如月 いずみ - 架空アニメキャラ用語辞典

如月 いずみ（きさらぎ いずみ）は、博による漫画作品『明日ちゃんのセーラー服』に登場する、私立蠟梅学園中等部の3年生。
公式には認められていない、学園の旧天文台を拠点とする非公式クラブ「星見の会」の、創設者にして唯一の部員である。

概要
蠟梅学園の3年生で、明日小路たち1年生にとっては上級生にあたる。
物静かで、どこか大人びた雰囲気を纏った少女。普段はあまり目立つことがないが、星や宇宙のこととなると、途端に生き生きとした表情で情熱的に語り出す。
学園の敷地の外れにある、今は使われていない古い天文台を一人で管理しており、放課後はそこで天体観測を行うことを日課としている。明日小路が、偶然その天文台を訪れたことから、物語に関わるようになる。

生い立ちと背景
祖父から受け継いだ星への憧れ
いずみは、都会の出身。幼い頃、天文学を趣味としていた祖父から、星空の美しさや、星座にまつわる神話を教わったことが、彼女の原体験となっている。都会の明るい夜空では見ることのできない、満天の星への強い憧れを、彼女は幼少期からずっと胸に抱いていた。
彼女が、数ある学校の中から、豊かな自然に囲まれた田舎にある蠟梅学園への進学を決めた最大の理由は、この学園に古い天文台があり、「きっと素晴らしい星空が見えるに違いない」と考えたからであった。

たった一人の「星見の会」
蠟梅学園に入学した彼女は、早速、天文部を立ち上げようと試みる。しかし、彼女の内気な性格と、天体観測という少し専門的な趣味は、他の生徒たちの興味を引くことができず、部員は一人も集まらなかった。
それでも、彼女の星への情熱が消えることはなかった。正式な部活動として認められないまま、彼女は自らの活動を「星見の会」と名付け、たった一人で、忘れ去られた天文台の清掃と整備を始めた。以降、3年間にわたり、彼女はたった一人の部員として、放課後の天文台で、静かに星空を眺め続けてきた。
その姿は、学園の一部の教師や生徒からは認識されていたものの、彼女の静謐な時間を邪魔する者は誰もいなかった。

作中での活躍
明日ちゃんとの出会い
物語の中盤、持ち前の好奇心から学園の敷地内を探検していた明日小路が、丘の上にひっそりと佇む天文台の存在に気づき、訪れるところから、彼女の物語は動き出す。
そこで小路は、巨大な望遠鏡を覗き込み、星の輝きに夢中になっているいずみと出会う。最初は突然の訪問者に驚くいずみだったが、小路の持つ、純粋で真っ直ぐな好奇心に触れ、少しずつ心を開いていく。
いずみは、小路に望遠鏡で月のクレーターや、土星の輪を見せてあげる。生まれて初めて見る宇宙の神秘に、小路は心の底から感動し、「私、この会の二人目の部員になります！」と、いつもの調子で高らかに宣言する。この出会いが、いずみの3年間の孤独な活動に、初めての変化をもたらした。

広がる星の輪
小路との出会いをきっかけに、それまで誰も訪れることのなかった天文台に、少しずつ人が集まるようになる。小路に誘われ、兎原透子や木崎江利花といった、1年3組の生徒たちが、次々と「星見の会」に興味を示し始める。
いずみは、最初は戸惑いながらも、後輩たちに星座の探し方や、天体望遠鏡の使い方を、丁寧に、そして嬉しそうに教える。彼女が一人で抱えていた「好き」という気持ちが、小路を通じて、多くの仲間たちと共有されていく喜び。それは、彼女にとって初めての経験であった。

夏の夜の天体観測会
彼女の登場エピソードのクライマックスとして描かれるのが、ペルセウス座流星群の極大日に行われた、1年3組合同の天体観測会である。
兎原の企画力と、小路の行動力、そして、いずみの専門的な知識が結集し、実現したこのイベントは、作中でも屈指の美しい場面として描かれている。
いずみは、大勢の生徒たちの前で、最初は緊張しながらも、やがて堂々と、星空の解説を行う。夜空を次々と流れていく流星に、歓声を上げる後輩たちの姿を、彼女は穏やかな笑みで見守っていた。それは、彼女の3年間の学園生活が、確かに報われた瞬間であった。

他の登場人物との関係
明日 小路
いずみにとって、小路は「一番星」のような存在である。彼女の静かで、閉じた世界に、何の屈託もなく飛び込んできて、その世界を光で満たしてくれた。小路の持つ、あらゆる物事を「素敵」だと感じられる純粋な感性は、少しだけ物事を斜に構えて見ていた、いずみの心を溶かしていく。いずみは、小路に星空の素晴らしさを教え、小路は、いずみに誰かと「好き」を共有する喜びを教えた。

1年3組の生徒たち
当初は、遠い存在であった上級生だったが、天体観測会を通じて、皆から「いずみ先輩」と慕われる、頼れるお姉さんのような存在となる。特に、同じく自分の世界を持つ木崎江利花や、イベント企画が得意な兎原透子とは、深く交流するようになる。彼女たちにとって、いずみの存在は、自分たちの知らない世界の扉を開いてくれる、憧れの先輩として映っている。

性格・思想
静寂の中に無限を見出す
彼女の性格は、彼女が愛する星空そのものを映し出している。派手で、移ろいやすい地上の出来事よりも、静かで、悠久の時を刻む宇宙の営みに、彼女はより強い関心と安らぎを感じる。
これは、決して人嫌いや社交性の欠如を意味するわけではない。むしろ、彼女は、一人で星空と向き合う時間を通じて、自分自身や、世界の成り立ちについて、深く思索するタイプの人間なのである。

優しさと、一抹の寂しさ
基本的な性格は非常に穏やかで、誰に対しても親切である。後輩たちが抱く素朴な疑問にも、決して馬鹿にすることなく、 patiently に答える。
その一方で、自らが卒業すれば「星見の会」がなくなってしまうことや、美しい星の光が、何億年も前に放たれた過去のものであるという事実に、常に一抹の寂しさ（メランコリー）を感じている。この、物事の儚さを知るがゆえの達観した視点が、彼女の大人びた雰囲気を作り出している。

物語への影響
小路の世界の、新たな地平線
如月いずみというキャラクターは、明日小路の持つ「“素敵”を見つける才能」が、学園生活の身近な出来事だけでなく、文字通り宇宙的なスケールにまで及ぶことを示した。彼女との出会いを通じて、小路の世界は、大地から空へ、そして宇宙へと、大きく広がっていく。

「好き」を分かち合う喜びの物語
彼女の物語は、『明日ちゃんのセーラー服』という作品の根幹をなすテーマの一つである、「誰かと“好き”を分かち合うことの素晴らしさ」を、非常に純粋な形で描いている。
一人きりで大切に育んできた宝物を、勇気を出して誰かに見せた時、その宝物は、何倍にもなって輝き出す。いずみと小路たちの交流は、このシンプルで、温かい真実を、読者に改めて教えてくれる。
また、彼女がもたらした「星空」というモチーフは、作品の持つ繊細で美しいアートスタイルと極めて親和性が高く、物語に、より一層の詩的な情景と、視覚的な魅力を加えることに貢献している。