綿棒の報い~イジメ、ダメ!~ ◆BXyDW0iXKw
窒息に困窮したネウロは、酸素の代わりとなる瘴気を求めて足を引きずって歩いていた。
目的地は、クウガの世界にあるという火山……そこに満ちているであろう火山ガス。
そこにいけば、瘴気の代わりの火山ガスを胸いっぱいに吸うことが出来るだろう……。
その過程で仲間と合流でも出来れば、まだネウロには十分可能性がある……。
だが……。
火山は少し遠すぎる……。
マップ上で2マスも北に進まなければならない……。
2マスというのは、つまりすごい遠いということに他ならない。
10キロ以上もあるのだから、普通に歩いていても疲れる距離だ。
それでもネウロが火山を目指す理由はひとつ……。
ここまでのダメージは、生半可な回復では足りないだろう。
酸素の代わりとなる瘴気を、火山ガスから十分に取り入れる必要がある。
そして、瘴気を得る上で、火山ガスに匹敵できるものは……おそらく他にはない。
だからネウロは火山を目指すのだ……。
今のネウロには、もうメダルがない。
体力も尽きかけだし、傷も大きいし凄く満身創痍なのだ。
もしも悪い奴に目を付けられたら、いかにネウロといえども危ない。
何故なら、ネウロには今、そんな悪人に対向する術が何一つないのだから……。
極力人に見つからないように、出来る限りは路地裏を歩いている。
もう、姿を消すような類の道具を使うだけのメダルも残ってはいない。
それ故にこそに、進行速度は悲しくなるくらい遅かった……。
でも、あそこでじっとしていては死を待つのみ。
死を避けるためには……動き出さねばならないのだ……。
そのため、道中キュウべえをいたぶりメダルの回復を狙おうかとも思っていたが……。
残念ながら、キュウべえは、ネウロの視界にはいない。
少し離れたところから、後ろをゆっくりついてきている。
さっき無駄にキュウべえをいたぶったせいで、警戒心をもたれたのだ。
八つ当たりを食らうのはごめんだと、キュウべえはあえて少し離れた距離からネウロを観察する……。
忌々しいことだ。
さて、あの放送からもうすぐ1時間もたつのに、まだE-4すら抜けてない。
この分だと、一体火山にたどり着くまでにどれくらい掛かるかわかったものじゃない。
そんな一寸先は闇の状況で不用意に泥の指輪をかじって、後々の魔力消費を増やすわけにもいかない。
とはいっても、いきなり襲われたら困るので、常に泥の指輪を口に含むようにはしているが……。
流石にこれだととてもまずいので、途中でメダルを補充せねばなるまいが……。
それには……仲間との合流か、謎を食らう必要がある。
いや、だが……こんな養殖の謎を食ったところで、大した回復は望めないと思う。
おそらく、謎を食えたとしても、火山にたどり着く分くらいで限界なのではないか……。
それでもないよりはマシなので、食える謎があるなら食いたいと思う。
ネウロはこんな時に傍にいないヤコが本当に役立たずだとネウロは思った。
無事再会出来たら、メダルを貰ったのち、キツ~いお仕置きをしてやろう。
ーーそんなことを考えている時であった……。
「ぐはぁ!」
全身の傷口がまた開いた……。
血がどぱどぱと溢れ出てきた……。
身体に入った亀裂が沢山増えた……。
これは、ネウロの身体にかけられた制限……。
魔人の身体を維持するために必要な一時間ごとのメダルコスト。
たった二枚しかなかったメダルが纏めて吹っ飛んで、払えなかったツケが身体に回ってきたのだ……。
だがこの魔人ネウロ、放送の時にも同じ致死毒を食らったので、今更驚いたりはしなかった。
「元気そうだなぁ、ネウロ」
ネウロが
ウヴァに声をかけられたのは、その瞬間だった……。
オーズロワ第103話
綿棒の報い~イジメ、ダメ!~
いつからツケていたのか……。
緑色の皮のジャケット……満面の笑み……ウヴァだ。
ウヴァは絶妙なタイミングで、ネウロの背後から現れた。
まさかこんな時にあの虫頭に出会うなんて……なんということだろう。
「元気そうでよかったぜぇ、ネウロォ。どうしてそんな傷だらけなんだァ?おいィ!フハハハハ!!」
「おや、あなたは……ゴミ虫さんではありませんか。私が元気ならあなたはとても元気がなさそうにみえますね?」
「ああァ~、そうなんだよォ~!わかるかぁ?大事な大事な仲間の月影くんが死んじまってよ~~ッ!今は喪に伏してるところなんだよなぁ……」
「それはそれは……ご愁傷様です」
「フッフッフ、本当になぁ?あんまり悲しいからお前からも逃げるつもりだったのに、そんな元気そうな姿を見せられちゃ~、話しかけずにはいられないよなぁ!ハッーハッハッハッハ!!」
ネウロは笑わない。
笑えるわけがない……。
絶体絶命、というやつだ……。
ルールに適応するつもりでいたが、こんな短時間で適応出来るほど真木は甘くない。
外敵の襲来が予想以上に早すぎたのだ……。
それにしても……。
何故、路地裏を歩いていたのに気付かれたのだろう……。
考えるまでもない……この男、ずっとネウロを後ろからツケていたのだ。
だが、すぐには襲わずに、しばらく観察してから……襲いかかってきたのだろう。
そして、ネウロが血を吐いたのをみて、これ好機にと姿を表したのだろう……。
魔人ネウロが、尾行にここまで気付かなかったとは不覚……。
どんな生物であれ死亡寸前まで追い込まれれば感覚は鈍る。
満身創痍のあまり尾行している敵を察知する能力まで鈍っていたようだ。
だが、そんなことは今更言っても遅い……。
今は、奴に対処せねばなるまい。
「ああ、そうだそうだ……」
ウヴァの姿が、緑の虫の怪人に変わる。
ネウロに迫ってくるウヴァ……。
「よくも俺の大切な仲間の月影をいじめてくれたよなぁ?ネウロ!!」
ウヴァの虫頭に電撃がほとばしる。
それがバリバリ言わせながらネウロを襲ったが、こんな身体ではよけられない。
だからせめて、口の中に含んでいた泥の指輪を噛み砕こうとしたが……それは、噛み砕けなかった。
ネウロの顎の力をもってしても、泥の指輪が噛み砕けない……その理由は一つ……。
この場でのあらゆる特殊能力は……すべて、メダルの制限を受けている……。
だから、今までネウロは回復手段があっても、その起動コストすら払えなかった……。
そして、ネウロが持っているメダルはゼロ……メダルなくして、魔界777ツ道具は使えない……。
発動コストが満たせないなら、能力は使用出来ない……。
噛み砕く事で発動する777ツ道具なら……メダルなくしては、そもそも噛み砕くことも出来ない!
そして緑色の電撃がクリーンヒットして、ネウロの身体は吹っ飛んでビルの壁にぶつかった……。
万事休すだ……。
「イジメはダメだぜぇ~……でも、イジメっ子には言ってもわからんから、こうするしかないだろ?言って聞かない悪い子には体罰も必要だぜ……イジメをやる奴は心が腐ってるからな、オラァ!報いを受けろ~~~ッッッ!!!」
ふざけたことを言う奴だ……。
これが綿棒をいじめた報いだと……。
あの綿棒……本当にろくなものを残していかない。
まさかこんなアホみたいな台詞を吐く奴にいいようにやられるなんて……。
いや、今はあの綿棒のこととかどうでもいい……。
服がめちゃくちゃに焦げて、全身がブスブス言っている……これはまずい……。
「こっちはなぁ……どうしてお前が傷だらけなのかなんざどうでもいいんだよ……だがな、仲間思いの俺は月影の仇を討たなきゃならない……分かるよなぁ?え?」
ネウロの頭を掴んで、無理矢理起き上がらせるウヴァ。
いつの間にかその手には、あの綿棒が持っていた赤い剣が握られていた……。
「月影が受けた痛みを思い知れ、ネウロ!!」
サタンサーベルが、ネウロの腕を根本から断ち切った。
弱りきり、メダルすら使い果たしたネウロの身体では、創世王の剣は耐えられなかった。
腕から大量の血がどぱー!と吹き出して、ネウロの意識が一瞬朦朧とした。
だが……これほどのダメージを受けても、ネウロはまだ死ねなかった……。
それが……魔人という身体に生まれてしまったネウロの不幸……。
「ハハハ、随分としぶといじゃないか~?」
そう笑いながら、ウヴァはネウロの頭を離した。
ずり落ちたネウロの太ももを、怪人の脚がおもいっきりふみつけた。
太ももの筋肉が断裂して、ブチブチ言いながら血を大量に吹き出して千切れた。
左腕だけでなく、右足までも失ったし、血もいっぱい出ているが、ネウロは死なない……。
いや……死亡寸前というべきか……。
「今のお前なら、俺でも楽勝で殺せるぜ~?ならブッ殺すしかねぇだろ~?生かしとく理由もないからなぁ!」
「……吾輩も……堕ちたものだな……貴様のような……虫頭に……」
「あぁん?なんだって~?よく聞こえなかったぜ……まぁいい!あの世で月影に詫び続けろネウローッ!!!」
「ぐはっ!」
バリバリバリバリバリ……!
ウヴァの緑色の稲妻がネウロの身体を突き抜けた。
口から、そして全身からおびただしい血液が噴き出る……。
腕と脚の傷口の肉が焼け焦げて、得も言われぬ異臭を放つ……。
ネウロの霞んだ目には、ウヴァの背後で尻尾を揺らしてこっちを眺めるキュウべえが見えた。
キュウべえはやはり、こんな時にも表情を崩さないし助けてもくれない……。
はじめからそんなものには期待してないが……。
だが、ネウロにいたぶられるのを避けて距離を取っていたのはキュウべえ的には正解だろう……。
なぜなら、不用意にネウロに近づいていなかったおかげで、ウヴァに気付かれずに済んでいるのだから……。
こんな状況でも、ネウロは命乞いなどしない。
ネウロの目には、ウヴァに対する反抗の意志が……。
そんなネウロに、ウヴァはたずねた。
「最期に一つだけ教えてくれよネウロ~」
「……」
「さっき俺がブッ殺す前にあの
ノブナガにも聞いたんだが、あの野郎、既に気が狂ってたのか訳のわからんことしか言わなかったんだよ」
「ほう……?」
「なんでお前らは、死ぬってわかってるのにそんな目をしてる?」
どうやらあのノブナガも最期までウヴァに反抗して死んだらしい……。
ノブナガらしいことだと思ったので、ネウロは思わずふふっと笑った。
「……昆虫は本能だけで活きているのだろう?」
「あ?」
「貴様のような虫には永遠に分からんという事だ」
ウヴァのサタンサーベルが緑色の雷をほとばしらせながらネウロの心臓を貫いた。
貫かれた心臓部から全身に激しい電気がバリバリ溢れ出したので、ネウロは体内から焼き殺された。
ネウロはもう動けない……二度と口をきくこともない……死人に口なしということだ……。
【脳噛ネウロ@魔人探偵脳噛ネウロ 死亡】
放送を聞いたあとATMからメダルを引き落としたあとウヴァは少し迷った。
これからどこにいこうか……目的地があるわけでもないのに……。
だが、ネウロが傍にいては、逃げざるおえないだろう。
だから本当はスタコラサッサと逃げるつもりだった。
だが、すぐに逃げなくて本当に良かった。
ライドベンダーで何処かに逃げようかという時、ウヴァは遠くをゆっくり歩くネウロを見かけた。
路地裏の方へ歩いて行く……もしやと思ったネウロは、タカカンドロイドとバッタカンドロイドを使った。
流石にネウロに無計画に近寄るのは危なかったので、その辺は慎重なウヴァらしく頭をつかったのだ……。
それで遥か上空からネウロを監視し、もしイケそうなら……ここであの魔人を落とすつもりだった。
そして暫く様子を見ていたら……。
何があったのかは知らないが、ネウロは既に酷く弱っていた……。
本当なら、ネウロとは絶対に戦わないつもりだったが……。
だが……これ程の好機を見逃す手はない。
これは、絶好のチャンスだった……!
(俺は、本当にラッキーだ……ツイてるぜ……!)
放送については、特に何も思うことはなかった。
自分の損になることはさして見当たらないし、むしろ特の方が多かった。
せっかく鳥頭とウスノロが死んだときに生臭女と糞猫を殺せなかったのは残念だが、しょうがない。
まだまだチャンスはあるので、これから残ったグリードもブッ殺そう。
ネウロも死んだ今、ウヴァの脅威になる者などそうはいない……。
おまけにあの
イカロスも今やこのウヴァの手駒……。
ウヴァ本人もメダルをいっぱい持っている……。
この戦い、勝った……。
結局最期に勝つのはこのーー
「ウヴァ様なんだよ!ハハハハハハハハッッッ!!」
そんなウヴァを、ネウロに支給されてたキュウべぇは街角の影から何も言わず見ている。
キュウべぇが何を考えてるのかは誰にもわからない……。
【一日目-夜】
【E-4/市街地】
【ウヴァ@仮面ライダーOOO】
【所属】緑・リーダー
【状態】健康、上機嫌、絶好調、大満足
【首輪】300枚:270枚(増幅中)
【コア】クワガタ(感情)、カマキリ×2、バッタ×2、サソリ、ショッカー、ライオン、クジャク、カメ
【装備】バースドライバー@仮面ライダーOOO、バースバスター@仮面ライダーOOO、サタンサーベル@仮面ライダーディケイド
【道具】基本支給品×3、参加者全員のパーソナルデータ、ライドベンダー@仮面ライダーOOO、メダジャリバー@仮面ライダーOOO、
ゴルフクラブ@仮面ライダーOOO、首輪(
月影ノブヒコ)、ランダム支給品0~4(ウヴァ+ノブナガ+ノブヒコ)
【思考・状況】
基本:緑陣営の勝利。そのために言いなりになる兵力の調達。
1.もっと多くの兵力を集める。
2.ネウロを始末出来たのでとても嬉しい。
3.屈辱に悶えるラウラの姿が愉快で堪らない。
4.緑陣営の兵器と化したイカロスに多大な期待。
【備考】
※参戦時期は本編終盤です。
※ウヴァが真木に口利きできるかは不明です。
※ウヴァの言う解決策が一体なんなのかは後続の書き手さんにお任せします。
※最強の敵の一角を落としたのでとても満足したのでメダルが大幅に増加しました。
※キュウべえがE-4にいます。何を考えているかは不明です。
※E-5の路地裏にひどいありさまになったネウロの惨殺死体が放置されています。
最終更新:2013年10月02日 00:24