休憩!! ◆LuuKRM2PEg
『そうか―――ああ、安心した』
衛宮切嗣の脳裏に蘇るのは、かつての聖杯戦争で巡り会うことの無かったマスターの言葉。
バーサーカーのマスターである彼、
間桐雁夜は大切な人を救うために聖杯戦争に参加した。そして自らの肉体を犠牲にして魔術を会得した。
全ては間桐桜というたった一人の少女に、再び笑顔を取り戻させたいという純粋な願い。
だけど、彼を救うことは出来なかった。バーサーカーから
アストレアを救っている隙を付かれて、雁夜は殺人鬼に殺されてしまう。
夢も、願いも、幸せも――――――雁夜が望む全てを、取りこぼしてしまった。
『わかった―――桜ちゃんは、僕が救おう。だから君は、少し休め』
『僕は『正義の味方』だからね。誰かが悲しんでいるのを、見過ごすことは出来ないんだ』
罪のない人々を助けられる『正義の味方』であることを、士郎や雁夜に誓ったはずだった。その為にも、こんな意味の分からない殺し合いを打ち破ると決めたはずだった。
その矢先に、救いたいと思った雁夜をかつてのように死なせてしまう。シャーレイや、ナタリアや、舞弥や、アイリスフィールを始めとした大勢の人と同じように。
雁夜を救えなかったという事実が切嗣に襲いかかっていた。かつて『魔術師殺し』と恐れられた頃ならそんな感情は切り捨てたかもしれないが、今は違う。
士郎に誓った 『正義の味方』を志した彼には、あまりにも許し難い失敗だった。
『改めて約束するよ、間桐雁夜。
君が救おうとした桜ちゃんは―――僕が救ってみせる。
だから君は、安らかに眠ってくれ』
それでも、弱音を吐いて止まることは決して許されない。
この殺し合いに放り込まれた人達を一人でも多く救い、馬鹿げたことを強制させる真木清人とグリードを仕留める。それから桜やイリヤスフィールを救うまで、倒れることは出来なかった。
「……ここは、空に浮いてるのか?」
そして切嗣は今、アストレアとバーサーカーの二人を連れて会場の外縁部に立っている。
円形の会場が描かれている地図の端にあるのは、青い空と白い雲。それが気になって会場の端に辿り着いて見えるのは、果てしなく続く空と風に流れる雲だけだった。
下を覗き込んでも、大量の厚い雲によって海や大地は全く見えない。要するに、ここは空に浮かんでいるのだ。
「この下どうなってるのか、見てこよっか?」
「いや、やめた方がいい。ここは真木清人の息がかかった場所だから、下手に飛び込むと何が起こるか分からない」
身を乗り出そうとするアストレアを切嗣は静止する。
いくら彼女が空を飛べるとはいえ、この舞台の外を確かめさせるわけにはいかなかった。会場の裏に飛び込んだ瞬間、魔術で蜂の巣にされてしまう恐れがある。
ここで考え無しに飛び込ませては、あまりにも危険すぎると切嗣は思った。
「ここって、シナプスなのかな?」
そんな中、アストレアは呟くのを切嗣は聞き取る。
「……シナプス?」
「うん、あたし達エンジェロイドが生まれた場所! ここみたいに街がたくさん……あっ!?」
アストレアは饒舌に語ろうとした瞬間、何かに気付いたかのように目を見開いた。
それを見た切嗣は怪訝な表情を浮かべてしまう。
「……どうかしたのかい?」
「えっと、その……あの……なんて、漫画があるの!」
「えっ?」
「だからシナプスって言うのは……そう! 最近流行ってる漫画なの! ここみたいに空に浮いてる島がたくさん出てくる漫画!」
「……そうなんだ」
無理やりな笑顔を作るアストレアの返事はしどろもどろとしていた。恐らく、触れてはいけないワードに触れてしまったのかもしれない。
シナプス。どうやらアストレアを始めとしたエンジェロイド達が生み出された場所で、ここのように浮遊している都市の事をいうのだろう。
バカな彼女をここまで狼狽させるほどだから、聖杯戦争のように普通の人間に知られてはいけない存在かもしれない。もしも無理に聞き出そうとしたら秘密を守るための特別なプログラムが発動して、とんでもない事が起こる可能性があった。
だからシナプスとやらを知りたいならば、ゆっくりと時間をかけて遠回しに聞き出すしかない。
(まさか……そのシナプスという奴がこの殺し合いに関わっているのか?)
ふと、切嗣は考える。
これだけの大規模な会場を作れるなんて普通の魔術ではあり得なかった。大聖杯のような存在なら別かもしれないが、それでも空を飛ぶ大陸を生み出せるなんて聞いたことが無い。
だがエンジェロイドの誕生に関わっている存在ならどうか。シナプスの技術力がどれほどの物かは知らないが、アストレアの戦闘能力の高さを見るに現代技術を遥かに凌駕している。
そんな連中があの真木清人の背後にいる可能性が、大いに考えられた。
(それにこの腕に令呪を復活させたという事は、この戦いには魔術協会も関わっている可能性も頭に入れないとな)
この世界に放り込まれた切嗣の腕に宿る三つの令呪もまた、彼にとって気がかりとなっていた。
五年前、アイリスフィールと共に召還した
セイバーの使役に使われた令呪は全て使い果たしたはずなのに、こうして宿っている。すなわち、真木のバックには魔術師やサーヴァントだって関わっている可能性があった。
例えるならかつての宿敵、言峰綺礼のような薄気味悪い人物が真木と繋がりを持っているかもしれない。
(……ともかく、もっと情報を集めないと。今のままでは結論は出せない)
勿論、可能性はただの可能性でしかない。
真木の背後に聖堂教会やシナプスが関わっている証拠はあまりにも少ないし、この会場にその技術が利用されてるとも限らない。
そして仮に殺し合いに関与しているにしても、アストレアからの情報だけでは打破への切り札に繋がらないだろう。シナプスの秘密を握っているであろうエンジェロイド達がわざわざこんな状況に放り込まれていると言うことは、仮に彼女達から情報を引き出してもそれに対処する方法を持っているはずだ。
もっとも、アストレアから出来るだけ情報を聞くことも忘れないが。
「アストレア、あの学校に行って一旦休憩しよう。さっきの戦いで君も疲れてるし、そろそろ食事の時間だろ?」
「えっ、ごはん!? やった~!」
するとアストレアはさっきの動揺が嘘のように、明るい笑顔を浮かべてはしゃぎだす。
その天真爛漫な姿を見て、切嗣はイリヤスフィールや藤村大河を思い出してしまい笑みを浮かべた。
幸いにも雁夜とバーサーカー、そして誰――切嗣は知らないが、バーサーカーとの戦いに敗れた
剣崎一真――の物かはわからないデイバッグの中には三食分の弁当がある。それだけで食欲旺盛な彼女には足りるか分からないが、足りないなら学校内を探すしかない。
アストレアとバーサーカーを引き連れながら切嗣は、県立空美中学校を目指して歩き出した。
◆
「ごちそうさまでした!」
県立空美中学校の調理室に備え付けられた椅子に座るアストレアは、支給品の弁当とこの部屋から調達した大量の缶詰を満足するまで食べた。
備え付けられた量はあまりにも多く、流石の彼女でも食べ切れなかったから残りをデイバックに収めている。
その際、食欲という名の欲望が満たされたことで首輪にセルメダルが溜まるも、アストレアはそれに気付かない。
「もういいのかい?」
「うん、おなかいっぱいになったから!」
「そうか、それはよかった」
アストレアが向ける眩い笑顔に答えるように、切嗣も微笑む。
「なんだかここって、智樹たちがいつも行ってる学校に似てるな……」
「多分、真木が似せて作ったんだ。何でわざわざそんな事をする必要があったのかは、まるで分からないけどね」
「ふ~ん……」
この辺り一体がよく知っている空美町に似ていることが彼女は気になっていたが、すぐに
よく分からないが、ここはあの町にそっくりなだけ。だからいつも感じているような心地よさは全く感じられなかった。
(それにしても、なんなんだろこのカード? トランプに似てるけど……)
アストレアは今、焼け焦げた大桜の近くに散らばっていた一四枚のカードをまじまじと見つめている。
一見するとスペードのトランプに似ているが、どれも変な虫や動物の絵が描かれていた。しかもその一枚であるジョーカーには、変なマークが妙に存在感を放っている。
気になったので回収したが、アストレアには用途がまるで分からなかった。これでみんなと遊ぼうとも考えたが、トランプは五十三枚が無いと遊べないのはバカな彼女とて知っている。
何よりも遊ぶ相手がいなかった。切嗣は考え事をしているし、バーサーカーという黒い騎士は全身から不気味なオーラが感じられてとても誘えない。
第一、先程から何度も声をかけたが何も答えなかった。だからアストレアは諦めてしまう。
(まいっか、わからなくなったらみんなに聞けばいいし。それに今は切嗣達の力にならなきゃ)
今やるべき事はここにいる二人の力になって、みんなを探すこと。それがバカな自分なりに出した、答えなのだから。
切嗣は勿論のこと、バーサーカーも今は頼れる仲間らしいから力にならなければならない。ただし、さっきみたいに暴れだすなら話は別だが。
(……シナプスのことも、やっぱり話した方がいいのかな)
さっきは思わず誤魔化してしまったが、切嗣は情報を欲しがっていた。でもエンジェロイドがシナプスのことを話すのは、本当ならあってはいけない。
しかしそれは空のマスターを始めとしたシナプス人が決めた掟であって、既に
ニンフを助けるためにシナプスを裏切っている。
だからもし、その時が来たら切嗣に話せることを話すべきかもしれない。それは誰からの命令でもなく、アストレア自身が決めたことなのだから。
【一日目-午後】
【D-1/県立空美中学校 調理室】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【所属】青
【状態】ダメージ(小)
【首輪】110枚:0枚
【装備】トンプソンセンター・コンテンダー@Fate/Zero、起源弾×12@Fate/Zero、軍用警棒@現実、スタンガン@現実
【道具】基本支給品(弁当なし)、スコープセット@Fate/Zero、首輪(間桐雁夜)、ランダム支給品2~6(切嗣+雁夜:切嗣の方には武器系はない)
【思考・状況】
基本:士郎が誓ってくれた約束に答えるため、今度こそ本当に正義の味方として人々を助ける。
1.今はここで体を休める。
2.1が完了したら、あるいは併行して“仲間”となる人物を探す。
3.無意味に戦うつもりはないが、危険人物は容赦しない。
4.バーサーカーの動向に気をつける。
5.『ワイルドタイガー』のような、真木に反抗しようとしている者達の力となる。
6.謎の少年(
織斑一夏に変身中のX)、
雨生龍之介と
キャスター、グリード達を警戒する。
7.セイバーと出会ったら……?
8.間桐雁夜への約束で、この殺し合いが終わったら桜ちゃんを助けにいく。
【備考】
※本編死亡後からの参戦です。
※『この世全ての悪』の影響による呪いは完治しており、聖杯戦争当時に纏っていた格好をしています。
※バーサーカー用の令呪:残り二画
※セイバー用の令呪:残り三画
※アストレアから、智樹たち、及びエンジェロイドの情報を聞きました。
※この殺し合いに聖堂教会やシナプスが関わっており、その技術が使用させている可能性を考えました。
【アストレア@そらのおとしもの】
【所属】緑
【状態】健康、満腹
【首輪】145枚:0枚数(増加中)
【装備】超振動光子剣クリュサオル@そらのおとしもの、イージス・エル@そらのおとしもの
【道具】基本支給品×4(アストレア、剣崎、雁夜、バーサーカー。その中から弁当二つなし)、不明支給品0~3、ラウズカード(スペードのA~K、ジョーカー)、大量の缶詰@現実
【思考・状況】
基本:自分で決めた事をする。
1.衛宮切嗣に協力する。
2.知り合いと合流(
桜井智樹優先)。
3.バーサーカーの動向に気をつける。
4.謎の少年(織斑一夏に変身中のX)を警戒する。
5.なんだろ……このカード(ラウズカード)?
6.切嗣にシナプスのことをきちんと話した方がいいかな?
【備考】
※参加時期は48話終了後です。
※大量の缶詰@現実は県立空美中学校 調理室から調達しました。
※食欲が満たされたので、セルメダルが増えています。(ただしお腹が減ったらセルメダルの増加は止まります)
【バーサーカー@Fate/zero】
【所属】赤陣営
【状態】ダメージ(小)、狂化
【首輪】95枚:0枚
【装備】白式@インフィニット・ストラトス、王の財宝@Fate/zero
【道具】アロンダイト@Fate/zero(封印中)
【思考・状況】
基本:▅▆▆▆▅▆▇▇▇▂▅▅▆▇▇▅▆▆▅!!
2.令呪により、一応マスター(衛宮切嗣)に従う。
【備考】
※参加者を無差別的に襲撃します。
但し、セイバーを発見すると攻撃対象をセイバーに切り替えます。
※令呪による呪縛を受けました。下記は、その内容です。
・害意を持たぬ者への一切の攻撃を禁止する。
※ヴィマーナ(王の財宝)が大破しました。
最終更新:2012年10月20日 23:27