リンドウ・スズハネは、宇宙世紀2240年代を舞台にしたSFロボットアニメ『オービタル・ファランクス』に登場する主要人物である。地球圏の経済的・軍事的支配下にある火星連合に所属する軍人であり、階級は中尉。物語開始時点では、主人公ケンジ・アマノが所属する地球連邦宇宙軍第13独立艦隊と敵対する、火星連合のエースパイロットとして登場する。その卓越した操縦技術と冷徹なまでの戦術眼から、連邦軍兵士からは「火星の赤き鷹」という異名で恐れられている。物語全体を通して、ケンジの好敵手(ライバル)としての立ち位置を保ちつつ、やがて地球と火星の戦争の裏に隠された真実を追う、もう一人の主人公とも言える役割を担っていく。専用機は、火星連合が独自開発した高機動型アーマード・フレーム「AFX-013 イカルガ」。
彼は火星の第4コロニー「セレス・シティ」の出身である。セレス・シティは表向きには自治が認められていたが、実態は地球連邦からの重い税と資源徴収に苦しむ、事実上の植民地であった。リンドウの父親は元々コロニー評議会の議員であり、地球との対話による穏健な自治権拡大を主張していたが、リンドウが12歳の時に発生した「セレス動乱」でその立場を一変させる。この動乱は、食料配給の遅延に対する住民の平和的なデモに対し、連邦の治安維持部隊が過剰な武力行使を行った事件である。この混乱の中で、リンドウは父親と、幼馴染であった親友を同時に失うという悲劇に見舞われた。この経験は彼に深いトラウマと、地球連邦に対する強烈な憎悪を植え付けた。父親の理想であった「対話」を否定し、力による完全な独立こそが火星の進むべき道であると確信した彼は、火星連合軍の士官学校へ入学。そこで類稀な才能を開花させ、卒業後はエリート部隊である第零遊撃隊に配属された。
物語の序盤(第3話~第15話)では、火星連合軍のエースとして、地球連邦の補給ルート遮断作戦や、低軌道ステーション「ヘリオス」を巡る攻防戦で、ケンジ・アマノの「ライオット」と幾度となく死闘を繰り広げる。特に「ヘリオス攻防戦」では、ケンジを撃墜寸前まで追い込むが、突如として現れた所属不明の部隊(アイギス財団の私兵部隊)の介入によって、撤退を余儀なくされる。この戦闘を境に、リンドウは両軍の戦闘データとはかけ離れた、未知の戦術パターンを持つ「第三勢力」の存在を疑い始める。 中盤(第16話~)、火星連合の強硬派が「アイギス財団」と裏取引を行い、新型の自律型兵器の提供を受けていた事実を突き止める。しかし、その自律型兵器は暴走し、友軍であるはずの第零遊撃隊の同僚アネット・ミルーズを含む部隊を壊滅させる。この事件は「ユピテル事変」と呼ばれる。敬愛する上官グレイ・スタージェスまでもが財団と繋がっていたことを知り、リンドウは火星連合軍からの離反を決意。以降は「イカルガ」と共に単独でアイギス財団の動向を追う。 終盤(第20話~)、月面で財団の基地を発見した彼は、同じく財団を追っていたケンジら第13独立艦隊と再会する。火星連合も地球連邦も、財団によって戦争をさせられていたという真実を知り、彼は葛藤の末にケンジとの共闘を受け入れる。最終決戦である「アルテミス基地攻略作戦」では、ケンジと背中を預け合い、財団の総帥が起動させようとしていた惑星間戦略兵器「レクイエム」の破壊に貢献した。
主人公であるケンジ・アマノとは、物語における最大のライバル関係である。当初は、故郷を蹂躙する連邦軍の象徴としてケンジに激しい敵意を向けていた。しかし、何度も剣を交える中で、ケンジの持つ純粋さや、敵である自分を理解しようとする姿勢に触れ、徐々に彼を単なる「敵」として割り切れなくなっていく。共闘を経て、最終的には最も信頼できる戦友の一人となった。 アネット・ミルーズは、第零遊撃隊の同僚であり、リンドウに次ぐ実力を持つパイロット。彼女はリンドウに密かな好意を寄せており、彼の過去のトラウマを理解し、その心の支えになろうと努めていた。リンドウも彼女を大切な仲間として認識していたが、彼女の想いに応える前に「ユピテル事変」で彼女を失うことになり、これは彼が連合を離反する直接的な動機となった。 グレイ・スタージェスは、火星連合軍の司令官であり、士官学校時代のリンドウの教官でもあった。リンドウの才能を最初に見出し、父親を失った彼にとって父親代わりのような存在であった。しかし、グレイは火星の独立を早急に実現するため、アイギス財団との取引という危険な手段を選んでしまう。リンドウはグレイの現実主義的な考え方を「理想の裏切り」として非難し、二人は思想的な決別を迎えることになる。
性格は冷静沈着であり、感情を公にすることは滅多にない。常に戦局全体を見据えた合理的な判断を下そうと努める。その態度は、周囲の人間からは「冷たい」「機械のようだ」と評されることが多い。しかし、その内面には「セレス動乱」で受けた心の傷と、故郷の仲間を守りたいという強い情熱を秘めている。戦闘時以外では、自室でクラシック音楽を聴いたり、古い紙の書籍を読んだりする姿が描かれており、デジタル化が進んだ世界において、あえてアナログなものを好む古風な一面を持つ。 彼の当初の思想は「火星の絶対的な独立」であり、そのためには地球連邦という「敵」を排除することが不可欠であるという、やや排他的なものであった。しかし、ケンジとの出会いや、戦争の裏で暗躍するアイギス財団の存在を知ることで、彼の思想は変化していく。真の敵は特定の国家や人々ではなく、憎しみを利用して利益を得ようとするシステムそのものであると認識するようになり、最終的には「火星も地球も、同じシステムに搾取される被害者」であるという視点に至る。
リンドウ・スズハネは、『オービタル・ファランクス』という物語において、主人公ケンジ・アマノの対極に位置する「鏡」としての役割を果たしている。ケンジが「連邦の正義」という組織の視点から物事を見ていたのに対し、リンドウは「抑圧される者の正義」という視点を提示し続けた。彼との対立と和解を通じて、ケンジは自らの所属する組織の欺瞞性に気づき、より大きな視点で平和を模索する存在へと成長を遂げた。 また、物語の構図を「地球対火星」という単純な対立から、「戦争経済システム(アイギス財団)対それに抗う者たち」という、より複雑で深いテーマへと導いたのは、彼の行動によるところが大きい。