紅き世界。奇妙な天体現象は、徐々に広がりを見せている。
ゆっくりと広がる、異形の世界。
暗がりから、あるいは突然に現れる、異形の姿を持つ、恐るべき化け物たち。
今はまだ、実体化するには至っていない、裏界の侵略者。
彼らが実体化するには、そして、この街が裏界へと、魔王の手に落ちるまで、そう時間は残っていない。
ゆっくりと広がる、異形の世界。
暗がりから、あるいは突然に現れる、異形の姿を持つ、恐るべき化け物たち。
今はまだ、実体化するには至っていない、裏界の侵略者。
彼らが実体化するには、そして、この街が裏界へと、魔王の手に落ちるまで、そう時間は残っていない。
かくて、この街は6年ぶりに滅びの危機を迎えていた。
*
「いよいよだね…」
いのりが緊張して言う。他のウィザードの増援を待っている時間は無い。
1ヶ月の間暮らしたこの街の運命は、いのりたちにかかっていると言っても過言では無かった。
「勝てるよね?せんせい」
「正直、分からない」
不安げに尋ねるいのりに、静は難しい顔をして言う。こんなときだからこそ、嘘はつけない。
「僕らはあの2人と、魔王と戦うんだ。あの2人だけでも厄介な相手だってのに、魔王まで相手にするんだ。
少なくとも、楽な仕事ってわけにはいかないだろうね」
そして、倉地の方を向き、自らの0-phoneを渡して言う。
「倉地先生、もし僕らが戻らなかったら、この電話でマユリさんに連絡をお願いします。
彼女なら、僕らよりも強いウィザード…世界だって救えるウィザードとも知り合いですから、何とかしてくれると思います」
「あら…静君、私は置いてきぼりなの?」
心外そうに言う倉地に、あくまで真面目な顔のまま、静は言う。
「残念ながら先生お1人では、おそらく戦うことはできないでしょう。それとも、ファンを使い潰して戦いますか?」
倉地の能力は第3世界のプリンセスと呼ばれるものに近い。その倉地が戦うと言う事は、自らの下僕を使って戦うこととなる。
「う…しょうがないわね」
指摘され、倉地が悔しそうに歯がみする。
元をただせばこの学校の生徒と教師だ。それを手駒として使って戦うと言う事は、彼女の美学に反する。
「私にも真冬でも蚊が見えたり、10m先からキャベツを斬れる能力でもあれば良かったんだけど、ね」
冗談めかして言ったあと、溜息をついて言う。
「分かったわ。とにかく、こっちでも出来ることをしとく」
「お願いします。今、多分それができるのは倉地先生くらいですから」
「そうね。できることをするしかないってところね。静君も気をつけて」
いのりが緊張して言う。他のウィザードの増援を待っている時間は無い。
1ヶ月の間暮らしたこの街の運命は、いのりたちにかかっていると言っても過言では無かった。
「勝てるよね?せんせい」
「正直、分からない」
不安げに尋ねるいのりに、静は難しい顔をして言う。こんなときだからこそ、嘘はつけない。
「僕らはあの2人と、魔王と戦うんだ。あの2人だけでも厄介な相手だってのに、魔王まで相手にするんだ。
少なくとも、楽な仕事ってわけにはいかないだろうね」
そして、倉地の方を向き、自らの0-phoneを渡して言う。
「倉地先生、もし僕らが戻らなかったら、この電話でマユリさんに連絡をお願いします。
彼女なら、僕らよりも強いウィザード…世界だって救えるウィザードとも知り合いですから、何とかしてくれると思います」
「あら…静君、私は置いてきぼりなの?」
心外そうに言う倉地に、あくまで真面目な顔のまま、静は言う。
「残念ながら先生お1人では、おそらく戦うことはできないでしょう。それとも、ファンを使い潰して戦いますか?」
倉地の能力は第3世界のプリンセスと呼ばれるものに近い。その倉地が戦うと言う事は、自らの下僕を使って戦うこととなる。
「う…しょうがないわね」
指摘され、倉地が悔しそうに歯がみする。
元をただせばこの学校の生徒と教師だ。それを手駒として使って戦うと言う事は、彼女の美学に反する。
「私にも真冬でも蚊が見えたり、10m先からキャベツを斬れる能力でもあれば良かったんだけど、ね」
冗談めかして言ったあと、溜息をついて言う。
「分かったわ。とにかく、こっちでも出来ることをしとく」
「お願いします。今、多分それができるのは倉地先生くらいですから」
「そうね。できることをするしかないってところね。静君も気をつけて」
サフィーを呼びに静が去ったのを見た後、倉地が向きなおる。いのりの方に。
「いのりさん」
「な、なんですか?」
「これだけは忘れないでちょうだい」
真面目な顔をして、いのりの肩をつかむ。
「あなたは、私の大事な生徒よ。もちろんあなたにも事情があるのは知ってる。だから危ない真似はするなとは言わないわ。
だけど、これだけは言わせて。本当に危なくなったら…逃げて。そうなっても、きっと私が、何とかしてみせるから」
その眼には嘘は無い。深く静かな決意が込められていた。
「…ありがとうございます」
その瞳を見て、いのりは気づいた。
自分の中の不安と緊張が零れおちるように弱くなっている。
「だけど、多分できません」
ウィザードの使命感とか、そういうんじゃない、もっと単純な理由。
大切なものを守りたい。
いのりもまた、1ヶ月暮らしたこの街がだいすきなのだ。
「あたしってバカだから、多分いざって時に逃げるなんて思いつきませんよ」
「…自分で言うセリフじゃないわよ。それ」
しょ~がね~な~とばかりに倉地がため息をつく。
「…でもあなたらしいわ」
1ヶ月の間、教え子だった少女のことを、倉地は把握していた。
要いのりは、止まらない。まっすぐに正直に、自分を貫く強さを持った少女だと。
「分かったわ。だったら、戦って、勝ちなさい!他は認めないわ!」
女帝の傲慢さと確かな愛を持って少女に伝える。
少女の返事は決まっている。
「ハイ!もちろんです!」
他のセリフなんて今さら必要ないんだから。
「いのりさん」
「な、なんですか?」
「これだけは忘れないでちょうだい」
真面目な顔をして、いのりの肩をつかむ。
「あなたは、私の大事な生徒よ。もちろんあなたにも事情があるのは知ってる。だから危ない真似はするなとは言わないわ。
だけど、これだけは言わせて。本当に危なくなったら…逃げて。そうなっても、きっと私が、何とかしてみせるから」
その眼には嘘は無い。深く静かな決意が込められていた。
「…ありがとうございます」
その瞳を見て、いのりは気づいた。
自分の中の不安と緊張が零れおちるように弱くなっている。
「だけど、多分できません」
ウィザードの使命感とか、そういうんじゃない、もっと単純な理由。
大切なものを守りたい。
いのりもまた、1ヶ月暮らしたこの街がだいすきなのだ。
「あたしってバカだから、多分いざって時に逃げるなんて思いつきませんよ」
「…自分で言うセリフじゃないわよ。それ」
しょ~がね~な~とばかりに倉地がため息をつく。
「…でもあなたらしいわ」
1ヶ月の間、教え子だった少女のことを、倉地は把握していた。
要いのりは、止まらない。まっすぐに正直に、自分を貫く強さを持った少女だと。
「分かったわ。だったら、戦って、勝ちなさい!他は認めないわ!」
女帝の傲慢さと確かな愛を持って少女に伝える。
少女の返事は決まっている。
「ハイ!もちろんです!」
他のセリフなんて今さら必要ないんだから。
*
一方その頃。
「コニー。久し振り。アンタもトナも元気にしてる?」
紅き月の下、サフィーは久しぶりに電話をかけていた。
「どうしたの…って別に何でも無いわよ。ただ久し振りにアンタの声が聞きたくなっただけ」
相手は300歳は年下の、たった1人の妹。
「そう…元気。ならいいわ。ま、アンタやトナがそうそうどうにかなるとも思えないけどね」
そう言えば最後に顔を合わせたのはもう1年は前の話だ。
「こっちはいつもどおりよ。てきと~に旅してるわ。美食を求めてのグルメ紀行。
…しょ~がないでしょ。本能には逆らえないもの。それに、アンタらの永遠の新婚旅行よりはマシだっての。
…一緒でも良かった?冗談。アンタらと一緒だったら暑苦しくて干からびちゃうわ」
笑いと軽口が混じった、他愛のない世間話がサフィーの心をほぐしていく。
「…え?真っ赤な月?」
妹が何気なく口にした言葉に、ちょっとだけ声が震える。
「そうね…アタシも見たけど。なんなのかしらね?あれ」
それを悟られぬよう、急いで言葉を紡ぐ。
本当のことは言わない。言ったら、余計な心配をかけるから。
「とにかく、アンタもトナも気をつけなさいね。世の中何かと物騒なんだから。それじゃ」
ボロが出る前に、電話を切る。
「コニー。久し振り。アンタもトナも元気にしてる?」
紅き月の下、サフィーは久しぶりに電話をかけていた。
「どうしたの…って別に何でも無いわよ。ただ久し振りにアンタの声が聞きたくなっただけ」
相手は300歳は年下の、たった1人の妹。
「そう…元気。ならいいわ。ま、アンタやトナがそうそうどうにかなるとも思えないけどね」
そう言えば最後に顔を合わせたのはもう1年は前の話だ。
「こっちはいつもどおりよ。てきと~に旅してるわ。美食を求めてのグルメ紀行。
…しょ~がないでしょ。本能には逆らえないもの。それに、アンタらの永遠の新婚旅行よりはマシだっての。
…一緒でも良かった?冗談。アンタらと一緒だったら暑苦しくて干からびちゃうわ」
笑いと軽口が混じった、他愛のない世間話がサフィーの心をほぐしていく。
「…え?真っ赤な月?」
妹が何気なく口にした言葉に、ちょっとだけ声が震える。
「そうね…アタシも見たけど。なんなのかしらね?あれ」
それを悟られぬよう、急いで言葉を紡ぐ。
本当のことは言わない。言ったら、余計な心配をかけるから。
「とにかく、アンタもトナも気をつけなさいね。世の中何かと物騒なんだから。それじゃ」
ボロが出る前に、電話を切る。
「…よかったのかい?」
電話を終えたのを確認し、静がサフィーに話しかける。
「なにが?」
「あんな会話で。大切な家族への電話だったんだろ?」
「いいのよ」
だが静の疑問を一刀両断して、サフィーは言う。
「ちょっとした確認ってだけなんだから」
「確認?」
「そ。アタシがいなくても大丈夫かって確認」
後ろを向いたまま。サフィーが答える。
「あの子はずっと2人で元気にやってける。もう、アタシが守る必要も無い。あの子のことはトナが守ってくれるわ。敵からも、寂しさからも」
新しい家族が出来てから、生き別れになるまで。
妹を、守り続けて100余年。
いつの間にか、サフィーにとって、妹は一番大切なものになっていた。ともすれば自分の命よりも。
「だから、アタシがやるべきことは、コニーやトナの大切な場所を守ること。そのために、アタシは戦ってる」
化け物として追われることが無くなり、平和に暮らしていけるようになった世界。
それを壊す奴は、絶対に許さない。それがたとえ魔王だとしても。
「…そっか。正直、意外だよ」
「意外?」
「うん。サフィーちゃんは、もっとドライなのかなって思ってた。長生きしてて、ずいぶんと苦労したみたいだったから」
サフィーの口にした戦う理由に、静はちょっとだけ嫉妬する。
世界を守ること。それがヴァンスタイン家の使命であると教えられ、自らもそれを信じて魔法の技を磨き続けた。
だからこそ、単純な理由で戦える若いウィザードが羨ましかった。
彼らは、使命だから戦ってる自分と比べて、眩しい。
「ふふっ」
そんな様子を見て、サフィーは笑った。
「何がおかしいのさ?」
笑い出したサフィーに静は憮然として尋ねる。
「あんたって、年の割に落ち着いてると思ったけど、案外子供だったのね」
「そんなこと無い。僕はもう、大人だよ」
「あら。ガキほどそう言うのよ」
「ガキって…サフィーちゃんだって見た目は子供じゃないか」
「あら…試してみる?」
ふわっと。
サフィーは浮きあがり、静と唇を重ねる。ごく自然に。
「ななななななな!?」
突然の出来事に、静は唇を抑えて後ろへ下がる。
それをサフィーはいつもの顔色のまま、面白そうに見ていた。
「ふふっ。随分と純情なのね?もしかして、初めてだった?」
「な、いや…だって…」
初めてだった。静=ヴァンスタイン17歳、こ~ゆ~のには今までまったく縁が無かった。
頭が、混乱する。顔が熱い。初めて味わった女の子の唇がアリアリと残っている。
「本当に、ウブなのね。可愛い」
その様子を、ネズミをいたぶる猫のように笑う。
「そうね…じゃ、特別よ」
ねこなで声を出して、甘く囁く。
「アタシがなってあげる。シズクの、恋人に」
「さささサフィーちゃん!?」
静が動揺しまくりでサフィーの名を呼ぶ。
その様子がおかしくて。
「…っぷ」
ついにサフィーは噴き出し。
「あはははははははははは!!!」
笑い出した。
「ど~せならもっと早くやっとけばよかったわ」
その様子を見て、からかわれたことに気づいた静が再び冷静さを取り戻す。
「たちの悪い冗談はやめてくれよ」
「ごめんなさい。アンタが可愛いのは顔だけじゃないってのが面白くてね」
そんなことを言いながら後ろを向いて、言う。笑いながら。
「さて。そろそろショーは終わりよ。そろそろ出てきなさい」
吸血鬼の感覚はごまかせない。サフィーはとっくに気づいていた。
「「え!?」」
気付かれてるとは思わず、2人は同時に声を上げた。静はその声に聞き覚えがあった。
「いのり君に…銀之介君まで!?」
すまなそうな顔をして出て来たのは、獣化した銀之介といのりの2人。
「えっといやそのね?何とな~くでていきづらいな~ってね」
「そ、そうそう。なんてゆ~か、このまませんせいとサフィーちゃんの危険な情事を見てるのもいいかなとか思ってないよ?」
最強に苦しい言い訳を聞きながら。
「悪夢だ…」
静がやれやれと頭を抱える。
そして。
「さて。準備も整ったところで行きますか」
サフィーが口に出す。軽い口調で。
「ちょっと魔王を倒しに、ね」
全員が真面目な顔で頷いた。
電話を終えたのを確認し、静がサフィーに話しかける。
「なにが?」
「あんな会話で。大切な家族への電話だったんだろ?」
「いいのよ」
だが静の疑問を一刀両断して、サフィーは言う。
「ちょっとした確認ってだけなんだから」
「確認?」
「そ。アタシがいなくても大丈夫かって確認」
後ろを向いたまま。サフィーが答える。
「あの子はずっと2人で元気にやってける。もう、アタシが守る必要も無い。あの子のことはトナが守ってくれるわ。敵からも、寂しさからも」
新しい家族が出来てから、生き別れになるまで。
妹を、守り続けて100余年。
いつの間にか、サフィーにとって、妹は一番大切なものになっていた。ともすれば自分の命よりも。
「だから、アタシがやるべきことは、コニーやトナの大切な場所を守ること。そのために、アタシは戦ってる」
化け物として追われることが無くなり、平和に暮らしていけるようになった世界。
それを壊す奴は、絶対に許さない。それがたとえ魔王だとしても。
「…そっか。正直、意外だよ」
「意外?」
「うん。サフィーちゃんは、もっとドライなのかなって思ってた。長生きしてて、ずいぶんと苦労したみたいだったから」
サフィーの口にした戦う理由に、静はちょっとだけ嫉妬する。
世界を守ること。それがヴァンスタイン家の使命であると教えられ、自らもそれを信じて魔法の技を磨き続けた。
だからこそ、単純な理由で戦える若いウィザードが羨ましかった。
彼らは、使命だから戦ってる自分と比べて、眩しい。
「ふふっ」
そんな様子を見て、サフィーは笑った。
「何がおかしいのさ?」
笑い出したサフィーに静は憮然として尋ねる。
「あんたって、年の割に落ち着いてると思ったけど、案外子供だったのね」
「そんなこと無い。僕はもう、大人だよ」
「あら。ガキほどそう言うのよ」
「ガキって…サフィーちゃんだって見た目は子供じゃないか」
「あら…試してみる?」
ふわっと。
サフィーは浮きあがり、静と唇を重ねる。ごく自然に。
「ななななななな!?」
突然の出来事に、静は唇を抑えて後ろへ下がる。
それをサフィーはいつもの顔色のまま、面白そうに見ていた。
「ふふっ。随分と純情なのね?もしかして、初めてだった?」
「な、いや…だって…」
初めてだった。静=ヴァンスタイン17歳、こ~ゆ~のには今までまったく縁が無かった。
頭が、混乱する。顔が熱い。初めて味わった女の子の唇がアリアリと残っている。
「本当に、ウブなのね。可愛い」
その様子を、ネズミをいたぶる猫のように笑う。
「そうね…じゃ、特別よ」
ねこなで声を出して、甘く囁く。
「アタシがなってあげる。シズクの、恋人に」
「さささサフィーちゃん!?」
静が動揺しまくりでサフィーの名を呼ぶ。
その様子がおかしくて。
「…っぷ」
ついにサフィーは噴き出し。
「あはははははははははは!!!」
笑い出した。
「ど~せならもっと早くやっとけばよかったわ」
その様子を見て、からかわれたことに気づいた静が再び冷静さを取り戻す。
「たちの悪い冗談はやめてくれよ」
「ごめんなさい。アンタが可愛いのは顔だけじゃないってのが面白くてね」
そんなことを言いながら後ろを向いて、言う。笑いながら。
「さて。そろそろショーは終わりよ。そろそろ出てきなさい」
吸血鬼の感覚はごまかせない。サフィーはとっくに気づいていた。
「「え!?」」
気付かれてるとは思わず、2人は同時に声を上げた。静はその声に聞き覚えがあった。
「いのり君に…銀之介君まで!?」
すまなそうな顔をして出て来たのは、獣化した銀之介といのりの2人。
「えっといやそのね?何とな~くでていきづらいな~ってね」
「そ、そうそう。なんてゆ~か、このまませんせいとサフィーちゃんの危険な情事を見てるのもいいかなとか思ってないよ?」
最強に苦しい言い訳を聞きながら。
「悪夢だ…」
静がやれやれと頭を抱える。
そして。
「さて。準備も整ったところで行きますか」
サフィーが口に出す。軽い口調で。
「ちょっと魔王を倒しに、ね」
全員が真面目な顔で頷いた。
*
飯波高校の屋上に、炎の鳥が舞う。
「ファイアーワークス!ここに降りて!」
いのりの命令を聞いて、4人を乗せたファイアーワークスが屋上へと降り立つ。
「…うん。ここで間違いない。前に見たのと同じタイプだ」
静がそれを見つけ、険しい顔で言う。
それは、穴だった。
空間にぽっかりと空いた穴。その奥には大量のエミュレイターらしきものが蠢いているのが見える。
「裏界とこの世界を結ぶ穴…開き切ったら、恐らくはもう閉じられない」
静がごくりと唾を飲み込んで言う。その恐ろしさを肌で感じ取っていた。
「キシシシシ…おもしれえだろ?もうすぐこの街はばけもんで溢れ返るんだぜ?」
「その通り。我が主の支配は、今日、ここから始まる」
屋上に声が響き渡り、空間が歪んで、2人の男が現れる。
「それがなされたとき、私は更なる力を得る…そう、この世界の吸血鬼を駆逐するに足る力をな」
そのために蘇ってきた吸血鬼、ドクターアラキは言う。目の前の忌まわしき吸血鬼の少女に。
「まずは、お前からだ。忌々しい、赤毛の悪魔よ」
「ふん。それは1ヶ月前にも聞いたわ」
サフィーの脳裏に苦い記憶が蘇る。あのときは、逃げるしか無かった。圧倒的な力の前に。
だが、恐れない。今のサフィーはあのときとは違う。魔法があり、仲間がいる。
「でもね、それはこっちのセリフ。まずはアンタからブッ倒す。1ヶ月前に逃がしたこと、たっぷり後悔させてあげるわ」
余裕をたっぷりと塗りつけて。
サフィーはドクターアラキに宣告した。
「ファイアーワークス!ここに降りて!」
いのりの命令を聞いて、4人を乗せたファイアーワークスが屋上へと降り立つ。
「…うん。ここで間違いない。前に見たのと同じタイプだ」
静がそれを見つけ、険しい顔で言う。
それは、穴だった。
空間にぽっかりと空いた穴。その奥には大量のエミュレイターらしきものが蠢いているのが見える。
「裏界とこの世界を結ぶ穴…開き切ったら、恐らくはもう閉じられない」
静がごくりと唾を飲み込んで言う。その恐ろしさを肌で感じ取っていた。
「キシシシシ…おもしれえだろ?もうすぐこの街はばけもんで溢れ返るんだぜ?」
「その通り。我が主の支配は、今日、ここから始まる」
屋上に声が響き渡り、空間が歪んで、2人の男が現れる。
「それがなされたとき、私は更なる力を得る…そう、この世界の吸血鬼を駆逐するに足る力をな」
そのために蘇ってきた吸血鬼、ドクターアラキは言う。目の前の忌まわしき吸血鬼の少女に。
「まずは、お前からだ。忌々しい、赤毛の悪魔よ」
「ふん。それは1ヶ月前にも聞いたわ」
サフィーの脳裏に苦い記憶が蘇る。あのときは、逃げるしか無かった。圧倒的な力の前に。
だが、恐れない。今のサフィーはあのときとは違う。魔法があり、仲間がいる。
「でもね、それはこっちのセリフ。まずはアンタからブッ倒す。1ヶ月前に逃がしたこと、たっぷり後悔させてあげるわ」
余裕をたっぷりと塗りつけて。
サフィーはドクターアラキに宣告した。
「よお。久し振りだなあ。銀之介え。ちょっとみねえうちに、ずいぶん変わったんじゃねえか?」
オオカミは、獣化した銀之介を見て面白そうに、だが、油断せずに言う。
本能で悟った。今の銀之介は…前よりも厄介だと。
「叔父さん…」
銀之介が静かに口にする。悲しげに。
銀之介にも分かっていた。もう、目の前の男は悲しみでおかしくなった人間じゃない。
完全に殺し、壊すことを楽しむ、化け物になり果てたことを。
「ごめんね…」
だから、銀之介が口にするのは、詫びの言葉。
「僕は叔父さんを止めるよ…たとえそれが」
「ぶっ殺すことになっても、てかあ?やってみろよ。俺様をぶち殺せるもんならな!」
そして、吠えた。命がけの戦いに、面白そうに。そして、屋上の扉の方に向って言う。
オオカミは、獣化した銀之介を見て面白そうに、だが、油断せずに言う。
本能で悟った。今の銀之介は…前よりも厄介だと。
「叔父さん…」
銀之介が静かに口にする。悲しげに。
銀之介にも分かっていた。もう、目の前の男は悲しみでおかしくなった人間じゃない。
完全に殺し、壊すことを楽しむ、化け物になり果てたことを。
「ごめんね…」
だから、銀之介が口にするのは、詫びの言葉。
「僕は叔父さんを止めるよ…たとえそれが」
「ぶっ殺すことになっても、てかあ?やってみろよ。俺様をぶち殺せるもんならな!」
そして、吠えた。命がけの戦いに、面白そうに。そして、屋上の扉の方に向って言う。
「そ~ゆ~わけだ。こいつは俺たちと銀之介たちの…殺し合いだ。だからよお、大人しくそこで見てろ。嬢ちゃん」
そこには1人の少女がへたり込んでいた。そこに、いるはずのない、居てはいけない少女。
ぐるぐるメガネでおかっぱの少女。
「春美ちゃん!?なんでここに!?」
いのりが悲鳴じみた声を上げる。
「…さっき、人影を見かけたんです。女の子。この紅い月に何か関係があるのかな…って思って…」
呆然としたまま、呟くように春美が言う。
「その子を追って屋上に来たら、その変なのがあって…」
徐々に上ずり、混乱していく声。
「一体何が起こってるんですか!?なんでここに化け物がいるんですか!?それに…なんでいのりさんと静さんがここにいるんですか!? 」
口早に、様々な質問を繰り出す春美。その眼に宿るのは…まぎれも無い、恐怖。
「…おいで。ファイアーワークス」
それを見て、いのりは静かに呼び出した。自らの相棒を。
「ひぃ!?い、いのりさん!?それって…?」
異形の化け物を見て、春美が悲鳴を上げる。
「ごめん。今は…答えられないよ」
いのりの顔には苦渋の色が滲みでていた。
「嫌われても、しょうがないと思う」
ウィザードにはありがちな出来事。だが、やはりこたえる。友達が相手なら、特に。
「だけど…お願い。今すぐ、逃げて。ここはあたしらで、何とかするから」
そして、その言葉を口にすると同時に。
ぐるぐるメガネでおかっぱの少女。
「春美ちゃん!?なんでここに!?」
いのりが悲鳴じみた声を上げる。
「…さっき、人影を見かけたんです。女の子。この紅い月に何か関係があるのかな…って思って…」
呆然としたまま、呟くように春美が言う。
「その子を追って屋上に来たら、その変なのがあって…」
徐々に上ずり、混乱していく声。
「一体何が起こってるんですか!?なんでここに化け物がいるんですか!?それに…なんでいのりさんと静さんがここにいるんですか!? 」
口早に、様々な質問を繰り出す春美。その眼に宿るのは…まぎれも無い、恐怖。
「…おいで。ファイアーワークス」
それを見て、いのりは静かに呼び出した。自らの相棒を。
「ひぃ!?い、いのりさん!?それって…?」
異形の化け物を見て、春美が悲鳴を上げる。
「ごめん。今は…答えられないよ」
いのりの顔には苦渋の色が滲みでていた。
「嫌われても、しょうがないと思う」
ウィザードにはありがちな出来事。だが、やはりこたえる。友達が相手なら、特に。
「だけど…お願い。今すぐ、逃げて。ここはあたしらで、何とかするから」
そして、その言葉を口にすると同時に。
戦いが始まった。