とある魔剣の回顧録-裏切りのワイヴァーン-
私には、3つの名前がある。
裏切りのワイヴァーン。最も不名誉な名であると共に、私の始まりとも言える名だ。
その名を与えられたときに私を振るっていた主は、星の巫女と呼ばれる女に仕えている騎士の1人だった。
名は飛竜。優しく、誠実で、責任感の強い男だった。
だが、それ故に不幸な結末を迎えることとなった。
「私を斬って下さい、飛竜。ルー・サイファーの陰謀を止めるには、もはやそれしか無いのです」
主と共に戦いを続けてきた女神は、主にそう懇願した。もし、今彼女を斬らねば、魔法使いが消え、この世界が魔王の手に落ちる、と。
勝手な話だ。そのような大事なことを、何故他に仕える人を持つ主に頼むのか。ましてや自らに忠実な使いもいると言うのに。
だが、主はそれを承諾した。もし時雨、彼の女神の使いにやらせれば、彼は自らを許せず、命を捨ててしまうだろう。
それは余りにも哀れだ。だが、別に仕えるべき人を持つ自分ならば、例え貴方を斬ってもそれほど心は痛まないからと。
その名を与えられたときに私を振るっていた主は、星の巫女と呼ばれる女に仕えている騎士の1人だった。
名は飛竜。優しく、誠実で、責任感の強い男だった。
だが、それ故に不幸な結末を迎えることとなった。
「私を斬って下さい、飛竜。ルー・サイファーの陰謀を止めるには、もはやそれしか無いのです」
主と共に戦いを続けてきた女神は、主にそう懇願した。もし、今彼女を斬らねば、魔法使いが消え、この世界が魔王の手に落ちる、と。
勝手な話だ。そのような大事なことを、何故他に仕える人を持つ主に頼むのか。ましてや自らに忠実な使いもいると言うのに。
だが、主はそれを承諾した。もし時雨、彼の女神の使いにやらせれば、彼は自らを許せず、命を捨ててしまうだろう。
それは余りにも哀れだ。だが、別に仕えるべき人を持つ自分ならば、例え貴方を斬ってもそれほど心は痛まないからと。
女神は、私に呪いを掛けた。
「神は人の手では決して滅ぼされない」と言う運命を上書きし、死を与える呪い。一柱の神である彼女を殺すための呪い。
主はせめて苦しまぬようにと一刀のもとに女神を斬った。そして、世界が主の敵となった。
「神は人の手では決して滅ぼされない」と言う運命を上書きし、死を与える呪い。一柱の神である彼女を殺すための呪い。
主はせめて苦しまぬようにと一刀のもとに女神を斬った。そして、世界が主の敵となった。
金色の巫女、人の姿をとった魔王は、激怒した。矮小な人間ごときに、自らの企てを潰されたことに。
魔王はそのいらだちを主にぶつけた。巫女や女神に仕える者たちに命じたのだ。
女神を手に掛けた、忌まわしい裏切り者を抹殺せよ、と。
主は、反撃どころか言い訳すらしなかった。半ば暴徒と化した騎士と使徒たちに主は私を抜くことすらなくなぶり殺しにされた。
魔王はそのいらだちを主にぶつけた。巫女や女神に仕える者たちに命じたのだ。
女神を手に掛けた、忌まわしい裏切り者を抹殺せよ、と。
主は、反撃どころか言い訳すらしなかった。半ば暴徒と化した騎士と使徒たちに主は私を抜くことすらなくなぶり殺しにされた。
私の中には疑問と怒りが満ちていった。何故、主は何も言わぬのだ。何故、あの女の身勝手な願いのために主が死なねばならぬのだ。
何故、主は私を振るわぬのだ。何故、生きようとせぬのだ!
何故、主は私を振るわぬのだ。何故、生きようとせぬのだ!
そんな思いを悟ったのだろうか。今際の際、主は初めて私を抜き、語りかけた。
「なあ、友よ。俺はな、俺を殺した連中を恨んじゃいない。誰かがやらなきゃいけなかったんだなんて言って何になる。
後悔する奴なんて少ない方がいい。復讐して、気が晴れて明日へ向かうための気力が沸くってんなら、それでいいじゃないか」
そう言って、主は笑った。もうすぐ死ぬのだと言うのに、この男は笑ったのだ。
「それに…俺は俺自身が許せない。あがくのを忘れ、誰かの犠牲を受け入れてしまった俺自身がな。
だから、友よ。もしも次の星の巫女の騎士が、世界のために誰かを犠牲にしろと言われたならば、教えてやってくれ。
それじゃ、駄目だ。どんなときも最後まであがけと。あがくのを忘れたら、誰かを犠牲にしてしまったら、後悔しか残らないんだと。頼むぜ、友よ…」
最後にそう言い残して主は逝った。主の名は忌むべき者として忘れ去られ、私には忌むべき剣としての銘が与えられた。
「なあ、友よ。俺はな、俺を殺した連中を恨んじゃいない。誰かがやらなきゃいけなかったんだなんて言って何になる。
後悔する奴なんて少ない方がいい。復讐して、気が晴れて明日へ向かうための気力が沸くってんなら、それでいいじゃないか」
そう言って、主は笑った。もうすぐ死ぬのだと言うのに、この男は笑ったのだ。
「それに…俺は俺自身が許せない。あがくのを忘れ、誰かの犠牲を受け入れてしまった俺自身がな。
だから、友よ。もしも次の星の巫女の騎士が、世界のために誰かを犠牲にしろと言われたならば、教えてやってくれ。
それじゃ、駄目だ。どんなときも最後まであがけと。あがくのを忘れたら、誰かを犠牲にしてしまったら、後悔しか残らないんだと。頼むぜ、友よ…」
最後にそう言い残して主は逝った。主の名は忌むべき者として忘れ去られ、私には忌むべき剣としての銘が与えられた。
とある魔剣の回顧録-守護者の剣-
次に、星の騎士が新たな主として私を手にしたのは、それから500年たってのことだった。
若く、荒削りだが、真っ直ぐな主。飛竜と同じ過ちは決して犯させない。それが私の友との約束であり、私の誓いだった。
私は、主に誰かの犠牲を受け入れてはならないと教え、犠牲を払わずに済むように鍛え、どんなときも最後まであがくように導いてきた。
主はそれに応えた。自らの身の不幸を嘆かず、誰かの犠牲が必要になっても最後まで諦めない、強い男になった。
私は神殺しの魔剣として、主といくつもの戦いを乗り越えた。魔王を倒し、時に世界を渡り、ついには神をも倒した。
いつしか主は生きる伝説として語り継がれるようになっていった。もっともその扱いは半ば珍獣のようなものであったが。
主の最も知られた異名は、あえて言うまい。その名で呼ばれることを、主は酷く嫌っていたから。
2番目によく知られた名は、私の2つめの名前でもある。
主は、世界の守護者アンゼロットからの任務をだれよりもこなしてきた。それ故に、この名が付いた。
若く、荒削りだが、真っ直ぐな主。飛竜と同じ過ちは決して犯させない。それが私の友との約束であり、私の誓いだった。
私は、主に誰かの犠牲を受け入れてはならないと教え、犠牲を払わずに済むように鍛え、どんなときも最後まであがくように導いてきた。
主はそれに応えた。自らの身の不幸を嘆かず、誰かの犠牲が必要になっても最後まで諦めない、強い男になった。
私は神殺しの魔剣として、主といくつもの戦いを乗り越えた。魔王を倒し、時に世界を渡り、ついには神をも倒した。
いつしか主は生きる伝説として語り継がれるようになっていった。もっともその扱いは半ば珍獣のようなものであったが。
主の最も知られた異名は、あえて言うまい。その名で呼ばれることを、主は酷く嫌っていたから。
2番目によく知られた名は、私の2つめの名前でもある。
主は、世界の守護者アンゼロットからの任務をだれよりもこなしてきた。それ故に、この名が付いた。
「守護者の剣」と。
人と魔剣の生きる時間には、決して乗り越えられぬ大きな隔たりがある。やがて、主にもその時が近づいてきた。
いざ、主がその命を終えようとしたとき、私は恐怖した。
今までは星の騎士が私を振るってきた。だが、星の騎士はもう生まれない。運命を断ち切る強い力は、星の巫女の運命をも断ち切っていた。
私は2度と誰かに振るわれることもなく、朽ち果てることとなるのが怖かった。使われぬ道具に、意味などないのだ。
だから、主の死後、私は願った。
いざ、主がその命を終えようとしたとき、私は恐怖した。
今までは星の騎士が私を振るってきた。だが、星の騎士はもう生まれない。運命を断ち切る強い力は、星の巫女の運命をも断ち切っていた。
私は2度と誰かに振るわれることもなく、朽ち果てることとなるのが怖かった。使われぬ道具に、意味などないのだ。
だから、主の死後、私は願った。
誰か、私を必要としているものの元へ。運命を乗り越える強い力を欲しているものの元へ、誘って欲しいと
それは、かなえられた。戦いのうちに異界で得た力によって。私は世界をも越え、真に私を欲する者の元へと誘われた
とある魔剣の回顧録-アガートラム-
赤々と燃える炎、荒れ果てた荒野、それが何処までも続く世界。
それが、私の最後の主が住む世界だった。
主は、女だった。
私と出会うまでは剣を振るったことも無いような、普通の女。特別な力はまるで持たなかったが、誰よりも諦めない、強い心を持った女。
主はただ、前の主のように身の回りのごく小さな幸せを守ろうとしていただけだった。
にもかかわらず私を求めるほどに強い願いを持っていたのは、この世界そのものが滅びようとしていたためだ。
たった1人の魔神に、この世界は滅ぼされようとしていた。世界の守護者から生まれたそれは、「この世界のものには傷つけられない」と言う運命を持っていた。
私が呼び寄せられたのは、そんな運命を上書きする呪いが刻まれていたため。
それを知り、私をここに来るよう導いたのは、主と行動を共にする狼、守護者の化身だった。
「利害が一致したのだ。お前という“希望”があれば、あの女は“欲望”を抱き続けられる。“欲望”こそ我が糧だ」
そう言って奴は笑った。
それが、私の最後の主が住む世界だった。
主は、女だった。
私と出会うまでは剣を振るったことも無いような、普通の女。特別な力はまるで持たなかったが、誰よりも諦めない、強い心を持った女。
主はただ、前の主のように身の回りのごく小さな幸せを守ろうとしていただけだった。
にもかかわらず私を求めるほどに強い願いを持っていたのは、この世界そのものが滅びようとしていたためだ。
たった1人の魔神に、この世界は滅ぼされようとしていた。世界の守護者から生まれたそれは、「この世界のものには傷つけられない」と言う運命を持っていた。
私が呼び寄せられたのは、そんな運命を上書きする呪いが刻まれていたため。
それを知り、私をここに来るよう導いたのは、主と行動を共にする狼、守護者の化身だった。
「利害が一致したのだ。お前という“希望”があれば、あの女は“欲望”を抱き続けられる。“欲望”こそ我が糧だ」
そう言って奴は笑った。
結局その主とは1週間しか行動を共にしなかった。1週間の間、主は戦い抜いた末、そのプラーナ全てを燃やし尽くし、その存在を対価に魔神を封印した。
彼女が守ろうとした身近な人物の想い出からは抹消された主は、血も肉も通っていない『伝説の英雄』に成りはてた。
その戦いの後、私は地面へと刺さり、次の主を待つことにした。主は魔神を封印したことで『英雄』になり、私の突き刺さった地面の周りは聖堂となった。
彼女が守ろうとした身近な人物の想い出からは抹消された主は、血も肉も通っていない『伝説の英雄』に成りはてた。
その戦いの後、私は地面へと刺さり、次の主を待つことにした。主は魔神を封印したことで『英雄』になり、私の突き刺さった地面の周りは聖堂となった。
ただ1本、この世界に取り残された私に、この世界の住人は、新たな名前を与えた。
この世界に伝わる神話に登場する、未来を司る守護者の失われた左腕より作られたと言う伝説の聖剣『アガートラム』
それが、この世界を救うことで未来を切り開いた『剣の聖女』の象徴としての私の名だ。
この世界に伝わる神話に登場する、未来を司る守護者の失われた左腕より作られたと言う伝説の聖剣『アガートラム』
それが、この世界を救うことで未来を切り開いた『剣の聖女』の象徴としての私の名だ。
今でも私は悔やんでいる。『誰かの犠牲』には『自らの犠牲』だって含まれているのだ。
だからこそいつか次の主が現れたとき、私は今度こそ導いていくつもりでいる。誰かも、自分も犠牲にしない強さを与えること。
だからこそいつか次の主が現れたとき、私は今度こそ導いていくつもりでいる。誰かも、自分も犠牲にしない強さを与えること。
それが私の誓いなのだから。
―――――――to be continued 『Wild Arms 2nd Ignition』