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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫
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ナイトウィザード!クロスSS超☆保管庫

第06話05

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邪神は学園世界の夢を見る 05

―――輝明学園購買部"跡"

目の前に広がる、晴れ渡った青い空。
それをどこか呆然として見ながら、選抜隊の腕章とバッジをつけた薙原ユウキは顔をしかめる。
「…大分人が集まってきたな…」

「うお!?なんだこりゃ!?」「え?あれ?購買部は…?」「にゃー。こんだけとんでもねえ天使の力は人工天使の時以来ぜよ」「なになに?なにがあったの?」
「なんか購買部が消えたらしいぞ?」「それって、神隠しってこと?」「まあ私達もある意味全員神隠しにあってるんだけどね。元の世界的には」「おい。あいつらってA級冒険者の…」
「あ、ほんとだ。あの赤毛って選抜隊の隊長だろ?」「ああ、冒険者部隊の」「そうだよ。母さん。選抜委員が来てる」「ってことはここの調査に来たってことか?」
「マジかよ…やばくね?」「そういやここの店員どうなったんだ?あのやたら食う黒髪の…」「ああ、あいつならさっき学食祭りでよその学校のやつと一緒にすごい勢いで食ってたぞ?」

がやがやと。

いつの間にかこの場には大量の野次馬が集まっていた。
無理も無い。これだけあからさまな異常事態が起これば、騒ぎにもなるだろう。

ここはつい数時間前まで空なんて見えなかった。
そう、ここには部屋が…店があったのだ。店の名は、輝明学園購買部。
ユウキたちのようなこの学園にあるダンジョン『スクールメイズ』に挑む冒険者にとっては馴染みの店である。
だが、今はその購買部が無くなったために空が見える。
輝明学園の購買部は、そこだけ切り取られたかのように消失していた。
「…ルーシー、何か分かったか?」
明らかな異常事態に、ユウキは傍らで熱心に跡を調べる、小柄なエルフの少女に尋ねる。
(これは…)
ユウキと共にこの場所を訪れたエルフの少女は、ユウキに答えを返さずに考え込む。
少女の名は、ルーシー=ミンシアード。
今回の異変をまっさきに"嗅ぎとった"有能なスカウトにして、A級冒険者パーティー『ルーシーだん』のリーダーである。
ユウキと共に冒険に訪れていたスクールメイズで今回の異変を察知し、この場所へ向かおうと言いだしたのは、彼女であった。
(…この匂いは…)
無意識のうちに辺りに身を潜めたモンスターや罠の違和感、隠されたアイテムを察知する『直感』。ルーシーの専攻であるスカウトには必須の才能である。
ルーシーは自らの直感を『匂い』と認識している。スカウトが感知せねばならない異常…特にある種のアイテムを、ルーシーは彼女にしか嗅ぎとれない匂いで見分ける。
その精度は極めて高く、タバサたちと挑んだA級冒険者への昇級試験のときには即座に課題の『ドラゴンスレイヤー』を"嗅ぎあてた"ほどだ。
そんな、彼女の嗅覚がルーシーに告げることは2つ。
1つは…これが極めて強力な魔法の力によって引き起こされたこと。
そしてもう1つは…
("儀式"の時の匂いと同じ…!?)
ルーシーにしか認識できない匂い、その匂いがなんであるかを彼女は知っていた。
かつて嗅いだこともある。それも1度では無く、何度も。
(しかし、こんなことはできないはずですが…)
そう、彼女の知る限り、"儀式"ではこんな直接的な現象は起こりえない。
なんにせよ、これをやった人間は…この世界では"光綾学園の関係者"でしかあり得ない、はずだ。
だが、それをユウキに伝えるのははばかられた。
10歳のころ、思い出してから数えれば始めて出来た"友達"であるユウキを巻き込むことは、できれば、避けたかった。
故に彼女は答える。
「…私にもわかりません」
無表情に、嘘を。
(…調べる必要がありますね)
密かな決意と共に。



―――邪神の胎内 中心部

「たどりつくとはね」
部屋の中心。そこに漂うように地面から少しだけ浮かびあがり、魔人、白川由美は自分を見つめる3人を睥睨した。
「途中で力尽きるかも、とか思ってたんだけど、1人も欠けずに来るなんて、アンタら、良い腕してるじゃないか」
「嘗めないで頂戴。貴方の思い通りになるほど私は…私たちは弱くないわ」
どこか余裕のある表情で3人を褒めるユミにライズは表情を固くしたまま、答える。
その表情には、余裕はない。緊張感すらにじませながら、ライズは戦闘態勢を保つ。
ライズは知っている。魔人の強さ…手だれのカゲモリが4人掛かりで挑んでようやく対等だったと言う存在の、実力を。
そのライズの緊張を感じ取っているのだろう。空とフィルも戦闘態勢のまま、ユミを迎え撃つ。
「言うねえ。ま、そう言うはねっかえりは嫌いじゃあ無いけどね。さて…」
一見軽口を叩いているように見えるユミ。だが、ライズには分かっている。その行動に、隙がない。
お互い攻める切っ掛けを探り合いながら、ユミは今回の『暴走』の原因となったフィルに目を止める。
「アンタ、コイツに選ばれただけはあるね。まさかアタシ以外に『ifの未来』を見る奴がいるとは思わなかったよ」
「…ifの未来?」
ユミの言う、意味の分からない台詞に反応し、思わずフィルが聞き返す。
「そうさ。アンタらがさっき見た、クソッたれの未来…あれは、変えられる。てめえの選んだ選択肢次第ではね。
 考えてみりゃあ当たり前だろ?例えばアンタらが今すぐココで死んじまえば、アンタらが生きてないと見れない未来はその場で無かった事になる。
 けどね、稀にコイツは『もう変わってしまった、決して訪れない未来』を見せる。そいつが『ifの未来』…」
その問いかけに答え、ユミは静かに言葉を紡ぐ。
そして、顔を曇らせ、その言葉を口にする。
「最低最悪の未来だよ…」
言いたいことは言ったとばかりに、ユミがバサリと翼を鳴らす。
そして、それに呼応するように辺りに変化が訪れる。
「…あれ?なんだか、少し…寒くなったような…」
最初にそれに気づいたのは、空だった。人造人間が持つ周囲環境の分析能力が空に辺りの気温の急激な低下を伝える。
「アンタらは"3人"。で、倒したのは"2体"…それじゃあ計算が合わないだろ?」
パリパリと。
ユミが凍りだす。足もとを包むように氷が発生し、それは大きくなりとあるものを形づくり始める。
「最後の"3体目"である過去の幻影…そいつをぶっ倒さなきゃ、アンタらはここから出られない」
「…そんな、まさか!?」
徐々に肥大し、完成していくその姿に、最後の過去の幻影を知るもの…フィルの顔から血の気が引く。
フィルは知っていた。その過去の幻影は…人間の手でたやすくどうこうできるような代物じゃあ無いってことを。
「ふ、2人とも気をつけて!あ、あれは、アイツは!」
フィルの声が純粋な恐怖で震える。
「正直驚いたよ。まさかこんな代物と出くわして生きてるやつがいるなんて思わなかったからね」
それは、フィルの人生の半分を死の恐怖で閉ざした、恐るべき"雪と氷"の象徴。
完成しつつあるその肉体…その核たる部分と一体化し、ユミは3人を見る。
その視線に込められたのは、憐憫と…僅かな期待。
そして彼女は名を告げる。フィルの過去の幻影…恐るべき力を持つ、そいつの名を。
「…レラ・ペレス。そいつがコレの名前らしい。死ぬ気で掛かってきな…氷漬けで死にたくなかったら、ね」
その言葉と共に。

グゴホオオオオオオオオオオ―ン!

神話の時代から生きる、3つ首の巨竜が咆哮した。

「まさかこんなのと戦うことになるなんて、ね」
咆哮に応えるように剣を構え、ライズは目の前の化け物を見据える。
レラ・ペレスの発する冷気で冷え切った空間にも関わらず、ライズの背中を一筋の汗が伝う。
ライズの勘が告げる。目の前の存在は…強い。
(実力は、恐らくはあの狐並みか…それ以上…!)
その威圧感が、かつて戦った中で最強の悪魔のことをライズに思い出させる。
チェフェイ。取り憑いていた少女の肉体と言う鎖を捨て、本性を現した狐の悪魔のことを。
(あの時は…手札が揃っていたわ)
そう、あの時には自分と斎堂に加え、様々な武器の扱いに長けた執行委員の青年とライズに勝るとも劣らぬ腕前を持つ剣士の少女、
そして的確な判断ができる冒険者の5人でもって万全の態勢で挑み、何とか撃退できた。だが…
ライズは隙を見せぬよう気をつけながら、ちらりと仲間たちの様子を伺う。

「…す、すごい…」
先ほどまで戦った2体の過去の幻影とは比べ物にならない、圧倒的な存在感。
実に20m近い巨体を見上げながら、姫宮空は思わず声を漏らす。
実感がわかない。こんな巨大な化け物がいること…そして、それを倒さねばならないなんて。

「ど、どうしよう…」
フィルはどうしようもない恐怖と過去の記憶に震える。
フィルは冒険者の卵である。実習の中ではモンスターとも戦ったことも何度もある。
だからこそ、分かる。目の前の化け物は…フィルの手ではどうしようもない。
「あんなの…ボクはどうしたら…」
その事実が、フィルを恐怖を与え、身をすくませる。何も分からなかった子供のころよりも強く。

そんな2人の様子を見て。
(…どうやらあの時よりも厳しい戦いになりそうね)
ライズは内心で溜息をつく。そして大きく息を吸い。
「2人とも!戦いを始めるわよ!」
凛と声を響かせる。鬨の声のように。
「ひゃいっ!?」
「…え!?あ、う、うん!」
その声に応えるように2人が我に帰る。その瞬間。

グゴホオオオオオオオオオオオ―ン!

レラ・ペレスが咆哮と共に行動を開始する!


「うわぁ!?」
迫りくるレラ・ペレスの攻撃にフィルは怯えつつも咄嗟に腕をクロスさせ防御体制をとる。だが。
「きゃうっ!?」
凄まじい重さのレラ・ペレスの体当たりがフィルの軽い身体を思い切り弾き飛ばす。
「っつう…う、ら、ラヴェルよ!癒しを!」
その衝撃で一発で気絶に追い込まれそうになったフィルが半ば反射的に癒しの祈りを自らに施す。
それにより傷は消えた。だが、それは肉体だけ。
「つ、強い…強すぎるよ…」
その強烈過ぎる一撃は、フィルに恐怖を植え付けた。
グルルルル…
唸り声を上げ、鎌首をもたげる頭を前に、姫宮空は緊張感と共に相手をにらみ返す。
(や、やらなくちゃ!)
戦わなくては、やられる。そんな緊張の中で空は半身になって右手のランス…アームブレイドを構える。
(大丈夫…いけるはず!)
ウィザードの中でも特に攻撃力の高い人造人間の全力の一撃。
直撃すればいかにレラ・ペレスといえどただでは済まない。
レラ・ペレスも本能でそれを理解していた。それゆえに、待つ。
「きゃうっ!?」
「フィル!?」
目の前の敵の気がそれる瞬間を。
グゴホオオオオオオオオオ―ン!
攻撃を受け、悲鳴を上げたフィルに気を取られ、空が目をそらした瞬間、レラ・ペレスは大きく口を開く。そして。
ブオオオオッ!
思い切り息を…氷のブレスを空に叩きつける!
「きゃあああ!?」
ブレスの身を切るような冷気に、空は悲鳴を上げる。
強烈な魔法タイプのダメージに空の身体が、きしむ。
「くっ…こ、このお!」
とっさに膝を折って飛び、がむしゃらに反撃の突撃を繰り出す!
一飛びで3mは頭上にあったレラ・ペレスの頭までの距離を詰め、アームブレイドで鋼のように硬い鱗を貫く。
ギャオオオッ!?
その痛みにのたうちまわるレラ・ペレスを見て空は荒く息をつきながら、呟く。
「や、やった…」
だが、あちこちが凍りつき、大きなダメージを受けている空が不利であることは、明白であった。

ライズは静かに剣を構え、目の前のレラ・ペレスに向けて駆けだし距離を詰める。
グゴホホオオオオ―ン!
その素早い動きにブレスでは狙いを定めることができないと踏んだレラ・ペレスが牙をあらわにライズを噛み砕かんと迫る。
その瞬間を狙い、ライズは横へと飛び、かわしざまに斬り抜ける。鮮やかな一撃。だが。
「くっ…堅い!?」
ライズの細剣はレラ・ペレスの鋼のような鱗に阻まれ、表面に浅い傷をつけるにとどまる。
「ほらほら!どんどん行くよ…ブフダイン!」
斬りつけて、腕が痺れたライズに対し、今まで静観していたユミが攻撃を行う。
レラ・ペレスと一体化することで得た強力な冷気で巨大な氷弾を作りライズに向けて放つ。
「ちぃ!」
それをライズはギリギリでかわす。だが、その代償として体勢を崩す。
グゴホホオオオオ―ン!
その直後、咆哮と共に叩きつけられたレラ・ペレスの尻尾にライズは為す術なく弾き飛ばされた。
「がはっ!…ううっ」
壁に叩きつけられ、背骨がへし折れるかと思うほどの衝撃がライズを襲い、内臓への衝撃にライズは血を吐く。
飛びそうになる意識を無理やりに奮い立たせて立ち上がるものの、脚に力が入らず、よろける。
「ライズ!」
その様子に慌てて駆け寄った空がライズを支える。
「だ、大丈夫!?」
フィルが慌てて、2人に回復の祈りを施す。
「…無事、とは言い難いわね」
癒し切れず、怪我の残った状態で、ライズは悟る。

(今の調子で戦えば…私たちは負けるわ)
ライズ、空、フィル。それぞれが今のように戦っていては魔人を…レラ・ペレスを打ち破ることはできない。
打ち勝つには、3人が持てる力を合わせる必要がある…そう、この半年の間"仲間"たちとそうしてきたように。
「空…それと、フィル。私に…力を貸して」
それを悟ったライズは自然にその言葉を口にする。半年前ならば決して口にしなかったであろう"お願い"を。
「はい!」「う、うん!もちろん!」
その言葉に決意を固めた様子の空と勇気を振り絞り、恐怖を何とか打ち消したフィルが快く頷く。
「…そう、感謝するわ」
返ってきた答えにライズはごく薄く…いつもの皮肉さを感じさせない表情で礼を言った後、真面目な顔に戻り、淡々と、言う。
「恐らく、私の剣ではアイツに致命傷を与えることはできない。けれど…マナよ。刃に宿りなさい」
ライズの言葉に答え、刃が…空のアームブレイドが蒼白く輝き出す。
「フィル…貴方も」
「うん。神の剣よ!」
フィルが攻撃力強化の祈りをライズの剣と空のアームブレイドに施し、更に攻撃力を増す。
「貴方の、魔術で強化したアームブレイドならば、あいつにも通用するはず。攻撃役(とどめ)は、貴方に任せるわ。
 私が援護する、だから貴方はただ全力であの化け物の頭を砕くことを考えていなさい」
「わ、分かりました!」
ライズの言葉に空が頷く。そして。
「それと、フィル。貴方は私たちを後方で援護して。あいつには近づかないように、気をつけて」
「…任せてよ!頑張ってね!2人とも!」
ライズの言葉に、内心安堵しながらフィルが笑顔で頷く。そうだ、これでいい。
「良い返事ね…始めるわよ!」
3人が頷きあうと同時のタイミングでフィルを残してライズと空が一気に距離を詰める!
グゴホオオオオオ―ン!
それに反応し、ユミとレラ・ペレスが再び咆哮し、近寄ってくる空とライズを捉え、中央の首が口を大きく開く。
「…ソラ、身をかがめて左に飛びなさい!」
「は、はい!」
ライズの言葉に反応し、空は横へと飛ぶ。
その次の瞬間、さっきまで空が立っていた場所に、強烈な氷のブレスが浴びせかけられる。
「私が左の首の目を潰すわ!空はとどめの準備を!」
「はい!」
ライズの言葉を受けて空がプラーナを開放し、脚へと集中させる。
「行くわよ…プレシズ・キル!」
先ほど、空を襲った左の首まで距離を詰めたライズは全力で突きを繰り出す。狙いはレラ・ペレスの目!
グゴホオオオオオオオオ―ン!
元々かかっていた魔法とフィルの祈りで強化された剣で折れるのではないかと言うほどの強烈な一撃を放つ。
その一撃は目を貫通し、レラ・ペレスの首が痛みにのたうちまわる。
「いっけえ!」
その隙を見逃さず、空はプラーナを開放した脚で跳躍する。
それにより空は一気に左の首の目前まで飛ぶ。そして。
「てえええええええええええええええい!」
アームブレイドを構えたまま、額に向け、先ほど以上の速度で突撃する!
グギュルッ!?
全長数mに及ぶ巨大な杭がレラ・ペレスの鱗と頭蓋を貫き、脳にまで達する。
その一撃にたまらずレラ・ペレスの首の1つが白目をむいて絶命する。
「はぁ!」
目から剣を引き抜いたライズが空へと放たれたレラ・ペレスの攻撃を剣と鎧を使って巧みに受け流す。
火花を散らせつつ流れをそらされた爪が地面へと食い込む。
「…つっ!フィル!」
受け流したとは言え、あの巨体の攻撃を受けて無傷とはいかない。
衝撃で先ほどの傷が開き、ライズがよろめく。だが、そこまで読んでいたライズは痛みに顔をしかめつつも、フィルの名を呼ぶ。
「任せて!ラヴェルよ!癒しを!」
その声に答え、フィルがライズへと癒しの祈りを施す。
「…次!」
フィルの祈りの力で傷を癒したライズは鋭い声を残し、ライズは先ほどフィルを襲った右の首へと向かう。


「は、はい!」
(すごい…)
そんなライズに返事を返し、その跡を追いながら、空は驚いていた。
先ほどまでの苦戦を感じさせないほど、空とライズの連携はうまく行っている。
(すごく…戦いやすい…)
空が全力で戦い、ライズがそれをサポートする。
そのスタイルに、空は慣れていた。なぜならば。
(まるで…一狼くんと一緒のときみたい)
それは、去年からの間に確立した、いつもの戦い方。
(やはり…ソラとの相性がいいスタイルは…これのようね)
ライズが真似た、斎堂一狼の戦い方…それは2人にとって慣れ親しんだ戦いのスタイルだった。

「やるじゃないか」
動きが変わった。
先ほどまでの動きとは明らかに違う2人の動きに、ユミは感心する。
「…あの子」
右の首に挑みかかる2人を見る。
右の首も、もうすぐ潰されるのは目に見えていた。空と呼ばれていた火力の高い茶髪の攻撃で、既にボロボロだ。
一体化しているユミにも鈍い痛みがガンガン伝わってきている。遠からず、首は潰されるだろう。
だが、注目すべきはもう1人。彼女に向かうはずの攻撃を引きつけ、遊撃により空の攻撃のタイミングを作る、ライズと呼ばれていた黒い髪のお下げ。
ライズの戦い方は連携と言うには少し違っていた。ライズが完全に空のフォローに回る動きで戦っている。
恐らく空の方はただがむしゃらに攻撃を繰り出しているだけ。そして、それで問題がないようにライズは立ちまわり続けている。
それが単純であるが故に強い空の実力をうまく引き出している。強敵だ。
「やっぱりあの子がリーダーで間違いなさそうだ」
ユミはずっと見ていた。彼女の2つの過去の幻影との戦いを。
その戦いにおいて、常に彼女は知恵を働かせ、持ち前の剣技と合わせて戦いの流れを作り続けてきた。
「…カゲモリの名は伊達じゃない、か」
2人に届かぬよう、小さな声で呟く。
かつてユミとチャーリーを追い詰め、佐藤を倒したカゲモリたち。
今回の件ではフィルとか言う邪神の加護を受けたエルフの少女に巻き込まれた、イレギュラー。
だが、対峙して実際に戦い、ユミは思う。彼女ならば、そして彼女に勝るとも劣らぬ実力を持つ彼女の仲間達ならば、魔神皇を倒すかも知れない。
そして自分を、この邪神から、あの訪れぬ未来の悪夢から解放してくれるかも知れない、と。
「だが、それにはまず…生き残ってもらう必要が…ある!」
そう、生ぬるい攻撃ではこの邪神を…"目覚めさせる"ことなど出来ない。
「本気で行くよ…ぶっ倒してみな!」
ユミが本気で行くことを決意する。
魔力の冷気が集まり、荒れ狂う。
「…!ソラ、フィル!」
それを見てとったライズが最大限の警告を発し、防御姿勢を取る。

「…えっ!?」
ライズの警告に、右の頭にとどめを刺した空がライズの方を見る。
「…うわ!?すっごい魔力!?」
フィルがユミに集まった魔力に気づき驚愕する。
そんな、三者三者の反応を見ながら。
「まとめて…凍りつけ!」
ユミはその魔力を開放し、冷気系の最強魔法を放つ。
「――――マハブフダイン!」
瞬間。
辺りに氷の嵐が吹き荒れた。

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