えぴろーぐ
「まったく、疲れたー」
長い金髪の少女が、大きく伸びをした。
彼女の名前はレベッカ宮本。桃月学園1-Cの担任教師である。
レベッカは突如発生した異常事態に対し、生徒たちの助言を受けつつ他の教師と連携して事態へ対処。
桃月学園の被害を0に抑え、全員を無事避難所に送り―――事態が収拾したことを確認して、生徒たちを学校へと誘導し終えたところだ。
全員の無事を確認した後解散を宣言し、学校から生徒たちが帰っていくのを見つめながらそう呟いた。
彼女の名前はレベッカ宮本。桃月学園1-Cの担任教師である。
レベッカは突如発生した異常事態に対し、生徒たちの助言を受けつつ他の教師と連携して事態へ対処。
桃月学園の被害を0に抑え、全員を無事避難所に送り―――事態が収拾したことを確認して、生徒たちを学校へと誘導し終えたところだ。
全員の無事を確認した後解散を宣言し、学校から生徒たちが帰っていくのを見つめながらそう呟いた。
「お疲れベッキー、今回は大活躍だったな」
そう言いながら自分の担任の頭をなでるのは橘 玲(たちばな れい)。C組の魔女と恐れられるメガネっ娘である。
頭触るなー! とムキになるレベッカの発言を無視しつつよーしよし、となでる玲。
そんな光景を見ながら玲ちゃんグッジョブ! とサムズアップするのは同C組の片桐 姫子(かたぎり ひめこ)。
確かに、と姫子の隣に立つ少女が微笑みながら言った。
頭触るなー! とムキになるレベッカの発言を無視しつつよーしよし、となでる玲。
そんな光景を見ながら玲ちゃんグッジョブ! とサムズアップするのは同C組の片桐 姫子(かたぎり ひめこ)。
確かに、と姫子の隣に立つ少女が微笑みながら言った。
「今日のベッキーはカッコよかったよ。先生って感じだったわね、珍しく」
「珍しくはよけいだっ! それにこんなのフツーだろ、私は先生だぞ、教師なんだぞ」
「珍しくはよけいだっ! それにこんなのフツーだろ、私は先生だぞ、教師なんだぞ」
上原 都(うえはら みやこ)のほめ言葉に、いつもの通りの愛想のない顔でそう答えるレベッカ。
常ならば、ほめられれば少しくらいは満更でもない顔になるレベッカであるものの、今はどこか機嫌でも悪いのかその言葉にも仏頂面のままだ。
姫子がそんな彼女の様子を気にすることもなくアホ毛を揺らしつつ姫子が提案する。
常ならば、ほめられれば少しくらいは満更でもない顔になるレベッカであるものの、今はどこか機嫌でも悪いのかその言葉にも仏頂面のままだ。
姫子がそんな彼女の様子を気にすることもなくアホ毛を揺らしつつ姫子が提案する。
「ねぇねぇベッキー、これからヒマ? 今日一日お疲れ様ってことでセブンスミストでやってるケーキバイキングにでも行こうかと思ってたりするんだけど、どう?」
「多少のストレスはすぐ発散するに限るぞ。甘いもの食べたり、グチ叩いたりさ」
「多少のストレスはすぐ発散するに限るぞ。甘いもの食べたり、グチ叩いたりさ」
姫子だけでなく玲からも同じ提案があるということは、おそらくは彼女たちの中で話が決まっているのだろう。
ちらりと周囲を見れば、したり顔の百瀬 くるみやいつもどおりのテンションの一条、六号がいる。
メソウサまでがいきましょうよー、と言っているところを見ると、すでに退路はないようである。
その上、彼女も確かにイライラのもって行き所がほしかったのもある。だから、ひとつため息をつきながら腰に手を当てて生徒たちに答えた。
ちらりと周囲を見れば、したり顔の百瀬 くるみやいつもどおりのテンションの一条、六号がいる。
メソウサまでがいきましょうよー、と言っているところを見ると、すでに退路はないようである。
その上、彼女も確かにイライラのもって行き所がほしかったのもある。だから、ひとつため息をつきながら腰に手を当てて生徒たちに答えた。
「……おごりはしないからな」
「ベッキーのケチー」
「ケチで結構。玲ですら文句言わないのにそういうこと言うなら置いてくぞ、姫子」
「こらベッキー、私ですらってどういうことだ?」
「言葉のまんまじゃないの?」
「よし。くるみの恥ずかしい過去を―――」
「すみませんでした玲様」
「ベッキーのケチー」
「ケチで結構。玲ですら文句言わないのにそういうこと言うなら置いてくぞ、姫子」
「こらベッキー、私ですらってどういうことだ?」
「言葉のまんまじゃないの?」
「よし。くるみの恥ずかしい過去を―――」
「すみませんでした玲様」
そんなやり取りをしていると、一条が困ったような声を上げた。
全員がそちらを向くと、彼女は自分のロッカーを開けたまま眉根を寄せていた。
レベッカが声をかける。
全員がそちらを向くと、彼女は自分のロッカーを開けたまま眉根を寄せていた。
レベッカが声をかける。
「どーした一条、火事場泥棒にでも遭ったか?」
「……かもしれません」
「本当か? 何盗まれたんだ、言ってみろ」
「……かもしれません」
「本当か? 何盗まれたんだ、言ってみろ」
財布や携帯だったら、との考えからたずねたレベッカに、残念そうに沈んだ顔をしながら彼女は答えた。
「都さんに頂いた、チベット土産の象の像が……」
象? とその場にいた全員が首を傾げて。
届けを出しはしたものの、その置物の行方はようとして知れなかったという。
届けを出しはしたものの、その置物の行方はようとして知れなかったという。
えぴろーぐ・2
「お前、今回は本当にいいとこなしだったよな」
その言葉がざっくりと突き刺さりつつ、銀髪ツインテールの少女は至近距離にある青年の顔を恨めしげに見上げた。
「……そういうことは思っても口にしないでほしいでありますよ、わたくしの心は繊細にできてるでありますから」
「どこがだよ」
「針が山ほど突き刺さってもまったく意に介さないあたり、針山みたいな心臓してるわよね」
「あぁ、それは言い得て妙ですね」
「どこがだよ」
「針が山ほど突き刺さってもまったく意に介さないあたり、針山みたいな心臓してるわよね」
「あぁ、それは言い得て妙ですね」
執行部室。
部屋にいるのは御坂美琴と初春飾利、そしてメガネを返却した柊とノーチェだけだ。
もともと部屋には柊とノーチェしかいなかった(他のメンバーは自校や避難所の手伝いで話の最初から出払っている)のだが、学園都市内の騒動を終えた美琴が。
その後、「どうせならこちらの方が安全に仕事ができるでしょう」と空間転移でツンツン気味に白井が初春を送ってきたのだった。
部屋にいるのは御坂美琴と初春飾利、そしてメガネを返却した柊とノーチェだけだ。
もともと部屋には柊とノーチェしかいなかった(他のメンバーは自校や避難所の手伝いで話の最初から出払っている)のだが、学園都市内の騒動を終えた美琴が。
その後、「どうせならこちらの方が安全に仕事ができるでしょう」と空間転移でツンツン気味に白井が初春を送ってきたのだった。
ちなみに柊とノーチェが至近距離にいる理由は治療魔術をかけるために接触する必要があるからである。念のため。
柊を椅子に座らせて、患部をよく見るために一部上半身を肌蹴させつつ治療魔術を発動させているノーチェはうぅ、と唸りながら3人に視線を送る。
柊を椅子に座らせて、患部をよく見るために一部上半身を肌蹴させつつ治療魔術を発動させているノーチェはうぅ、と唸りながら3人に視線を送る。
「その通りではありますが。そんなにわたくしいじめて楽しいでありますか」
「珍しいものが見えるから突っつきたくなってるだけよ、いじめてるわけじゃないって」
「ノーチェさんでも情報収集に失敗するんだなぁ、って思ってついつい……ごめんなさい」
「珍しいものが見えるから突っつきたくなってるだけよ、いじめてるわけじゃないって」
「ノーチェさんでも情報収集に失敗するんだなぁ、って思ってついつい……ごめんなさい」
美琴と初春がフォローを入れるものの、ノーチェは確かに自分が役立たずだったことを自覚しているらしくずーん、という擬音を背負って沈み込んでいる。
それでも治療を続けるあたりはその罪滅ぼしのつもりなのかもしれない。
オペレーターは前線には出ない。しかし、自分の行動ひとつひとつが前線に立つ人間の命綱になることを強く自覚していなければならない。
自分の命を張るわけではないが、他人の命を握ってしまっていることに対して生じる責任は重すぎるほどに重い。
今は病院がメガネの使徒たちの経過を見るためやけが人でいっぱいなため、自力で動く力のある柊は自分の治療のために病院に寄らずに執行部室に帰ってきた。
もともと自分で応急処置を行うつもりだったものの、入ったと同時にノーチェがほぼ命令形でそこに直るでありますっ! と珍しく叫んで柊の機先を制し治療を始めたのだ。
彼女自身が自分の責任を少しでも果たそうと思っての行動でもあるだろう、と思いながら柊は気圧されたこともあってノーチェの好きにさせている。
それでも治療を続けるあたりはその罪滅ぼしのつもりなのかもしれない。
オペレーターは前線には出ない。しかし、自分の行動ひとつひとつが前線に立つ人間の命綱になることを強く自覚していなければならない。
自分の命を張るわけではないが、他人の命を握ってしまっていることに対して生じる責任は重すぎるほどに重い。
今は病院がメガネの使徒たちの経過を見るためやけが人でいっぱいなため、自力で動く力のある柊は自分の治療のために病院に寄らずに執行部室に帰ってきた。
もともと自分で応急処置を行うつもりだったものの、入ったと同時にノーチェがほぼ命令形でそこに直るでありますっ! と珍しく叫んで柊の機先を制し治療を始めたのだ。
彼女自身が自分の責任を少しでも果たそうと思っての行動でもあるだろう、と思いながら柊は気圧されたこともあってノーチェの好きにさせている。
そんな様子を知ってか知らずか。
美琴が沈み込みつつも真剣な表情で治療を行っているノーチェを好ましそうな目で見た後、柊に目線を移した。
美琴が沈み込みつつも真剣な表情で治療を行っているノーチェを好ましそうな目で見た後、柊に目線を移した。
「ところで、アンタいつの間に 曲芸乗り(マニューバ)なんて覚えたのよ。
そもそも乗り物としての箒の扱いはそこまで慣れてないって言ってなかったっけ?」
そもそも乗り物としての箒の扱いはそこまで慣れてないって言ってなかったっけ?」
柊の魔剣はいまでこそウィッチブレードであるものの、ほんの少し前まではただの長剣だった。
それゆえか、柊自身はそこまで箒に乗りなれていると言えるほどの動きができるわけではない。
それが特殊機動である木の葉落としをやってのけたのだ。
練習でもしていたのか、と問う彼女に柊は目を細めつつ答える。
それゆえか、柊自身はそこまで箒に乗りなれていると言えるほどの動きができるわけではない。
それが特殊機動である木の葉落としをやってのけたのだ。
練習でもしていたのか、と問う彼女に柊は目を細めつつ答える。
「そんなことに割く時間が俺にあるわけねぇだろ」
「うん知ってる。んじゃ、どこであんなの覚えたのよ」
「うん知ってる。んじゃ、どこであんなの覚えたのよ」
柊はそれにすい、と視線を外しながらぶっきらぼうに答えた。
「……前に、才人の奴と話す機会があってな」
「平賀才人さんですか? トリステインでルイズさんの従者をやってるっていう?」
「あぁ。その直前に開発部の奴らが作ったプロペラ機使ってあれに似たようなことやってたから、どうやったのか聞いた」
「平賀才人さんですか? トリステインでルイズさんの従者をやってるっていう?」
「あぁ。その直前に開発部の奴らが作ったプロペラ機使ってあれに似たようなことやってたから、どうやったのか聞いた」
話の続きを待ってみても一向に話が続かないので、美琴は先を促すようにたずねる。
「……それで?」
「それでって、それだけだよ」
「えーと……要は、見よう見まねってことでいいんですか?」
「それでって、それだけだよ」
「えーと……要は、見よう見まねってことでいいんですか?」
初春の問いかけにおう、という返答。
三人の少女は驚きを通り越して呆れた、という表情で同時にため息をつく。
三人の少女は驚きを通り越して呆れた、という表情で同時にため息をつく。
「なーんでこの馬鹿は、命に関わるぶっつけ本番をやってのけやがるのかしらね……」
髪先でぱちりと、美琴の感情に呼応するように青い火花が小さく散った。
仕方ねぇだろ、と嘆息。
仕方ねぇだろ、と嘆息。
「できるできないを考える前にそういう状況になっちまった上に、とれる選択肢がそれしかなかったんだからよ。
うまくいったんだからよかっただろ」
「うまくいかなきゃ死んでるのよアンタ。少しは自覚して無茶控えなさい」
「お前にだけは言われたくねぇ台詞だよな」
「わたしもアンタにだけは同じこと言われたくないわね」
うまくいったんだからよかっただろ」
「うまくいかなきゃ死んでるのよアンタ。少しは自覚して無茶控えなさい」
「お前にだけは言われたくねぇ台詞だよな」
「わたしもアンタにだけは同じこと言われたくないわね」
そもそも執行部にいる人間に無茶するなと言うのは無理な要求というものだ。
その代表ともなれば言葉をかけることすら無駄になりかねない。
その代表ともなれば言葉をかけることすら無駄になりかねない。
むう、と呟いてノーチェが柊に話しかける。
「けど、蓮司もこちらに来てどんどんできること増えてってるでありますな。
ヒマなときに淹れるお茶が段違いにおいしくなってて驚いたでありますよ」
「あぁ、この間来てたハヤテにいろいろ聞いて覚えた」
「地理にも意外と詳しいわよね」
「そりゃあっちこっち飛び回ってりゃな。抜け道だの最短距離だのを考えてりゃそうもなるだろ」
「最近魔剣使わなくても特殊能力者を止められるようになってるでありますし」
「身一つの方がどうやったって小回りはきくからな。色んな奴見たり、多少手ほどきしてもらったりしてるうちに前より動きに無駄がなくなったとは思ってるが」
ヒマなときに淹れるお茶が段違いにおいしくなってて驚いたでありますよ」
「あぁ、この間来てたハヤテにいろいろ聞いて覚えた」
「地理にも意外と詳しいわよね」
「そりゃあっちこっち飛び回ってりゃな。抜け道だの最短距離だのを考えてりゃそうもなるだろ」
「最近魔剣使わなくても特殊能力者を止められるようになってるでありますし」
「身一つの方がどうやったって小回りはきくからな。色んな奴見たり、多少手ほどきしてもらったりしてるうちに前より動きに無駄がなくなったとは思ってるが」
授業こそないものの、この男はこの男で学園世界に来てからというもの新たに学べることを貪欲に吸収していっているらしい。
氷室の発言もこのあたりからきているのだろう。
そんな話を聞きながら、にこにこ笑顔の初春が柊に言った。
氷室の発言もこのあたりからきているのだろう。
そんな話を聞きながら、にこにこ笑顔の初春が柊に言った。
「それだけたくさんのことを覚えられるんなら、そろそろ始末書の片付け方をきちんと覚えてもらいましょうか」
……すまん、と謝るしかない柊であった。
えぴろーぐ・3
疲れた、と新八は内心でため息をつく。
今現在彼がいるのは、元避難所のひとつ。事態が収拾すると同時に倒れたメガネの使徒たち。
選抜委員らをはじめとするたくさんの人々が彼らを病院へと搬送し、その場にいたゲシュペンストはどこかに去り、シエルは後片付けを手伝っている。
新八と氷室は保護、という形で避難所に移動させられたのだった。
今現在彼がいるのは、元避難所のひとつ。事態が収拾すると同時に倒れたメガネの使徒たち。
選抜委員らをはじめとするたくさんの人々が彼らを病院へと搬送し、その場にいたゲシュペンストはどこかに去り、シエルは後片付けを手伝っている。
新八と氷室は保護、という形で避難所に移動させられたのだった。
隣の氷室は同じ運動量をこなしながらも元気にずい、と身を乗り出しながら興味津々と言った様子で新八に話しかけた。
「なかなかの活躍だったではないか、志村。君と共に今日ここまで駆け回ったことは私にとっての天佑だったかもしれんな」
「活躍なんてほどのことしてませんよ。必死になって何かしてたらなんとかなったってだけの話です」
「謙虚だな。だが、あの局面でよく気づいた。
何が汝にあの答えを導きださせたのだ?」
「活躍なんてほどのことしてませんよ。必死になって何かしてたらなんとかなったってだけの話です」
「謙虚だな。だが、あの局面でよく気づいた。
何が汝にあの答えを導きださせたのだ?」
氷室の顔には妖艶な笑み。
悪戯心の詰まった小悪魔の微笑みに、新八は燃え尽きたように淡々と答える。
悪戯心の詰まった小悪魔の微笑みに、新八は燃え尽きたように淡々と答える。
「最初に変だなって思ったのは、あの二人を放っておかなかったことです」
「あの二人、というのはゲシュペンストとシエル嬢のことか」
「はい。全部の攻撃を無効化できるなら、あの二人のことも放っておいていいはずです。通用しないわけですから。
けど、そうせずにメガネの人たちをけしかけた。それは、自分に攻撃が届く範囲から追い出そうとしたってことなんじゃないかと思って」
「あの二人、というのはゲシュペンストとシエル嬢のことか」
「はい。全部の攻撃を無効化できるなら、あの二人のことも放っておいていいはずです。通用しないわけですから。
けど、そうせずにメガネの人たちをけしかけた。それは、自分に攻撃が届く範囲から追い出そうとしたってことなんじゃないかと思って」
なるほど、と氷室は呟く。
彼女はあの場において同じものを見ながらそこに気づけなかった。まず自分の安全を確保することで精一杯だったからだ。
氷室には、彼女が新八を危険地帯に置きっぱなしにしないと信頼した上で熟考するという行動をとったのか、それとも考えなしなだけなのかの判別がつかなかった。
意外と大器かもしれんな、と思いながらそれで? と話を促す。
彼女はあの場において同じものを見ながらそこに気づけなかった。まず自分の安全を確保することで精一杯だったからだ。
氷室には、彼女が新八を危険地帯に置きっぱなしにしないと信頼した上で熟考するという行動をとったのか、それとも考えなしなだけなのかの判別がつかなかった。
意外と大器かもしれんな、と思いながらそれで? と話を促す。
「そしたら、どんどん言葉とか動きとかが引っかかってきて。
けど、あの場にはメガネをかけた人でアレに攻撃できる人がいなかったから、確かめることができなかったんです。
だったら、できるだけのことをしようと思って」
けど、あの場にはメガネをかけた人でアレに攻撃できる人がいなかったから、確かめることができなかったんです。
だったら、できるだけのことをしようと思って」
それで、投石行為に及んだ。
その言葉を聞いて、氷室は口の端を持ち上げた。
度胸は十分。行動は整然。思考は直情。なんともまぁ、面白い人間だ。
その言葉を聞いて、氷室は口の端を持ち上げた。
度胸は十分。行動は整然。思考は直情。なんともまぁ、面白い人間だ。
「なぁ、志村」
「なんですか?」
「汝、報道委員に入る気はないか?」
「なんですか?」
「汝、報道委員に入る気はないか?」
あまりに唐突な誘いに、新八ははい? と間抜けな声を上げるしかなかった。
氷室の言葉はよどみなく続く。
氷室の言葉はよどみなく続く。
「知っての通り、報道委員は世界におきていることの全てを世界中の人間に発信するのが仕事だ。
その根底はこの世界に諦めを捨てる心を根付かせようとしているうちのリーダーの思想に他ならない。
汝は戦う力がないことを自覚しながら、それでも諦めるという選択肢を選ばなかった。この仕事には十分な素質がある」
「え、えぇ? ちょ、ちょっと氷室さん、いったい何を―――」
「スカウトだよ、志村。汝さえよければ、私は汝を報道委員に薦めてもいい」
その根底はこの世界に諦めを捨てる心を根付かせようとしているうちのリーダーの思想に他ならない。
汝は戦う力がないことを自覚しながら、それでも諦めるという選択肢を選ばなかった。この仕事には十分な素質がある」
「え、えぇ? ちょ、ちょっと氷室さん、いったい何を―――」
「スカウトだよ、志村。汝さえよければ、私は汝を報道委員に薦めてもいい」
彼女は笑みを深めながら問いかける。
「なにせ人手が足りない。汝のような人材が野にいると知っては、スカウトしたくもなるというものだろう。
これはこれで楽しいぞ、力などなくとも戦うのが我らのポリシーだ。
それにウチには先も言ったリーダー、アルヴィンと赤羽の弟くらいしか男手がなくてな。汝が入ると言ってくれれば彼らも喜ぶだろう」
これはこれで楽しいぞ、力などなくとも戦うのが我らのポリシーだ。
それにウチには先も言ったリーダー、アルヴィンと赤羽の弟くらいしか男手がなくてな。汝が入ると言ってくれれば彼らも喜ぶだろう」
氷室はどうだ? とたずねてくる。
新八は今の状況についていけずにはぁ、と生返事を返し―――その時、彼にかかる声があった。
新八は今の状況についていけずにはぁ、と生返事を返し―――その時、彼にかかる声があった。
そちらを向けば、やる気のなさそうな白衣の国語教師と目にも鮮やかなサーモンピンクのお団子頭の少女の二人連れ。
白衣の男はいつもの通りに紫煙をくゆらせて、ピンクのお団子少女は満面の笑顔でヒドいことを言いながら新八に駆け寄ってくる。
それを見て、どうしてもわきあがる笑みを抑えきれずに新八は、視線はそのままに氷室に告げた。
白衣の男はいつもの通りに紫煙をくゆらせて、ピンクのお団子少女は満面の笑顔でヒドいことを言いながら新八に駆け寄ってくる。
それを見て、どうしてもわきあがる笑みを抑えきれずに新八は、視線はそのままに氷室に告げた。
「―――すいません、氷室さん」
「む? どうした志村」
「僕にはどうもあの人たちのそばの方が、性に合ってるみたいです」
「……そうか」
「む? どうした志村」
「僕にはどうもあの人たちのそばの方が、性に合ってるみたいです」
「……そうか」
ふ、と笑みを浮かべ。
それ以上新八と視線を合わせることをせずに、氷室は告げた。
それ以上新八と視線を合わせることをせずに、氷室は告げた。
「ならば、行くといい。
汝がこちら側に立つことも悪くないと思った時は、いつでも連絡をくれ。待っているから」
汝がこちら側に立つことも悪くないと思った時は、いつでも連絡をくれ。待っているから」
それに一言はい、とだけ答えて。新八は迎えに来た二人の方に走っていく。
少年の背中を見ながら、久しぶりに絵筆を取りたくなった自分を自覚しつつ、氷室はくすりと笑う。
この経験をどんな記事にしようかと、そんなことを考えながら。
少年の背中を見ながら、久しぶりに絵筆を取りたくなった自分を自覚しつつ、氷室はくすりと笑う。
この経験をどんな記事にしようかと、そんなことを考えながら。
またいつか、かの少年と運命の意図が交錯することを心のどこかで祈りながら。
fin.