創世と理想と欲望の王 ◆SXmcM2fBg6



 不自然に切り取られた港の縁。透き通る様に青い空の下。吹き抜ける風が優しく頬を撫でる。
 程良く心地よいそれらの風情は、柔らかく人の心を和ませたであろう。

 ――――ここが、殺し合いの場でさえなければ。

 今ここに、三人の男が緊張の糸を張り巡らしていた。
 彼らの間に会話はなく、お互いがお互いを、一目見ただけで敵だと即断していた。
 その様は殺し合いの場に相応しく、同時に周囲の雰囲気も重苦しくなっていく。
 その緊迫感が臨界に達した、その時、男の一人が口火を切った。

「お見受けしたところ、どうやら私とあなた達の目的は同じようですね」
「それは、真木清人の指示に従うつもりはない、という事ですか?」
「確かにそれなら、俺達の目的は同じだ。だが、それが何だというのだ?」
「目的が同じであるのなら、お互い協力することも不可能ではない、という事ですよ。
 どうです? ここは一先ず、協力関係を結ぶ事にしませんか?」

 男の言葉に、一人は顔を顰め、一人は無表情のままだった。
 確かに男の言う通り協力関係を結べば、この殺し合いを生き延びることも難しくはないだろう。
 だが――――

「確かに私は、真木清人に従うつもりはありません。が」
「俺は誰からの命令にも従うつもりはない。それは、貴様等とて同じであろう?」
「確かにその通りですね。残念です」

 男――月影ノブヒコは言葉ほど残念そうに見えない様子でそう言った。
 もとより彼らは全員、お互いを敵だと判断していたのだ。
 ノブヒコが二人に誘いをかけたのは、念のために過ぎない。

「では我が大ショッカーに逆らう者を始末するとしよう」
 ノブヒコがもう隠す必要はないとばかりに、改まった態度を一変させる。
 同時に腰に現れたベルトに続くように、ノブヒコの身体が鉛色の装甲に包まれた。
 その様子を見た残り二人の男はそれに驚くことはなかった。
 むしろ先の言葉に反応し、より戦意を滾らせる。

「これはまた随分と大きく出たな」
「当然だ。この創世王に敵う相手などいないのだからな」
「それはどうでしょう。傲慢な王は民や臣下の反逆によって打ち取られるのが常ですよ?」
「ふん。それはその王が弱かっただけの事だ」
「それはつまり、貴方方の事ですか?」
「言ったな貴様。なら、試してみるか?」

 そう言うと同時に、ノブナガはバースドライバーを取り出し、応じる様に加頭順がガイアメモリを取りだす。
 そして一枚のセルメダルを指で弾き/ガイアウィスパーを響かせ、

「変身」
《――UTOPIA――》

 仮面ライダーバースへと/ユートピア・ドーパントへと変身した。
 両者を前にシャドームーンは、サタンサーベルを一振りして構えを取る。
 三つ巴の戦いが今始まった。


        ○ ○ ○


 バースがバースバスターを構え、二人の敵へと掃射する。
 そのメダル型の光弾をシャドームーンはサーベルで弾き、バースへと接近する。
 対してユートピアは光弾の軌道を歪曲させ、見当違いの方向へと飛ばす。

 バースへと接近したシャドームーンは、メダジャリバーを取りだしたバースと切り結ぶ。
 そこへユートピアが炎を放ち、二人を諸共に攻撃する。

 炎を回避したバースはバースバスターのバレルポットを銃口へと装着し、セルバーストを放つ。
 シャドームーンもまた炎を受ける事はなく、バースの攻撃を受けるか、防いだ後の隙を狙うべくユートピアへと切り掛かる。

 だがユートピアはセルバーストの光弾を目の前で静止させ、同時にシャドームーンも空中へと浮かせる。
 そしてそのままシャドームーンへと光弾を弾き飛ばす。
 宙に浮かされ、動くための足場のないシャドームーンに光弾を躱す術はない。

「チィッ!」
「な――!」

 故にシャドームーンは、バースを盾にすることでその一撃を防いだ。
 咄嗟に左手から放った雷光でバースを捉え、光弾の射線上へと投げ飛ばしたのだ。

「ガハ………ッ!」

 己自身の一撃をまともに受けたバースは大きく弾き飛ばされ、地面へと倒れると同時に変身が解ける。
 痛む体を押して顔を上げれば、シャドームーンとユートピアはノブナガの事など意に介さぬように向き合っていた。

「まさかあのような方法で防ぐとは。私、貴方をすこし見直しました」
「厄介な能力を持っている様だが、邪魔者も消えた。次は通じんぞ」
「私の能力があれだけだと思っているのなら、それは間違いですよ」

 そう言うとユートピアは辺りに稲妻を鳴り響かせ、
 シャドームーンが対抗するように左腕に雷光を纏わせる。
 そしていざそれを相手に放たんとした時、

「―――なッ!」
「に………!?」

 突如として現れた謎の鎧武者から、強力な斬撃が放たれた。
 完全な不意打ちとなった一撃を二人は防ぐ事が出来ず、先ほどのバースと同じように大きく弾き飛ばされる。
 それを見届けた鎧怪人は僅かにふらつく様に立ち去って行った。



 シャドームーンが再び立ち上がり辺りを見渡した時、そこには誰もいなかった。
 戦いに横槍を入れた鎧武者も、強敵と判断したユートピア・ドーパントも、倒れているはずの仮面ライダーの男も。

「九つの世界に属さない仮面ライダーに、USBメモリを使う怪人か」

 戦いが終わった事を把握したシャドームーンは変身を解き、そう呟く

 彼らが一体どこの世界に属する存在かは分からない。
 だが少なくとも、真木清人が大ショッカー以上の技術を持っていることは理解出来た。
 それはこの、ショッカーのマークをあしらったコアメダルからも明らかだ。
 他にも真木清人の説明の時に目撃した機動兵器の事もある。
 この殺し合いが一筋縄ではいかないのは確かだろう。

 だがそこまで考えてなお、ノブヒコの顔から余裕は消えなかった。
 彼にとって、それらは全て瑣末な事だからだ。

 仮面ライダーは殺す。真木清人も殺す。大ショッカーに逆らう者は全て皆殺しにする。

「せいぜい王を気取っているが良い、真木清人よ。
 いずれ世界は、我々大ショッカーによって支配されるのだからな!」

 そう言って創世王シャドームーンは、凄惨な笑みを浮かべで歩きだした。


【一日目-日中】
【F-3/エリア中央】

【月影ノブヒコ@仮面ライダーディケイド】
【所属】緑
【状態】ダメージ(微小)
【首輪】85枚:0枚
【コア】ショッカー
【装備】サタンサーベル@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品、ランダム支給品0~2
【思考・状況】
基本:真木清人や、大ショッカーに刃向う者を抹殺する。
1.大ショッカーに従う者を探す。従わない場合は殺す。
2.仮面ライダーは殺す。利用できそうなら利用する。
3.ユートピア・ドーパントと、鎧武者怪人(正体は知らない)を警戒する。
【備考】
※ショッカーのコアメダルではショッカーグリードは復活しません。
※ショッカーメダルでコンボを成立させると、変身解除後ショッカーメダルは消滅します。


        ○ ○ ○


 戦いの場から少し離れた場所。
 道路と海が不自然に直面した境界から、一人の男が這い上がってきた。

「少し、酷い目に会いましたね」

 その男――加頭順は、鎧武者の一撃を受けて弾き飛ばされた際に、海へと落ちてしまったのだ。


「Wとは違う仮面ライダーが二人もいるとは。私、ゾクゾクします」

 加頭順は無表情のままそう言って歩き出す。
 次の目的地は決まっている。それはすなわち園咲邸。
 ずぶぬれになった服を着替える意味も込めて、その場所へと向かう。

 不死の兵士、『NEVER』である彼か風邪を引くことはない。
 だが、濡れた服が不快であることに変わりはないのだ。
 それに何より、彼が愛した人の家でもある。


 実を言えば、加頭順にとって月影ノブヒコの提案は別段拒否する様なものではなかった。
 それを彼が蹴ったのは、彼の愛する女性は誰かに“命令”されることを嫌い、かつ月影ノブヒコが彼女を害する可能性が高かったからだ。
 故に彼は、その危険性のある月影ノブヒコを排除しようとしたのだ。


 ―――こんなに感情のこもっていない告白は初めて。


 それが、彼が彼女の事を好きだと告白した時の返答だった。
 彼は普段から表情に乏しく、内心を理解されることが少ない。
 だから彼は決意した。

 表情で、言葉で感情が伝わらないのなら、行動で伝えよう。
 たとえこの想いが報われずとも、彼女がそれを理解してくれれば、今はそれでいい。
 そのためにも、

「待っていてください、冴子さん」

 園咲冴子を、この殺し合いの勝者とする。
 そうして彼女のための理想郷を創り上げるのだ。

 その誓いを胸に、不死身の怪人は歩きだした。


【一日目-日中】
【G-4/住宅街】

【加頭順@仮面ライダーW】
【所属】青
【状態】健康、ずぶ濡れ
【首輪】85枚:0枚
【装備】「UTOPIA」のガイアメモリ+ガイアドライバー@仮面ライダーW
【道具】基本支給品、ランダム支給品1~3
【思考・状況】
基本:園崎冴子への愛を証明する。そのために彼女を優勝させる。
1.園咲邸へと向かい、服を着替える。
2.参加者達から“希望”を奪い、力を溜める。
【備考】
※参戦時期は園咲冴子への告白後です。
※回復には酵素の代わりにメダルを消費します。


        ○ ○ ○


 そうしてシャドームーンとユートピア・ドーパントに不意打ちをしかけた鎧武者は倒れ、後にはノブナガ一人が残った。
 ノブナガは、彼の織田信長のミイラとセルメダルによって生成されたホムンクルスだ。
 故にその体はセルメダルで構成され、その在り方はグリードに等しい。

 しかしその事実を、ノブナガが忌避することはない。
 彼はグリードの如きおのれの肉体さえも、己が力として受け入れているのだ。

 ただ一つ。彼の肉体と自我が、時と共に崩壊していく事を除いて。

 今でこそ内包する黒いコアメダルによって安定してはいるが、それでも肉体を維持するためにセルメダルが消費されている。
 つまりは本物のグリードよりも遥かに劣っているのだ。

「はッ……。元より泡沫の夢の様なものだ。未だに存在していられるだけましであろう」

 自嘲するように吐き捨て、空を見上げる。
 以前は見向きもしなかった青い空。友と共に見上げた遥かな蒼は、今も変らずにそこにある。

「映司よ。お前は今も、誰かのために戦うのだろうな」

 自分が知る映司の性格を鑑みれば、それは間違いないだろう。
 であれば、彼の助けになる事が、恩を返す道だろうか。

 一枚のオレンジ色をしたコアメダルを取りだす。
 グリードの在り方に近いノブナガは、コアメダルの能力を取り込むことも出来る。
 そしてこのコアメダルによって、すぐに不意打ちできる程度にダメージを抑えられたのだ。
 バースの力ではグリードには敵わない。怪人体でもそれは同じだろう。

 ……あるいは、多くのコアメダルを吸収すれば、グリードを倒せるほどの力を得られるかもしれないが。

 何にせよ、オーズの力が必要なのは間違いないだろう。
 これがどこの陣営に属するメダルかはわからないが、きっと映司の助けになってくれるはずだ。

「たまには他者のために力を尽くすのも悪くはない、か。
 そうだな……この世の全ては俺のものだ。故に、俺のものを傷つける輩を赦しはせん」

 この世で最も強い欲望を持つ男、織田信長。
 そのホムンクルスであるノブナガもまた、強い欲望を持つ。
 その欲望が、自らの物を他者に奪われることを良しとしないのだ。
 それに何より、

「覚悟せよ真木清人。貴様には、必ずや天誅を下してやる」

 奴が俺を愚弄したことを、忘れてはいないのだからな。

 そうして欲望の権化である男は立ち上がり、新たな覇道を歩きだした。


【一日目-日中】
【F-3/エリア東部】

【ノブナガ@仮面ライダーOOO】
【所属】黄
【状態】ダメージ(小)
【首輪】65枚(消費中):0枚
【コア】サソリ、カニ、エビ、カメ
【装備】バースドライバー@仮面ライダーOOO、バースバスター@仮面ライダーOOO、メダジャリバー@仮面ライダーOOO
【道具】基本支給品、ランダム支給品0~1
【思考・状況】
基本:この世の全ては俺の物。故に、それを傷つける輩には天誅を下す。
1.火野映司と合流する。
2.コアメダルを集め、グリードに対抗できる力を得る。
3.友として、火野映司に恩を返す。
【備考】
※参戦時期は、映司に看取られながら消滅した後です。
※肉体・自我の維持にメダルを消費します。
 またその消費量は、内包する甲殻類系のコアメダルが少ないほど増加します。
※甲殻類系のコアメダルによるコンボチェンジは出来ません。
※爬虫類系コアメダルではグリードは復活しません。


031:アイスと探偵と永遠の切札 投下順 033:休憩!!
031:アイスと探偵と永遠の切札 時系列順 035:意志
GAME START 月影ノブヒコ 034:創世王、シャドームーン
GAME START 加頭順 042:Uの目指す場所/ボーダー・オブ・ライフ(前編)
GAME START ノブナガ 043:王【のぶなが】



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最終更新:2013年10月02日 00:21