪な古代神が、この展開を全く念頭に置いていなかった筈はない。だが、何処かに油断があったのだろう。
 本来、封印の魔法陣を起動するには数十人の術者が必要だ。完全体の世界の守護者であれば単独でも起動出来るだろうが、砕けた守
護者の欠片と、その手の術式に関しては門外漢のウィザード二人だけでは超高位の魔王を封じられる程に強力な魔法陣を起動は無理だ
と判断しても不思議ではない。

「恐らくエルンシャ様は、柊さんとコイズミの脳を外付けメモリ代わりにして砕けた身体を補ったのでしょう」
「莫迦な・・・・・・たった二人の人間の脳に、此れだけ大規模で複雑な術式を押し込んだだと? 脳髄が焼き切れて廃人になるぞ・・・・・・」
「貴女が驚くのも無理はありませんね。普通はそうなるでしょう。実際、二人とも鼻血と血涙流してますし」

 アンゼロットがチラと視線を動かせば、男達は今にも倒れそうな苦しげな表情で脳を蝕む激痛に耐え、それぞれの得物を杖代わりに
辛うじて倒れるのを堪えていた。勝利を確信した銀髪の少女の視線を追い、そちらを見遣った戦姫の目が大きく見開かれ、その喉から
驚愕の呻きが漏れた。

「信じられん・・・・・・エル=ネイシアの・・・敬虔なる下僕達ならばいざ知らず・・・・・・裏界の間抜けどもと生温い馴れ合いを続けて来たフ
ァー・ジ・アースの腑抜けどもに、此れ程の気力があるなどとは・・・・・・」
「良く知りもしない者を甘く見るからです。あの二人は、わたくしがこの手で直々に鍛え上げたのですよ。この程度の苦痛、ものとも
しませんわ」
「こ・・古精霊!」

 アンゼロットの駄目押しの言葉を聞き流し、戦姫は声を振り絞って突然の事態の変化に動揺する下僕達へと呼びかけた。

「魔法陣を砕―」
「せっかよ!」

 己が下僕へと指示を下さんとする古代神の叫びを征し、封印の間に、神殺しの魔剣使いの咆哮が轟いた。



 脳が灼ける。頭が割れそうな激痛が走る。眼球の毛細血管が破裂し、視界が深紅に染まる。教科書を数ページ読んだだけで頭痛がす
る柊の脳を、超高位・超高密度の魔術情報が駆け抜ける。脳の一部が損傷し、苦労して憶えた数々の魔法の記憶が失われていく。エン
チャントフレイム。エアブレード。エアダンス。ストームラン。過去の激戦を支えてきた知識の数々が消えていく。魔剣との繋がりに
異常が生じる。

「グッ・・・・・・グぉ・・・・・・が・・・・・・ッ・・・・・・」
「こいつぁ・・・・・・・・・覚悟しちゃ・・・いたけどよ・・・・・・20年近く生きてきて、こんなに頭使ったのは初めてだぜ・・・・・・」
『二人とも、もう少し、もう少しだけ堪えてくれ。あと少しで魔法陣が安定するのだ』
「俺らのこたぁ気にすんじゃねぇ! さっさと済ませやがれ!」

 気遣う慈父神を怒鳴りつけた柊が、隣で苦しむコイズミの様子を覗おうとした矢先。確かに掴んだ筈の勝利を?ぎ取られ、突然に窮
地に落とされた戦姫の叫びが、耳朶を打った。

「こ・・古精霊! 魔法陣を砕―」
「せっかよ!」

 魔剣を、天井に向けて突き上げる。心に、魔剣の像を描く。魂を、世界に開放する。

 世界と世界を遮る帳が、下がる。

 帳が下がって下がって下がって。

 下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって。
 下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって。
 下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって。
 下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって下がって。

 三千世界の隅々から、己が魔剣の平行存在を掻き集める。

 なんの変哲もない、ただのバスタードソードの魔剣
 超巨大武器の魔剣
 ヒルコと融合した魔剣
 神の血で汚れた魔剣
 神の手で折られた魔剣
 七つの宝玉を刃とした魔剣
 ウィッチブレードの魔剣
 超長大武器の魔剣
 遺産兵器の魔剣
 錬金兵装の魔剣
 神姫武装の魔剣
 天使武器の魔剣
 人化した魔剣
 精霊船の魔剣
 下僕の大群の魔剣

 一つの世界を埋め尽くす、無限とも思える数の、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。

魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。
魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣、魔剣。

「降り注げ! 三千世界の剣!」

 柊が魔剣を振り下ろす。集められた無窮の魔剣が、豪雨のように降り注ぎ。

「ワイドカバー!」

 古精霊の一体が空間を捻じ曲げ、総ての刃を自らの小さな身体に集めんとした。

「んだとっ?!」
「させませんわ! 陰の気!」

 切り札を封殺され、動揺する柊の前で、アンゼロットの大いなる者としての力が空間の歪みを相殺するも。
 別の古精霊が同じ事をして瞬く間に針鼠の様な姿となり、最後にAK用らしき刃渡り3mの巨大な魔剣に串刺しにされ消滅した。

 柊蓮司渾身の一撃を持ってして尚、敵の被害は唯一体。

「我が下僕の忠節、軽く見るでないわッ!」
「甘く見てんのはおめーの方だぜ、エルヴィデンス! コイツで決めてやる!」

 我に返った柊は勝ち誇る古女王へと叫び返すと、振り下ろした魔剣を素早く引き戻し、両目を閉じて意識を研ぎ澄ます。
 サトリ、発動。封印開放。生命の刃・最大出力・・・・・・プラーナ、全開。この一撃に、注げる限りの力を込めて。
 薙ぎ払う。

「でぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!」

 繰り出された斬撃は金色に輝くプラーナを纏いて宙を引き裂き。
 また別の古精霊が空間を捻じ曲げ、主と仲間を庇い、斬撃波の総てをその身一つで受け止めた。

「またかよっ!」
「甘ったれめ! この程度、基本だろうが!」
「ここまでが露払いですわ!」

 月女王が咆哮とともに右手を天へと突き上げ。

「下僕達! わたくしにプラーナを集めなさい!」

 ウラーッッッッッッ!!!!!!

 雄叫びと共に、闇の精霊達が一斉に、彼らの女王にプラーナを捧ぐ。

「聖天驚撃(セント★エクスクラメーション)!!!」

 目を眩ませる閃光が広間を隅々まで照らし出し、古精霊達は悲鳴を上げる事すら許されぬまま、眩い月光の中に融けてゆき―
 光が消えた時。黒髪の戦姫はピタリと閉じた黒翼を盾として、己が身を守りきっていた。
 強烈な打撃を受けた翼は弾け跳び大きく削れていたが、戦姫が翼を広げるや、その身には傷一つありはしなかった。

「クックック、その程度―」
『もう一撃だ!』
「!!!」

 エルンシャの叱咤に応え、アンゼロットが左手を振るう。ガラ空きになった戦姫の胸元に銀色の光弾が炸裂し、破砕された胸当ての破
片が飛び散って――黒髪の戦姫は、声も無く両膝で床を打った。

「やった・・・のか?!」
「油断するな、コイズミ! もう一度止めを―」

 気を抜いたコイズミを諫めた柊が走り出そうとした、その時。

「デスゲイル!!」

 旋風が、地下空間に吹き荒れた。



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