アイスと探偵と永遠の切札 ◆o3VwW7hmYU


「期待はずれだ、ヤコよ。貴様の日付はいつになったら変わるのだ?」

このとんでもない殺し合いに連れてこられる少し前に、いつも通りにネウロが吐いた暴言。
その言葉は普段の暴言よりも断然ソフトだったのに、何故か私の心を深く抉っていた。
そして、それに重なるようにして私はこの殺し合いに巻き込まれた。
正直、最初は実感が無かった。いきなり「殺し合いをしてもらう」なんて言われても、私みたいな女子高生には無縁の話過ぎて、理解が追いつかなかった。
でも現実はそんなに甘くなくて。結果的に、私は二人の首輪が爆発するのを見ることであの眼鏡の人が言っていることが本当だと思い知らされることになった。

「ああ、もう!ネウロに関わってからロクなことがないよ!」

気がつくと、私はこの状況ではあまりにも場違いなこと叫んでいた。

     OOO  OOO  OOO  OOO

「……ん?今、誰かの声がしなかったか?」

アンクから貰ったアイスキャンディーを頬張りながら、杏子は近くから聞こえてきた少女の叫び声に反応する。

「ああ、したな。それがどうした」

アンクは突然の叫び声に対してそれほど興味を示したわけでもなく、アイスを頬張っている。
杏子は強がってはいるが、間違いなく重傷だろう。それは彼女の傷を見ればわかる。
そして、アンクには自分のチームの人間を無駄死にさせるつもりなど一切ない。だからこの声の少女が敵である可能性も考慮し、杏子の傷がある程度治るまでは接触しないほうがいいと考える。
尤も、まともに治療が出来るような施設を見つけなければこの深い傷を治療することなど困難なことかもしれないが。

「接触しなくて良いのか?あんた、人を探してるんだろ?」
「今の俺がアイツと戦っても無駄死するだけだ。それに俺が探してる奴は女じゃねえ」

今の自分に必要なものは、他の参加者達に対抗出来るだけの戦力。
この場でもう一人の自分に会っても、今のアンクには逃げることしか出来ない。
この場で映司とあっても、何の抵抗も出来ることなく、ただ殺されるだけだ。
杏子という存在は大きいが、また先程敵対したような化物にあったら、今度は間違いなく殺されるだろう。

「仮面ライダー……か」

剣崎は仮面ライダーブレイドとしての誇りを……揺るぎない正義を貫いて、自分や杏子を助けてくれた。
剣崎の話によると、映司も「仮面ライダー」の括りに入るようだ。
そして映司も剣崎も、自分の身を挺してまで誰かを守ろうとしている。それがアンクにはわからなかった。
何故、自分が傷ついてまで誰かを助けようとするのか。
何故、自分が死ぬとわかっていても誰かを助けようとするのか。
何故、見知らぬ誰かのために自分の命を簡単に投げ出すことが出来るのか。
様々なことを考えたが、グリードであるアンクにはわからない。

「あんたが気に病むことはないよ。アイツは自分のやりたいことをやっただけさ」

何かに悩んでいるような、苛立っているような……そんなアンクの表情を見て、アイスを食べ終わった杏子が声をかける。
彼女にも、剣崎の気持ちが多少はわかった。アンクの気持ちも全くわからないというわけではなかった。
剣崎は、昔の自分に少し似ていて。それはつまり、さやかにも似ているということで。
重傷を負った自分を勝手な正義感で命を投げ出してまでたすけてくれた剣崎には苛立ちもあったけど、昔の自分が同じ立場だったら同じことをしていただろう。
それに、さやかが思い出させてくれた。自分のなりたかった魔法少女を。
だから、今の杏子は自分の命を散らしてまで誰かを助けようとした、剣崎一真という男の勇姿を貶すことはなく。
仮面ライダーブレイドの勇姿は佐倉杏子の記憶にハッキリと残ることになった。
これから先、佐倉杏子が彼の勇姿を忘れることは無いだろう。

何故なら、仮面ライダーブレイド――剣崎一真も、自分と同じで『最後に愛と勇気が勝つストーリー』を信じて戦ったのだから。
剣崎一真の仮面ライダーとしての『魂』は、確かに佐倉杏子へと受け継がれていた。

     OOO  OOO  OOO  OOO

「……それにしても、まさかあかねちゃんがいるなんてね」

桂木弥子は、先程までの態度が信じられないほどの上機嫌でケータイストラップのような髪の毛に話しかける。
髪の毛の名は、あかねちゃん――色々と訳ありの、生きた髪の毛だ。
あかねちゃんは、弥子の言葉に反応するように小さな身体を左右に動かす。
弥子の行動はあかねちゃんのことを知らない者からみたらただの変人にしか見えないが、そんなことが気にならない程に弥子は喜んでいたのだ。
見知らぬ場所、突然の殺人、ネウロからの厳しい一言……それらの悲惨な要素が重なったからこそ、これ程迄にこの状況を喜ぶことが出来たのかもしれない。

「お前、何やってるんだ?」

歩きながら髪の毛に話しかけるという奇妙な行動をしている少女を見て、アンクは呆れ声を出す。
散々自分が警戒していたあの叫び声の女はこんなバカなのか――そう思うと、本当に呆れてくる。
案の定、あかねちゃんと喜びを分かち合っていることに必死だった弥子はアンクや杏子の姿に気付いてはおらず、突然声をかけられ言葉に詰まる。
弥子自身、一般人からみたらただの変人にしか見えない行動とわかっていたため、少々気まずい。
そして暫くの沈黙が訪れたが、あまりにも馬鹿馬鹿しい雰囲気に耐え切れなくなったアンクは乱暴な手つきで新たなアイスを取り出し、口に運んだ。

(いいなぁ……アイスキャンディー。私も一本でいいから食べたいなぁ……)

欲望丸出しの表情で、涎を垂らしながらアイスキャンディーを見つめる弥子。
アンクはそんな弥子を見ながら、少々自慢気な表情でアイスを頬張る。
そして杏子が微妙な表情で見つめる中、アンクはアイスを一本食べ終わると共に弥子にアイスを差し向ける。

「俺の協力をするなら、このアイスをくれてやる」

「も、もちろん協力します!」

考える間もなく即答。これには提案者であるアンクも呆れ気味だったが、新たな戦力を獲得出来のだから、まあ良いとすることにした。
まるでここが戦場だとは思えないやり取りだが、アンクはアイスキャンディーを「交渉材料」として使える物だと価値を見出しつつもあった。

【D-2/民家】
【一日目-日中】
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
【所属】赤陣営
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、全身に殴られた跡
【首輪】所持メダル「70」:貯蓄メダル「0」
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】基本支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:???
 1:主催者をぶっ倒して『愛と勇気が勝つストーリー』を達成するのも悪くない
 2:さやかが心配
【備考】
※剣崎を見て過去の自分を思い出しています

【アンク@仮面ライダーOOO】
【所属】赤陣営
【状態】健康、疲労(小)、迷い
【首輪】所持メダル「98」:貯蓄メダル「0」
【コア】タカメダル「1」
【装備】シュラウドマグナム+ボムメモリ@仮面ライダーW
【道具】基本支給品一式、大量のアイスキャンディー、不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:アンク(ロスト)を排除する。その後は……?
 1:アイスは交渉材料に最適だな
 2:アンク(ロスト)を排除するためにも今は戦力を集めることに集中する
 3:映司は――――。
【備考】
カザリ消滅後~映司との決闘からの参戦

【桂木弥子@魔人探偵脳噛ネウロ】
【所属】青陣営
【状態】健康、精神的疲労(中)、迷い
【首輪】所持メダル「100」(増加中):貯蓄メダル「0」
【装備】桂木弥子の携帯電話(あかねちゃん付き)@魔人探偵脳噛ネウロ
【道具】基本支給品一式、不明支給品1~3
【思考・状況】
基本:殺し合いには乗らない
 1:今はとりあえずアイスキャンディーを食べたい
 2:ネウロに会いたい
【備考】
※第47話 神【かみ】終了直後からの参戦です

030:金獅子は騎士として全力を尽くす 投下順 032:創世と理想と欲望の王
029:Sの誇り/それが、愛でしょう 時系列順 032:創世と理想と欲望の王
008:Bの煌き/青く燃える炎 佐倉杏子 053:求【さがしもの】
アンク
GAME START 桂木弥子


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最終更新:2012年07月11日 11:27