ヨモギのカムイ
ヨモギ(ノヤ[noya])は道東ではササ、ハルニレなどと共に最初に地上に発生した植物とされ、薬草として重用されたためか、魔を祓う力があるとされ、悪魔に憑かれたときや悪夢を見たときに体を清める手草を作ったりした。また普通の武器が効かない邪悪な
カムイたちもヨモギの槍では倒されてしまうと考えられていた。実際の生活でも、邪悪な生き物とされていたアゲハやヤママユガの幼虫や、ヘビを殺したときなどはヨモギの枝で叩いたり、頭を貫いておいたりしないと復活して祟るものとされていた。
そのように破魔の力が強い植物と考えられていたため、人間の手に負えないような悪神や魔物(具体的には
天然痘のカムイ)への対抗手段としてヨモギの草人形を作ることが行われた。
イモシカムイ「Imos(呪術に入った)kamui(カムイ)」
ノヤイモシ「Noya(ヨモギ)imos(呪術に入る)」
ノヤウタサプ「Noya(ヨモギ)utasa(十字)p(物)」
チシナプカムイ「Chi(我ら)shina(結んだ)p(物)kamui(カムイ)」
アイヌテケカラカムイ「Ainu(人間)tek(手)e(で)kar(作った)kamui(カムイ)」
など、地方によってさまざまな名前がある。秘術の一つであり、みだりに作るものではないとされていた。作るのは主に流行病の際である。十字に組んだヨモギの枝に、やはりヨモギの枝で槍と太刀を作って持たせ、両手両足と頭部、胸部に
火のカムイの力を持つ消し炭で心臓を作り、
木幣で飾る。脚にはやはり聖なる木であるヤナギの木を使う。出来上がった草人形は丁重に扱い、花茣蓙の上に安置する。
物語においては本州からやってきた
天然痘のカムイを退治するためにヨモギの草人形を作り、戦わせる描写などが見られる。役目を終えた草人形はミントゥチカムイと呼ばれる
河童のような妖怪になったとされ、日本での
河童伝説との関連が見られる。また逆に、
国造りのカムイがヨモギの葉を揉んで火を起こそうとしたが、起きなかったために吹き飛ばした葉が鳥になり、さらに
天然痘のカムイになったという伝承もある。
参考資料
北海道の項を参照のこと。
山北篤監修『東洋神名事典』272頁(ノヤウサタプ)
最終更新:2021年07月04日 15:51