あらすじ
傷ついた心を癒すため、ひとり眠り続ける天月紗矢香。
脳裡によみがえるものは自分の父。何も持っていない自分。居場所の無い自分。空虚な自分。彼女は心を探していた。
最期まで体を、命を張ってくれたマスタークラウンのことを思い出したとき、その足は自然とめぐりあいの異世界に向いていく。
気付いたとき、さやかはめぐりあいの異世界に来ていた。そこで彼女は、みずからの犯した消すことのできない罪を思い出す。
同時に思い出したものは、パワポケと過ごした大切な時間。いくら後悔しても、決して過ちが消えるわけではない。
すべてを受け入れ、背負って生きていく決意が固められたとき、マスタークラウンはさやかの善き心に反応し、よみがえった。
その命の愛おしさを知り、さやかは両親やパワポケの想いをも知ることになる。
かくしてようやく、天月紗矢香は彼女自身としての歩みを再開することになるのだった。
彼女の本当の戦いが、これから始まるのである。
シズヤ「さやか...」
ヒカル「でも...そのうちきっと目を覚ますよ。」
さやか「(わたしは眠りつづける...わたしの心を見つけるために...
わたしの心はどこに行ったの...? お父さんがいたあの日...)」
さやかの父「俺には助けなければならない人がいる。」
五十鈴「気をつけて...」
さやか「(お父さんはわたしたちを捨ててどこかへ去ってしまった...
お父さんはわたしたちより、困っている人が大切なんだ...)」
BGM:ピエモンのテーマ 原曲
さやかはうなされながら眠りについた。
そして自分の脳裡によみがえるものは妹のように自分を慕ってくれたパワポケ。
具現化を固定させるためにブラックホールズ戦でパワポケたちフィンチーズを苦しめた自分。
パワポケがブラックホールズに勝った時、具現化が終わって孤独になり絶望する自分。
そんな彼女を夢の中の暗黒の海へと誘い、さやかの心に暗い影が潜む...
さやか「あっ...」
(クククククッ...)
さやかの体から心の闇が具現化し...
(ふふふ...天月紗矢香...パワポケがブラックホールズに負けたのは、偶然が生んだ不幸だ。
君にとっては、さぞかし心が動揺する出来事だったろう。でも、安心したまえ...
具現化が固定されて一緒にいられるのだよ。君はそれを苦にすることはない...
君のパワポケは、ブラックホールズに敗北して、本当の意味で楽になれたのだ。
永遠の精神の自由を得たのだから。
...でも、君はこれからもそのつまらない戦いの世界で生き続けなければならない...
つまりそれは、君の自由な精神の死を意味する。可哀相な君...私は君に同情する。
引き出される結論としては、今の世界は君にふさわしくないという事だ。
君には、もっとふさわしい世界があることを...今、私は君に告げよう...
君の精神が完全に解き放たれる世界だよ。)
宝箱が出現した。
(その宝箱を開けたまえ。その2つのマスター
アイテムを使うのだ。)
さやかは2つのマスター
アイテムを手に持ち、暗黒の海へ...
そこでさやかが腕にはめたマスターリングを海の中へ入れると...
マスタークラウン・リングが闇の力を帯びた。
さやか「そう、これがわたしのマスター
アイテム...誰のものでもない。わたしだけのもの...」
こうしてさやかの中に心の闇が芽生えたのだった...
暗転
BGM:なし
さやか「うっ...ううぅ...」
シズヤ「うなされておるな...自分の父に家族を捨てられた寂しさが
芽生えているのだからな...パワポケを苦しめたこと、月を破壊させたことも...
さやかよ、早く目を覚ましてくれ...私にあやまるチャンスをおくれ...」
さやか「(わたしの心はどこに行ってしまったんだろう...
春の日、パワポケおにいちゃんに会ったときのこと...)」
さやか「お父さん! 戻ってきて!」
さやか「(戻って来ない...そう、お父さんは自分の心を魔に染めて、
ダークマスターになってしまったんだ...)」
シズヤ「あっ...! さやか、目を覚ましたのか!」
さやか「うん... ...!」
さやかが自分の所持していた2つのマスター
アイテムを見た瞬間...!
さやか「おにいちゃん...!」
シズヤ「さやか!」
さやか「(わたしの心はどこ...?
わたしはわたしの心を見つけたい...わたしの心を探したい...)」
さやかが向かった先は、めぐりあいの異世界だった。
さやか「ここは...?」
「ここはめぐりあいの世界。」
さやか「わからない...どれがわたしのマスター
アイテムなのか、
わたしが誰なのかわからないようにどれがわたしのマスター
アイテムなのかわからない...」
プレイヤーA「お前、パワポケに最悪のハンデを与えて試合に負けさせ、
具現化を固定させる原因を作った天月紗矢香だな? ソウルクリーナーを使って何をする気だ!?」
さやか「パワポケおにいちゃんに最悪のハンデを与えて試合に負けさせ、具現化を固定させる原因を作った...?
そうだ、わたしは世界を具現化を固定させる危機におとしいれた元凶なんだ...
ひどいことをした人間なんだ...おにいちゃんの試合にひどいことをしたのもわたしだ...
だけど、わたしは2つのマスター
アイテムを持って何をしようというの...?」
プレイヤーB「ソウルクリーナーがあれば自分の心は顕れる。
史上最悪のハンデを与えた自分から解放される。パワポケ14が炎上した原因から解放される。そうだろう?」
プレイヤーC「お前はひどい奴だ! そんなひどい奴がいるパワポケ14など誰が買うものか!」
さやか「誰もパワポケ14を買わない...? そうだ...お父さんだって戻ってこなかった...
それは認めたくない現実...月は壊れた...おにいちゃんは黄泉比良坂に堕ちた...
わたしがおにいちゃんに史上最悪のハンデを与えたせいでパワポケ14を嫌いになった人が続出した...
この世界で取るに足らないのはわたしだ...取るに足らないわたし...ちっぽけなわたし...
でも、そんなわたしはこうしておにいちゃんが黄泉に行ってしまったことを痛んでいる...」
BGM:哀しみ(デジモンアドベンチャー) 原曲
さやか「もしわたしが死んだら...? おにいちゃんとシズヤさんとお母さんならきっと悲しんでくれる...
おにいちゃんとシズヤさんとお母さんだけは悲しんでくれる...それなのに、わたしは...
そんなおにいちゃんたちを失ってしまった...わたし自身のわがままな行動のために...!」
プレイヤーB「お前のしてきたことは、本当に取り返しのつかないことだ。
一度してしまったことは、二度と取り戻せない。」
プレイヤーC「過去をなかったことになんでできない。すべて自分のものだ。良い事も悪い事もすべて自分なのだ。」
さやか「すべてのことは自分の中に認めて生きていく...
わたしが最後の試合でおにいちゃんに史上最悪のハンデを与えたこと...
試合に負けて具現化を固定させる原因を作ったこと...おにいちゃんに月を破壊させたことも...
だいじょうぶ...きっとできる...だってパワポケおにいちゃん。
おにいちゃんがいっしょにいてくれた思い出だけでわたしはきっと強くなれる...
そうだ、マスタークラウンさんはずっとわたしといっしょだった...?
おにいちゃんといっしょに帰ったり、映画を観たり楽しく過ごしていた...
忘れていた記憶...自分で消し去っていた記憶...
でも、どうして...どうしてわたしはそれを忘れなければならなかったの...?」
回想
マスタークラウン「ボクがさやかの相棒でよかった。だって、さやかは優しいんだもん。」
さやか「やさしい...?」
マスタークラウン「でも優しいだけじゃダメ。そうじゃないと...」
さやか「そうじゃないと...?」
マスタークラウン「そうじゃないと、自分の優しさに押しつぶされちゃうよ。
さやか...今持ってる2つのマスター
アイテムは、さやかのものだよ。
誰のものでもない、さやか自身のもの。さやかの心がさやかのものであるのと同じように忘れちゃダメ。そして...」
さやか「そして...」
マスタークラウン「逃げちゃダメ。」
回想終了
さやか「わたしが何も持ってないなんてウソ...そう思っていたほうが楽だった...
おにいちゃんに最後の試合でわざと負けさせて具現化を固定させたほうが楽だった...
パワポケおにいちゃん、ヒカルさん、シズヤさん、プレイヤーのみなさん、ごめんなさい...!
取り返しのつかないすべてのことを、わたしはわたしの中に認めて生きていく...」
(ピカーッ!)
さやか「これは...?」
「それは、キミのソウルクリーナー。」
さやか「わたしのソウルクリーナー?」
マスタークラウン「さやか、早くボクを持って...! 早くボクを手にして! 早く早く...!」
さやか「このマスタークラウンは...? どうしてこんなに光ってるの...?」
さやかはマスタークラウンを手に持ってみた。
(ピカーッ!)
マスタークラウンがさやかの優しさの心に反応し、主と認めた。
BGM:友情 ~ 闘いのテーマ(デジモンアドベンチャー) 原曲
さやか「マスタークラウン...?」
マスタークラウン「さやか、ボクを手に入れてくれた...?」
さやか「うん...! 探したよ。うんと探したよ。」
マスタークラウン「よかった...さやかならきっと手にしてくれると思った...!」
さやか「マスタークラウンさん...」
マスタークラウン「なに? さやか?」
さやか「わたしの友だちになってくれてありがとう...!」
シズヤ「よかったのう、さやか...そなたが失ってしまっていた友を見つけることができて...!」
さやか「シズヤさん、ヒカルさん、わたし...自分の贖罪のためにがんばる!」
シズヤ「うむ、その意気だ! 黄泉比良坂に行ったパワポケを助けるのだ!」
さやか「はい!」
こうしてさやかは自分の贖罪のためにシズヤとヒカルと
マスタークラウンとともにパワポケを助けに黄泉比良坂に入っていった...
続く
最終更新:2022年10月15日 00:15