小豆洗い

別名:小豆とぎ あずきはかり 小豆婆 あづきさらさらなど多数

全国各地に伝えられている妖怪。
小川のほとりや井戸など水のあるところでショギショギと小豆をとぐ音が聞こえるのは小豆洗いのせいだという。柳田國男によれば、小豆洗いが出没するところは限定されているにも関わらず、中国地方、四国、九州、中部、関東、奥羽と居らんところがないといっていいほど各地で言い伝えられていた。

狸?、ヒキガエル、の仕業であるともいう。闇の中のジェイ『日本怪異妖怪事典 九州沖縄』によれば、福岡県鞍手市宮若の金丸の越後には二抱え程の椋の木があり、そこにはアズキショキショキが住んでいたといわれるが、この方は狸か狐とされる*1

柳田『妖怪談義』では、信州北佐久郡のある井戸の水が白い言い訳として、「荒神様が「お米研ぎやしょか人とって食ひやしょかショキショキ」と言ってとぎ汁をこぼした」ためとする伝承を載せるが、全国各地での小豆洗いさんが「小豆研がうか人取って喰はうか」と言っているという伝承はかなり広範囲に分布している。

類似の妖怪

八王子には「あずきはかり」という、天井裏でパラパラと小豆をまく音をさせるという妖怪が伝わっている。

また、老婆の姿をした「あずきそぎばばあ」なる妖怪が山梨県北巨摩郡に伝わっている。
これは石垣の上のアマンドウの大木に住んでいるという妖怪で、毎夜樹上でザアザアという音をさせ、通行人が来ると「あずきおあんなすって」と言って呼び止める。もし、その時にうろたえると、大笊で掬い上げられるという。

大分県速見郡には藁槌のような形で、一面に毛が生えたものが、人が通ると転がって来る、「小豆洗い」と呼ばれるには一風かわった妖怪もいる。柳田國男『妖怪談義』のツチコロビ?の項目で出るこの妖怪は、柳田によると「野槌と混ざってる」*2。その原典には速見郡南端字小田付近と福岡県東部、大分県北西部(豊前)宇佐郡津房辺りの地名が書いてあるのだが、この「赤豆洗い(アヅキアラヒさんだ)」が出るところは「四島」という謎の地域だそうである*3

音をさせるのは小豆だけではない。栃木県芳賀郡には「米とぎ婆さま」という米を研ぐ妖怪もいる。

成立

なぜ、これらの怪に多く共通するのが「小豆」の音なのかは諸説ある。
川辺の崩落を意味する阿豆の地名に起因するとの説。
狸には川原の砂をいじる生態があり、その音が小豆をとぐように聞こえるとする説。
民俗社会において小豆が聖性をもったものであったためとする説。
等があるが、どれも決定打に欠けるところがある。

参考文献

『怪異の民俗学・妖怪』収録 
中山太郎「小豆洗い」
柳田國男「小豆洗いに就て」(『妖怪談義』所収だ)
大藤時彦「小豆とぎ」

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最終更新:2025年05月15日 16:49

*1 『日本怪異妖怪事典 九州沖縄』11頁

*2 『柳田国男全集』385頁

*3 『日本怪異妖怪事典 九州沖縄』145頁